サンケイ・エクスプレス紙によれば、
「不動心」。安倍晋三首相の現在の率直な心境なのだろう。首相は11日午前のNHK番組(「総理にきく」)に出演し、色紙にこう揮毫(キゴウ)した。郵政造反組の復党問題や相次ぐ閣僚の失言などから内閣支持率の低下が続いているが、最近は周囲から「吹っ切れた」とも評される首相。番組でも、自ら鼓舞するように「目先のことにおたおたせず、目標に向かって進む強い心を持ちたい」と語った・・・。というのである。首相就任5ヶ月間に北朝鮮問題や慰安婦問題など外交面だけではなく、復党問題をめぐる自民党内の不協和音にかなり神経をすり減らしのだろう。 しかし、人間・安倍晋三の信条は「政治家としてぶれない」であったはずだ。
いま、一国の宰相として安倍晋三に望むことは、「腹(胆)を練る」ことである、と安岡正篤先生が存命ならば、次のように喝を入れたのではなかろうか。
「日本精神と腹」
我々の親達は常々人を評しては「腹」が出来て居るとか居らぬとかいったものである。ところが我々の代になって、しばらくこの「腹」ということが余りいはれずに、「頭」がよいとか悪いといふことが人を評する標準になっていた。(中略)
頭の善いといふことは望ましいことには相違ない。役に立つことである。けれども頭は要するに冷たい。個人主義的傾向が著しく、物を解体し、離索し、煩雑(ハンザツ)ならしめねば済まぬ。之(コレ)を救って、統一し、命づけ、熱を帯ばせるのは腹の能くする所である。(中略)
「腹」は日本民族の誇りで、今後の我が国情は最も「腹芸」を要する。それにも拘らず、残念ながら今日の状態は、尚ほ到る処、瑣事(サジ)に拘泥して直ちに激昂し易く、事を好んで徒(イタズラ)に気勢を揚げ、議論紛々として果てしがない。笑って事をかたづける風などは、何処に在るだろうか。 余は切に朝野の人物にこの「腹」を希望する者である。
安岡正篤著『經世瑣言 全』(旺文社刊)から
あらゆる関連本の中で一番良い。
この問題の全容も把握できる。