先行き不安な毎日を過ごしながら、中学生の私と耳の不自由なおばあちゃんはなんとか生きていた。
おばあちゃんは私の生みの母親の連絡先を知っており、私に連絡するように言った。
母親と話をするのは5年ぶりだった。
それから毎月いちにちだけ日曜日に会うことになった。
それは、私の住んでいる団地では無く
母親の家でも無く、
百貨店や商店街のある、繁華街
で待ち合わせるのだった。
私は変な服装をしていた。
小学生の時からずっと着続けている服や、叔母さんが昔着ていた服を着て
一人で電車に乗って待ち合わせの街に行くものだから、
同じ車両に乗り合わせた、私と同い年くらいの親娘にじっと見られヒソヒソ笑われていた。
母親に毎月服を買ってもらいそれを次に会う時に着ていった。
家庭科で翌年も生地を用意しなければならなかった。
母親は生地問屋街に連れて行ってくれた。
生地を扱う店がたくさん軒を連ねていて、私はワクワクした。
いくつも店を覗き立ち去ってはまた戻り、一つの店に決めた。
必要な長さの生地をカットしながら店のおばさんは、
「娘さんの意見を尊重して、良い子育てしてるわ。会話を聞いてたら分かるよ」
とデタラメを言った。
私は新しい生地と紙袋の混じった匂いをクンクン嗅いでいた。