小学生の頃、父親がガンダムのプラモデルを買ってきてくれたことがあった。しかし、殆ど手を付けることなく放置されたままだった。当時の自分はカラクリとかゲームには関心はあったけど、メカとか機械とかロボットにはそれほど興味を持っていなかった。なんとなく面倒に感じられたんだろうか。キン肉マンのアニメも怖くて見られない程にウブな子供だった。ただ、「ゾイド」は好きだった。接着剤無しで組み立てられてしかも動くカッコいい動物モチーフのマシンには憧れたものだった。難易度的にはプラモデルの方が遥かに上だろうということはなんとなくわかる。プラモデルとゾイドを分けたのはハードルの高さだったのだろうか。
昔は面倒なことは嫌いだったが、社会に揉まれて?だいぶそういうこともむしろ好き好んでやれるようになってきた。ガルパンの影響で、戦車のプラモデルも買ってみようと思った。選んだのはソ連の重戦車KV-2。本編ではあっさり片付けられ、劇場版では大洗のシーサイドホテルを派手に破壊するだけの役割だったが、その砲塔のアンバランスな大きさと破壊力の高さ、そして「ギガント」という通称には不思議と惹かれるものがあった。ちなみに、他の戦車について好みだけで言わせてもらえば、例えばカバさんチームの三突はその攻撃力の高さはともかく、砲塔が回らないのも車高が低いのもあまり惹かれない。あんこうチームのIV号戦車は、軍神みぽりんの能力を遺憾なく引き出した戦車であるにも関わらず、正直何も感じない。マチルダII、チャーチル、シャーマン、ファイアフライ、パーシング…本編でも劇場版でも活躍したこの辺の英米の戦車にも全く食指が伸びない。なんとなく見かけが普通っぽい感じなのは微妙なのだろうか。センチュリオンは劇場版では愛里寿が無双っぷりを示した素晴らしい戦車だが、うーん。いうまでもなくチハとかには関心をもてない。Twitterのフォロワーさんがヘッツァー仕様の38tが萌えだと言っていたが、確かにあの小回りが効きそうな小さな車体は他の戦車達と一線を画する。乗員が生徒会チームというのもポイント高いですかね。
ちなみに、もし次を買うとしたら多分IS-2。なぜソ連寄りなのかは不明。ノンナ寄りなのかもしれない。白い戦車になんとなく魅力を感じている。あとBT-42。何やら品薄になっているようで、果たして僕のガルパン熱が持続している間に入手可能になるのか疑問だが。謎の哲学的美少女ミカに統率されたミッコの気狂いドライビングテクニックとアキの狙撃とで自在に跳躍しパーシングを倒していく戦車の描写は素晴らしかった。継続高校のシーンがあるかないかで劇場版の評価も大分変わりそう、と思える程に、彼女らの活躍は深い印象を残すものとなった。
前置きが長くなったが、そんなわけで戦車のプラモデルを購入した。ハンズで接着剤を購入し、年末休みに入って近所のプラモ屋でニッパーを購入し、購入してから数週間経過した後にようやく制作に着手した。プラモデルについては正直何もわかっていない。どこを接着するべきなのかもわからない。どのくらい時間がかかるのかもわからない。添付されていた作り方の紙と部品を交互に見ながら慎重に進めていくしかない。部品はニッパーを使って切り離すということは、事前に初心者向けのウェブサイトを見て分かっていた。逆に言うと、それくらいしか知らなかった。5年位前に、ヨドバシで見かけた1,000ピースのジグソーパズルの絵柄に一目惚れしてジグソーパズルなんて殆どやったこともないのに衝動買いし、一ヶ月くらいかけてのんびり作り上げたことがあったのだが、それくらいの覚悟だった。
前職は金型加工に関連したシステムを構築していたベンチャー企業だったので、金型と樹脂に関する前提知識程度はあった。部品をみながら、金型の設計不具合とか加工の不具合とか、いろいろ研修でやったなあ、など思い出したりしていた。面白いのは、不要部品が存在しているところだ。要するに使いまわしているというわけなのだろうが、非常に納得できる。また、穴を自分で空けたり、カッターで切り取ったりしなければならない部品もごく僅かながら存在している。確かに穴の有無や出っ張りの有無で金型全体を新規に作ることを考えれば、エンドユーザーに対応してもらう(ただ穴を開けるだけだし)ことで回避するというのは合理的だ。モデラーというのは組み立てと接着と塗装がメインなのかもしれないが、その程度の「加工」はむしろやりたくなる程度の手間だろう。
ニッパーで切り離した部分は、ニッパーが安物なのが問題なのかどうしても白くなってしまう。車体が茶色と緑色を合わせたような色なのでどうしても目立つ。といってもこればかりはどうしようもない。せめてニッパーで部品自体に傷を付けないように注意して扱う。しかし最近老眼気味なのか、近くのものが見えづらくなってきていてそんなところでも苦労させられた。まだギリでプラモデルはいけそうだというのが完成させた時の感想だが、とにかく細かい部品が多く、器用さ、注意深さは必須である。また、どこを見ても説明が十分でないところも僅かながらあるので、そこは自分で補うことになる。
ディテールは重要だ。なんとなく見た目だけできれば…というものでもない。完成品のモデルが存在する限り、そこからひとつの部品が欠けていたとしても制作者にとってはそれは遺恨となる。それは「この戦車にはこれがなくてはダメなんだ」というミリオタ的拘りとは全く異なり、純粋にプラモデル対自分という構図における問題であり、他者はこの拘りには全く無縁で、かつ無意味である。
接着剤は思った以上に強力な接着力を持っていて、簡単に接着できるので上手く行くととても気持ちいい。しかし、みるみるうちに乾いてしまうので「手早く適量を適切な対象面に塗りつけ、手早く部品と部品とを正しい形で接着させる」ことが必要になる。ここのスキルが、出来上がりを分けるところだろう。適切にハケで対象に塗りつけることができるか。また、接着面は2つある(部品Aと部品Bの接着には部品Aのある面(1)と部品Bのある面(2)を付けることになる)が、(1)と(2)のどちらに接着剤を塗るべきなのかの判断ができるか。タラタラしてると乾いてしまって接着力が落ち、部品が取れてしまう、接着剤を付け過ぎると溢れてディテールにケチが付く。などなど。この辺りは器用さの総合力が問われる。
塗装を考えなければ、以上を踏まえれば単純作業の繰り返しでなんとかなってしまうらしい。多分少し慣れてくれば、2時間程度あれば組み立てられてしまうのではないか。塗装を入れると全然違ってくるだろうから、余り意味がない指標かもしれないけど。つまり、組み立てを完成させるという基準だけで満足しようとすると、思ったより簡単過ぎて手応えに欠ける。やはりプラモデルをやるならリアルな塗装なのだろうか。
完成した戦車は一切塗装を施したりデカールを貼り付けたりしなくてもそれなりに迫力がある。履帯もキュラキュラ動くし、時々スプロケットから履帯が外れるのもなんとなくリアリティがあってむしろ良い。戦車の構造を知ったことには全くならないと思うし、結局どこに乗員が乗ってどのように作業をしているのかも全くわからないままだが、ホイールの種類や数、外装のディテールに関してはかなりこれまでとは違った視線で戦車を観ることができるようになりそうだ。そして、なまじリアルなだけにいかにもプラモデル的な、パーツを切り離す時の樹脂の歪みや色の変化、接着面の微妙なズレやその消すことが難しいラインが逆に際立ってくる意味はあるだろう。
そんなわけで、意外と拍子抜けながらもある程度の満足感は得られただろうか。さて、この戦車、どうすればいいだろう…。もう飾る場所がないぞ…。^^;