事務屋のひとり言

東京都の事務員のひとり言です。

人文社会系研究スペースとは?

2005-08-07 | 都立大四方山
理工の方が知らない場所のひとつに、「旧就職資料室」と言う場所があります。
人文棟(おっと今は5号館ですね)1階と法学部(4号館)の間にあるガラス扉の部屋です。

この「旧就職資料室」の使い方をめぐって、今少々問題が起きています。

私の知る限りの経緯を書きましょう。

実は法学部や経済学部には、独自の図書室と共に、机が並んで勉強できるスペースがあります。図書館の勉強スペース(キャレルと呼ばれています)と同じ、というか空調の効きがいい分、よっぽど図書館より勉強しやすい場所です。

この勉強スペースが人文にはありません。実は理工にもないんですが、その代わり実験設備用スペースが広くあります。工学部の実験棟は一時期「サティアン」などと、嫌あな名前で呼ばれていました。

さてこのスペースの考え方は、実は移転当時にまで遡ります。

法学部・経済学部 : 教員研究スペースとして共通図書スペースを確保。
人文学部 : 個々の学科、専攻の「独自書庫」を確保。

つまり今は学生も使ってる法経の勉強スペースは、元は先生のためのスペースでした。移転時には、学生の研究スペースという発想は、全くなかったのです。
しかし時を経て、学生にも解放され、法経は今のような状況になりました。

事態が動いたのは2004年夏ごろです。この頃から、研究費購入図書の開放というのが、盛んに議論されるようになりました。
人文所属の書庫に関して最初の案は、「都民も含めた開放」ということで、完全開放が持ち上がりました。

しかしこれには様々な反対意見が出ました。
先生からは研究活動の障害になるとして。
そして事務側からは、書庫の入退出管理が不可能だとして。

研究費も元は税金だ。開放して何が悪いと言うことは出来たとしても、事務側の反対を覆せる人はいませんでした。
つまり、ただの書庫なのです。もっとはっきり言うと、「倉庫」です。単にそこに本が入ってるだけですね。なにしろ空調管理すらしていませんから。
本来の意味の書庫なら、本が傷まないよう温度湿度の管理は絶対ですが、人文の書庫はそれすらしていません。夏熱く、冬寒い、ただの倉庫です。

オートロックの扉が各階にあり、書庫はその階に独立しています。中に入ってから1階上に行くとか、下に行くとかもできません。専攻独自の図書を保管するために作られてますから、各階の連携なんて考える必要がなかったのです。

ですから本の盗難対策はゼロ。これからやるにしても、それぞれ分断されて両端にあるドアに警報をつけるだけでも、相当な金額がかかるでしょう。

さらに事務側が激しく言ったのは、「事件が起きたらどうするか?」でした。
天井は低く、書棚が並んでいて死角はあっちこっちにあります。書庫ですから、窓は船の窓みたいな小さなものがついてるだけですし、さらに窓と研究室の間には1階から貫く吹き抜けがあります。
ですから書庫で何者かに襲われて叫び声を上げても、誰にも絶対聞こえません。
幸い今まで何も事件はありませんが、起きたら大変です。「お金がないので、対策をしませんでした」では、誰かの首が飛ぶでしょう。

結果、それまでの就職相談室をつぶしてそこを「図書館管理スペース」とし、司書が要望の本を探して持ってきてあげると言う案が出ました。
事務側はこれでも相当非現実的な解決案だと思ったのですが、司書を図書館が手当てする予算がついてしまい、動き出すことになりました。

ここまでが事務側から見た経緯です。

2005年4月から司書が本当にやってきて、図書スペースとなるための整備が始まりました。
しかし図書館がやる気になったとしても、そう簡単に人文書庫の開放なんてできるわけがありません。人法経の事務室では、図書館のお手並み拝見と一歩引いた形になりました。正式ではないにしろ、図書館管理スペースとしての認識が事務室側にできたのはこのためにです。

ところがある日、この旧就職相談室の扉に、「人文・社会系図書室」と張り紙がされました。
まだ共通スペースという理解の法経の先生は怒りました。事務側もびっくりです。
原因は、人文学部院生会が、かねて要求していた「研究スペース」を、この場所に確保するとそういう理解でいたためでした。確かに人文教授会で何度かそんな話は出ていました。しかし「研究スペース」として確保したという結論には至っていなかったようです。

つまり図式はこうです。
○認識
人文院生会 : 念願の研究スペース。
法学部、経済学部 : 書庫開放に向けた図書館管理スペース
事務側 : 書庫開放に向けた<暫定>図書館管理スペース

さらに図書館の司書が院生と衝突。司書が辞める事態が起こります。
事態が俄然きな臭くなってきました。

○学生向けの「研究スペース」に対しての反論
法学部、経済学部 : あそこは就職相談室の頃から、人法経の「共通スペース」である。それに移転時、法経と違い人文は研究スペースを要求していない。
図書館 : 図書館管理スペースであり、人文の研究スペースではない。
事務側 : 図書館は暫定的に管理しているだけなので、図書館スペースという断言はやめて欲しい。

さて、では人文教授会執行部はどうしようと思っていたのか?

人文教授会執行部 : 「研究スペース」を言うと、法・経の反対があるので、まず「人文書庫開放スペース」として確保し、学生利用は「運用で行う」。(もともと法・経が先生用のスペースだったのが、時と共に変わったのと同じで行く)

そして「人文書庫開放スペース」としての利用は、まだ法・経に理解を求めてる最中でした。
でも両学部はなんだかんだ言いながらも、認めると考えられています。
なぜなら、書庫の開放に乗り気でないのは、法も経も一緒だからです。
これを認めないで、「場所のない人文より、場所のある法・経から開放しましょう」なんてことになったら、非常に困ってしまいます。

ですから南雲部長のシナリオは、

①「人文書庫開放スペースとして、法・経を納得させる」
   ↓
②「人文のスペースなので、司書の予算を人文につけてもらい、図書館には出ていただく」
   ↓
③「人文で図書開放スペースを確保し、研究スペースとしても『運用』する」

 こんな感じだったはずです。①は目前。②はちょっと難しいけど、事務側は図書館管理スペースとして認めてないので、もって行き方次第。③は「運用」だから問題なし。

これで事件が起きたり、混乱しなければ良かったんですが、実際事件は起こり、研究スペースの『野望』が前面に出てしまいました。
まず「研究スペース有りき」では、法・経の納得も、書庫開放に絡む図書館の排除も、ままならないでしょう。
これからの舵取りが大変な状況です。

3 コメント

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どこのどなたか知らないが (関係者)
2005-08-08 08:32:37
訳知り顔で、根拠不明の「経緯」を書き連ねられても困る。
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コメントありがとうございました。 (sugi37)
2005-08-09 00:27:08
あくまで事務屋の認識ですので。

関係者さんが教員か学生かわかりませんが、学部間の教員の意見交換は組合周り以外ではあまりないと思います。

事務屋はご存知のように部署的にも1つなので、様々な情報が入ってきます。

ここではその中でも、事務屋の理解と先生の理解、または学生の理解の差が大きい問題に関して、事務側の認識を披露していこうと思っています。
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がんばって続けてください (他大学教員)
2005-09-05 02:48:08
クビ大の一件は他山の石としておおいに注目しております。(クビ大ほどラディカルではないにしても近年運営が迷走している点では国大法人の多くもそう違うものでもありませんし)

(反対派の)教員の発言はいろいろ見聞きする機会がありますが、事務の側から見えたお話を聞けるということは大変貴重な機会だと思っております。

当然のようにクビ大関係者からはさまざまなプレッシャーがあることでしょうが、差し障りのない限りで発信を続けていただければと思う次第です。
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