春烙

寒いなあ…

可愛いやり方

2008年08月03日 00時22分53秒 | 外伝小説

 翼乃が永久睡眠病で眠っている、ある日のこと。
 神家に拍摩 優斗が訪れていた。
「すみませんね、優斗君。翼乃君、10日前から眠っているんで」
 優斗を迎えたのは、泳地・水奈・アスカ・佑希・玲花であった。優斗が来る前、壱鬼は犬猿の仲ともいうべきのジュンと、
従弟の沓馬と、後輩のスミレと外出していた。
「いえ、いいんです。皆さんに話したいことがあるので」
「どういうことだ?」
「そういえば。もうすぐ優斗君と海斗君の誕生日よね?」
 佑希が聞こうとしたが、玲花に邪魔されてしまう。海斗というのは、優斗の兄で、翼乃と同じ学年であり、自称『ライバル』である。
「はい」
「二人って、同じ日なの?」
「そうだよ、アスカ君」
「それで。俺達に話したいことってなんだ」
 煙草に火をつけながら泳地は言った。
「実は、誕生日に両親が出かけるんです」
「……は?」
「えっ?」
「?」
「なんで?」
 佑希・玲花・水奈・アスカはそれぞれの口調で言い、優斗を見た。
「旅行だって」
「急、にか?」
「いえ。前からです、トラさん」
「トラいうな!」
「で。その日親がいないとして、海斗君と二人だけだと」
 泳地が言った瞬間。4人が泳地の方を向いて、驚いた表情を見せた。
「はい……」
「それだったら。千かトキエちゃんに頼めばいいだろ」
「頼んでみましたが。二人とも仕事で無理って」
「まあ。ホテルのオーナーと秘書だからな。暇な時間がないはずだな」
「前日にプレゼントだけはおくるって、千兄ちゃんが言ってました」
「そうか」
「またんかい!!」
 泳地は煙草を灰皿に押さえつけると、怒鳴った佑希を見た。
「なんだ」
「話を進めるなよ! お前はなんとも思わなかったのか!?」
「何をだ」
「ダメですよ、トラ君。兄さんはそういうのには、気にしていないんですよ」
「トラ君いうな!!」
 『?』マークを頭の上に浮かばせる泳地を放置しながら、水奈達は優斗に話した。
「あいつと二人きりか」
「あ、はい……」
「ダメだわ。絶対にダメよ!」
「どうしよう~」
「いけませんね、これは」
「どうするんだ。海斗ならやりそうだが」
「そうですね。何か手を打たなければなりませんね」
「一体何を話しているんだ、あいつらは」
「泳地さんは、気にしない方が良いですよ」
 放置されている泳地に優斗は言うと、4人に聞こえない声で泳地に言った。
「あの、泳地さん」
「なんだ」
「実は僕、海兄ちゃんにあげるプレゼント、まだ決めていないんですよ」
「そうなのか」
 泳地も小声で優斗に話しかけた。
「はい。何かおくりたいんですが。何にしたらいいか……」
「別に、考えることでもないんじゃないか」
「え?」
「料理を作ればいいだろ」
「あ。そっか」
「それに。お前にしか出来ないことがあるんじゃないのか」
「そうですよね。やれるだけやってみます」
「ああ。がんばれよ」
 泳地は優斗の頭をポンっと叩いた。

 7月22日。京都、拍摩邸。
「静かだね。海兄ちゃん」
「そうだな」
 中庭を見ながら、優斗はテレビを見ている兄に言った。
「おー」
「(いざ二人きりになると、緊張するなあ~)」
 胸のドキドキを押さえながら、中庭を眺めていた。
「どうして、ここに来るんだ?」
 中庭の草むらに、泳地・水奈・佑希・玲花・沓馬が隠れて家の様子を疑っていた。
「あの二人だけじゃ、心配なんですよ。兄さん」
「そうか」
「まに受けない方が良いですよ、泳地さん」
 ちなみに。アスカも行きたかったのだが、壱鬼とお留守番をしていた。
「まったく。海斗君はお兄ちゃんなんだから、親も安心して家を任せたんだよ」
「甘いわよ、沓馬。あの兄弟の両親は、二人に試練を出すためにいなくなったのよ」
「姉さん。一体何の試練なんだよ」
 沓馬が黒いオーラを出していると、泳地は海斗の行動をじっと見ていた。
「どうかしたのですか、兄さん。海斗君をじっと見ていて」
「いや……見たことあるような気がしてな」
「そうですか?」

「おふくろ達わりいよな。俺達を置いて旅行に行くなんてな」
「そ、そうだね(僕に出来ること、僕に出来ること!)」
 優斗がおまじないのようなものを心の中で唱えていると、誰かがチャイムを鳴らしていた。
「誰か来たね」
「俺が行ってくる」
 といって、海斗は玄関へと向かった。
「はう~」
 海斗がいなくなると、優斗はソファーに座り込む。
「(どうしよう……)」
 ピンポーン、ピンポーンッ
「はいはーい」
 海斗が玄関の扉を開くと、東京にいるはずの翼乃とジュンがいた。
「よっ」
 ジュンは手を軽く上げ、翼乃は扉が開いたにもかかわらず、チャイムを鳴らしていた。
「おい」
「翼乃。もういいだろ?」
「あと一回」
 と言って、翼乃はチャイムを鳴らし、海斗を向いた。
「来てやった」
「ああ、そうですか」
 海斗は来客した二人を招き入れ、優斗のいるリビングへと戻った。
「やあ、優斗」
「先輩! ジュンさん!!」
 優斗はソファーから勢いよく立ち上がって、翼乃とジュンを見た。
「こっちから東京に来ることが出来るなら、逆もありだろ」
「はい、これ。誕生日プレゼント」
 翼乃は手に持っていたいくつかの袋を、優斗に手渡した。
「こっちはお前のだ。海斗」
 ジュンは手に持っていたいくつかの袋を、海斗に渡した。
「わあ! こんなにも!!」
「おれとジュン、あと壱鬼兄さんとスミレさんと沓馬兄ちゃんからだ」
「ありがとうございます、先輩!」
「おい。これ、部屋に置いておけ」
「うん!」
 優斗がプレゼントを置きに部屋に行くと、残った3人はソファーに座って何か話をしていた。
「なんであの二人が……!?」
 草むらに隠れていた5人は、突然現れた翼乃とジュンに驚いていた。
「俺達と同じ方法できたんだろ」
「いつごろ来たのでしょうか?」
「俺達が来た後だろっ」
「そうですね」

「あ。そろそろ夕食作らないと」
 時計を見た優斗は立ち上がると。
「俺も手伝おうか?」
「いいよ、海兄ちゃん。僕が作るから」
「じゃあ。おれが行く」
 と言い、翼乃は優斗と一緒に台所へと向かった。
「何作るんだ」
「そうですね……」
 優斗は冷蔵庫の中を見ながら、献立を考えていた。
「先輩達も食べていきますか?」
「いいのか?」
「せっかく東京から来てくれたんですから」
「じゃあ、そうさせてもらうよ。優斗の作った食事、食べてみたいしな」
「腕によりをかけて作りますから!」
「ちょっと、壱鬼兄さんに連絡してくるよ。アスカと留守番しているから」
 と言って、翼乃は台所をでた。
「さーて」
 優斗は冷蔵庫から材料を取り出す。
「がんばって作らないと!」

 夕暮れごろになり、四人は、優斗が作った食事を食べていた。
「うめえー」
「ほんとですか?」
「おいしいよ、優斗」
「おいしいぞ」
 翼乃と海斗が言うと、優斗はホッとして「よかった~」と言った。
「海斗は、料理はできるのか?」
「少しな」
「この煮物うまいでぇ」
「こっちもね」
「たくさんありますので!」

「ご馳走様でした」
 翼乃とジュンは玄関で靴をはいて、海斗と優斗を見た。
「おいしかったよ」
「ありがとうございます」
「たまに戻ってくるで。翼乃と一緒に」
 と言って、ジュンは翼乃の肩にガシッと掴んで引き寄せる。
「ちょっと」
「いいだろ、別に」
「仲良いですね」
「おい。ひとんちでイチャつくなよっ」
 二人の光景を見ていた優斗は微笑み、海斗は呆れかえった。
「じゃあ、二人とも。誕生日おめでとう」
「はい!」
「ああ」
「ちゃんと寝ろよな」
 と言い、翼乃とジュンは拍摩家を去っていった。

「(結局。料理しかできなかったな~)」
 海斗の部屋の前で、優斗は立っていた。
「(でも、頑張らないと! まだ終わってないんだから)」
 優斗は決心をつけ、扉をノックし中に入った。
「海兄ちゃん」
「? 優斗??」
 入ると、海斗はパジャマに着替えている最中で、優斗は驚いて下を向いた。
「あ、あの…あのね、海兄ちゃん」
「どうした?」
「いっ……一緒に寝てくれないかな?!」
「……」
 突然何を言えばっと海斗は思ったが、素早く着替えると優斗に近づき。
「下は消してるのか?」
 と聞き、優斗は花が開くような笑顔をして、「うん!」と答えた。
 そのころ。神家で留守番をしている壱鬼とアスカは。
「う~っ」
「まだ怒っているのか」
 壱鬼は後ろからアスカを引き寄せて、頭の猫耳に口付けをする。
「行きたかったのに~」
「たしかにな。翼乃とあのやろうが行くのはまだしも、兄貴達まで京都に行くなんてさ」
「直接、渡したかったなあ」
「だったら。明日にでも行くか?」
「えっ。いいの!?」
 振り返ると、アスカは目を輝かせて壱鬼を見つめていた。
「兄貴達だけ京都に行ったんだ。オレ達も行っていもいいだろ?」
「うん、うん!」
「兄貴達が戻ってきたら、行こうな」
「わ~い」
 喜び出したアスカは、壱鬼に抱きつく。
「壱鬼。大好き!」
「ああ……」
 壱鬼はアスカの唇に自分のと重ねると、耳元に近づき低い声で呟いた。
「俺も好きだ」
 ……ちなみにこの二人。翼乃とジュンが外出した後、一歩も外から(というより部屋から)出ていない(しかも今、全裸)

「今日、楽しかったね」
 優斗は兄と一緒に、ベッドの上に横になっていた。
「そうか? 俺は楽しくなかったぞ」
「だって。東京から翼乃先輩とジュンさんが、わざわざ来てくれたんだよ」
 優斗は海斗の方に身体を向けると、笑いかけて言った。
「嬉しかったよ」
「あっそ」
「ごめんね。何も用意できなくて」
「いや」
 海斗は優斗の身体を引き寄せた。
「もう、もらった」
「な、なに?」
「お前だ」
 と言うと、海斗は聞き返そうとする優斗の唇を自分のと重ね合わせた。
「んっ……!」
「お前。俺が好きなんだろ」
「(///)!」
「その顔じゃ、当たってるな」
 海斗は顔を赤くしている弟の服に手を滑らせ、中に潜り込ませる。
「や! にい、ちゃんっ」
「そういや。俺はまだお前に何をやるのか言ってなかったな」
「え? えっ??」
「俺からの贈り物は……俺のお前への愛だ」
 海斗は優斗の服を脱がすと、現れた白い肌にかぶりついた。
「あ、んっ」
「朝まで愛し合おうな。優斗」
「(え――っ!?)」

 翌日。
「海兄ちゃんの、バカ―っ!」
 海斗の宣言どおり、優斗は朝まで愛されてしまい、身体が思うように動かせずにいた。
「なんだよっ」
「足が立てられないじゃない! どうしてくれるの!?」
「んじゃ。あと2回くらい」
「え!? ま、まだやるの!!?」
「おふくろ達、明日の夕方まで帰ってこねえからな」
「聞いてないよ~っ」
「お前がいない時に言ってきたからな」
 ニッと笑い出すと、海斗は優斗の上に覆い被さり、見下ろしていた。
「ずるいよ……」
「なにが」
「何もかも。でも……」
 恥ずかしながらも海斗の頬にキスをすると、優斗は自分の腕を首に絡めた。
「好き――」


 一つ違いになる誕生日
 そして、恋が実る日――だと思うけどね


 拍摩兄弟BD(7月22日)で、海斗×優斗+壱鬼×アスカ+ジュン×翼乃でした!
 



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