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BeansBurntToGems

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アナと雪の女王(ネタバレ注意)

2014-04-13 | 映画
話題になっていたし、予告のLet It Goの素晴らしい歌と映像美に一目ぼれしていたのとで観てきました。

あらすじ


雪と氷を自在に操る魔法を何故か幼少時より身につけていた王の娘エルサは、妹のアナと毎日その魔法を使って無邪気に仲良く遊んでいた。しかしうっかりその力でアナを傷つけてしまってからは、危険なその力をひた隠しにし、亡き王の後を継ぐ戴冠式の日までアナと遊ぶこともなく、一人部屋に引きこもっていた。
夏の戴冠式の日、アナは城下町で他国のハンス王子に出会った。似たもの同士の二人は惹かれあい、その日のうちに婚約してしまう。そんなアナに苛立ったエルサは、ついその魔法の力を公衆の面前で発揮してしまう。エルサを魔女と恐れる民衆から逃れるため、エルサは山へ逃げ込んだが、その巨大な力は、エルサ自身も知らないうちに国全体を冬に変えてしまった。
エルサは誰も目の届かない山の上で、これまで隠してきた自分の持つ力を思う存分に引き出し、一瞬で巨大な氷の美しい城を作り上げると、再びその中に引きこもってしまった。
アナは、夏を取り戻すためにエルサに会いに山へ向かった。途中で氷職人のクリストフ、トナカイのスヴェン、雪だるまのオラフに出会い、力を合わせてエルサの城に辿りつく。しかしエルサはそんなアナを拒否して、アナの胸に氷の魔法をかけた上に、氷の巨人を生み出してアナ達を追い払ってしまう。
一方、アナと婚約したハンス王子は、女王(エルサ)と王女(アナ)を欠いた国で臨時で国民のために指揮をとっていたが、アナが乗っていった馬が単独で帰ってきたのを見て、アナを救うために兵士を率いて山に向かい、城へたどり着いた。エルサは自分を魔女として殺そうとした兵士との戦いの中で気を失い、ハンスはエルサを城に連れ戻した。
エルサの氷の巨人の追跡からなんとか逃げ出したアナだが、エルサにかけられた「真実の愛」によってのみ解くことのできる魔法はアナの体を弱らせていた。クリストフは魔法の力のために次第に弱っていくアナを婚約者のいる城まで送り届けると、自分は山に戻ってしまう。
ハンスに会えたアナは、キスをしてほしいと訴えるが、ハンスはこの国の王位を狙ってアナに近づいただけであり、ハンスは弱ったアナを冷たく部屋に放置する。
一旦は山に戻ろうとしたクリストフだったが、アナの異変を察知して再び城を目指し、アナはそんなクリストフに気づいてオラフの助けを得て城から抜け出す。
ハンスに城に連れ戻されたエルサは牢獄から逃げ出そうとしたが、ハンスはエルサを殺そうとする。振り上げた剣の下に、アナが飛び出して身を挺してエルサを守ろうとした。その瞬間、アナの体を蝕んでいた氷の魔法がアナの体を全て硬い氷に変えてしまった。
変わり果てたアナを抱きしめて号泣したエルサ。その涙が氷の像と化したアナを元の姿に戻した。エルサのアナを思う心が真実の愛だったのだ。愛の力で氷の魔法を制御できることに気づいたエルサは、冬となり雪に覆われていた国を全て元の通りに戻した。エルサの力を恐れていた国民もそんなエルサの力を受け入れ、エルサは再び国の女王として君臨することになったのだった。めでたしめでたし。

感想


とにかくCGで書き込まれた氷と雪が美しい。CGの表現力を存分に生かした演出はストーリー抜きに見応えがあるし、ミュージカル的なこの作品にはいくつも登場人物が歌を歌うシーンが現れるがその曲も歌も素晴らしく、それだけのためにこの映画を観に映画館に足を運ぶ価値があると言ってもいいかもしれない。
ただストーリー的には違和感を覚えたところがあった。

(つづく)






ゼロ・グラビティ(ネタバレ注意)

2014-01-02 | 映画
お正月休みに家族で観てきたのですが、いろんな意味で面白い映画でした。

小さくて濃密な作品

2人の宇宙飛行士が船外活動中のトラブルで帰還困難になるという流れなのですが、登場人物はなんとこの2人だけ。一人、序盤に犠牲になる宇宙飛行士がいるのですが、ラストのスタッフロールでキャストに登場していなかったのでCGではないでしょうか?そして舞台は、美しい地球を背景に浮かぶ宇宙船と、宇宙。ただそれだけで最後まで他の舞台が登場することは一切ありません。その上上映時間は91分と短めで、ある意味こぢんまりした作品のように思えるかもしれない。しかし観客は終始作品に引き込まれて緊張の解ける瞬間がない。濃密な作品です。

無重力状態

何がリアルで何がリアルでないか、宇宙に行ったこともない人たちにわかるはずはないのだけれど、少なくともこの作品については胡散臭い描写は皆無です。もし本作品を実際の宇宙飛行士が観たらどう感じるのかはちょっと興味があるけれども、重力(gravity)をタイトルに据えるだけあって、宇宙遊泳や宇宙船の動きなど、無重力状態における物の振る舞いを惜しみなく見せてくれます。その完成度の高さは、3人の宇宙飛行士が船外活動を行う冒頭のシーンをみるだけですぐに気付かされるはず。こればかりは、百聞は一見に如かず。現代の科学技術がアートとして昇華された形を味わうことができるでしょう。

演出

最近はいろんな映画が3Dで作成されているようですし、例えば「パシフィック・リム」ではあの巨大ロボの迫力を見事に表現していましたが、この映画の無重力状態の浮遊感を表現する手段として3Dはまさにこれ以外ないという唯一の手法と思います。スペースデブリが猛スピードで襲いかかってくるシーンは、もはや映画ではなくディズニーランドのアトラクションに乗っているかのようにスリリング。通常の映画では登場人物に感情移入するということは少なくないですが、あくまで映画とそれをみている観客は明確に区別されています。一方本作品においては、すべての照明を落として暗闇に包まれたシアターにおいて、観客は映画空間と一体化しているかのような錯覚にとらわれます。映画内では宇宙飛行士が地上と交信するシーンや、思い出を語るシーンなどが沢山ありますが、前述したように、それらのシーンをこの作品が直接描くことは一切ありません。ストイックなまでに宇宙空間のみ。観客は息をつく余裕もなく、否応なしに宇宙内の孤独な漂流を強いられることになるのです。この映画をたとえば金曜ロードショー等でテレビで放映された場合、映画の大事な魅力の一つが失われてしまうのではないかと思います。

生きるということ

最近思うようになったのは、映画というのは現代人が直接意識する機会が激減したであろう「死」を意識させるための装置として機能しているのでは、ということです。絶体絶命の状態から生還を目指して必死にもがく主人公の姿に自分を重ね合わせて、人は普段の生活では考えることの少ない死について思いを巡らせるのです。ここだけはネタバレしませんが、絶体絶命の状態に陥った登場人物の前に信じられない出来事が起こり、これをきっかけに主人公は方針を転換することになるのですが、この流れは本当に感動的です。そしてライアンはこう呟くのです。
「選択肢は2つ。無事地球に生還できるか、10分後に焼け死ぬか。どちらにしても最高の旅だ」
自分はプリキュア好きだけあって、前向きな姿勢に心から憧れている人間なので、こういうポジティブなセリフは大好きでとても印象に残りました。ありがちとはいえ、グッと来ます。

Pixar's 22 Rules(2)

2013-09-24 | 映画
前回の続きです。

#9: When you’re stuck, make a list of what WOULDN’T happen next. Lots of times the material to get you unstuck will show up.


(行き詰まったら、「次に絶対起こってはいけないこと」リストを作ろう。行き詰まりから抜け出させてくれるものが現れるはず。)

物語の展開を作っていくうえで、次どうすればいいのか行き詰まった時は、逆の方向(消去法)で考えてみるということでしょうか。ちなみに英語で消去法は elimination (method)というらしい。

#10: Pull apart the stories you like. What you like in them is a part of you; you’ve got to recognize it before you can use it.


(気に入ってる物語を検証しよう。その物語の中で気に入っているものはあなたの一部だ。そのことを認識しなければ、それを使うことはできない。)

客観的に評価できるようにならない限り、それがどう観られるかを判断することができない。自分が気に入っているものというのはそういう罠がある。自分の頭で無意識的に補完し、その上で対象に触れているとしたら、言わばフィルターがかけられているようなものだ。もっといえば「色眼鏡」であり、「偏見」である。もしかすると、その偏見が致命的な欠陥を見過ごさせているかもしれない。
色眼鏡を外して、ありのままの対象を観ることができたとき、初めてそれを素材として物語に組み込むことができるようになるのだ。

pull apart (誤りを発見するために)分析する

#11: Putting it on paper lets you start fixing it. If it stays in your head, a perfect idea, you’ll never share it with anyone.


(紙に書き出すことで、精確に固定化させることができる。完璧なアイデアでも、頭の中にあるだけでは誰とも共有することはできない。)

誰しも、表現のプロセスを通過して作品を作っている。そして、その過程で、自分の考えの誤りに気づいたり頭の中で描いたこととの相違に気づくことが多々あるだろう。ここでは恐らく、それよりもずっと以前の話であろう。チーム製作であろうと個人の作品であろうと、誰かと共有することを経て作品になるのかもしれない。

#12: Discount the 1st thing that comes to mind. And the 2nd, 3rd, 4th, 5th – get the obvious out of the way. Surprise yourself.


(最初に思いついた事を捨ててしまおう。2番目、3番目、4番目も、5番目も。すぐに思いつくことは捨ててしまおう。そうして自分自身を驚かせよう。)

簡単に思いつくことは全て捨ててしまうということ。当初は自分自身でも考えもしなかったアイデアを捻り出すことになる。プロの作家がそのように作品を作っているのであれば、視聴者の「読み」をことごとくいい意味で裏切る、驚きに満ちた展開ということになろう。プロ自身が驚いているのだから。

#13: Give your characters opinions. Passive/malleable might seem likable to you as you write, but it’s poison to the audience.


(登場人物に意見を言わせよう。作品を書いているときは、(作者の考えを)受動的に受け入れる従順さが好ましいと感じられるかもしれない。しかしそれは観客にとっては害悪だ。)

有名RPGであるドラゴンクエストでは、主人公は一言も喋らなかった。なぜなら主人公はプレイヤーなのだから。勝手に動いては困る。しかし物語においては、主人公は主人公なのだ。積極的に意見を言わせることが、逆に感情移入でき、共感できる、人間らしいキャラクターとなる。

#14: Why must you tell THIS story? What’s the belief burning within you that your story feeds off of? That’s the heart of it.


(なぜ「この」物語でなければならない?その物語を生み出している情熱は何?それこそが物語の根幹だ。)

代替品でもいい、というのであれば、その物語自体には価値はないということになる。代わりが効かない要素。他の物語に変えたら失われてしまうもの。それは何かを見極めなければならない。そして、その代替の効かない要素をできる限りフィーチャーしてやるべきだろう。

#15: If you were your character, in this situation, how would you feel? Honesty lends credibility to unbelievable situations.


(あなたが登場人物だったら、その場面でどう感じるだろうか?正直な気持ちに従って書くことで、ありえないシチュエーションにも真実味が生まれる。)

正直であることは難しい。そして、登場人物の立場に立って想像することはそれ以上に難しい。登場人物は予め決まった展開にしたがって動くのではなく、その世界の中で生きている。そうでなければ途端に胡散臭く、不自然で、納得いかず、共感もできない物語になるだろう。私は物語を書いたことはないが、完全に創作の物語を作るというのは、自分の想定する展開と登場人物の行動が一致していなければならない。それって本当に難しそうだ。

To be continued...

Pixar's 22 Rules(1)

2013-09-19 | 映画
「ピクサーが作品を作る際に大事にしている22のルール」海外の反応を見て感銘を受けたので、自分なりの訳や解釈を追加しつつメモ代わりに書いておきます。
2、3回に分けて書く予定。

ちなみに、下の英文にはa character を受けて代名詞 they を使っているケースがいくつか見受けられますが、こういうことらしいです。自分は受験英語はそこそこがんばったクチですけど知らなかったのでびっくり。

#1: You admire a character for trying more than for their successes.


(キャラクターの成功より挑戦を評価しよう。)
成功しちゃいけないってわけじゃないですが、成功が挑戦によって勝ち取られたものでなければ意味がない。成功すればいいってものでもない。
ここでもいきなり、a characterがtheirで受けられてます。

#2: You gotta keep in mind what’s interesting to you as an audience, not what’s fun to do as a writer. They can be v. different.


(「物書きとして楽しい」ではなく、「観客として面白い」ものであることを留意すべき。物書きとしての面白さと観客としての楽しさは全く違うことがある。)

常に基準を一般大衆目線に置く事。マニアックな楽しみってのは間違いなくあるけど、それがそのままの形で一般受けすることはない。

#3: Trying for theme is important, but you won’t see what the story is actually about til you’re at the end of it. Now rewrite.


(主題を追求するのは不可欠だ。しかし、実際その物語が何を語っているかは完成させるまではわからない。)
※ try for~:~を獲得しようとする

あるテーマに基づいて作品を作っていたはずが、出来上がった作品はむしろ異なるテーマを訴えかけているかもしれない。それは実際書き上げてみるまではわからないものだと。まさに経験が教えてくれることですね。そうなったら、書き直せばいい。別に失敗ではない。

#4: Once upon a time there was ___. Every day, ___. One day ___. Because of that, ___. Because of that, ___. Until finally ___.


(昔、あるところに(a)__がいました。毎日、(b)__でした。ある日、(c)__ということがありました。その結果、(d)__になりました。(d)__の結果、(e)__になりました。ついに、(f)__となりました。)

あるきっかけによって、(連鎖的な反応がおこり、)これまでとは違う世界に変わったということ。(b)は(f)となったということ。そういう物語を書け、ということ。
語り継がれてきた「昔話」や「おとぎ話」のフォーマットは偉大。なぜ語り継がれてきたか?それは誰もがわかりやすく、誰もが面白く感じたから。普遍的な感動というものがそこにはある。

#5: Simplify. Focus. Combine characters. Hop over detours. You’ll feel like you’re losing valuable stuff but it sets you free.


(シンプルにしよう。集中させよう。登場人物は増やさず、複数の役割をひとつのキャラクターに持たせてしまおう。回り道はショートカットしよう。大事なところを削ってしまっているような気分になるだろう。しかし、シンプルにすることで、作者は自由になれる。)

何も考えずに美味しい要素をがんがん詰め込むことは、ぱっと見は派手で目立つものができるかもしれない。しかし普通に考えれば、与えられている時間の中でそのように要素を増やすことは制約を増やすことに他ならない。そして制約を増やすことはストーリーを非常に困難にする。その制約の中でストーリーをひねり出すことが、果たして本当に求められていることなのだろうか?
「プリキュアのジレンマ」を思わずにはいられないです。「玩具を売るためには、プリキュアを増やさなければならない。しかしプリキュアを増やすと、1人1人のキャラクターとストーリーを深められなくなる。」1話30分の制約の中で、プリキュアを4人も5人も登場させて、よくやってると思います。ちなみに筆者はプリキュア大好きです。

#6: What is your character good at, comfortable with? Throw the polar opposite at them. Challenge them. How do they deal?


(登場人物の得意なことは?登場人物はどうすれば気持ちよくなるだろう? その反対のものごとを、登場人物に投げつけよう。彼らを試そう。さて、そのとき、彼らはどう対応するだろう?)

そこに、ドラマが生まれるわけですね!!

#7: Come up with your ending before you figure out your middle. Seriously. Endings are hard, get yours working up front.


(中盤よりもラストを先に考えよう。ラストは難しい。前もって用意しておこう。)

それを怠った結果が「山無し、オチ無し、意味無し」になる、と。
「ラストって大事なんだなあ。」というのが最初の印象。日本にも、「終わりよければ全てよし」という諺はありますが、あまり実感したことがない。どういうことなんだろう。

come up with~ ~を思いつく、考えだす
figure out~ ~であるとわかる
get~up front ~を前もって用意する

#8: Finish your story, let go even if it’s not perfect. In an ideal world you have both, but move on. Do better next time.


(完全でなくても物語を完成させてしまおう。理想では完成と完全は両立しうるかもしれないが、先に進もう。次にもっと上手くやればいい。)

現実は厳しい。理想を追い求めていたら、いつまでたっても完成しない。しかし「次 next time がある」。この「次がある」ことの認識は、案外対象に入れこんでいる時には忘れてしまいがちになるのではないか。大抵、「もう、次はないんだ」という悲壮な覚悟で取り組んでいるクリエイターは少なくないのかもしれない。そう考えてみると、この8番目のアドバイスは、「楽天的にやれ」という意味なのか。

To be continued...


ラルフが壊したもの(シュガー・ラッシュ所感)

2013-09-16 | 映画
ディズニーやピクサーのCGアニメに触れたのは、このシュガー・ラッシュが初めてだった。トイストーリーのシリーズが大人気だということは噂に聞いてはいたが、これまで全く観た事はなかった。観終わって、僕は茫然としていた。「…クールジャパンってなんだったんだろう」。日本にはアニメがあるとナイーブに信じていた。その自信はあっさり崩れ落ちた。それ程の衝撃だった。

CG技術だけとってみてもそれを思う。この美しいグラフィック、違和感を感じさせない自然な動作とCGならではの滑らかさの融合。「驚愕」の一語に尽きる。
プリキュアEDのCGダンスや3Dシアターのクオリティに誇らしさを感じていたのは何だったんだろう。アメリカはそんなところとうの昔に通った道だったのではないか。
確かにフルCGとは違う、繊細で優しいキャラクターの表情を表現する日本のCGアニメ技術には独自性があるのかもしれないし、プリキュアのような可愛らしさを持つキャラは恐らくアジア人独自のもので、作品として高いクオリティで完成させるのは、現状、アジア諸国の中でも日本にしかできない。しかし実際この映画を通じて感じたのは、CGアニメの技術やキャラのビジュアル的な魅力よりも根本的なところだ。
アニメに関しては、僕は録画だけは週6、7作品程しているが、大概積んでしまっている。アニメオタクではないどころか、(プリキュア以外)特に愛着があるわけでもない。アニメに関する知識など平均にも劣るレベルだと自覚している。週何十本もTV放映され、四半期に一度入れ替わっている。まさに大量生産。しかし、自分の場合、失礼ながら5分眺めるだけでもう続きを観る気が起こらない作品ばかりだ。恐らく、老若男女誰しも観て楽しめるものはその中に1本あるかないか、いや、1本あれば素晴らしいという程度だと想像している。1年に数百本も製作される量産型のアニメとディズニーが巨額の資金を注ぎ込んだ作品を直接比べようというわけではない。いいたいのは、そんな自分がすっかり引き込まれてしまう展開、スリル、スピード感、迫力、美しさ、目を離せない面白さがこの海外製のCGアニメーション映画には紛れもなく存在していたということだ。

実はシュガー・ラッシュを観る前に、ちょうど先週の金曜日にDVD、BDが発売されたばかりの「ドラゴンボールZ~神と神~」も観ていた。アニメのドラゴンボールZが始まったのは確か小学5、6年生の頃だったと思うが、ちょうどサイヤ人来襲の頃のドラゴンボールは本当に面白く、毎週のジャンプを心待ちにしていた記憶がある。私がドラゴンボールから離れてもう20年近く経つことになるが、その間にドラゴンボールは世界のアニメになっていた。それだけに新作の報には驚き、期待してDVDをレンタルした。
ファンのツボを突いたマニアックな要素や、懐かしい登場人物がモブながらも総出演というサービスは嬉しくはあったし、適度に肩の力が抜けた雰囲気で、軽いギャグが盛り込まれる「無印のドラゴンボール」のノリがいい形で取り入れられていた。息を呑んで毎週の展開を追っていた、小学生の頃に戻ったような気持ちになった。決して期待を裏切る作品ではなかった。しかし一方で、新しい感動を与える程のエネルギーは感じられなかった。ファン向けの作品であり、アニメに関心のない人がリピートして観る作品にはなりえないだろう。

シュガー・ラッシュもまた、偶然にも、私が小中学生の頃に親しんだゲームのキャラクターが登場するアニメであり、レトロゲームに対する愛情と懐古、ゲームという文化全体に対するリスペクトをこれでもかといわんばかりに感じるアニメである。しかし、シュガー・ラッシュの内容の詳細についてはここでは書かない。その飽きさせない展開、キャラクターの魅力と個性を浮き彫りにする台詞とビジュアル、巧みな伏線、無駄のない構成。全ての要素が完璧に統合されていて、私の感情をダイレクトに揺さぶってきた。こんな凄いアニメ作品が、日本にどれだけあるというのか?僕が知る限りでは唯一戦えるのはジブリくらいしかないのではないか。エヴァでさえ、単品の映像作品として観たときにどこまで太刀打ちできるものか。

シュガー・ラッシュの原題は"Wreck-It Ralph"である。Felixが主役の、"Fix-It Felix"というゲームタイトルと対になっている。アメリカらしいシャレの利いたいいタイトルだと思う。ラルフはWreckすることでヴァネロペとその世界を救ったが、完全な副作用として、彼は私の自国の文化についての自信までWreckしてしまったようだ。私に何もできないことはわかってはいるが、シュガー・ラッシュを観た後、私はこの意味不明な戸惑いの中に置かれている。