池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

フルート・オケのリハ:全3回

2008-01-05 | 作品発表・プログラム

12月26日、「日本フルートフェスティバルin東京」フルート・オケのリハーサル初日。高輪のNHK交響楽団練習所にて。
都営浅草線「泉岳寺」駅から徒歩5分。辺りは寺や大使館が多く、N響練習所の向かいにも白亜の宮殿と見まごう陽寿院がある。
午後5時10分から1時間、拙作"Naissances"の予定。その前に指揮者の山下氏とコントラバス・フルートの配置について打ち合わせをしたい、とフルート協会の方から電話があり、少し早めに到着した。

僕はスコアに、コントラバス・フルートを最前列中央に配置するよう指定したが、それでは後ろの奏者が指揮者を見られないとの事。
確かに指揮者の目の前には、6本の竹藪とひと際大きな4の字のダブル・コントラバス・フルート、それを操るオジサマたちが立ちはだかっていた。
それでもスコアの指定通りにやってみようと、一旦はその配置でやって頂いたが、やはり後ろの奏者から苦情が出た。しかし音のバランスは、コントラバス・フルートが最前列にある方が良い。
「指揮が見えなくては練習にならない」とマエストロが仰り、取りあえずコントラバス・フルートを最前列のまま左右に分けた。次回のリハでは、隅の最前列にまとめて配置してみることになった。
ピッコロの配置についても、スコアに指定した最後列では指揮が伝わり難く、細かい不規則な動きの場面では合いにくいのでは、と懸念を抱かれたが、こちらは大丈夫そうだった。

プロ・アマ混合と聞いていたので、アマチュアには難しいかも知れない、と思っていたが、拙作の演奏者は143名全員プロだった。
リハーサルの演奏も最初からテンポ通り。回を重ねるごとにどんどん良くなっていった。
フルートという楽器が本来持っている特徴は、100人以上の大合奏になったとしても、別の生き物のように変化することは無いのだと感じた。僕はその点で、やや過大な期待をしていたかも知れない。
リハはあと2回。今日はソリストの欠席者もいたし、次回のリハでは更に良くなるはず。

1月5日、フルート・オケのリハーサル2日目、板橋区立成増地域センター・アクトホールにて。大オーケストラが丁度すっぽり入る、平土間の集会場。
コントラバス・フルートは全員、右側の最前列に並ぶ配置に改められた(コントラバス・フルート9人、ダブル・コントラバス・フルート1人。写真下、右から2つ目がダブル・コントラバス・フルート)。考えてみれば、低音は物理的に定位がはっきりしない性質がある。音源が右にあっても左にあっても、漠然と全体を包み込むような聴こえ方をする。周波数が低く、波長が長いので、音が障害物を回り込みながら進むのだろう。フルートという正弦波の音の楽器であればなおさら、この性質は顕著に現れるはずだ。

マエストロが秘策を伝授した。
馴染みのない現代曲の初演なので、143人もいれば本番で誰かが1小節ずれてしまうかも知れない。一人ずれれば連鎖的にずれる奏者が増えてしまう。
それを最小限に食い止めるための秘策―これは企業秘密。本番、指揮者から目を離さずに聴いていれば分かるだろうけれど、それでは音楽に集中できないでしょう…。

リズムを一致させるのが難しい箇所をそのパートだけリハーサルする際、「ごめんね、この曲は指揮者が一番楽なんです。現代音楽は指揮が大変なのばかりなのに…」と複雑な指揮の仕草をして、演奏者を笑わせたりしながら効率的にリハが進む。砂に水が浸み込むように指揮者の意図を吸収し、曲の理解と共に自発的にアンサンブルが磨かれていく。
作曲家がコメントするのは、自分の計算違いによるミスの所だけ。ピッコロについて一か所修正させて頂いた。
<ピッコロを制す者はフルート・オケを制す?>ピッコロ・セクションには、国際コンクール入賞者など、粒揃い。
今日のリハでアンサンブルに関してはほぼ仕上がった。妙なる調べ!

1月12日、フルート・オケのリハーサル最終日。成増アクトホールにて。
中間部、ピッコロのソロが変わった。ソリストがタンギングに関して僕に質問に来て下さり、「和風」ということで再確認した。
さらにマエストロの阿吽の呼吸で、テンポが微妙に変わった。風格が出てきた。
リハが一通り済んで、「何か無いか?」と質問が向けられたので、僕はごく些細なことを言ってしまったけれど、それ位しか問題が無かったから(該当パートの奏者に笑われてしまったよ)。
しかし奏者の一人がメロディックな部分の背景の吹き方についての問題点を突いて下さり、単純に人数を減らして吹くことで解決した。人数の問題は最初からマエストロが気にしていた。初日のリハで演奏を聴き、このままで良いと僕が判断したので全体的には変えないことになったが、今回の箇所は部分的な問題だ。シルクの刺繍のような所だ。鋭い指摘だった。
今日のリハは3回の内、最も手短に終わった。コントラバス・フルートもバランスよく聴こえた。
魂が注入されるか否かは、本番に持ち越し。マエストロ、今日は冷たい雨で、風邪気味だったのかな?



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
たしか今回のコンクールの選考基準は「アマチュア... (momo)
2008-01-06 21:19:15
たしか今回のコンクールの選考基準は「アマチュアフルーティストでも演奏出来る様なメロディックで再演可能な未発表作品」でしたよね。楽しみにしています。私はフェスティヴァルにアマチュアで出演します。
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momoさん、募集要項には「幅広いフルーティストが... (I)
2008-01-16 11:05:31
フェスティバル、アマチュアの演奏も見事でした。
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コメントありがとうございます。師匠がレッスン言... (momo)
2008-01-18 02:12:52
コメントありがとうございます。師匠がレッスン言っていたのをうる覚え?だったので若干ニュアンスが変わって書いてしまってごめんなさい。私たちのようなアマチュア奏者が楽しく演奏できる「ブルートレイン」のような曲が出来てくると勝手にイメージしていましたので、初演を聞いてちょっとがっかりしました。でも芸術ってこういうものなのかもしれませんね。私たちは一生この曲を吹くことはないかもしれませんが、その初演に立ち会えた偶然を幸せに思います。
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