前項で、オームの法則V =R I の内の比例定数R を電気抵抗と呼び、電気抵抗とは電流の流れにくさを表すと説明しましたが、電流を流しにくい材質の導線なら電気抵抗の値は大きくなり、流しやすい材質の導線なら電気抵抗の値は小さくなります。
(1)
材質が同じで長さの違う導線が2本あるとすると、長い方の導線の方が電流を流すのが大変です。つまり長い方が電気抵抗は大きくなります。
10cmの導線と20cmの導線を比べると20cmの方が電気抵抗が2倍になります。
上図のように10cmの導線を2本つなげると、20cmの導線の電気抵抗と同じになります。このようなつなげ方を直列接続といいます。10cmの導線の電気抵抗を1Ω(オーム)とすると二つ直列接続でつなげた時の電気抵抗は2Ωになります。直列接続では電気抵抗は足し算ができるのです。
(2)
では直列接続ではない時の接続ではどのようになるでしょうか。
導線は長ければ長いほど電流が流れにくくなりますが、太ければ太いほど電流が流れやすくなります。断面が2倍になれば流れやすさも2倍になります。
今、流れやすさをa という量で表すとするとa は電気抵抗R 〔Ω〕を使ってa =〔1/Ω〕と表すことができます。R 〔Ω〕は流れにくさを表す量なのでその逆数が流れやすさを表すことになります。流れにくさR が小さければ小さいほど流れやすさa は大きくなります。
今、断面が1cm2〔平方cm〕の太さの導線の電気抵抗がR = 3〔Ω〕だとすると、流れやすさはa =〔1/Ω〕と表せます。とするとこれと同じ材質で同じ長さの導線で断面が2倍の2cm2の太さの物があったとすると電気抵抗はR =〔Ω〕、流れやすさはa =〔1/Ω〕と表せます。
さらに、流れやすさがa という導線と、流れやすさb という導線とがあるとします。この二つを束ねた時、流れやすさはa +b になります。
a の導線の流れにくさがRa 〔Ω〕とすると流れやすさはa =〔1/Ω〕と表せます。‥‥①式
b の導線の流れにくさがRb 〔Ω〕とすると流れやすさはb =〔1/Ω〕と表せます。‥‥②式
a +b の導線の流れにくさが〔Ω〕とすると流れやすさはa +b =〔1/Ω〕と表せます。‥‥③式
①式、②式を ③式に代入すると、 + = となります。‥‥④式
流れにくさというのは、a という導線とb という導線を束ねたものの全体の流れにくさであります。束ねるということは並行に並べてつなげたということであり、このつなげかたを並列接続といいます。並列接続では、電気抵抗の逆数が足し算できるのです。
別の考え方で考えると、導線a に流れる電流をIa とし、導線b に流れる電流をIb とすると、両方を流れる電流はIa +Ib であり、どちらの導線にも同じ電圧V がかかるので、
電流に関して考えると=Ia +Ib であり、
オームの法則より V =R I すなわち I =であるから、 = Ia = Ib = であり、これらを上式に代入すると、
=+ となり、この式の両辺をV で割ると、
= + となり、上の④式と同じになります。
もし3つ並列に接続した場合は、 = + + となります。
前半の(1) と後半の(2) をまとめると、複数の電気抵抗を一つの大きな抵抗とみなすとき(これを合成抵抗といいます)、
直列接続では各抵抗の和が合成抵抗になり、=Ra +Rb
並列接続では各抵抗の逆数の和が合成抵抗の逆数になります。= +
(6.2.1.2 抵抗率 参照。)