棋譜ファイルの再生ソフトはCGobanを使っていた。起動に少し時間がかかるのとUIのJava臭さ以外には特に不満はなく、特に局面の分岐の検証に関してはツリーで分かりやすく管理できることは魅力だった。
最近、棋譜ファイル再生ソフトを人に勧める機会があったので、改めて最近出たよいツールはないか、と探してみたのだが、日本棋院が無料で公開している「Kiin Editor」を見つけた。
私は有料アプリは余り試していないのでアプリ全体の中での比較はできないが、無料としては文句なしの素晴らしいアプリだと思う。
以下、特筆すべき機能について勝手に簡単に説明したい。
この機能に関してはちょっと鳥肌が立つようなエピソードがあったので一つ紹介したい。
10月4日にネットで行われたらしい、ナショナルチームの強化対局として非公式に行われた対局、一力(黒)と張の対局が元ネタ。終盤、黒が13の五の利かしを打って白18の一に受けさせた場面でこの形勢判断機能を使うと、黒が8目半勝ちとリードしている(図1)。

図1:172手目(クリックで拡大)
しかし、ここで黒が左辺のハイがおかしかったらしく、白が中央に一手入れた瞬間に形勢判断を行うとなんと白11.5目勝ちと表示された。

図2:174手目(クリックで拡大)
黒がノゾいた瞬間では、黒が再び1.5目勝と表示されたが、

図3:175手目(クリックで拡大)
白がツイで再び「白11.5目勝ち」。ここで一力は投了したようだ。

図4:176手目、これを見て黒投了(クリックで拡大)
ここで投了する時なのか、私には判定できないし、どう打てばよかったのかと言われても知るすべはないが、少なくとも勝ち負けの判断を1手単位で判断できているケースがあるということだ(注1)。
プロの棋譜を並べる時にも、中盤でこの「形勢判断」機能を使うと的確な状況判断をしてくれるのでとても参考になる。算出のアルゴリズムはわからないが、どこを地とみなすかが明確にわかるこの機能は、自分で打つときの形勢判断の参考にもなりそうだ。
検討モードでは実戦とは違う手を打った時にどうなるかを自由に検討することができる。
編集モードではないので、元の棋譜ファイルを汚すことにはならないというのはささやかながらとても嬉しい仕様だ。こういう仕様は、しっかり棋譜アプリを実用的に使っている人の要望がストレートに反映されたものだろう。
例えば、CGobanで棋譜並べ中に、ふと「こう打ったらどうなってたの?」と感じた時には、その棋譜ファイルに手をつけて棋譜ツリーに新たな分岐を加えるしかない。当然ファイルは編集されてしまう。しかし、Kiin Editorなら、「検討」ボタンを押してそこから自由に検討を加えることができる。アプリのおかげで、ファイルが汚れることもない。布石や定石でプロが手抜きをした際に、もし手抜きを咎めた場合にはどうなるか、というのは本当に簡単に確認できる。攻め合いや生き死にの確認には言うまでもなくぴったりの機能だ。
嬉しいのは、ここで作成した検討図に対しても上記の「形勢判断」機能を利用できるということだ。実戦譜とは違う流れを作って、一段落して「形勢判断」。すると、これが実戦と比較してよいのか悪いのかを判定できる。
一人で研究している際にも客観的な指標が欲しくなるものわけで、一つの参考としては十分過ぎる有難い機能だ。
散々並べて検討しつくして満足したら、「検討終了」ボタンを押せば何事もなかったように元の局面に戻り、検討図はもう跡形もなく消えている。これをデメリットと見る向きもあるかもしれず、今後の課題かもしれない。
検討の結論をファイルに残しておくためには、後で触れる「コメント・参考図」機能を用いることになる。
(長くなったので続く)
■
注1:コンピュータ将棋では、先端の将棋ソフトがトッププロを倒しているというところまで進化してしまっているが、コンピュータ囲碁も9路盤で「電王戦」が行われているようだ。囲碁も近い将来、人間がコンピュータに教えを請うことになるのだろうか、とつい未来に思いを馳せてしまう。
最近、棋譜ファイル再生ソフトを人に勧める機会があったので、改めて最近出たよいツールはないか、と探してみたのだが、日本棋院が無料で公開している「Kiin Editor」を見つけた。
私は有料アプリは余り試していないのでアプリ全体の中での比較はできないが、無料としては文句なしの素晴らしいアプリだと思う。
以下、特筆すべき機能について勝手に簡単に説明したい。
機能1.「形勢判断」
地味に驚かされたのはこの「形勢判断」機能だ。こういう機能は性能が全てなのだが、計算時間ゼロで一瞬で判定結果を出してくれるこの形勢判断はなかなか高性能に思える。もちろん、生き死にの微妙な判定については完璧にできるわけもないのだが、中押しで終わった棋士の対局について、だいたい何目差なのかをわざわざこちらで数えることなく一瞬でほぼ正確に判定してくれるのは助かる。この機能に関してはちょっと鳥肌が立つようなエピソードがあったので一つ紹介したい。
10月4日にネットで行われたらしい、ナショナルチームの強化対局として非公式に行われた対局、一力(黒)と張の対局が元ネタ。終盤、黒が13の五の利かしを打って白18の一に受けさせた場面でこの形勢判断機能を使うと、黒が8目半勝ちとリードしている(図1)。

図1:172手目(クリックで拡大)
しかし、ここで黒が左辺のハイがおかしかったらしく、白が中央に一手入れた瞬間に形勢判断を行うとなんと白11.5目勝ちと表示された。

図2:174手目(クリックで拡大)
黒がノゾいた瞬間では、黒が再び1.5目勝と表示されたが、

図3:175手目(クリックで拡大)
白がツイで再び「白11.5目勝ち」。ここで一力は投了したようだ。

図4:176手目、これを見て黒投了(クリックで拡大)
ここで投了する時なのか、私には判定できないし、どう打てばよかったのかと言われても知るすべはないが、少なくとも勝ち負けの判断を1手単位で判断できているケースがあるということだ(注1)。
プロの棋譜を並べる時にも、中盤でこの「形勢判断」機能を使うと的確な状況判断をしてくれるのでとても参考になる。算出のアルゴリズムはわからないが、どこを地とみなすかが明確にわかるこの機能は、自分で打つときの形勢判断の参考にもなりそうだ。
機能2.「検討」
任意の局面で「検討」ボタンを押すことで、盤の色が変わり検討モードに入る。検討モードでは実戦とは違う手を打った時にどうなるかを自由に検討することができる。
編集モードではないので、元の棋譜ファイルを汚すことにはならないというのはささやかながらとても嬉しい仕様だ。こういう仕様は、しっかり棋譜アプリを実用的に使っている人の要望がストレートに反映されたものだろう。
例えば、CGobanで棋譜並べ中に、ふと「こう打ったらどうなってたの?」と感じた時には、その棋譜ファイルに手をつけて棋譜ツリーに新たな分岐を加えるしかない。当然ファイルは編集されてしまう。しかし、Kiin Editorなら、「検討」ボタンを押してそこから自由に検討を加えることができる。アプリのおかげで、ファイルが汚れることもない。布石や定石でプロが手抜きをした際に、もし手抜きを咎めた場合にはどうなるか、というのは本当に簡単に確認できる。攻め合いや生き死にの確認には言うまでもなくぴったりの機能だ。
嬉しいのは、ここで作成した検討図に対しても上記の「形勢判断」機能を利用できるということだ。実戦譜とは違う流れを作って、一段落して「形勢判断」。すると、これが実戦と比較してよいのか悪いのかを判定できる。
一人で研究している際にも客観的な指標が欲しくなるものわけで、一つの参考としては十分過ぎる有難い機能だ。
散々並べて検討しつくして満足したら、「検討終了」ボタンを押せば何事もなかったように元の局面に戻り、検討図はもう跡形もなく消えている。これをデメリットと見る向きもあるかもしれず、今後の課題かもしれない。
検討の結論をファイルに残しておくためには、後で触れる「コメント・参考図」機能を用いることになる。
(長くなったので続く)
■
注1:コンピュータ将棋では、先端の将棋ソフトがトッププロを倒しているというところまで進化してしまっているが、コンピュータ囲碁も9路盤で「電王戦」が行われているようだ。囲碁も近い将来、人間がコンピュータに教えを請うことになるのだろうか、とつい未来に思いを馳せてしまう。