トリック・オア・トリート!ということで今回は前回のトランスフォーマーと一緒に借りたロブ・ゾンビ版の「ハロウィン」の話。
洋の東西を問わず他分野出身で映画を撮ってみた、という人はたくさんいるが、その中ではかなり出来のいい映画を撮るロブ・ゾンビ。ホワイトゾンビの頃からミュージシャンとしてファンだったがその頃から自分でPVを監督する等、映画的な素質は目立っていた。ルックスがアラン・ムーアみたい、というか典型的なヒルビリー・ロッカーなゾンビだが、意外にB級ホラー映画を愛する男である。
一作目の「マーダー・ライド・ショー」は「ロッキー・ホラー・ショー」ミーツ「悪魔のいけにえ」という「俺が観なきゃ誰が観るんだよ!?」というぐらいの作品で日本での公開前からサントラだけは買って楽しみにしたりしていた。「マーダー・ライド・ショー」の頃は、まだ自分の楽曲が半分ぐらいを占めていたりしたが、「デヴィルズ・リジェクト」や本作ではほとんど音楽は他の人に任せて、演出に専念している。
さて、本作はご存知のようにジョン・カーペンターの傑作ホラー「ハロウィン」のリメイク。「悪魔のいけにえ」に始まり「ハロウィン」で弾みをつけて「13日の金曜日」でジャンルとして完成した「仮面をつけた連続殺人鬼物」の嚆矢。
ウィリアム・シャトナーのマスクをつけたつなぎのブルーカラー風殺人鬼がハロウィンに性道徳観念が乱れまくった若者を殺しまくる。
カーペンター版(見かえしてはおらず記憶で書いてるので細部は間違ってるかもしれない)は主人公、マイケル・マイヤーズの内面には一切触れず、肉体的、というよりも精神的に最初からブギーマンとして描かれていたと思うが、ゾンビ版(こう書くとマイケルがゾンビみたい)では少年期のマイケルの描写が長い。むしろそここそが描きたい部分であるようだ。
カーペンター版ではマイケルの家族はいたって普通で、それゆえにマイケルが突然変異に化け物かのような描写になってたが、今回は家庭も複雑。マイケルの母親はストリップで子供3人を育てている苦労人(ただし家族の中では良心)。義理の父親は足の怪我の性で無職のアル中、義理の娘に色目を使う典型的なクズ白人(どうでもいいがクズ白人の描写をさせたらロブ・ゾンビの右に出るものはいないのでは)。その姉は弟たちの面倒をみずセックス三昧。妹のローリーは小さくてまだ良くわかんない。そしてまるで女の子みたいなマイケルは仮面大好きの動物虐待野郎だ。
ハロウィンの日、母親をバカにされたマイケルは上級生と喧嘩をして母親を呼び出される。その席で母親はマイケルがバッグの中に動物の死体(猫だったか)を持ち歩いていたことを知る。放課後マイケルは人知れず上級生を撲殺。
その晩、母親は仕事に出かけ、姉に弟妹の面倒を頼みむが姉は恋人を連れ込みセックスにふける。何故かその恋人があのシャトナーマスクを持ってくるがあれはあの世界ではどういう位置づけのマスクなんだろう。
仮面大好き少年マイケルは酔って寝ている義父を縛り付けて身動きを取れないところを首を切り裂いて惨殺。酒を取りに来た姉のボーイフレンドも殺し、シャトナーマスクを入手。姉も殺してしまう。
妹を抱いて玄関で待っているところを母親が帰宅。大騒ぎになる。マイケルは病院に収容されるが何も覚えてない。担当医はサム・ルーミス医師。
母親は面接に来るがマイケルはマスク作りに没頭。母親との面接の直後に看護婦を殺し、決定的に絶望した母親は自殺。
とにかくここまでが長い。全体は2時間ないぐらいだから半分ぐらいが少年マイケルに費やされてる印象。マイケルが徐々におかしくなって、仮面の世界に入っていく過程が丁寧に描かれている。環境なのか生来の物なのかどっちとも取れるような感じだ(勿論、マイケルは動物の死体を持ち歩くようなサイコパスではあるが)。
さて、時は経ち16年後自分の部屋で仮面作りに精を出していたマイケルはおそらく、運動も食事もろくにとってないだろうに2m近い巨漢(演じるは元WCWのレスラー、タイラー・メイン)に成長。ある夜、マイケルに比較的良くしてくれた職員含む警備員を惨殺して脱走。今は廃墟となった実家に戻りシャトナーマスクと洋包丁を入手すると、今は他家の養子になり何も知らず成長した妹ローリーを標的にする。
本来、本編であるこっからはむしろおまけな感じがするくらい前半が濃い。
後はマルコム・マクダウェルはじめとしてウド・キアー、シド・ヘイグ、ビル・モーズリー、ダニー・トレホ、シェリ・ムーン・ゾンビ(ロブイ・ゾンビの奥さん)、ケン・フォーリーとその筋にはたまらない豪華なメンバーが特徴(いつものゾンビ一家ともいう)。
さて、それにしても「テキサス・チェーンソー(「悪魔のいけにえ」のリメイク)」、「ハロウィン」、「13日の金曜日」と80年代を一世風靡した殺人鬼物のリメイクが一通り出揃ったことになるが、現在残るもうひとり、フレディ・クルーガーの「エルム街の悪夢」のリメイクが製作中である。
フレディの魅力はそのほかの殺人鬼と違ってロバート・イングランドという稀代の俳優によるところが大きい。そのフレディを演じるにはジャッキー・アール・ヘイリー!そう、あのロールシャッハだ。「ウォッチメン」ではほぼマスクで通したが、逆にこっちでは素顔(でもないか)の殺人鬼を演じるとは何ともいえない皮肉だね。今から楽しみだ。
あ、ロブ・ゾンビによる「ハロウィン」の続編も公開されました。日本での公開はあるかな。あるといいな。
ジョン・カーペンターの有名な「ハロウィン」テーマ曲。