物語は「私の話」と「猿の話」の2本立てが交互に語られる。「私」はイタリア留学時代の経験をもとに帰国後エクソシストのようなことを行う。ある引きこもりの青年に対して悪魔祓いを行うことがら物語が始まっていく。
どちらの話も「西遊記」が引用されベースとなる。昔テレビで「西遊記」を見た程度しか知識がない私にとっては理解できない箇所が多く、こればかりは「西遊記」の知識があったほうがおもしろく読めたのにと無念でならない。
この小説にはいくつかの制約?の上で書かれたものである。
まず新聞の連載であったこと。文字数が限られた紙面で前回のストーリーを忘れてもらわないように、そして次回のストーリーを楽しみにしてもらえるようにと書かれたはずだ。
そして、またもや漫画と連動しているということ。あるキーワードが与えられていてそこから話を広げることが前提で書かれた。
こういった制約の中で書かれた物語は「陽気なギャング・・・」から伊坂ファンで、どの小説も登場人物がリンクしている伊坂ワールドが好きな読者にとっては不満があるだろう。今回だけならまだしも前作「あるキング」から初期の作風、伊坂ワールドは遠くにいってしまったのだからファンにとってこの作品を酷評したくなる気持ちも分かる。
ただ私はそこまで裏切られた感じはしなかった。どこか「魔王」に通ずる暴力の考えも語られていて伊坂らしさを感じたからだ。
さらに個人的に連動する漫画家五十嵐大介の「海獣の子供」のファンなので、漫画のほうも楽しみに思っている。これが五十嵐氏でなかったらまた違った感想を持ったかもしれない。
今までのようなミステリーを求めている人には薦めない。