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根無し草 ㉓

2021-11-28 15:15:00 | 根無し草
先行き不安な毎日を過ごしながら、中学生の私と耳の不自由なおばあちゃんはなんとか生きていた。


おばあちゃんは私の生みの母親の連絡先を知っており、私に連絡するように言った。



母親と話をするのは5年ぶりだった。


それから毎月いちにちだけ日曜日に会うことになった。


それは、私の住んでいる団地では無く
母親の家でも無く、
百貨店や商店街のある、繁華街
で待ち合わせるのだった。


私は変な服装をしていた。


小学生の時からずっと着続けている服や、叔母さんが昔着ていた服を着て
一人で電車に乗って待ち合わせの街に行くものだから、
同じ車両に乗り合わせた、私と同い年くらいの親娘にじっと見られヒソヒソ笑われていた。


母親に毎月服を買ってもらいそれを次に会う時に着ていった。


家庭科で翌年も生地を用意しなければならなかった。
母親は生地問屋街に連れて行ってくれた。


生地を扱う店がたくさん軒を連ねていて、私はワクワクした。


いくつも店を覗き立ち去ってはまた戻り、一つの店に決めた。


必要な長さの生地をカットしながら店のおばさんは、

「娘さんの意見を尊重して、良い子育てしてるわ。会話を聞いてたら分かるよ」
とデタラメを言った。

私は新しい生地と紙袋の混じった匂いをクンクン嗅いでいた。