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理論で「ひも」解く宇宙

2016-02-24 | 日記

理論で「ひも」解く宇宙

~江口 徹 教授(物理学専攻)~
 

聞き手:仲田 崇志(生物科学専攻 修士課程2年)

今回の先生は素粒子理論の研究をなさっている江口徹教授です。いわゆる「超ひも理論」がご専門との事。というわけで,不可思議な響きを持つ「超ひも理論」とはどのようなものなのか? それを研究するとはどういう作業なのか? 興味に駆られてお話を伺ってきました。

素粒子は「ひも」!?

仲田:今日はよろしくお願いいたします。先生のご専門は超弦理論(いわゆる超ひも理論)や量子重力理論とのことですが,それはわかりやすく言うとどういう考え方でしょうか。

江口:目標は素粒子の基礎理論,統一理論です。素粒子とは自然界の基本粒子ですが,普通は空間を動いている「点」だと思っています。それを一次元的に広がった「ひも」で置き換えようと言う考え方が超弦理論です。そのひもは10-33cm くらいのすごく小さなひもで,通常は点粒子に見えます。ところが,ミクロな世界に行くと素粒子がひもに見えてきて,そこでは色々な法則が知られている形からずれてくるんです。それが素粒子の理論の持っている幾つかの困難を解決してくれると思っています。

特にミクロな世界での重力の理論には,今はうまい理論がないんです。アインシュタインの一般相対性理論は,星の運動や銀河系の構造などマクロな世界の重力の理論なんです。しかし宇宙の歴史を遡ると,宇宙がどんどん潰れて行って最後は非常に小さな空間に宇宙の全質量が押し込められたような状況になります。そういうミクロな世界に物凄い重力があるような状況を物理の理論で調べられるようになりたいという希望があります。

ミクロな世界を扱うには,量子化(注1)した理論を作らないといけません。ところが一般相対論は,量子化してみると矛盾がいっぱい出てきます。不確定性原理というのがありますが,一般相対論に適用すると時間や空間がふらふらとして確定しなくなります。これがミクロの世界では酷くなり,最後はふらふらが無限大になって手に負えなくなります。

仲田:電磁気力であるとか,他の力については問題ないんですか?

江口:はい。素粒子の力には,重力以外に電磁気力と原子核を作っている核力=「強い力」,そして日常生活ではあまりでてこない「弱い力」があります。これらはミクロな世界で矛盾が出ない理論がほぼ確立されています。これらの力はゲージ理論と言うものを使って理解されていて,強い力に関しては今年ノーベル物理学賞が出ました。

そこで,重力についてミクロの世界の理論を作るのが長期的な目標です。これは素粒子が点粒子だという描像ではできません。超弦理論では思い切って素粒子は点ではなくて,伸びたひものようなものだと考えています。

ひもが振動すると,いわばバイオリンから色々な音色が出るように,振動が激しい状態や緩い状態などたくさんの状態が出てきます。これを弦理論では,いろいろな粒子が一度に記述できると考えます。例えばバイオリンを弾くと色んな音色が出てきますよね?

仲田:一個のバイオリンからですか。

江口:そう。それを遠くから見て,バイオリンが点に見えたとします。遠くから見ていると,色々なエネルギーを持った状態が見えて,止まったエネルギーは質量に見えるんです。

仲田:止まっているというのは振動も?

江口:いや,よく見ると振動はしていますが,全体として止まっている状態です。遠くから見ていると,そこに質量を持った粒子があるように見えて,ひもの振動状態によって色んな素粒子に化けて見えるんです。

エネルギーが低い場合にはひもがほとんど点に潰れちゃっているから,素粒子を点と考える普通の理論に戻ります。しかしひも同士が高いエネルギーでぶつかったりすると,あるいはミクロな世界の現象では普通の理論からずれがでてくるという仕掛けです。

それで,ひもには自分で閉じているのと端があるのと二種類あるんですが,閉じた弦の方から見てみると,一番エネルギーが低い状態が重力子になります。

仲田:重力子になるように定式化が出来ている,ということですか。

江口:最初から一般相対論をうまく取り込んでいるんですよ。

もう一方の,末端のある開いたひもの一番エネルギーの低い状態はゲージ粒子になるんですね。これは先ほどのゲージ理論を再現するようになっています。

仲田:ゲージ粒子というのは具体的にどういう力に関係しているんでしょうか?

江口:光子の類です。電磁気力,それから強い力や弱い力も全部ゲージ粒子が担っているんですね。

仲田:つまり,重力以外の力は全部ゲージ粒子が担っているということですか。

江口:はい。例えば電荷があると,それから光子が吐き出されて,もう一個の電荷に吸われて,その間に力が働くのが電磁気力です。同じように,電荷の代わりに「色」というものがあって,グルーオンが担っています。こうして強い力が生じるんです。それから弱い力だと「香り」っていうのがあります。この三種類の力の源になるものがあって,それから粒子が交換されて力が生じるというパターンを,ゲージ理論で理解できると思っているんです。

ひも理論の立場では,一番低いエネルギー状態で,開いたひもの理論からゲージ理論が,閉じたひもの理論から重力が出てくるような,全体をうまく取り込んだものを作ろうとします。

超弦理論の変遷

仲田:超弦理論の話では多次元宇宙,10次元時空や11次元時空といった話がでてきますが,それはどういう根拠なんでしょうか。

江口:根拠は,数学的な理論の整合性から来るんです。最初に弦理論,弦模型というのが出てきたのは,強い相互作用の問題に対する模型としてなんです。強い相互作用というのはクオーク(注:物質を構成する基本粒子)に働く力なんですが,クオークが基本粒子だといわれたときに一番不思議だったのが,クオークの閉じ込め(注2)という現象です。それで,その説明に弦模型というのが出てきたんです。クオークと反クオークがあるとき,間をつないでいるゴムひものようなものを考えます。クオークをぽーんとはじくと,ひもが伸びていくんだけれども,あんまり伸ばすと真ん中が二つにちぎれて,切り口にクオークと反クオークが出来てしまう,それで二個の中間子ができてしまい,決してクオークだけがちぎれて出てくることはない,そういう模型を考えたんです。

それで次元の話ですね。今述べたように,強い力の模型として弦模型は出てきたんですが,このシステムを詳しく調べてやると,最初は26次元,後のモデルでは10次元といった変な次元でないと,ある励起状態が出てくる確率を調べたときに負の確率が出てしまうんです。

それからこのシステムの一番低いエネルギー状態は質量がゼロなんです。今ではこれを光子のような質量のないゲージ粒子だと思っているんですが,当時は質量を持った中間子とか陽子を考えていたので,変だと思われてこの模型は廃れちゃうわけです。で,強い相互作用の問題は,ひもではなくゲージ理論で解決されて行くんです。

で,この最初のバージョンはうまく行かなくなるんですが,70年代頃を通じて再解釈がなされたんです。大きさも全然桁が変わり,核力の問題ではなくてゲージ理論とか重力理論を拡張した理論だと思い直したんです。ただそれでも劇的なうまい話が出てこないので,当時はあまり研究者の関心を引かなかったんです。

ところが80年代の半ばくらいから大きな発見があって,それ以降,弦理論が素粒子論の中心的な研究課題になってきたんです。

仲田:大きな発見といいますと。

江口:80年代の半ばくらいと90年代の半ばくらいに二つあるんです。最初の方を第一次弦理論の革命,90年代半ばが第二革命と言います。

第一革命の方を説明すると,素粒子の力には重力とゲージ場の力の,大きく分けて二種類があります。ところが普通は,重力とゲージ場の力は,どうしてお互いにそういうものがなければいけないかという理解がなかったんです。

仲田:あるということはわかっているけれども,理由がわからなかったと。

江口:ええ,説明がなかったわけです。ところが80年代に,実は両方があって初めて弦理論に整合性が出てくる,ということが見付かったんです。弦理論から重力のところだけ抜き出して,ゲージ理論の方を捨ててしまうと,あるいは逆にゲージ理論の方だけをとると,数学的に矛盾した理論になってしまうんです。

特に,弦理論を使うとゲージ群とよばれるものが決まるんです。ゲージ理論ではゲージ群というものを選ぶんですが,普通は経験的にゲージ群を決めているんです。しかし弦理論では,実は理論の整合性からゲージ群もある特定の二つに決まってしまうんです。それが流れを変えました。それまでは細々と一部の研究者がやっていたんですが,それから研究者がどっと増えて,我々もその頃から弦理論を中心に研究を始めることになったんです。

仲田:今まで,関連付けも理由付けもされていなかったものが,超弦理論でまとめて説明できるとなると,すごく面白そうに聞こえますね。

江口:ええ。皆ショックを受けて,急に関心を持って研究するようになったんです。それが第一次弦理論革命と呼ばれるものです。それから10年くらい経って,今から10年くらい前に第二次弦理論革命というのが起こったんです。

弦理論は複雑な理論なので解くのが難しい。そのため予言を引き出すことが出来なかったんですが,第二次弦理論革命で弦理論を調べる技術が非常に進歩して結構強い証拠が出てきたんです。一つはブラックホール(注3)のエントロピー(注4)の問題なんですが,それは聞かれたことは?

仲田:ホーキング博士がそういう研究をしていたように記憶していますが。

江口:ええ。それにも関係しています。ブラックホールというのは色んなミステリーを持っているんです。

ブラックホールの周りには,それより内側に入ると外部に脱出できないような,そういう殻,事象の地平線,があるんです。そういう変なものがあると,色々パズルが起こるんです。例えば殻の外側で星屑の状態などを調べると,原理的にはどういう電荷,質量,スピンを持っているかなど色んな情報を引き出すことが出来ますね? ところが星屑がいったん地平線のかなたに落ち込んでしまうと,それが中でどうなっているかは外からは知りえないんですよ。

仲田:光でも出てこれないわけですからね。

江口:そうすると,我々の知っていた情報が失われて,ブラックホールが溜め込んでいると言えます。ブラックホールは,全体の質量と電荷,それとスピンしかパラメータを持っていないんですが,ブラックホールに落ち込んだ無数の原子とか分子などのミクロな状態はたくさんあるはずです。その状態の数の対数,logをとったものがエントロピーなんです。

もしブラックホールをきちんと量子論的に取り扱うことが出来れば,エントロピーがエネルギーの関数として計算できるはずなんです。それについては熱力学的な考察から出てきた,ベッケンシュタインとホーキングの予想というのがあります。これは一般相対論では計算できないんですが,弦理論でそれが出来れば,一般相対論より弦理論の方がちょっとは良いだろう,と言えます。

仲田:なるほど。

江口:これが八年前くらい前にある種のブラックホールについて出来るようになって,予想したことがぴったりだったんです。それで弦理論が,正しい方向に向かっているのではないか,しかも一般相対論よりも進んだ取り扱いができる,ということが言えるようになりました。ある意味で最初の成功ですね。

仲田:弦理論の証拠の一つになるわけですね。

江口:そう。弦理論はこれで全部行けると大風呂敷を広げているので,どっかでつまずくとアウトなんですが,これで一つのチェックポイントをクリアした感じになったわけです。それから他にも色々な証拠があって,みな前よりも納得するようになりました。我々が変な次元に住んでいるというのも昔は笑い話のように受け取られていたと思うんですね。専門以外の人には(笑)。

仲田:はい(笑)。

江口:けれどもそういう余分な次元が本当にあって,どうしたらそれを実験的に見れるかという研究も,今は活発です。

それから宇宙の初期についても超弦理論の新しい理解から,色々なモデルが出てきています。普通はビッグバンと言って,点から爆発して宇宙が広がったと考えますが,時間がゼロに戻っても,その反対側に時間のマイナスがある可能性もあるんですね。その辺は全体が流動状態で,定説は全くありません。

仲田:ちょうど今,超弦理論を検証している時期ということですか。

江口:まだまだ足りないと思いますけど,理論の予言を引き出すことが出来るようになってきました。今は国際的にも若くて元気の良い研究者がたくさん参加して,オリンピック状態ですね。世界中でいろんな人たちが互いに競って研究しています。

弦理論への関わり

仲田:ではそんな中で,先生はどのような研究をしていらっしゃるんでしょうか?

江口:僕が弦理論の研究をするようになったのは第一次革命からなんですね。その前にやっていた研究が今の弦理論の中で重要な役割を果たしていて,それに関連したことに特に興味があるんです。

一つは,弦理論が活発になるよりずっと前,70年代の後半くらいにアメリカで,アメリカ人の研究者(Hanson さん)と一緒に一般相対論に出てくるアインシュタイン方程式の一つの解を研究していました。普通はアインシュタイン方程式を解くときには,例えばブラックホールの解とかは,平坦なミンコフスキー空間(時空)から考えます。

仲田:ミンコフスキー空間といいますと?

江口:時間と空間が区別される空間で曲がっていないものがミンコフスキー空間(時空)です。一方,ユークリッド空間では時間と空間が全く同じ役割になります(注:時間の次元がないと見ることも出来る)。それで,ユークリッド空間が曲がったような空間,それを記述するようなアインシュタイン方程式の厳密解を見つけたことがあるんです。

ところで,弦理論では10次元空間から出発して,四次元空間に我々が住んでいて,余りが六次元あるわけです。それがいわば素粒子の内部空間なんです。それが我々が見えないほど小さな空間になっていて,そこから素粒子の色んな性質が出てくると考えるんです。で,その内部空間のところに我々が昔作った空間を使うことが出来るんです。

仲田:相対論から考えていた空間のモデルが弦理論に転用できたんですね。

江口:弦理論の余分な六次元の部分には時間の次元がないので,ユークリッド空間が曲がったような状況になって,うまくはまるんです。我々が見つけた空間の中ではゲージ対称性が自然に生成されるため重要な役割を果たします。

それから,これも違う流れの仕事だったんですが,さっきゲージ理論ではゲージ群というものを選ぶと言いました。ゲージ理論は解析的には未だ解けないわけですが,解こうと思うと,このゲージ群を非常に大きくした極限で,実はゲージ理論が簡単になるんです。それでそこで起こることを詳しく調べたことがあったんです。

調べてみると,場の量子論の問題が行列の積分のような,ある意味で桁違いに簡単な問題になるということを発見したんです。これは川合さんという人とやった仕事なんですが,このメカニズムがやはり弦理論でも色んな違ったコンテキストの中で使われるんですね。

仲田:解を出すことが非常に難しい弦理論の中にあって,ある種の解を出しやすくできるわけですか。

江口:必ずしも解ききれるとは限らないんですけども,簡単化が色んなところで起こるんです。この仕事が弦理論に使えるとは全然思っていなかったんですが,最近になって繰り返しそういう例がでてきます。

あと,弦理論に数学の問題がでてくるので,仕事の二割か三割くらいは数学なんですよ。物理として何か新しい理論が出てくると,物理の内容を書くための道具が変わるんです。最初,ニュートンが運動方程式を書こうと思ったときには微分や積分などの数学の道具が必要だったわけです。同じように,量子力学からはヒルベルト空間だとか作用素だとかが,一般相対論からはリーマン幾何がどかんとでてきたんです。

それで弦理論にも新しい数学が色々出ています。弦理論は物理の理論として成功するかどうかはまだわからないんですが,数学の方面にはずいぶん点数を上げているわけです。

仲田:超弦理論を解こうとして,ついでに数学の方にも貢献してきたということですか。

江口:ええ。だから結構,数学の人との付き合いがありますね。教えてもらうこともすごく多いんです。例えばさっき言った弦理論の内部空間の幾何学などは,かなり数学の問題に近いですから。

仲田:数学と,持ちつ持たれつなんですね。

理論研究者の日常

仲田:では,具体的な研究というのは,どういう作業になるんでしょうか?

例えば机の上でひたすら計算をしているんじゃないかというイメージがあるんですが(笑)。

江口:それに近いですね。あと,毎日論文がウェブに出るんです。国際的なデータベース(注:arXiv。http://arxiv.org/)があって,論文を書いた人はそこに投稿するんです。そうすると翌日には掲示板に張り出される。それを眺めて面白そうなやつを読んでみるわけです。

それで,そっちの方が面白ければ調べてみようとか,つまらないから自分がやっていることを最後までやってみようとか,そんなことの繰り返しですね。

仲田:では論文を通じてディスカッションをずっと続けているというような感じですか。

江口:そういう感じですね。論文をそこに出すと翌日には世界中の人が見る可能性がある。だから面白い仕事が出ると,ばっと広がっていきますね。

研究室では,面白そうな仕事があったら,それを誰かにあてて,その人が皆に紹介する,ということをしています。自分で全部読むことは量が多くてとても出来ないので。

仲田:まさに情報化時代ですね。

江口:情報過多です(笑)。全部が重要な論文ではないので,適当にピックアップして,皆で議論をする。それで本当に面白かったら自分でもちょっとやってみます。

仲田:我々実験系の人間とは,全く違った研究スタイルなので,とても斬新に聞こえます(笑)。

江口:そういう生活様式ですね。この研究室で良いところは,優秀な学生の人がたくさんいるので,当てるとちゃんとやってくれるところです(笑)。

仲田:ああ,それはすばらしい(笑)。

江口:議論をすることで,何が新しいのかを皆が吸収できるんです。それで全体の研究室の水準を保っていくことができる。そういうことも大変です。国際競争で,情報のアクセスも同じわけですから。

実験の先を行く理論研究

仲田:そういう中で,実験系の物理学との接点についてお話を聞かせていただけますか?

江口:最近は超対称性という考え方が有力になって来ています。弦理論は超対称性をもろに使っていて,実験的には多分それが一番大事です。どうしてかというと,零点振動って聞いたことありますか?

仲田:ええと,絶対零度でも振動が止まらないという現象ですか?

江口:そうです。完全に止まって位置も確定するというのは不確定性原理と矛盾してしまうので,粒子のエネルギーはゼロにならない。何かふらふらしていて,有限のエネルギーを持っていることになるんです。このエネルギーを真空のエネルギーといいます。

ところがそれを場の理論に適用すると,時空の各点に場があって,その点が無数にあるような量子力学系になるんです。するとどの点も零点振動を持っているので,一番低いエネルギーがゼロではなくて無限大になるわけです。点が無限個あるので。

仲田:それは困りそうですね。

江口:でもゲージ理論をやってる限りはこの問題は無視することが出来る。エネルギーの一番低い状態からの差だけを見ればいいからです。ところがこれは重力が絡んでくると深刻な問題になるんですよ。真空のエネルギーを遠くから見ると質量に見えるんです。すると一般相対論に従って,場の周りの空間が曲がってしまいます。質量が無限大に発散しているので無限に小さな丸まった空間になって,理論がだめになっちゃうんです。

今のところこの問題を避けるには,真空のエネルギーをキャンセルしてゼロにするしかないんです。そのためには零点振動が負にでるような,ちょうど消し合うものを持って来ます。これが超対称性です。

粒子にはボーズ粒子とフェルミ粒子というものがあるんですが,ここでそれぞれのボーズ粒子に全く同じ量子数を持つフェルミ粒子の相棒があるすると,互いの真空のエネルギーが打ち消しあっては完全にゼロになり問題を避けることが出来るんです。これが超対称性です。

仲田:すると今まで通りのゲージ理論が使えるんですね。

江口:そう。重力を持ち込んでも良いわけです。だからこれが,唯一ゲージ理論と重力理論を統一していく可能性だと思ってるんです。それで超対称性が本当に自然界にあるかっていうのが当面は一番大事です。これから数年後くらいに,ヨーロッパにある非常に大きな加速器で調べる段階です。

仲田:ということは実験の方が遅れているんでしょうか。

江口:それはもう全然遅れています。理論は勝手なことを考えることが出来るので,どんどん想像が膨らんじゃうわけですが,実験の方はすごい大変なので。

仲田:すると実験的な証明がでないところで理論研究をやっていく場合,どういうかたちで理論の良し悪しを評価をしているんでしょうか。

江口:それは一番つらいところなんですね。よく弦理論に対して批判があるんですが,理論倒れじゃないかと。

理論の中で何か決まらないことがあると,普通は実験に合うように何かを選ぶわけです。ただ,本当の基礎理論であれば,理論の数学的な仕組みだけで全部が一意に決まってしまう,というのが良いんです。

仲田:なるほど。

江口:一般相対論のきれいなところは,ほとんどが一意に決まっちゃうところなんですよ。出発点に等価原理(注5)というのがあって,重力質量と慣性質量が等しいと考えます。するとそこから大体ざあっと,アインシュタイン方程式が出ちゃうんです。途中に仮定を付け加える必要のないところが,良い理論のお手本みたいなものですよね。

もし本当に弦理論が良い理論だったら,何も仮定を付け加えないで,きちんとした出発点からずらずらと全部出ちゃうと思うんですが,そこまで良い理論かどうかまでわからないんです。

今のところ,時空の次元やゲージ群が決まってしまうというのはすごくいいんです。あと,六次元の部分の空間の格好については,今のところ色んな可能性があって,まだ難しいところですね。

仲田:調べていって,例えば余分な次元の形が一意に決まるようなものが見付かれば,それは良い理論と言えるわけですか。

江口:そう。理論から決まってしまえばね。ここで実験が手助けをしてくれて,ヒントを与えてくれるとすごくありがたい。特に超対称性の手掛かりが今一番欲しいです。ここ数年くらいで出ますかね。

仲田:楽しみですね。

江口:う~ん。どうなのかな(笑)。超弦理論はオール・オア・ナッシングみたいなところがあるので。ひとつでも合わないと,苦しくなってしまいますね。きちんと決まってくれる理論がいい理論なんだけれども,それが生き残るのは非常に難しいわけですね。

それからさっき真空のエネルギーがゼロになると言ったんですが,超対称性が厳密にあると本当にゼロなんですよ。ところが最近の宇宙の観測によると,真空のエネルギーにちょっと正のエネルギーが残っていて,宇宙の膨張が加速されているんです。今のところこれは全くのミステリーで,物凄く難しい問題です。説明できるアイデアが見当たらない。

基礎研究の役割

仲田:では,少し話題を変えさせていただきます。理論物理のような基礎研究は,中々社会の利益や有用性に結びつかないと思うんですが,それでも基礎研究を行う意義,あるいはモチベーションについてはいかがお考えですか。

江口:何か自然界の基礎的なものを知りたい,未知のものに惹かれるということはあると思いますね。それから基礎的な研究でどれだけ成果を出すかということが,今では国際競争の一つのテーマです。応用方面で良い成果を出すということも物凄く大事だと思うんですが,基礎的な方面で良い研究をすることも,日本のサイエンスをアピールする上で大事だと思います。

仲田:国のステータスを上げるという意味でしょうか。

江口:そうそう。お前ら応用しかやってないじゃないか,と言われないように。そういう風に頑張ることが社会への責任を果たすことだと考えています。それと本当の基礎的なところで人類の知恵を前に進めるという,文化のようなものに貢献することはあると思いますね。

アメリカの大学などでも,超弦理論が最近盛り上がったので,弦理論の優秀な研究者をとってくるのが大学のステータスになるんですよ。だから日本でも東大などから国際的な競争力のある仕事をコンスタントに出していかなくてはいけないと思っています。

我々の研究室の一つの機能として,院生で入って来た若い人たちに,高いレベルの研究やトレーニングをしてもらい,外国の優秀な研究所や大学でさらに頑張って仕事をしてもらうということがあります。大リーグへ行って活躍するというのに近いですよね(笑)。実際に,この研究室からそういう優秀な,外国で活躍している人がいっぱい出ています。

そのためにはやはり日本も良い水準に行っていないといけないと思うんですが,これには研究室でよい仕事をしているということが大事ですね。

仲田:大リーグにいけるような選手を育てるためには国内リーグもしっかりしている必要があるんですね(笑)。

江口:Jリーグもレベルが高くないと,セリエAにはいけない,と(笑)。

ただ,全く同じレベルにはなかなか行かないですね。アメリカの一流大学の研究者の層の厚さまでは,日本はまだ行かないと思います。メジャーリーグと日本の野球が試合をすると,日本はやはり劣勢だと思うんだけれど。野球よりは頑張ってるかな?(笑)。

物理学の今

仲田:では,最後になりますが,物理学,特に理論物理学を学ぼうとしている学生に,何かメッセージのようなものがあれば。

江口:素粒子論は,自然界の基本原理を追い求めている世界です。例えば本当の宇宙の始まりをきちんと理解する理論をつくれないかということをやっています。今のところ出来かかってはいるけれども,まだやることがたくさんあると思います。

他の分野にもたくさん面白い問題があります。物性理論みたいなもの,例えば固体物理では素粒子論とは全然違う系を対象にしますが,そこで見付かった現象が実は素粒子の世界にも使えるんです。

例えば現在ゲージ理論で使われているヒッグス機構というものは,固体物理で発見された超電導の理論を素粒子に使ったようなものです。

仲田:理論物理のなかで色々な話がつながってくる,と。

江口:何回もそういうことが起こりますね。不思議なことですが。

ところで,物理学は僕らが学生だった時代に比べてずいぶん成熟したと思います。僕が学生の頃にはゲージ理論のようなものはなかったんですよ。その頃は重力理論,アインシュタイン方程式とかをいじるのは老人のやることだから,若者がやっちゃいけない,仙人みたいになっちゃって,現実の世界から離れてしまう,何て言ってたんですが,今は全然そういう時代じゃないんです。

それで知識も増えたんだけど,手間もかかるようになりましたね。勉強するのにも時間が掛かりますし,実験するにも巨大な装置で長い年月をかけないと新しいものが見付からない。物理は各論に相当分化して,それぞれに蓄積があるので,それを一歩進めるには結構頑張んないといけない。

仲田:喜ばないといけない反面,これから始める人には大変ですね。

江口:今の若い人たちは,ある意味ではちょっとかわいそうだな,と思うこともあります。

ただ物理の中でいうと,宇宙論などはもう少し学問が若いですね。フロンティアまでわりと早く行けて仕事が出来ます。素粒子論が一番大変ですかね。分野によって違うと思います。生物もまだ若い学問じゃないですか?

仲田:そうですね。分野によりますけど,まだ今までの常識を覆して新しいジャンルを作るような発見はあると思います。

江口:まだ大きな転換があるという感じですか。物理ももちろんまだ転換はあるんだろうけど,それには相当頑張らないと。それでも最近弦理論で大きな進展があったから,若い人たちで惹かれる人も多いと思います。国際的にもたくさんの,名前も知らない人たちが次々と登場してきています。今は非常に元気のいい時期です。

仲田:これから実を結ぶ時期になるんでしょうか。

江口:最終的に良い理論が出来るかどうかはわかりません。ただ,今の弦理論が全部間違いということはないと思います。最終的に良い理論があったとすれば,その中に残って行けるようなものは何かあるんじゃないかと。弦理論にもかなり誤解もあるかも知れませんし,先ほどの真空のエネルギーがゼロにならないという問題は本当に難しいです。

仲田:そういうところの発展というのは,何か一つ革命的なアイデアあると動くという性質のものなんでしょうか?

江口:うん。革命がないとダメでしょうね。あといくつ必要かはわからないんですが。

仲田:では先生の研究室からそういう革命がでてくるといいですね。

江口:そうなると良いんですけどね。

この大学にいて幸せだったのは,優秀な人が来てくれて,国際的に一流のところで研究をしてくれてることですね。これからもそういう風にやって欲しいですね。

仲田:私も生物学の中では基礎研究をやっているので,本日はとても興味深いお話でした。どうもありがとうございました。

1. 量子化
量子力学では,古典力学では連続的な値をとる物理量,たとえばエネルギーや角運動量などが,不連続な値しか許されないようになる。これをエネルギーや角運動量の量子化という。
2. クオークの閉じ込め
クオークは加速器のエネルギーで出てくるはずの軽さにもかかわらず,核子をたたいても単独のクオークが出てこないという問題。例えばクオーク三個から成る陽子からクオーク一個をはじくと,二個のクオークが取り残される。すると付近にクオークと反クオークが対生成する(粒子と反粒子は,量子数を互いに打ち消すので真空から作れる)。生成した反クオークは飛び出したクオークに,クオークは残された二個のクオークに寄り添い,それぞれ中間子と陽子として観測される。
3. ブラックホール
中心に重力が無限大となる特異点を持ち,回転のないブラックホールで球形の,事象の地平線と呼ばれる殻を持つ。この殻より内側では脱出速度が光速を超えるため,一切の物質は外側に脱出できない。
4. エントロピー
熱力学から出てきた概念。簡単に言うと,「乱雑さ」を表す指標で,情報量とも関係している。
5. 等価原理
ニュートンの運動方程式は,「慣性質量」×加速度=力,と書ける。一方,重力は受け手の「重力質量」に比例する。二つの質量が等しいものだとすると,重力のもとでの物体の運動は,質量などによらない,時間空間の性質に応じた運動とみなせる。

第1回 アインシュタインの夢

2016-02-24 | 日記

第1回 アインシュタインの夢

科学の歴史は、“創造主の意思”ともいえるたった一つの自然法則を探求する道のりであった。17世紀、ニュートンは地上と天空の現象を統一的に説明する万有引力の法則を発見。19世紀には電気と磁石による現象が実は同一だという発見がなされた。そして21世紀、人類は全ての法則をわずか一行で説明する“万物の理論”へ肉薄しているという。最有力候補は超弦理論。異次元の存在を予言する奇妙な最先端理論への道のりをひもといていく。


3人の科学者

2016-02-20 | 日記

三人の科学者と私たち

 3人の科学者について、こんな昔話があります。

 あるとき、生物学者と物理学者、それに数学者の三人が、偶然同じ電車に乗り合わせました。そのとき、車窓から、丘の上に一匹の黒い羊がいるのが見えました。しかし、その3人は、それまで羊というものを見たことがありませんでした。

 そこで3人は、車窓から見えたことから、羊についてどんなことが結論付けられるか話し合いました。

 はじめに、生物学者は、「羊は黒い」と言いました。
 次に、物理学者はもう少し注意深く、「黒い羊もいるようだ」と言いました。
 そして、最後に理屈っぽい数学者は、「羊というものは少なくとも一匹は存在して、体の半分は黒い」と言いました。

 羊というものを知っている私たちにとっては、三人の科学者の話はなんともおかしく聞こえます。しかし、私たちが宇宙を見せられて、どのようなことが結論づけられるかと聞かれたら、結局のところ、この三人のおかしな議論と同じになってしまうのかもしれません。

 しかし、同じものを見ていても、どれだけ注意深く観察するかということで、見えてくるものがだいぶ違ってきます。

 今では宇宙像というのは実にさまざまなものがあります。しかし今回は、この数学者のように注意深く観察することで得られた、最近注目されている宇宙像について考えてみることにしましょう。



平らな宇宙?

 それは「平ら」な宇宙というものです。ビッグバンにはじまり、膨張していき、さらに今でもどんどん加速しながら広がりつづけているという宇宙像です。

 まあ、宇宙がビッグバンにはじまるインフレーション論というのは、誰でも聞いたことがあるはずですが、それ以外に気になることがありますよね。


 一つは、今でもどんどん加速して膨張していくということでしょう。一般的には、宇宙というのはビッグバンの急激な膨張に始まり、じょじょにそのスピードを落としていくと考えられていることが多いと思います。中には、いつか宇宙の膨張が止まって、収縮に向かっていくという説もあります。

 ようは、宇宙の遠い将来は、永遠に膨張しつづけるか、ビッグバンではじまりがあったように、いずれ何らかのかたちで終わりがやってくるという二つが考えられるわけですが、最近では永遠に膨張しつづけるのではないかといった考えを支持する手がかりが幾つか見つかってきました。


 もう一つは、加速しつづけるということよりも、さらに理解しにくい、宇宙が「平ら」という概念です。宇宙のかたちというのも、いくつか候補があります。主に、閉じた球の平面状に似ているもの、馬の鞍の平面状に似ているもの、そして、この開いていて「平ら」な宇宙像という3つが挙げられるでしょう。

 はじめの二つの宇宙像はどんどん進んでいけば、また最初の場所に戻ってくるというように、宇宙の果てを考える必要がなく、なんとなく想像しやすいのですが、どうも平らな宇宙というのは、いまいちピンときませんね。ちょうど一年前に、「平ら」な宇宙という題名の記事があちこちの新聞に載っていましたが、いまいち分かりにくいものでした。"flat"というのをそのまま日本語に訳しただけで、ニュアンスが正確に伝わりにくかったようです。

 そこで、この「平ら」な宇宙像というものを少しでも分かりやすくするために、何を手がかりにし、どうやってこの宇宙像に至ったのかということを追って考えてみる必要があります。



ビッグバンが残した鼻歌

 最近になって、ある三つのそれぞれ独立した研究グループが、「平ら」な宇宙を支持する内容の報告をしました。

 それぞれ、ブーメラン(BOOMERANG)、マキシマ(MAXIMA)、デイジー(DASI)と呼ばれる研究グループで、このうち二つは南極の空で望遠鏡をつるした気球を飛ばし、そして、もう一つは南極の観測所から、宇宙の彼方を注意深く観察していました。今の南極は、いろいろな研究グループがいろいろなことを観察しており、非常ににぎやかになっています。

 ご存知のように、夜空に見えるものは、決して今の私たちと同じ時間に存在するものだとは限りません。宇宙で遠くのものを見るということは、過去のものを見ているということと同じ意味をもってきます。光の速度が速いため、地球上では無視できるよなこの時間のずれも、宇宙では無視できないものになってきます。例えば、今目に見える太陽は、8分前のものですし、太陽の次に近くに見える星は4年前のもので、私たちの銀河からもっとも近いといわれているアンドロメダ星雲は200万年も前のものです。

 そのため、観測するものに、私たちの地球からより遠いものを選べば、宇宙が誕生して間もないものも見ることができると考えられるわけです。そこで、この三つのグループが一生懸命観測していたのは、宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background Radiation, CMB)というものでした。これは、宇宙のあらゆる方向からやってくる、かなり波長の大きなマイクロ波のことです。


 ビッグバンの直後の宇宙は、今よりもはるかに温度が高く、非常に高密度な状態でした。また、物質は今のような状態で存在せずに、原子を構成するさらに小さい素粒子に分かれて飛び交っていました。このときの宇宙は、あまり密度的にむらのない均一な状態でした。しかし、膨張するにつれ、次第に宇宙は冷えていき、それぞれの素粒子が固まっていき、原子をつくり、今の星や銀河をつくっていき、不均等になっていきました。

 宇宙背景放射というのは、この二つの時期の中間にできてきたものと考えられています。ちょうど宇宙が冷めはじめる30万年後くらいのときにできたもので、そのマイクロ波を観測することで、当時の宇宙の温度分布の様子が現れていると考えられています。
(宇宙背景放射の観測図、http://www.physics.ucsb.edu/~boomerang/new_press_images/raw_images/newmap.jpg )


           Coutercy Boomeran 

 したがって、宇宙背景放射からのマイクロ波は波という点で音と共通しているので、宇宙が誕生してまだ幼いころに残した鼻歌のようなものといえます。それが150億年以上たった今になって私たちの住む地球へ届いてくるのです。もっとも、鼻歌は周波数が低すぎるため、私たちの耳にはまったく聞こえないのですが、科学者たちは、非常に注意深く、その小さな音の鼻歌を観測したのです。


目に見えないもの

 では、科学者たちはこの鼻歌から、どのようにして「平ら」な宇宙像に至ったのでしょう。一般相対性理論では、重力というのは、時空が歪んでいるために時空に沿ってまっすぐ進んでも、曲がっているように見えるというふうに説明されます。そのため、はじめに平行だった光はいつまでも平行に進むとは限りません。互いにはなれていったり収束していったりします。ところが、平らな宇宙というのは、平行な光はいつまでも平行なのです。

 ここに、平らな宇宙と球状に閉じた宇宙を示す図があります。

  図1  「平ら」な宇宙       図2  球状に閉じた宇宙



 図1は平らな宇宙で、図2は球状に閉じた宇宙です。同じ大きさの赤の線を地球から観測したときに、それぞれの角度が違ってくるのが分かりますよね。平らな宇宙では、光はまっすぐ進むので、角度は小さいままです。ところが、閉じた宇宙に沿って曲がって進んだ光の場合は、角度が大きくなります。したがって、宇宙背景放射が実際のものと比べてゆがんで見えてしまうのです。三つのグループは、この角度の違いなど観測していたのです。これが「平ら」と表現される宇宙で、これを根拠にして宇宙が「平ら」だと考えているのです。「平ら」というのを二次元の平面と考えると、ちょっと誤解しやすくなってしまいます。


 今回の観測をしたグループのある科学者は、この平らな宇宙像について、今までの理論に奇妙なほど矛盾せずに、宇宙論の標準モデルになりうるほどだとさえ言っています。もちろん、これで宇宙像が決定したわけではありませんが、宇宙論というのはある意味、つじつまあわせの理論(ファッジ・ファクター、fudge factor)の歴史とも言えるわけで、その点は、この「平ら」な宇宙像とは大きく評価できるものかもしれません。


 また、今回の観測を考える場合、もう一つの大きな謎を避けて通ることはできません。それは、宇宙の質量の分布です。この報告によると私たちの目に見える、星や銀河、人間、車、ネコなどといった、私たちの目にするふつうの物質は、全宇宙の質量の5パーセントにも満たないということです。では残りは何かということになりますが、謎の多いダークマターが30パーセント、そして、さらに謎なダークエネルギーは65パーセントも存在していると考えられています。

 この目に見えない質量やエネルギーの謎をを、ダークマターやダークエネルギーと考えることこそ、宇宙論のつじつまあわせの典型例のようなものなのですが、実はこれについても、最近、本当にダークマターやダークエネルギーが存在するという有力な手がかりが見つかってきています。

  
 今までは、宇宙を理解しようとするために、多くの科学者が夜空に光る星などの目に見えるものを中心に観察してきました。しかし、これらは宇宙全体の非常にわずかなものだったのです。これからは、宇宙をより深く理解するためには、目に見えるものと同時に、ダークマターやダークエネルギーという見えないものも詳しく観察していく必要があるわけです。


第4回 変貌する“心の未来”

2016-02-20 | 日記

第4回 変貌する“心の未来”

物理学の発展を背景に、この15年ほどで脳と心、意識とは何かについての理解が急速に進んだ。今後は日々の記憶や仕事のノウハウを互いに送りあったり、人間の人格そのものだと考えられる“神経回路の全体図”をデータとして送信できたりするようになると考えられる。すると宇宙旅行もレーザービームに人間の意識を乗せ、光の速さで行うことが可能になるというのだ。大変貌を遂げる人間の脳と心の未来に最先端の理論物理学者が挑む。


第2回 “万物の理論”の驚くべき予言

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“万物の理論”の最有力候補である超弦理論はSF以上の極めて不思議な世界を予言する。まずは「多元宇宙」。ビッグバンから生まれた私たちの宇宙は実は唯一ではなく、無数に多くの“別の宇宙”が存在しうるという。また、未来や過去への時間旅行も可能だと考えられる。そしてブラックホールの中に入り込めば、別の宇宙への一足飛びの旅行も可能だという。“万物の理論”が指し示す、驚くべき世界を堪能する。


電気の正体

2016-02-02 | 日記

電気が生まれるしくみを知ろう

電気の正体はなに?

原子核のまわりをまわる電子

わたしたちの体、動物、空気、水など、世の中のすべてのものは「原子」でできています。
原子の構造は、真中にプラスの電気を持った「原子核」があり、そのまわりをマイナスの電気を持った「電子」が飛び回っています。
この電子が、なんらかの力を受けて移動すると「電子の流れ(電流)」が生まれて、それが電気になります。

電気はどうやってつくられるの?

電気は、磁石とコイル(うずまき状に巻いた金属の線)を使ってつくります。

電気は、磁石とコイル(うずまき状に巻いた金属の線)を使ってつくります。コイルとコイルの間で磁石を回すと、電子の流れができて、コイルに電流が流れます。これを“電磁誘導”といいます。

自転車のライトも同じしくみです。

自転車のライトも同じしくみです。
タイヤの回転に合わせて磁石を回すことで、
コイルに電気が流れます。

発電所では、タービンという大きな回転機を使って磁石を回します。

このしくみを大規模にしたのが発電所です。
発電所では、タービンという大きな回転機を使って磁石を回します。
蒸気などの力でタービンを回して電気をつくっています。