Y先生 「ヤバイっすね。全然盛り上がってないですよ。向こうのテーブル。」
sox 「・・・だから?」
Y先生 「いや僕、幹事として盛り上げないといけないかなって・・・。」
sox 「・・・肉に集中しろ。」
Y先生 「はい!?」
sox 「今、目の前にある肉のことだけを考えてればいい!肉なんだから!!」
Y先生 「あー・・・そーですよね。でも・・・。」
sox 「肉!!」
Y先生 「・・・。」
ここまで俺が燃えてるのは、別に「焼肉だけに!」という洒落を言いたかったからではない。本当のことを言うと今日はそんなに喰うつもりではなかった。実は・・・牛肉は苦手なのだ。
子供の頃、仕事が忙しくて構ってやれなかった償いとして、親が毎週金曜日必ずステーキを焼いてくれた。親にしてみれば苦しい家計の中で最大限の贅沢をさせてやったつもりだろう。しかし食事の準備だけ済ますと親はさっさと店に戻って行く。兄は塾で帰りは遅い。
ひとり暗い部屋で「ザンボット3」を観ながら喰うステーキの侘しさよ。
その記憶のせいか、牛肉は好きではない。すき焼きなんか、美味いと思って喰ったことがない。
だから今日は食べ放題と聞かされてても昼はシッカリ喰った。間を持たせるためにやめていたタバコも予め用意しておいた。しかし・・・
店が俺のハートに火をつけた。
本来今日の飲み会は、俺とY先生が幹事役だったのである。しかし「2人でやると混乱するから」という理由でY先生ひとりにやってもらうことにした。彼は物凄く慎重に下調べし、予約やお金の計算など完璧にやっていた。
しかしいざ店に行くと・・・話が違うのだ。割引クーポンは使えないとか食べ放題ではないとか。しかもコッチが間違ってるような言い種なのである。
「グズグズ言わんと肉だけ持って来い!!」
と叫びそうになったが・・・結局店の方が折れた。全てこちらの要求は呑まれた。しかし俺の怒りは収まらない。
「いや~soxさんテンション上がってますね~。肉でテンション上がる人って好きですよ!!」
・・・
・・・
・・・無理して上げたんだよ!Y先生!!
「なめやがって・・・。」
これは絶対に元を取らねばならない。絶対に負けられない闘いがここにはある。俺は肉という肉を網の上に乗せ、焼ける前に喰った。ハサミで切らなければならない肉の固まりも手掴みで喰った。肉目的だったら当然スルーすべきご飯も2杯喰った。
しかしそこまでだった。ハイペースで喰いまくったせいか、二皿目の肉盛がまだ残ってる段階で俺の手は完全に止まった。2杯目のご飯の残りを「山芋鉄板」かけて流し込むのが精一杯だった。
もしかしたら最初のゴタゴタも、ペースを乱れさせるための店側の策略だったのだろうか?
最後には敗北感と食べられなかった肉だけが残った。もう2度とこの店に来ることはないだろう。
ただ一言だけ・・・
負け惜しみになるかもしれないが、店に一言言わせてくれ・・・。
「あんたの店、肉よりもサイドメニューの方が美味いよ!!」
ゴボウスティックと山芋鉄板の美味いこと美味いこと
いっそ居酒屋にでもなってしまえばいいのに!!