事務屋のひとり言

東京都の事務員のひとり言です。

人文社会系研究スペースとは?(その2)

2005-08-20 | 都立大四方山
院生会から出された要望書は以下のようなものです。
1 当該「研究スペース」ならびに学科管理図書の対外貸出しスペースについて、「人文科学研究科専管スペース」としての立場を貫くべきである。

2 図書バイト院生に対する退職勧告の際に明らかとなった、院生の思想、信条、結社の自由に関わる、図書館の差別的姿勢・発言に対し、教授会として断固として抗議すること。

一方の言い分だけ載せるのもなんなので、図書館側にも聞いてきました。
要約すると、「図書館スペースとしたのは、人文学部の意向である」。
都民開放を学部レベルでできるなら、図書館はいつでも引き下がると言うのです。

ということは、図書館側の理解はどうなっていたのか?
もともと「都民開放」から始まる流れは一緒です。
でも人文には開放するための予算がありません。鍵を閉めるだけでも人がいるわけですから、これは致命的です。しかし傾斜的配分のせいで、現状の研究費の確保もできない状態です。

議論が進む中で、どうも開放の事務作業を「助手にやらせたら?」と言う先生がいたそうです。しかし助手側は、いつ来るかもしれない都民への貸出しや管理を行うことは不可能だと拒否しました。確かに事務員として助手を雇ってるわけじゃないから当然です。

それで出てきたのが、図書館管理とすることで図書館の予算で司書を雇い、開放する案です。
もともと「文系共通スペース」として理解のある場所ですから、図書館が代表して管理することに他の学部の異論はありません。
そういう経緯があって、向かって左を「人文研究スペース」、右を「図書館スペース」として分け、運用が始まったと言うのです。真ん中のパーテーションで仕切られている意味はこんなところにあったんですね。

この経緯を見ると、図書館の悪者扱いは甚だ不本意なことになります。逆に感謝して欲しいぐらいでしょう。

そんな関係でやってきた年配の司書の方は、これまでの司書経験も豊富な方でした。ほとんど書庫と言うより、倉庫状態の人文書庫を見て、これをなんとかしてやろうと思ったらしいです。
学科事務室に管理の仕方の新しい提案や、運用方法に対して意見を言ったのは、そのせいでした。
しかしこれが学部書庫への図書館の介入のように取られてしまい、辞める辞めないの騒ぎになってしまったようです。

法学部や経済学部の図書室の管理は、それぞれの学部で行われてきました。最近は図書館一括管理を望んでいるそうですが、法学部の図書室には専門の助手を置くなど、予算的手当てをしてきて今に至ります。
それなのに人文だけ、何の予算的措置をせずに権利だけ主張するなんて、土台無理な話です。

ただ、「人文研究スペースとしても使用する」点については大学管理本部も了承していたそうです。だったら予算措置もしてくれればいいのに、と思いますよね。
そういう片手落ちなところが、いかにも大学管理本部です。

結局要望書の(1)は、以上の理由から、予算もないまま「じゃあ後は勝手にやってね」と放り出される可能性があるので言えない状況ということになります。

それでは(2)はどうでしょうか?
これは意思疎通の問題ではないか、と言ってました。
どいうことかと言いますと、「開放スペースのアルバイトは院生会の選定に任せる」という理解が図書館にあったためです。
アルバイトをいちいち最初から募集するより、院生会に任せて提出された書類を処理していた方が簡単です。
私が聞いた限り、図書館側は予想以上に引き上げる気満々でしたから、人文の自立管理を促すためにも、院生会に任せることは願ったりかなったりということでした。

にもかかわらず、図書館側が、「院生会と関係が深い」ことを理由に退職勧告をするというのは、全く逆の発想です。
どこかに「言いすぎ」があったか、「認識の間違い」があったかして、こじれてしまったのではないでしょうか?

大学管理本部にいろいろやられてヒイヒイ言っているのは、図書館も同じです。
都立大時代は、図書館長はれっきとした評議会の一員で、商議会(図書の選定や図書館の運営などを議論する学部代表者の会議)の中で事務側の意向を反映していく重要な役職でした。
今、図書館長(センター長)は誰だかご存知でしょうか?

なんと学長兼任です。
教員の影響力を排除する目的だったらしいですが、ご存知の通り学長は週に2、3回来るだけ。来ても本部棟の学長室にしか入りません。つまり図書館には全く来ないのです。
事務側の運営方針を反映するどころか、会議にも出席できず、できた書類に印鑑を押すだけの状態です。これではまともに本の購入も出来ません。(図書館長決済の購入もたくさんあるのです)

如何に「学長を絡ませない」事務手続きをするか、実効性のある事務体系を作るかで、今でも図書館はガタガタとやっています。
そんな状況で図書館が、いきなり開放スペースの管理意識に目覚めたというのは、経緯を見る限り信じられない話なのですが。

この辺は当事者でしかわからない問題もあると思います。(2)の要望についても、教授会側がすぐに動くということは難しいでしょう。

結論として院生会の要望が叶うのは、難しい状況です。あまりヒートアップせず、冷静に対処した方がいいのではないでしょうか?