池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

ショパン「スケルツォ第4番」

2007-12-20 | 弾いたピアノ曲

スケルツォには、ゆったりとした中間部以外、伴奏型が存在しない。伴奏など入り込む余地がないほど速いから。
ショパンの「スケルツォ第4番」を暗譜している。第1級のピアノ曲だ。
楽譜の見た目は音も少なく簡潔。しかし目が眩む速さで、風のように軽く弾き切らねばならない。一つ一つの小節は、アニメーションの一コマ一コマのようなものだ。

受精卵が細胞分裂を始めるような、静かな開始。
その後は意表を突かれることの連続で、わくわくする。モーツァルトも意表を突く天才だが、その何倍も!
平明なものが突如跳ねまわることで意表を突かれ、変化を予測させるものが変化せず、これでもかと何度も反復するのもまた、「裏の裏」という意味で驚嘆する。
考えられる限りの色彩、音の質感が次々と噴出し、層が幾重にも重なり、深みへ導き…最後はすべての音が歓喜に耐えきれず、一斉にさざめき震えだす。

近、現代になると、ピアノの五線が、3段、4段、5段…と増えるが、これは邪道だな。
ピアノ本来の魅力を捨て、オーケストラの亜流に堕してしまった。どんどん音を塗り重ね、どんどんどす黒い響きにしてしまった。
ショパンの様には、だれも書くことが出来なかったから。
音を書き加えることで新しさを出すのなら誰にでもできる。ブラームスもラフマニノフも、ショパンの前では凡人か。

ロマン主義の重心は、喜劇よりも悲劇の方に傾く。
暗いスケルツォを3つ書いて、しかし最後に到達したのは明るく透明な第4番。
シ・ド#・ソ#・ド#・シ…回文のモチーフ。「ピアノの詩人」の面目躍如。



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