池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

マネキンと鼠

2009-07-14 | 作曲/全般

マネキンの傍らをネズミがチュチュっと走り抜けた!さて人間の仲間はどちらだろう。
服装のチェックならマネキン。医学的な研究材料としてなら同じ哺乳類のネズミ。
作曲の伴侶として考えた場合、PC.とPf.はこれと同様の関係にある。

PC.の良い所は圧倒的な編集能力、そして作品の全容が正確に確認できるところ。
反面、モニター音がリアルな割には、と言おうか、リアルであればある程、なかなか感情移入できない。
音の高さ、リズム、和音、テンポ、すべてをたとえ有合せであれ、きちんとデータ入力しなければ思うような音は一切出てこない。
そういった事を一つ一つ客観的に考えるのと、心の奥底に潜んでいる物を鷲掴みにして引っ張り出そうとする衝動は相反する。それを承知で便利な(不便な)道具として使っている。

むしろ良質なピアノは生の楽器の同族として、弦楽器や管楽器、打楽器の音さえ想起させる。響きそのものが生きているから。良質でなくてもだ。
僕が子供の時親から与えられたピアノは中古の、二流メーカーのアップライトだった。しかしそれでさえ、遅まきながら音楽に目覚めた高校1年の頃は、「ピアノってベースの音でもギターの音でも、どんな音でも出せるんだ」と、ビートルズが好きな級友に語り、「それじゃシンセじゃねーか!」と一笑に付された。
作曲の伴侶として、音程、リズムや和音がどうとかいう以前の原初のイメージを探ったり、感情を直接ぶつけて漠然と音響化してみたり、荒削りな骨格のデッサンを試みるのには断然ピアノ。

ピアノの練習も作曲のうち。PC.と違い、二度と同じ音は出ないからいつも新鮮だ。
意図的に楽譜の指示を変えて弾くこともある。暗譜し、楽譜を忘れ、好き勝手にやるのも良い。
短所は、のめり込むと身体的に自己充足してしまうこと。弾けない音は敬遠してしまうこと。油断するとオケの作曲でもピアノ曲風になってしまうこと。

畢竟一つのやり方ばかり続けていたら、どんどん発想が枯渇していく。
ピアノが良い時はピアノ、PCが良い時はPC、寝床が良い時は寝床、散歩が良い時は…。



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