ならおうは穏やかに語る

Fly Fishingを中心に難しい話からヨタ話まで支離滅裂な雑文。
(09/08/23カウンターを付けました。)

フレキシブルディスプレイ…

2012-12-24 08:21:17 | Weblog
CESでサムソンがフレキシブルディスプレイをアピールした。
表示原理は有機EL(OLE)やね…5年ほど前だったと思うが、ステンレス薄板上に素子を作ってOLEを載せてた。当時よりかなり高精細になったかな。
大型もできるとは金をかけたね。
この構造は液晶では無理だけど OLE ならできる。
残念ながら液晶は反射型以外は金属板を基板にすることは出来ない。だから液晶は無理と書いた。

OLEの課題は信頼性だ。OLE は水と酸素に弱い。現在はガラス基板で挟持している。

さて、サムソンの開発したフレキシブル有機ELの断面構造はこんな感じだろう




この構造の問題は内部応力だ。
まず、有機透明保護膜が加熱膨張、冷却収縮を生じる。下地の無機防湿酸素者棚膜SiAlONはセラミックなので温度による膨張収縮は樹脂の1/10だ。
有機透明保護膜とSiAlONとの密着力が十分であれば応力を低下しようとするため、樹脂層が縮めば「するめ」の様に基板の端部が反る。
これは圧縮応力だ。逆に樹脂層が伸びれば基板の真ん中が反る様に反る。これは引っぱり応力だ。
このような応力が印加されると密着力、接合力の弱い界面から剥離する。

そのような事は起こりえない。クルマの塗装は剥がれないではないか!という考えに対して。
クルマの塗装は樹脂と金属が全面密着している。だから温度変化による線膨張係数の違いによる金属と樹脂の剥離応力(引っぱり応力と圧縮応力の繰り返し)に耐える。

しかしOLEが塗布型であろうが、蒸着型であろうが電荷注入電極(Al)と発光層及び発光層と透明電力(Nesa or ITO)との密着力は弱い。
密着力の弱い界面で剥離する。

温度変化で最外層の保護層が膨張・収縮するとその応力はOLEを挟持する透明電極または絶縁膜との界面で剥離する。
これへの対策があれば凄い♪だが多分その技術はない…。

面白いが儚いディスプレィだね。

なお、かつて(これも5年程前)巻物のようにフィルムの上に有機TFTをつけてE-inkを駆動するという電子書籍コンセプトが提案されていたが、最近は少し出来が良くなったようだただし、価格を考えたら売れない。まずフィルムの上にTFTを有機素子で作るってまだまだ先の事。
無機材料でTFTを作ればフィルムが熱に堪えないし、少々低温で形成しても製膜時の温度と実用時の温度が違うとフィルム基盤は反る。
この辺は結構難しい。
仮に100℃で製膜したとする。そのとき、フィルム基盤は100℃の寸法にのびている。室温に戻るとフィルム基盤は縮む。しかし表面に整形した無機膜は100℃の時の寸法であるから、どうなるかっていうと製膜側を上にして反る。つまり引っぱり応力が生じる訳だ。
ここでも残留応力が発生する。これを抑制しようとすると無茶苦茶難しい。するめと同じだ。
タイル状にぶっちぎれば内部応力は分散されるので反りは小さくなる。


いずれにせよ欧米の研究者は夢物語のコンセプトだけ出して、それの特許を書く。
実際にものつくりで苦労する気なんてさらさらない。これはものつくりをアジアに任せとけという根性。
だからモノツクリの職人的産業が衰退するんだけどね。実際、パソコンの上でだました資料で金を集めるだけじゃぁあかんわ。
その方がなんか賢そうだけどね。

でも、デバイスってのはドロドロしたものでプロセスウィンドゥの範囲を拡げる為には根性が必要なんだよね。


つうわけで、基板の内部応力が残った状態で作ったパネルはそのうち崩壊すると思われるのだ。


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