岩政伸治研究室

白百合女子大学岩政研究室  ―場所は本館3階英文研究室の向かいです。

■ プロジェクト・フィクション:文学上の新しいサブジャンル

2011-06-08 20:16:00 | 岩政ゼミ課外授業@スタンフォード
<写真はスタンフォード中庭で夏によくみえる変わった雲。気候の違いによるものか?>

[岩政ゼミ課外授業@Stanford]

このコラムではスタンフォードで行われている講演、セミナー、ワークショップ、授業を紹介します。

Humanities Centerで行われた比較文学博士課程の院生ミシェルの発表会に参加しました。彼女が博士論文のテーマとしてもくろんでいるのは、project fictionという文学上のサブジャンルの確立です。世の中にはいわゆる難解な文学が存在します。彼女の試みは、読者が文学作品を受容する立場から、小説の中にproject novelを見いだそうとするものでした。彼女によるとproject fictionとは、
1.長編で複雑であること、
2. 読者と特別な関係を築くものであること、言い換えれば、難解な小説が読者との関係を制限し、一般読者をほとんど無視するのに対して、こちらは読者の積極的な参加を促すもの、
3. 批判的考察を提供し、読者の知性と想像力を刺激し観察力を高めることで読者に哲学的洞察を促すもの

具体的な例として、セルバンテスの『ドン・キホーテ』、メルヴィルの『白鯨』、ジョイスの『ユリシーズ』、ヲレスの『インフィニティ・ジェスト』を挙げていた。論文で何をやりたいのか目的がはっきりしているという意味では卒論をこれから書こうとしている学生には、学ぶべき点があるが、テーマの選択としては大きすぎて文学史を横断する知識を必要とし、無理な結論付けをまねく恐れがあるのでまねをしないように。
6月8日@Humanity Center. 人気ブログランキングへ 日記@BlogRanking

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