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話の種

新聞やテレビ、雑誌などで、興味深かった記事や内容についての備忘録、感想、考察

ICJとICC

2025-03-16 21:24:52 | 話の種

「ICJとICC」

フィリピンのドゥテルテ前大統領が3月11日フィリピン当局により逮捕され、12日身柄がICC(国際刑事裁判所)に引き渡された。

ICCは、ドゥテルテ前大統領は違法薬物をめぐり、容疑者の殺害もいとわない「麻薬戦争」と呼ばれる強硬な取り締まりを主導し、2011年11月から2019年3月までの7年余りの間、多くの人を殺害した人道に対する犯罪に関わった疑いがあるとして捜査をしたが、3月7日に逮捕状を出し、フィリピン当局はこれに伴って同氏を逮捕したもの。
(ドゥテルテ氏の過酷な取締りにより、軽微な犯罪者も含め6,000人以上が死亡したとされている。ただこの強引な措置によりフィリピンでは麻薬犯罪が激減したのも事実だが。)

ここで興味深いのは、フィリピンはICCに加盟していないが、その決議に従ったということ。

ICCは他にも、ロシアのプーチン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相にも戦争犯罪などの容疑で逮捕状を出しているが、当然これらの国は無視している。

それどころかロシアなどはこれに反発し、ICCの赤根所長やICCの裁判官や検察官などを指名手配している。
またアメリカ(トランプ大統領)も、「ICCはイスラエルのネタニヤフ首相などに逮捕状を出したが、アメリカとイスラエルはICCの加盟国ではなくICCに管轄権はない。ICCは権力を乱用している」などとして、ICCの職員などへの制裁(ICC職員やその家族らの資産凍結や渡航禁止など)を可能にする大統領令に署名している(2月6日)。

この大統領令に対して、ICCの赤根所長は「裁判所の独立性や公平性に干渉しようとするいかなる試みも断固拒否する」とし、ICC加盟国(125カ国・地域)では79カ国・地域が7日「深刻な犯罪が免責となる危険性を高めるものだ」と大統領令を批判する共同声明を発表。制裁により現在進行中の捜査が阻害されるだけでなく、ICC職員や事件関係者の安全が脅かされるとしている。
(この声明には英国やフランス、ドイツ、カナダなどが名を連ねているが、しかし日本は加わっていない。)


ところで、ICCと似たような名前でICJ(国際司法裁判所)がある。
このICJのトップに今月初め日本人の岩沢雄司氏が選任された。(前任のナワフ・サラーム氏が母国レバノンの首相に転じるため1月に辞任。岩沢氏はその後任に選任された。)

(ICJは、ロシアに軍事行動の中止を求め、イスラエルにも人種や宗教などに基づいた集団殺害を禁じたジェノサイド条約の順守や即時停戦を求める暫定措置命令を出している。)

どちらも国際司法機関だが、次のような違いがある。

ICJ(国際司法裁判所):International Court of Justice
 国連加盟国すべてを管轄下に置き、基本的に国と国との紛争を解決する国連の裁判所。
ICC(国際刑事裁判所):International Criminal Court
 国際条約「ローマ規程」に加盟した国でつくる裁判所で、戦争犯罪などで「個人」を刑事的に裁く。
(米国、ロシア、中国などは非加盟国)

ここで注目されるのは、現在これら組織のトップ(所長)には日本人が就任しているということ。

ICJ: 岩沢雄司氏(2025年3月3日就任)日本人では小和田恒氏(就任期間2009-12年)に次ぎ2人目。
ICC: 赤根智子氏(2024年3月11日就任)日本人では初。

偶然かも知れないが、国際的に戦争や紛争が絶えず、政治面でも無法化が見られる昨今、日本人としてはこの人たちに期待するところは大きい。


これに関して、朝日新聞に次のような記事があった。

「国際司法機関トップに2人 「法の支配」擁護者として問われる日本」(2025年3月5日)

 国際司法裁判所(ICJ)の所長に岩沢雄司氏が選任されたことで、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長に加え、国際司法にかかわる主要な二つの機関でともに、日本人がトップを務めることになる。これは、日本が「法の支配」の擁護者として世界でどう振る舞うかと無関係ではない。

 国際法違反の軍事侵攻に踏み切ったロシア、パレスチナ自治区ガザの破壊に突き進んだイスラエル。こうした国際法無視を決め込む国々に、これまで「法の支配」を説き、国際秩序を牽引(けんいん)してきたはずの米国までが、平然と擦り寄り、目先の自国の利益を最優先して同盟国や隣国に「ゆすり外交」を展開する――。国際秩序が崩壊の危機に直面するなかで、二つの国際司法を担う機関のトップとして、いずれも日本人が差配を振るう意味を考えてみたい。

■誕生の背景に日本外交への信頼感

 赤根、岩沢両氏がそれぞれ所属する裁判所での活動に厚い信任を得ていたことに加え、「法の支配」や「ルールに基づく国際秩序」を重視してきた日本外交に対する信頼感も、2人の日本人所長を誕生させた背景にあるだろう。(中略)

■揺らぐ多国間主義、問われる日本

 昨年5月、当時の上川陽子外相は、イスラエルのカッツ外相と電話会談し、ICJの暫定措置命令に触れ、「命令は当事国を法的に拘束するもので、誠実に履行されるべきものだ」とクギを刺すなど、日本独自の中東外交を展開した。

 一方で、今年2月、日米首脳会談への影響を避けようと、日本はトランプ氏に擦り寄る行動をとった。ICC職員に経済制裁をかける米大統領令をめぐり、英国やドイツ、カナダなどICC加盟の79カ国・地域が米国の対応を批判する共同声明を出したが、日本は加わらなかった。

 日本外務省幹部は「所長の赤根さんに制裁が及ぶことを避けるための、苦渋の対応だ」と語る。トランプ氏を刺激し、米政権が赤根氏を制裁対象に指定するのを恐れたというわけだ。だが、赤根氏とて、自身に対する制裁の回避よりも、大義を失う日本政府の姿勢に失望しているに違いない。(中略)

 法の支配、多国間主義の擁護者としての立場を米国が放棄しているいま、その大きな受益者である日本が、地域、国際社会で、新たな擁護者の役割を果たし、二つの国際司法機関の確固たる後ろ盾となる。それが、2人の日本人が二つの国際司法機関のトップを務める意味なのではないか。


(参考)(Wikipediaより)

国際刑事警察機構(インターポール):
(ICPO:International Criminal Police Organization)

犯罪捜査や犯人逮捕に携わる各国の警察の連携を図り、各国間の情報の伝達ルートの役割を果たす。

映画・テレビドラマ・漫画などのフィクションでは、全世界を対象に捜査する「国際警察」のような描かれ方をするが、実体はそれ程の大規模な組織ではなく、各国法執行機関の連絡機関・協議体としての性格が強い。
司法警察権は各国の主権事項に属するため、世界中で捜査活動ができる権限を持つ「国際捜査官」は存在せず、捜査をする場合は、その国に要請して許可を得るか、その国の警察機関との合同捜査依頼をしてその国の政府の了承を得る事が原則。ただし、大規模な犯罪や自然災害の際にはIRT (Incident Response Team) が自ら捜査に協力することがある。
最終的に犯罪者の身柄拘束を行なうのは、国家主権上の問題から、その国家の警察である。

 



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