青森の弁護士須藤のブログ

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民法改正(相続法のつづき)

2019年03月15日 | 民法改正

平成30年7月に改正された相続法の内容の続きです。

3 遺言に関する見直し

については,①自筆証書遺言の方式緩和,②遺言執行者の権限の明確化,③法務局における自筆証書遺言の保管制度が新設されます。

①自筆証書遺言の方式緩和は,自筆でない財産目録(パソコンで作成など)を添付して自筆証書遺言を作成できるようにする(新民法968条)というものです。

遺産がたくさんある人にとっては,とても良い改正となっています。しかも,登記事項証明書の写しでもよいとされていますので,とっても便利になります。

②遺言執行者の権限の明確化は,遺言執行者が遺言内容を実現することを責務とする(新民法1012条),遺言執行者の行為の効果が相続人に帰属する(新民法1015条),遺言執行者は遺言の内容を相続人に通知しなければならない(新民法1007条)とされました。

現行民法では,遺言執行者の責務の内容や,いかなる権限が付与されているのか,また,遺言執行者の法的地位や行為の効果が誰に帰属するのかも明確ではありませんでしたので,これらの点を明らかにしたことになります。

③法務局における自筆証書遺言の保管制度は,遺言者が,遺言書保管官に対して,自己の遺言書を無封の状態で保管申請することができる(遺言書保管法4条1項)とするものです。

この制度により,家庭裁判所の検認手続が不要となり,さらに,遺言書の紛失や隠匿,変造を原因とする争いを回避する仕組みが整備されたといえます。ただし,この制度は,遺言書を形式的に保管するだけですので,公証人が関与することにより法的にも有効な内容の遺言書の作成が可能となっている公正証書遺言と比べると,遺言の内容に基づく紛争を防止できるわけではありません。

 

4 遺留分に関する見直し

については,遺留分減殺請求権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ,受遺者等の請求により,金銭債務の全部または一部の支払いにつき裁判所が期限を与えることができる(新民法1042条~1049条)とされました。

現行民法では,遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生じるとされていたものを改正しました。これにより,最近問題となっている事業承継が進めやすくなりそうです。

 

5 相続の効力に関する見直し

については,法定相続分を超える権利の承継については,対抗要件を備えなければ第三者に対抗することが出来ないようにする(新民法899条の2)とされました。

現行民法では,相続させる旨の遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗できるとされていました。この改正により,登記制度に対する信頼が確保されますし,何よりも遺言の内容を知り得ない第三者の取引の安全を確保できるようになります。

 

6 相続人以外の者の貢献を考慮

については,相続人以外の被相続人の親族が,被相続人の療養看護を行った場合には,一定の要件のもとで,相続人に対して金銭請求することができる制度(新民法1050条)が創設されました。

現行民法では,寄与分は相続人にしか認められていません(現行民法904条の2)。たとえば,相続人の妻が,無償で被相続人(夫の父や母)の療養看護に努めたとしても,寄与分の評価対象とはならず,遺産分割手続において寄与分を主張することが出来ませんでしたので,このような不都合が一定程度解消されることになりますね。

 

このように平成30年7月の相続法改正の内容を確認すると,これまで指摘されていた不都合に対して,現時点で考えられる良い方法が取り入れられていると評価できます。ただし,平成27年2月に法務大臣による諮問があり,その後,中間試案,追加私案,パブリックコメントなどを経て,平成30年7月に成立という経緯を見れば,法律の改正にはかなりの時間がかかるものだと実感させられます。

 


民法改正(相続法)

2019年03月14日 | 民法改正

 

平成30年7月に昭和55年以来の約40年ぶりの大幅な見直しとなる相続法改正法案が可決されました。

改正法は,大きく分けると,

1 配偶者の居住権確保

2 遺産分割などの見直し

3 遺言に関する見直し

4 遺留分に関する見直し

5 相続の効力に関する見直し

6 相続人以外の者の貢献を考慮

の6つに分けられます。大まかな内容について,確認しましょう。

まず,

1 配偶者の居住権確保

については,①短期居住権と,②長期居住権の2種類が新設されます。

①短期居住権とは,配偶者が相続開始時に遺産に属する建物に居住していた場合には,遺産分割が終了するまでの間,無償でその居住建物を使用できるようにする(新民法1037条~1041条関係)というものです。

これは,最高裁平成8年12月17日判決の考え方を元にして,配偶者の居住を確保しようとするものですね。

一方で,②長期居住権とは,配偶者の居住建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用を認める法定の権利を創設し,遺産分割等における選択肢の一つとして,配偶者に居住権を取得させることができるようにする(新民法1028条~1036条)というものです。

現行民法では,配偶者が居住建物の所有権を取得して住み続ける場合には,居住建物の評価額を差し引かれた相続分となってしまうため,預貯金等の居住建物以外の相続財産が減少してしまい,生活に困窮するという大問題がありましたが,このような不都合が大きく改善されることになりますね。

次に,

2 遺産分割などの見直し

については,①持戻し免除の意思表示推定,②遺産分割前の払い戻し,③遺産分割前の遺産処分の不都合是正が新設されます。

①持戻し免除の意思表示推定とは,婚姻期間が20年以上の夫婦間で,居住用不動産の遺贈又は贈与がなされたときは,持ち戻し免除の意思表示があったものと推定し(新民法903条④),被相続人の意思を尊重した遺産分割ができるようにするものです。

対象を居住用不動産に限定し,要件も明確で分かりやすく,高齢配偶者の生活保障にもなるということで良いことだらけのように見えますが,被相続人による「遺贈又は贈与」が要件となりますので,注意が必要です!

②遺産分割前の払い戻しとは,相続された預貯金について,生活費や葬儀費用の支払い,相続債務の弁済に充てられるよう,遺産分割前にも払い戻しが受けられる制度が新設されます(新民法909条の2)。

現行民法では,相続人の誰かが一旦負担しているケースが多かったと思われますが,このような不都合が解消されますね。

③遺産分割前の遺産処分の不都合是正とは,相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合に,計算上生じる不公平を是正する方策を新設する(新民法906条の2)というもので,具体的には,ⅰ共同相続人全員の合意をもって処分された財産が遺産として存在するものとみなして遺産分割を行うことができ,ⅱ処分をした共同相続人に関しては同意を要しないとされています。

相続における使途不明金問題のうち,相続後に共同相続人の一人によって財産処分がなされた場合などに有効です。

今日は,これぐらいで,続きはまた今度にします


民法改正

2019年02月08日 | 民法改正

 平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)が成立しました(同年6月2日公布)。
   民法のうち債権関係の規定(契約等)は,明治29年(1896年)に民法が制定された後,約120年間ほとんど改正がされていませんでした。今回の改正は,民法のうち債権関係の規定について,取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に,社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに,民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたものです。
   今回の改正は,一部の規定を除き,平成32年(2020年)4月1日から施行されます(以上,法務省のホームページより引用http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html)。

ということで,少しずつ民法改正について勉強して行きたいと考えています。

まず気になった点としては,交通事故の損害賠償請求に関連して,改正724条の2によって,これまで3年で消滅時効が完成するとされていたものが,5年と延長されました。被害者にとっては,良い改正になっています。

 

不動産の賃貸借に関連して,賃貸借期間が最長50年へと変更となり(改正604条1項),これまで20年とされたために経済活動上不便だった点がある程度解消されることになります。

また,敷金に関する規定が定められたり(改正622条の2),不動産の賃貸人たる地位の移転に関する判例法理が明文化されたり(改正605条の2),といった点は,これまでの実務に影響を与えるものではありませんね。

ただ,賃貸目的不動産の所有権を移転する場合であっても,賃貸人たる地位を売り主(旧所有者)に留保することが可能となりました(改正605条の2第2項)。要件としては,①賃貸人たる地位の留保の合意,に加えて,②譲渡人・譲受人間の賃貸借契約の締結となっています。世の中には,様々なニーズがあるということですね。

そして,賃貸物の原状回復についても,これまでの判例法理が明文上明らかになりましたので(改正621条),今後は,原状回復に関する紛争が減っていって欲しいものです。

 

2018.9.1札幌の永ちゃんコンサートは,とっても素晴らしかったです~


判例読みますか

2018年01月29日 | 判例




【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和58年(オ)第678号

【判決日付】 昭和62年4月16日

【判示事項】 一 取締役を辞任したが辞任登記未了である者と商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3第1項前段にいう取締役としての責任の有無

       二 取締役を辞任したが辞任登記未了である者が商法14条の類推適用により同法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3第1項前段にいう取締役としての責任を負う場合

【判決要旨】 一 株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、特段の事情がない限り、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3第1項前段にいう取締役として所定の責任を負わないものというべきである。

       二 株式会社の取締役を辞任した者は、登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情がある場合には、商法14条の類推適用により、善意の第三者に対し、当該株式会社の取締役でないことをもって対抗することができない結果、同法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3第1項前段にいう取締役として所定の責任を免れることはできない。

【参照条文】 商法12

       商法14

       商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266の3-1


       主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人河合弘之、同西村國彦、同井上智治、同池永朝昭、同栗宇一樹、同堀裕一の上告理由第一及び第六のうち被上告人打本幸吉、同中山昭、同下清二に関する部分、第二、第四について
 株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの、以下同じ。)二六六条ノ三第一項前段に基づく損害賠償責任を負わないものというべきである(最高裁昭和三三(オ)第三七〇号同三七年八月二八日第三小法廷判決・裁判集民事六二号二七三頁参照)が、右の取締役を辞任した者が、登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し、辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情が存在する場合には、右の取締役を辞任した者は、同法一四条の類推適用により、善意の第三者に対して当該株式会社の取締役でないことをもつて対抗することができない結果、同法二六六条ノ三第一項前段にいう取締役として所定の責任を免れることはできないものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、被上告人打本幸吉、同下清二、同中山昭が、訴外宇野鍍金工業株式会社の代表取締役である訴外宇野登に対し、取締役を辞任する旨の意志表示をした際ないしその前後に、辞任登記の申請をしないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情の存在については、原審においてなんら主張立証のないところである。そうすると、右被上告人らは上告人に対し商法二六六条ノ三第一項前段に基づく損害賠償責任を負うものでないとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、独自の見解に基づき原判決を論難するか、又は判決の結論に影響のない原判決の説示部分の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
 同第一及び第六のうち被上告人田中哲夫に関する部分、第三について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右の事実関係のもとにおいて、被上告人田中哲夫は上告人に対し商法二八〇条、二六六条ノ三第一項前段に基づく損害賠償責任を負わないとした原審の判断は、首肯するに足りる。論旨は、採用することができない。
 同第五について
 上告人の本件損害賠償責任を棄却した原審が過失相殺の点につき審理判断しなかつたのは当然であり、原審に所論の点につき審理不尽の違法は認められない。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官角田禮次郎 裁判官高島益郎 裁判官大内恒夫 裁判官佐藤哲郎 裁判官四ツ谷 巖)


・・
・・・
最高裁は,退任取締役に会社法908条2項の責任を負わせる要件として,「取締役を辞任する旨の意思表示をした際ないしその前後に,辞任登記の申請をしないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情の存在する場合」と限定的に解釈しました。

取締役を退任した際には,内容証明郵便などによって退任登記について直ちに申請するよう意思を明確にして,不実の登記について明示的な承諾があったと言われないようにしましょう!

~事務所のホームページです~
http://www.sto-law-office.com/

~弁護士ドットコムにご依頼者の方から感謝の声を頂きました!ありがとうございます!~


判例読みますか

2017年04月05日 | 判例
【事案の概要】
原告は,もともと被告会社の発行済株式総数8000株のうち,4350株を有する株主で,かつ代表取締役であった。訴外Dは,2350株を有する共同経営者であった。
原告は,昭和52年9月21日,訴外Dに所有株式全部を売り渡した。その際に,原告が代表取締役を辞任し,訴外Dが後任の代表取締役に就任することが取り決められた。
その後,原告は,訴外Dからの売買代金支払いを2回も拒絶したため,訴外Dは口頭の提供をしたうえ,売買代金を法務局へ供託した。
被告会社は,昭和52年10月31日,臨時株主総会を開催し,取締役である原告及び訴外Aを解任し,新たな取締役として訴外B及び訴外C及びを選任した。

原告は,当初,昭和52年10月31日の臨時株主総会の無効確認と取消を求めて提訴しましたが,控訴審になって商法257条1項但書に基づき任期までの役員相当額の損害賠償請求を追加しました。

まず,地裁の判断です。
【事件番号】 福岡地方裁判所判決/昭和53年(ワ)第6号
【判決日付】 昭和55年7月11日
【判示事項】 被告会社の臨時株主総会において,取締役たる原告及び訴外Aを解任し,訴外B及び訴外Cを取締役に選任する旨の決議の無効確認(予備的に取消し)を求めた事案について,原告は,その所有全株式を訴外Dに売り渡したことにより,本件株主総会当時には,すでに被告会社の株主たる地位を失っていたと認め,株主総会の招集が取締役会の決議を経ていなくとも,招集権者である代表取締役によって招集されている以上,株主総会の決議が当然不存在,無効であるということはできないとして,原告の請求をいずれも棄却

次に, 高裁の判断です。
【事件番号】 福岡高等裁判所判決/昭和55年(ネ)第454号、昭和55年(ネ)第572号
【判決日付】 昭和56年6月16日
【判示事項】 控訴人は,持病が悪化したので,被控訴会社の業務から退き療養に専念するため,その有していた被控訴会社の株式を被控訴会社の取締役訴外Dに譲渡し,訴外Dと代表取締役の地位を交替したこと,そして,訴外Dは臨時株主総会において,経営陣の一新を図り控訴人を取締役から解任したことが認められるとし,被控訴会社が控訴人を取締役から解任したのは会社運営上しごく当然のことであるとして,原判決を相当と認めた

最後に,最高裁の判断です。
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和56年(オ)第974号
【判決日付】 昭和57年1月21日
【判示事項】 商法257条1項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえないとされた事例
【判決要旨】 T株式会社の代表取締役であった甲が持病の悪化により療養に専念するため、その有していた右会社の株式を取締役乙に譲渡し、乙と代表取締役の地位を交替し、その後乙が、経営陣の一新を図るため臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、甲を取締役から解任したときは、右解任につき商法二五七条一項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえない。

参考条文
旧商法第257条 取締役ハ何時ニテモ株主総会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得但シ任期ノ定アル場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ其ノ任期ノ満了前ニ之ヲ解任シタルトキハ其ノ取締役ハ会社ニ対シ解任ニ因リテ生ジタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得
1 前項ノ決議ハ第343条ノ規定ニ依ルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ

会社法339条 役員及び会計監査人は,いつでも,株主総会の決議によって解任することができる。
 2 前項の規定により,解任された者は,その解任について正当な理由がある場合を除き,株式会社に対し,解任によって生じた損害の賠償をすることができる。



・・
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取締役の解任については,平成17年改正前の商法では,取締役の地位の安定を図るべく,特別決議が要求されていましたが,会社法では,取締役に対するコントロールを重視して,普通決議に改められました。
2項の損害賠償請求については,平成17年改正前の商法で定められていた「任期ノ定アル場合」の要件が掲げられていないことから,定款又は株主総会による具体的な任期の定めがない場合にも,法定任期(332条,334条,336条,338条)の満了前に正当な理由なく解任された場合には損害賠償請求することができます。

そして,正当な理由とは,役員の職務執行上の不正行為や法令・定款違反行為,心身の故障,職務への著しい不適任(能力の著しい欠如)などが該当するとされています。たとえば,①取締役が故意に会社に対して現実の損害をもたらした事情があるとき,②経営者としての能力に著しく欠けることが明らかな事情があるとき,③重病に罹患したときなど体力的に職務に耐えることが困難なときなどはその例ですが,一方で,経営陣の一新という理由だけで多数派株主が取締役を解任することは問題となる可能性が高いといえます。

本件においては,原告は,持病が悪化したため,共同経営者であった訴外Dに全株式を譲渡して,代表取締役を辞任したようですが,株式譲渡後に何らかの事情(原告の気持ちでしょうか?)が変わったため,本件一連の提訴に至ったものと推測されます。
しかし,原告が株式を全部譲渡してしまえば,原告は株主ではなくなってしまうため,その後譲渡を受けた株主が何をしようと,原告にとっては全く関与できないことになってしまうのです。株主の権利,特に,100%株主の権利は絶大なのです。

事業承継などに伴って株式の譲渡する場合もありますが,株式譲渡の際には,譲渡数や譲渡時期だけではなく,譲渡先についても細心の注意を払う必要があるということになりますね。