青森の弁護士須藤のブログ

主に判例を勉強します 
その他,日々の業務について などなど

判例読みますか

2012年11月02日 | 判例

平成24年9月13日 最高裁第一小法廷判決

事件番号 平成22年(受)第1209号 建物明渡請求事件

【事案】

被上告人が,平成15年7月18日,上告人との間で,「定期建物賃貸借契約書」と題する書面を取り交わし,期間を同日から平成20年7月17日まで,賃料を月額90万円として,本件建物につき,賃貸借契約を締結した。本件契約書には,本件賃貸借には契約の更新がなく,期間の満了により終了する旨の条項がある。

被上告人は,本件賃貸借の締結に先立つ平成15年7月上旬頃,上告人に対し,本件賃貸借の期間を5年とし,本件定期借家条項と同内容の記載をした本件契約書の原案を送付し,上告人は,同原案を検討した。

被上告人は,平成19年7月24日,上告人に対し,本件賃貸借は期間の満了により終了する旨の通知をした。

【原審の判断】

上告人代表者は,本件契約書には本件賃貸借が定期建物賃貸借であり契約の更新がない旨明記されていることを認識していた上,事前に被上告人から本件契約書の原案を送付され,その内容を検討していたこと等に照らすと,更に別個の書面が交付されたとしても本件賃貸借が定期建物賃貸借であることについての上告人の基本的な認識に差が生ずるとはいえないから,本件契約書とは別個独立の書面を交付する必要性は極めて低く,本件定期借家条項を無効とすることは相当でない。

【判旨】

法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃借人になろうとする者に対し,定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了させることを理解させ,当該契約を締結するか否かの意思決定をさせるために十分な情報を提供することのみならず,説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。

以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと,同条2項は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃貸人において,契約書とは別個に,定期建物賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上,その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。そして,紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

したがって,法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

・・

・・・

定期建物賃貸借をするときは,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない(借地借家法38条2項)とされています。

賃借人保護の規定です。

期間が満了すれば契約の更新がないのですから,契約書のほかにも書面で十分に説明しなければ,賃借人の保護が図れないというわけです。

一般論としては,全く理解可能ですが,

本件のように,賃借人が定期賃貸借契約であって契約の更新がないと十分に理解しているようなケースであっても,契約書とは別個の書面での説明がなかったという形式的な理由だけで,賃借人を保護するようです。

定期建物賃貸借だと十分に分かっていながら,書面不備を理由に居座ろうとするような賃借人を保護する必要なんかあるのでしょうか?!

裁判所の常識が世間一般の常識から外れていないことを祈ります

↓↓↓須藤真悟法律事務所のページです↓↓↓

須藤真悟法律事務所 | 青森での交通事故 離婚 借金 相続 労災事故 顧問弁護士 等のご相談は須藤真悟法律事務所 (sto-law-office.com)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする