NPO法人 地域福祉協会

清掃事業  森林事業(植栽・剪定)

Ever So Lonely - Sheila Chandra

2015-02-03 | 音楽
Ever So Lonely - Sheila Chandra

ショートショート    歓喜仏

2015-02-03 | 文学

私は普通の女子ではなかった。

美貌。
霊感。
人の才と天命を読むことができた。

いつからか山に篭って修練を始め
湧水が食の中心となった。

ますます霊感は冴え
清澄なる美貌にも磨きがかかった。

私は
村で人々の命を占い人生相談に乗った。

声望は高まり
巫女のようになった。

ある日
村長さんが草庵を訪ねてきた。

「暴れて手付けられん男の子がおるがいれど、何とかしてくれんけ巫女さん」

若い男子の攻撃性の大きな原因は
性の悦びを年増な女子から丁寧に教授されていないことに起因する。

おそらく
その機会を逸した男子のエネルギーの奔溢であろう。

「わかったちゃ。今度ここに連れて来られま」

数日後
村長に連れられて体格のよい童顔な青年が草庵に現れた。

青年?


むしろその霊魂は
少年か子供のように私の霊的な鏡に映った。

「巫女さんに人生を教えてもらうがいぞ」

村長さんは
妙に低い声音で呟いて去った。

巫女は遊女でもあり
それが聖なる務めである。

もじもじした少年が怪訝に聞いた。

「なにするがけ?」

「マッサージするだけやちゃ。みんなするがやぜ」

よく見ると童顔で可愛い子であった。

おそらくその美貌のために親や兄弟に寵愛され
偏愛へ堕し
溺愛へ墜落したのだ。

私は
香油を準備した。

淫靡な香りが漂い
私は陶然として
若々しいはちきれんばかりの肉体に塗布し
優しく愛撫した。

私は
薄絹を自ら解き
結跏趺坐の彼に跨った。

そして
自らの掌を合わせて
足を交差させた。

それは巨木に纏わりつくツル植物であり
陰と陽の和合であり
歓喜仏の顕現であった。

私は柔らかな自分自身で彼を覆い尽くした。

すべての男子は
母性に回帰し
たおやかな海に惑溺して
改心し道を悟る。

男子が生み出す傲慢で無機質な偶像は
母性の至柔なる有機物のなかで粉々になり
豊穣なる文明に寄与するのだ。

私は
可愛い小鳥の鳴き声を
夜が明けるまで
愛で続けた。


高橋作(フランス系文庫)