2010年本屋大賞受賞作品ということで手に取った。
確かに設定はおもしろい。江戸は四代将軍家綱の御代に実在した渋川春海という人物が、それまで用いられていた暦に誤差が生じていることから、日本独自の太陽太陰暦を作る生涯を描いたもの。
歴史上の人物が活き活きと描かれており、歴史物、という堅苦しい感じもなく軽く読める。
ただ、文章力がもうひとつ。文体が過去のものとして語る口調が随所に現れるのだが、その語り口が中途半端。その時代の視線で書ききってしまった方がずっとよかった。
またこれは読み終えて始めて知ったのだが、著者が天文の知識不足のまま書き上げてしまったということ。渋川という人物に魅了され、彼と彼の人物関係を調べて力尽きてしまったのか。この物語で天文知識の誤認はかなりの痛手だ。
登場人物が実在する人物をモデルにしたフィクションを描いた方が著者には向いているかもしれない。とはいえ、おもしろく読むことは出来た。