池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

フィギュール-ドゥブル-プリスム<日本初演>

2006-04-21 | レビュー/作曲

CDは15年ほど前に買っていた。「婚礼の顔」「水の太陽」と一緒に収められた、作曲者ブーレーズ自身の指揮、BBC交響楽団による。
曲について何の解説も予備知識も無しに改めて聴いてみる。作曲者の立脚点を探る最少限のヒントとして、タイトルがあるのみ。
ブーレーズ作品(数は少ない)のタイトルとして、「婚礼の顔」「水の太陽」「主のない槌」などはテキスト(詩)から取ったものなので今は考慮せず、純粋な器楽作品のものとして「ストリュクテュール」「輝き・倍増」「…固定した爆発…」「ノタシオン」「デリーヴ」などに注目する。

CDを再び聴き、音から受けたイメージを言葉にしてみる。
自然にそれらのタイトルに似た言葉が浮かぶ―「地殻変動」「細胞分裂」「ブラウン運動」「スペクトル」「ディストーション」「放射能」…管理、運用の仕方に善悪があるのであって、存在そのものが善悪とは言えない、という点で「放射能」も「不協和音」も同じか。

次に構成や響きの作り方に集中するため、メモを取りながら聴く(楽譜は出版されていない)。
開始、低音域の柔らかい和音が高音域に移り、震える―突然、強音で「隕石の噴出」―静まり返り、Des(変ニ)音を核とする繊細な和音の持続―様々な倍音がクローズアップされる―[隕石→Desの和音→螺旋]のヴァリエーション―「ステンドグラス」の出現。金属打楽器に木管、ピッチカートが絶妙に混ざる―活発になり、止まる―一変し、ヴィオラのソロから弦楽器の薄い織物が形成されていく(この転換は見事)―背後で管楽器が倍音を重ねる―最後に再び「隕石」…全体が「能」のような格調を作り上げる。

21日、この作品の日本初演が藝大奏楽堂であった。「ノタシオン」(ピアノ版・オーケストラ版)と共に(ピエール・ブーレーズ作品演奏会)。
ジョルト・ナジ指揮、藝大フィルハーモニア。ピアノは野平一郎氏。
学生などで増員した4管編成並みの大オーケストラを、ブーレーズ流に?指揮者は棒を使わず、手のひらでコンパクトにまとめた。

「フィギュール…」は、弦・管・打を全体に散らす配置(写真)。
例えばコントラバスは右端と左端に2人ずつ、中央奥に4人。ハープも3人が右・左・中央奥に離れる。ティンパニーは右、トムトムは左…。
前半はごく短いG.P.(総休符)で頻繁に区切られ、後半は一気にノン・ストップで行く。「じらし」効果か。
終盤の弦の部分はCDとは全く違っていた。改訂されたのだろうか。
弱音器をつけた弦楽器群が、相変わらず小刻みな動きに埋もれ、「能」というよりは、終始痙攣する音楽。CDではやや退屈に感じたヴァリエーションの箇所も、実演では豊穣な音色の奔流に圧倒された。解説によれば、この曲は「発展中の曲」だそうだ。

「ノタシオン」(オーケストラ版)は最新の第7曲を含む5曲セット。
大群が細かいリズムで一斉にチャ・チャ・チャ…とやり続けるのは、蜂の群れが外敵を羽音で威嚇するかのごとく扇動的。見るとなお一層。



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2 コメント

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こんにちわ (たっちゃん)
2006-04-22 21:17:40
4月22日6時から最後のレッスンを受けた人です(生徒)

いままで・:,。★\(^ω^ )♪ありがと♪( ^ω^)ノ★,。・:・゜

けど、自分はあまりピアノなんて上手じゃないですし・・。
下手ですよ(笑
流石悟先生!
ブログまでキッパリと・・。
ちょっと僕にはプログの難しい内容がわかりませんが(爆
右側の入賞記念コンサートだって凄いですし、って恐るべし悟先生(笑

いつも野球の試合or練習のあとで、一気にレッスンなので、時間に遅れるのも度々・・。
僕酷いですよね・・、レッスンを放棄しちゃって(涙

ではメールもしておきます・・と思います


自分のホームページもありますので、よろしくです
↓↓↓↓         ↓↓↓↓
http://petat.com/users/grat/

メールアドレス
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m-matsuse@mbd.ocn.ne.jp


HNはたっちゃんです(笑
松○貴○の「タカ」
からとりました。
では
☆\( ^ ^)/~〃。.:*:・'°☆バイバイ!
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トラックバックをありがとうございます。 (genki)
2006-06-26 10:39:22
作曲家の耳を通して、自分が聴いた音楽をとらえなおすことができ、またひじょうに得るものが大きいです。

なお、右のサイドバーの「BLOG LIST」のトップに、わたしのblogのリンクを貼っていただいていますが、当方、あくまでもプライベートなblogですので、たいへんお手数ですが、「音楽専門出版社」というのを、たとえばblogタイトルの「ongei :: blog」などにしていただけませんか?

そういえば、代官山音楽院さんへは、一昨年、仕事でうかがったことがあります。目黒真二さんという方の『Logic 6最初の一歩』という本にからめて、セミナーを開いていただきました。
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