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判例読みますか

2016年08月18日 | 判例

【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/平成27年(受)第118号

【判決日付】 平成28年6月3日

【事案の概要】
 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人Y1,同Y2及び被上告人は,いずれも亡Aの子である。
 (2) Aは,平成15年5月6日付けで,第1審判決別紙1の遺言書(以下「本件遺言書」という。)を作成した。本件遺言書は,Aが,「家督及び財産はXを家督相続人としてa家を継承させる。」という記載を含む全文,上記日付及び氏名を自書し,その名下にいわゆる花押を書いたものであるが,印章による押印がない。
 (3) Aは,平成15年7月12日,死亡した。Aは,その死亡時に,第1審判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有していた。本件土地につき,Aを所有者とする所有権移転登記がされている。

【争点】
 本件は,被上告人が,本件土地について,主位的に本件遺言書による遺言によってAから遺贈を受けたと主張し,予備的にAとの間で死因贈与契約を締結したと主張して,上告人らに対し,所有権に基づき,所有権移転登記手続を求めるなどしている事案である。
 上記のとおり,Aは,本件遺言書に,印章による押印をせず,花押を書いていたことから,花押を書くことが民法968条1項の押印の要件を満たすか否かが争われている。

【原審】
 原審は,次のとおり判断して,本件遺言書による遺言を有効とし,同遺言により被上告人は本件土地の遺贈を受けたとして,被上告人の請求を認容すべきものとした。
 花押は,文書の作成の真正を担保する役割を担い,印章としての役割も認められており,花押を用いることによって遺言者の同一性及び真意の確保が妨げられるとはいえない。そのような花押の一般的な役割に,a家及びAによる花押の使用状況や本件遺言書におけるAの花押の形状等を合わせ考えると,Aによる花押をもって押印として足りると解したとしても,本件遺言書におけるAの真意の確保に欠けるとはいえない。したがって,本件遺言書におけるAの花押は,民法968条1項の押印の要件を満たす。

【最高裁の判示】
 原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。
 そして,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照),我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。
 以上によれば,花押を書くことは,印章による押印と同視することはできず,民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。


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・・・
(自筆証書遺言)

第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

・・・遺言書を作成する際に必要な「印」について,最高裁は,花押はハンコと同じとは認めない,と判断しました。

花押という言葉をこの判決で初めて知り,そういえば,大河ドラマで,登場人物の誰かが書いていたなぁ・・・と思い出しました
花押(かおう)とは,「署名の下に書く判。初めは名を楷書体で自署したが,次第に草書体で書いた草名となり,さらに様式化したもの」(広辞苑第6版)だそうですが,
皆様は,花押を書くことと,印章による押印が同じ行為だと思いますか?

・・・ハンコは大切に扱いましょう

 

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