『 うさぎの言霊 』 Rabbit's Kotodama 

宇宙の謎、神と悪魔と人とは?

《 第二章 》 〈 第一話 〉 正邪の進軍 ( 後 編 )

2019年02月02日 17時42分12秒 | 小説


 遂に始まった正邪の最終決戦!

邪神軍は、主神が封印を解いた 「造化の業」 を悪用し、
怪物を産み出しました。

 第一の怪物は、ゴジラの紛い物。
 第二の怪物は、一体何だろう?

  あなたの目でお確かめ下さい!


 《 キャラクター&キャスト 》

    ( 邪神軍団 )

総  帥 サタン ( ルシフェル/クラウド ) アントニオ・バンデラ〇
司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇ー
 将 軍 グリオス   / アンソニー・ホプキン〇   
       将軍 ドルン と NO.2 争いをしている。
       ただし悪趣味は 邪神軍 NO.1!

 アメリカ大統領 ( スタンリー・ミニットマン ) モーガ〇・フリーマン
 日本首相 ( 阿部一郎 ) 笑福〇 鶴瓶


        ( 推奨BGM )

       フランツ・リスト作曲
     『 ハンガリー狂詩曲 』 第二番

       カラヤン&ベルリンフィル

https://www.youtube.com/watch?time_continue=8&v=e6iOzuPHjiE  

    




    あの巨体が果たして何処に行ったのか、探すまでもないでしょう。
    何しろ、表れた瞬間に正神軍は察知するでしょうから ・・・

    我等は瞬間移動で、ここ大阪の中心部、
    大阪城を望む五キロ程離れた場所に居りますが ・・・

      異常事態発生です。


   大阪城の詳細は右記から ・・・「大阪城パークセンター」




    何とその大阪城は見る影も無く潰され、
    代わりに 黄金の卵 が 築 城 ? されているのです。


《 やれやれ、あのグリオスは、
 とんでもない注文を手下共にしたようじゃ。》

「 あっ、それは~お聞きしたいような、したくないような。」

《 あん? まあ、そう言わずに聞きなさい。
 よいか、奴は有りっ丈の貴金属を
 戦利品として献上するよう命令を下したのじゃ。

だから、西日本全ての財宝を取り込んでいるので時間が掛かったのじゃ。

 しかも体内で貴金属を加工し、
 表面を金箔の鱗や宝石で飾り付けているそうだ。
 この際、己の欲望を満たす為なら何でもするということじゃな。》


    モッタイナイデチュウ。 
    品ガナイデスワ、ヤダヤダ。

  叡智晶の拡大映像では、はっきり金の鱗が映っています。
  それにしても、さっきの邪龍より巨大です。

 大阪城で金の卵となれば、
 黄金好きな秀吉を連想させますが ・・・
 どうせ、金ピカの龍でも出るのでしょう。

  大阪の象徴を破壊され、地面をまるで地引網のように、
  様々な宝飾品を抱えて引き摺られる気分は最悪の筈です。

 セレブも商人の皆様も、これ以上の屈辱は無いでしょう。
 あらゆるものを奪われ、怪物の一細胞になってしまうなど
 死ぬより嫌でしょうが、もう取り返しが付きません。

  この世の終わりかもしれない時なのに、
  強欲な人は大事な物を身に付けたりして
  他人から奪われないように守る。

 堕天使グリオスは、恐らく人間のこういった強欲邪欲に付け込み、
 手下の憑依霊に命令し身に付けさせ、
 戦利品として献上させたということでしょう。

  暫くすると、間違いなくアレだろうと思われる
  怪物の形が現れてきました。
  うずくまりながら複数の唸る声が不気味に響いて来ます。

   日本人なら、ゴジラに匹敵する恐怖の怪物と言えばアレです。



         現在時刻、八時三十六分。


         ようやく両翼を広げながら、
     前屈みだった三つ首を、ゆっくり持ち上げ始めました。

         こいつは黄金の三つ首竜 ・・・

     そう 、「 キ ン グ ギ ド ラ 」  で す。


      勿論、派手さで言えば何者にも勝るでしょう。
    黄金の鱗は胴体に、牙、角等には宝石を散りばめています。

           総額、数百兆円?

    体内には、きっと札束製の茶室とか黄金の城があるに違いない。

        太い足、そして腕は、腕 ??? 

          見当たりませんが。

    あ~~腕って無かったでしたっけ? 円谷プロさ~~ん!
       むむぅ ・・ 無い! と断言致します ・・・

         そうだ、確か無かったな。

         ただ、翼は少し違います。

        映画で観るキングギドラの翼は、
       生物には有り得ない形状をしています。

     強いて言えば、折り畳めないコウモリの羽を、
     短くしたようなものですが、
    こいつの場合は、鳥類の羽の形状と同じなのです。

   大鷲の翼を金色にしただけです。

  この羽の部分は、胴体その他の鱗と違い、金色の羽毛のようです。

 体に巻きついていた尻尾が伸びてきました。
 これも長くて、先の部分が三叉に分かれています。

  その長さは、約五百メートル。

 さぞかし秀吉も、草葉の陰から喜んでいるでしょうか、
 それとも嘆いているのか?

  あ~分かりません。

それで今、両翼を目一杯広げて豪華絢爛さを誇示しているようです。
ただ、その両翼の幅は ・・・ 千メートル近くありそうです。
何せ、大阪城公園の幅一杯に届きそうなのですから。

  幾らなんでも大き過ぎるでしょう。それに飛べないでしょう。
  でも、羽があるんだから飛ぶんでしょうねえ?

    はあ ・・・


《 それはどうかなぁ~?
 あんな質量では、歩くのがやっとだと思うが ・・・
 ただ、金属類を捨てれば別じゃ。》 

「 あ、そうで御座いますか。何か安心したような ・・・」


        身長約七百メートル。 

    体重、貴金属を取り込んでいるので、さあ?
    ・・・ 七、八十万トン位でしょうか。

  金銀財宝で覆われた空飛ぶ要塞、新大阪城!? 完成です。

        悪夢ですなこれは・・・

    【 がははは、世界制覇の為、いざ出陣! 】

      とか、不気味な声で言っていそうです。   

        あの、グリオス将軍が・・・

    約百分で築城されてしまうとは、
    一夜城を築いた秀吉はさぞかし悔しがるでしょう。

   それに、こんなド派手で眩しい化け物は、
   世界の何処にも発生しないでしょう。
   呆れるばかりで、これ以上ものが言えません。

  それから、例の鳴き声、


・・・ キリキリリリ、クリリリリ、カリリリカリン ・・・


  とか、妙な音霊を発しています。
  文字だけでは表し難い鳴き声です。

   ところで、この辺りに 「神の光玉」 は ・・・ 無いようです。

    ただ、頭上や地上の至る所に、
    世界中から届いて来る光の帯が見えます。

   世界の、祈りを許されし神の子の皆様には、
   何としても早く 「神の光輪」 出現のお許しを頂けるよう、
   精進されて頂きたいものです。

  ああ、奴が動きました。
  あの巨大な翼を羽ばたかせています。
  周囲のビル群が砕けて、埃のように舞っています。

   ば、芭蕉扇じゃあるまいし、やめてくれ~。

  それに六つの青い目が光って、
  三つの邪口からはそれぞれ何か分からん光線を、
  鞭のようにあちこちの地球の皮膚に打ち付けています。

   体は動かさず、
   首をあらゆる方向に向けて絨毯爆撃しているのです。

  ただ見ていると、炎が上がる度に羽ばたいて消火しています・・・
  火は消えて、建物は地面から剥ぎ取られ、
  段々整地されているようです・・

    一体、何の為なのか?

 もしかすると ・・・ 辺りが炎上すれば灼熱地獄になる。
 そうなれば、邪体に塗りたくった
 黄金のファンデーション が熔けて崩れてみっともない。
 宝石は燃えてなくなる物が多い。単にそれを避ける為なのか?
 まあ、それは派手好き綺麗好きの心理からすればそうかもしれない。

  物好きな強欲親父の趣味 ・・・ 付いて行けません。

   しかしねえ、一瞬にして焼け野原です。

  ほんの数分で大阪の街は破壊されてしまいました。
  これって誰も止めない訳ですね。

何しろ、正神軍は 「主神への祈り」 でしか対抗しませんから ・・・

 人間の邪欲から生み出された都市が、
 これまた邪欲が生んだ邪龍に因って破壊される。

  何とも皮肉な因果応報、相応の理であり、
  負の連鎖の結末であると思います。
  最期には、世界の文明そのものが破壊されるでしょう。

    実に虚しい事であります。

   そういえば、ママゴト政府と自衛隊は、
   皆化け物に取り込まれてしまったのだろうか?


《 いや、奴等は取り込まれてはいない、一人もな ・・・
 政府と官僚、自衛隊関係者の家族、その他の有能な学者、
 技術者達はきっちり残した。世界各国同様にじゃ。》

「 ・・・ しかし、一体何の為で御座いましょう?」

《 その答えは簡単じゃ。
よいか、本来は首相から直ぐ攻撃命令が自衛隊に下されるのじゃが、
アメリカ軍と連携を取る為、動かないだけじゃ。
韓国軍も同様の動きだ。

 何しろ邪神軍としては、
 さっきのように直接正神を攻撃しても歯が立たない。
 故に、遊び相手を残したということじゃ。
 人間なら丁度いい玩具を持っているしな。

それに家族を残さなければ皆、戦意喪失してしまう ・・・

アホらしい事だが、まだまだ裏がある。
それは、まだ言わないでおこう。
まず自分で推理するのじゃ。》 チ~~カ 。


   ああ、あれっ、何をしようというのでしょう?
   あの巨体が浮かび上がる程、羽ばたいています。

  飛び上がろうというのか? 無理だ!
  あの様子じゃ金属類を捨てよう等という気は無いようだ。

 それでも飛ぼうというのか?
 瞬間移動は出来ると思うのだが ・・・

ただ、この悪魔の親父のやることは無茶苦茶です。
全く、じっとしていられないのか?

 で、とうとう飛んだぁ! 
 ちょっと、信じ難いですが確かに飛んでいる。

超低速&超低空飛行で、ふらふらと
鳥人間コンテスト初エントリーをしたクルーじゃあるまいし、
滑走路から数十メートル飛んで、
琵琶湖に ドボン になりそうである。

 言わんこっちゃない!
 自暴自棄なのは分かりますが、やり過ぎなんですよ!

  も、もう駄目だぁ。

金の豚足が地面に着いて蹴って、縺(もつ)れて縺(もつ)れて ・・・

  転びそうだあー!

  ただ、必死だ。 いや、遊んでいるだけかもしれない?

        それで大阪城跡地から、
  西へ数キロ飛んで新淀川河口付近へ ドッボ~~ン! です。

  しかも前のめりで ・・・ 無様です。 なんという絵だ。

       その為、辺りは水浸し ・・・

       三つ首と胴体は川の中。
    足の一部と尻尾は岸に残ったままです。

   この真冬の水温では、五分と持たないだろう ・・・ か?

 ところで、数キロと言えど全然飛んではいません。
 こいつの体、七体分程ですから ・・・
 飛んだと認定されないのでは?
  
   頭痛いです、ホント。

 それで動かなくなった ・・・ 疲れたのか、死んだのか? 
 ピクリ ともしない。

   新淀川の河口で、キングギドラ が溺れて 土佐衛門 になり、
   誰かが突っ込み入れて来るのを待っているのだろうか?
   本気でそう思える。   

 詳細地図はこちら ・・・ 
https://www.mapion.co.jp/m2/34.69393911273391,135.50214916666667,15


《 どうせ狸寝入りじゃろう。
 それで、おぬしの予言は当たるであろう。
 他行こうか? あ、いや、もう玩具の兵隊さんは動いてしまったわい。
 はあ暫く様子を見るかのお。》  


   アラチュウ ・・・ あの宝石の中は、偽物で一杯ですのよ~。
   金の純度も低いし、プッ。

  あは~、メーサー砲も無しで大丈夫でしょうか?
  あれは効き目が無いようですけど、
  ガイガンやメカゴジラのレンタルは無いのかなあ?

 カプセル怪獣をウルトラセブンから借りるとか。
 ただ、あれは弱いしなあ。

そうだガンダム等身大が有った筈ですが、あれは張りぼてか。

 どれにしても小さ過ぎます。
 ああっ、ふざけて失礼しました。不謹慎でした。

   奴が土佐衛門に成り、三十分程経ったでしょうか?
  


       只今、午前九時二十六分。


      まだ動く気配はありません。
      このまま死んでいてほしいです。

    しかし死んだと判断したのか、
    ほんとにオモチャの自衛隊が来てしまいました。

  伊丹の千僧駐屯地から来たであろう陸上自衛隊、
  中部方面体、第三師団は次々押し寄せて来ます ・・・

    詳細はこちらから ・・・ おもちゃの兵隊さん



       総動員なのだろうか?

   それで、新淀川河川敷に隊列を組んで止まりました。

  どうなっているのか、実におかしな動きだ。
  まるで演習のように坦々と・・・

 この怪物を前にして、緊張感は見受けられるが、
 死を前にしているとは、とても思えない。

通常兵器で倒せる相手で無いことは、
誰から見ても一目瞭然である筈。

 故に特攻するかの如くの覚悟があって然るべきなのだが、
 隊員達の表情にはそれが見受けられないのだ。

  それとも、本気で死んだとでも思っているのだろうか?

   それに、攻撃態勢を取る訳でもなく、
   隊員が車両から外へ出て整列をしている。

  ・・・ これは妙だなあ ? それに臭うぞお ・・・

   彼らの思念を読んでみたが、実に謎めいている。


( あいつは味方だ。 落ち着け落ち着け・・・)

( 何としても人類を守らねば、邪神軍に侵略などさせてたまるか・・)

( クラウド様の言う事は信じられる。彼こそイエスの生まれ変わり。
 彼の言う通り、アメリカと協力し合えば理想国家は築ける。
 この作戦が成功した暁には、
 千年王国に英雄として迎えられるのだ ・・・)


  これはおかし過ぎる。邪龍が味方? 等と ・・・ 
  誰だクラウドとは?
  前にもそんな話を十和田湖上空でヘリの操縦士がしていたが・・・


   クラウド = 英語で意味は 「雲」。

  怪しげなクラウドコンピューティングの略。

  ネットで繋がり利用料を払えば
  高額なソフトも自由に使え、データ管理も不要。
  手元にはソフトが要らないというお手軽なシステムです。

 それが企業や個人に広まっている。
 何らかの事故等で利用出来なくなれば、仕事は直ぐストップ。
 ハッカーの狙いの対象にもなっているのです。

  それに、強大な権力を持つ者が、
  電波を使い思うがままに人間を操るれるようになるかも ・・・


 クラウド = 「支配するは我にあり」 とでも言いたげだ。

   それとも、

「 太陽など必要ない。
 全て暗黒の雲で覆われた我が造りし闇に永遠に生きよ。」

   ということだろうか?

 直に、毒入りの雨が地上に降り注ぐだろう・・・危ない危ない。

まあコンピューターとの関係は別にして、人間は完全に騙されているのだが、
イエスの生まれ変わりとしても証拠は何処に?
両手の掌に丸い痣でもあるのか?

 ただ実際、666の痣が頭のどこかにある筈だろうな!

  アンチキリスト、サタン殿!

 何れにしても人間起点の幸福観から逸脱した聖者達の話は、
 受け入れられることはない。

きっと悪魔の化身の偽善者は、
人間が求める理想の飴を与える密約でも交わしたのだろう。
ただ、裏で何を画策しているかは定かではない。

  案の定、予想外の展開で、
  邪神軍の壮大なる地球防衛作戦は開始されるようだ。
  見上げれば面白い物が見えます。


     それは、UFOの大編隊です。

  つまり天空浮船(あめのうきふね)の事であります。
  それが上空にわんさかおります。

その中の先頭の、巨大な母船と思しきUFOが地上付近に降りて来ました。

そのUFOの底から眩いビームが、地上の整列した自衛隊員の前に放たれ、
それと同時に、二十人程の人間がビームと共に降りて来ました。
こりゃあ、どう見ても各国首脳だな!

  当然、地球人のであります。

一列に整列した中央には大国が配置されました。
G20のそれぞれの顔色は、ドヤ顔で最高の色艶であります!

  ふん、全くふざけている!

 その一人は誰もが知る人物です。
 それはアメリカ大統領その人です。

名はスタンリー・ミニットマン。黒人大統領です。
それにロシア大統領、ニコライ・ラスプーチン。

 日本は、首相官邸で丸焦げになり亡くなった狸の親父の後釜 ・・・ 
 誰です副総理は?

   ・・・ 確か、阿部 一郎さん。


     そして、一番中央の男。
     この男がクラウドなのだろうか?

   黒髪の長身そして、いやんなるほどの腐れイケメンですが・・・
   こいつは富士山麓にいたサタンと瓜二つだ。

  先進国と新興国の首脳達は、
  自衛隊の代表数名と握手を交わし、短く挨拶をしています。
  緊急サミットか何かでしょうか?
  それとも予め、この日に備えて各国示し合わせていたのか?

 皆、落ち着いた素振りで、中には笑みを浮かべる者さえいます。
 臭い匂いがプンプンしてきそうだ。
 しかも腐った動物の匂いだ。

何しろ全員の魂はドス黒く汚れ、
悪魔や強力な憑依霊がびっしりと体内にへばり付いているのですから・・・

 ただ、人間の正義を貫こういう自信が漲っているのは確かだ。

  勘違いも甚だしいのだが、邪神の手下に成り下がった奴は
  真実を見失う事には慣れてしまうのだろう。
  否、知っても知らぬ振りが正解だろう。

 権力と金、そして能力が高い者、
 それに従順で文句を言わない納税者が適度に居ればいい!
 これが人間界の理想郷です。

この現状を許さない正神の神々が、
これらの人間を裁いて排除しようというのは、
当然至極のことであります。

  んん? 何やら動きがあるようです。

あのクラウドらしき人物が一人で、あの飛べない金龍に向かっています。
それで水面に覗いた鰐のような、三つ首中央の左目からビームが発せられ、
その光に彼は取り込まれて行きました。

  他の各国首脳は母船に戻りました。 
  そして上空に留まっています。

 うわ、やっぱし溺死してはいなかった金の邪龍は、
 ゆっくり起き上がりました。

それで、自衛隊のいる新淀川を隔てた対岸に、何とか足を片方ずつ乗せて、
翼を使い ドタバシャ と・・・やはり重過ぎるのだ。

 いったい何時までかかるんだろう。
 全く、動く度に地面が揺れて地響きが ・・・ ああ~あ。

自衛隊員は皆車両に戻り、水しぶきを避けています。
それに車両がバウンドしている。

きっと、あのクラウドも悪魔の誰かに憑依されているんでしょうけども、
グリオスと喧嘩しているに違いない。


  ( もっと優雅な動きが出来ないのか? 無様だろうがぁ!)
  ( 黙れ! 後から来て、うだうだ言うんじゃねえ!!)


    等と ・・・考えただけでも阿呆らしい。


《 うさぞうよ、あのクラウドはサタンが憑依しておるのじゃ。
 だから、グリオスはこっ酷く怒られておるじゃろう。
 全く、憐れじゃ。》


      ワタクシ、先程から可笑しくて、ププ。


「 ああっ、そうなので御座いますか。
 どうりで偉そうに見えました。」


  ところで、あの邪龍の中の様子は邪気が邪魔してか、
  私の能力では読み取ることは出来ません。
  邪気そのものが妨害電波になるのかもしれませんが、
  何とも言えません。

 それで五分程掛かりましたが、ようやく怪獣フィギアのような、
 羽を広げたポーズを取って得意気です。

  固唾を飲んで見守っていた自衛隊員達は、
  車両から出て拍手喝采をしています。

   こりゃあ実に滑稽だ。

    で、どうするんだろう? ・・・あれっ、


(((  自衛隊の皆さん、私は ネイサン ・クラウド です。

  この通り、少々派手な龍の化身は我が手中にあり、
意のままに操る事が可能であります。

阿部首相からの依頼は、
古くて邪魔な建物の撤去と、北方領土の返還。
加えてフィリピン、インドネシアなど東南アジア諸国の領土。
そしてその国の財宝と五百万人の労働者 ・・・で御座いますな。

いや~、中々御見事な領土の獲得であります。
それは各国首脳とも合意のことです。

 そう、我等正神の使徒として、これから中心的役割を担い、
 千年王国を築いていく上では妥当な報酬と言えます。

これから私は依頼遂行の為、各国を歴訪して参ります。
我等正神の龍体は世界中に展開し、既に作戦を開始しております。

 あなた方は己の使命を果たして下さい。
                                         
では、後に富士山麓で合流し、
正神の名を騙(かた)る邪神共の陰謀を打ち砕くのです。

 我等正神政権を守護し、
 人間を天国へ導く偉大なるアポフィス様よ永遠なれ!
)))

「「「 アポフィス様 バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ! 」」」


   なんだって? 

 流暢(りゅうちょう)な日本語で

スピーカーを備えた車両から声がしました。
 臭い演出だが、人間様には丁度いい目晦ましにはなる。


また天空浮船は、

球では天皇専用で万国巡幸に使用された乗り物であります。


故に過去に於いて、世界中にその事を記した文献や
物証=オーパーツ がある訳です。

 加えて竹内文書、約五百八十万年前の記述に、
 「 天空浮船の造り方を万国に伝える。」 とあります。

ですからインドには 「マハーバーラタ」 や
「ヤントラ・サルヴァスパ」 などの文献に、
「ヴィマナ=天空浮船」 の特徴や性能、操縦方法が記載されています。

 


 下記参照 ・・・ 究極のまとめ. COM

インドに眠る世界を滅亡させる古代UFO「ヴィマーナ」の謎 (kyukyoku-matome.com)

   



  物証はいくらでもあるのですが、学会が認めないだけです。

当然、どこかの地下で膨大な予算を投じて、
人工UFOを建造しては試験飛行している訳です。

 なにしろ、設計図があるんですから、
 その技術を再現する研究をするだけでいい訳です。

  宇宙人などというのも、全ての惑星の内部は空洞で、
  そこに居住可能なのです。

 つまり全宇宙の星の内部には、生命が溢れているのです。
 勿論、太陽にも月にもです!

ほとんどの人間は、政府と低能な学者、マスコミに偽情報を刷り込まれて、
盲信しているから夢と希望を失ってしまうのです!

 そういう理由から、星の表面だけを重視して探求しても、
 生命の存在を発見することは困難な訳です。

  地球は、宇宙共通惑星であり、
  宇宙の友人達の一部が転生して修行をしています。

  多くの人間の魂は、地球での転生を何度も繰り返しているうち、
  自分の出身星を忘れてしまっています。

 ですから、UFOだの宇宙人がどうだの論争することはないのです。
 真実を世界の強大な権力に因り隠蔽されているだけです。

   無知無関心が己と他人を不幸に堕とすのです。

  自分で調べて探求追求して確信を自信に繋げましょうよ!
  それが実力というものでしょう!

 それら上記の事柄は、
 「超図解・竹内文書」 計二巻、
 高坂和導 編著 / 出版社・徳間書店
 に分かりやすく記載されておりますので是非お読み下さい。



 しかし邪神を支持する国。
 さっきの首脳は立候補したのか、それとも邪神の指名か?

  これは、後者が正しいでしょう。

 邪神が使い易く、能力の高い国を選んだ。
 そして協力すれば、邪魔な国民を排除し、
 選ばれなかった国を旨く分配して褒美とする。
 その後は、悪魔の恐怖政治が始まる!

全く、なんて人間的欲望の理想郷であることか。            
そして、その欲望を煽(あお)る邪神。

 勝利の美酒を飲みながら脳裏に浮かぶのは、敗者の無様な姿。
 敗者を笑い、己は自慢で鼻を高くする。
 敗者を作らなければ勝者の快楽や優越感は無いのだ。


  イラク戦争はそうでしたよね。

9.11のテロ事件も、戦争を起こして欲しい人間の祈りを、
邪神が叶えてあげたに過ぎません。

 頑丈なビルがいとも簡単に崩れて、わざとらしい見え見えの演出。
 飛行機が突っ込む場所は決められていたでしょう、
 ダイナマイトを仕掛けた上にってね ・・・

  そして、見事に崩れた。

 テロ組織を利用し企画をしたお馬鹿な連中は、
 ビールやウォッカを呷りながら中継に見入って、
 その出来映えに手を叩いて喜んでいたことでしょう ・・・ あほらし。

  その後戦争に発展致しましたが、信じ難い程の体たらく、
  「 戦争詐欺 」 と言ったら怒られるでしょうか?

  では訂正して
  「 実戦 戦争ゲーム = 新しい武器と戦術を試してみよう!」 とか?

  尚更悪い? 
  ごめんなさい、イルミナちゃん!もう人間をいじめないでね!

 え、虫けらをいじめて何が悪い? 
 こりゃ、話になりませんな! あ~あ ・・・

勝敗が付きもののスポーツ、格闘技、ゲーム、ギャンブル、
選挙に訴訟、企業戦争など等。

敗者に情けを掛け、称える者がどれ程いるでしょう?
その敗者から生じる屈辱と憎悪は、邪神のエネルギーとなります。

 戦争はその最大の発生源であります。
 それが積み重なり今の世が出来上がりました。

その激流に日本も飲まれたのです。
神国日本の誇りや、大和魂は失われつつあります。 
  
但し本来、世界の霊的な牽引役であらねばならない
日本の責任は重大であります。

 今も尚、醜い波動を出し続ける人類。
 その邪念を浄化しようとする聖なる祈り。

善悪・明暗・光影がはっきりして来ました。
現在では、完全に分けられたのです。


     正 か 邪 か?


   後は主神様が裁いておられるのです。
   随時、天使達が成り代わって・・・



          ( 推奨BGM ) 

        ユー・ドント・フール・ミー  

        Queen - You Don't Fool Me 




( 執筆当時の作者時間 ) 二〇〇九年八月二日(日) 午前三時



 その後、セレブとかいう強欲人間を主に取り込んだ
 ゴージャスキングギドラ は瞬間移動を繰り返し、
 神の光玉を避けながら日本の街を邪光の鞭で破壊して周りました。
 奴は、官庁や公共施設等をなるべく避けて攻撃しているのです。

その間、神の光玉の守護神の神々は、
どなたも動かれることはありませんでした。

 そう、この 「神裁きの三日間」 では、
 今まで人間が犯した罪穢をしっかり見つめると同時に、
 その反省とお詫びをしなくてはいけないのだ。

であるから、神様が直接動いて世話を焼かれることはないのでしょう。

 ただ、火の手が光玉に近付かないよう、
 各国、「神の光玉」の守護神の皆様は、神の息吹で消しておられました。

  ですが、光玉の周りを破壊され、火の海にされても必死に祈る姿は
  痛々しくもあり、力強くもあります。

聖者と補佐役の連携は、こういう時にこそ大きく鍛えられているようです。
 怯える群衆を叱咤激励し、迷わず神への想いに集中させるのは、
 中々骨が折れることでしょう。


それで 世界政府専用豪華宇宙船団 も、
三つ首のお化けの後をくっ付いております。

 その化け物の一区画の仕事が終わる度に、
 交信し合って確認を取っているようです。
 阿部さんも御満悦でしょう。

  何とも御丁寧な仕事振りであります。
  悪魔共も人間の味方と思わせるのは随分面倒臭いでしょうに ・・・ 

   いやいや、意外とこの段階が
   一番ワクワクゾクゾクするのかもしれません。 

  ところで、あのアンドラスタの邪龍はというと 韓国 に出現し、
  そこで発生した化け物と合流し北朝鮮を壊滅させました。

 当然軍の反撃はありましたが、
 邪体に傷を付ける度に憎悪が膨らむだけで、
 返って邪気を強くしただけでした。

厄介な核は使う暇もなかったようです。
発射しても命中させるのは不可能でしょうし、自滅してしまうでしょう。

 韓国は北朝鮮を領土にするのが望みでした。
 加えて、マレーシアも領土になるようです。

  残念なのは、
  北朝鮮には一箇所も「神の光玉」は発生しなかったことです。

   韓国には一つですが・・・

  因みに、ロシアの望みはソ連時代の領土の復活。
  更に、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドです。

 はあ ・・・ ラスプーチンさんて欲張り!

中国はモンゴルと台湾、
ベトナム、カンボジア、タイ、ラオス、ミャンマーであります。
こちらも相当欲張りです。

 アメリカは、メキシコにカリブ海の島国全部と
 オーストラリア、ニュージーランド。
 それぞれ財宝と奴隷
 (低賃金で働く労働者という名目) 付きであります・・・

   やれやれ ・・・
   馬鹿馬鹿しいのでこの辺にします。


 その後、人間の夢を叶える神の化身達は、
 アジア諸国、ロシア、中東、アフリカ大陸を経て、
 ヨーロッパ諸国と渡りながら、破壊を繰り返しました。

  気になるのは、邪神と運命共同体になった国の軍隊の動きです。
  各国の海軍は日本を目指しています。

 しかも、多分日本の阿部さんには内緒なんでしょうけども、
 アメリカ軍とロシア軍は日本への核攻撃 の準備をしているのです。

照準は十箇所の 「神の光玉」 と、富士上空 「神の光輪」 に合わせています。
つまり十一箇所であります。

 お人好しのアメリカ依存症の日本としては、
 当然至極のように騙されているのです。
 今では同盟など形だけに過ぎません。

  敵は何処に? 味方はどの国? 抑止力って何ですか?

「 殺される前に殺せ、銃でも核でも、打たれる前に打て 」 が、
アメリカの常套手段であります。
銃や核を突きつけ、仲良くしようはないでしょう。
ふざけた理論であります。


 それで各国の軍隊はというと、
 太陽から発生した C M E の電磁波の影響により
 全軍は活動出来てはいません。

それに現在地球上を覆う厚い雲により、
衛星による通信は不通となっております。
確実に通信出来るのは、人工宇宙船からだけのようです。

 各国の首脳は、さぞかし優越感に浸っていることでしょう。

悪魔共に煽てられ、鼻高々で邪魔者が消されてゆく様を高みの見物とは、
どんな快楽にも勝るでしょうな ・・・

  その有頂天に立っていられるのは、後二日余りです。



  現在日本日時、十九日午後九時十五分。


 各国で発生した怪物共は何百になりますが、
 次第に合体融合して七体になっています。

怪獣一体の全長は、優に三千メートルを超えているようです。
どれも形容し難い程、醜くおぞましく、のろまです。

 とは言え、その図体からして動く度に地球には多大なる負担が掛かり、
 地震に火山の噴火が付いて回っております。

したがって、残すべき約束の建物が破壊される事が
しばしばあるので御座います。
当然、奴隷の数も減ってしまいます。
としても、人間の類が正神の名を騙る悪魔に逆らえる筈も御座いません。

  樅手で、

 「 いや~、もう少し何とか旨くピンポイントで攻撃を ・・・
  ああいや、ぜ、贅沢は申しません。大変失礼を ・・・」

  等と言うのが関の山でしょう。

 その七体の邪龍には、
 それぞれ 堕天使 = 七大悪魔 が搭乗しております。

それで、奴等はポルトガルに集合して北米大陸にテレポートしました。

 我等は、奴等の後を追って、ここニューヨークにおります。

  叡智晶ではアジア、アフリカ、中東諸国、ヨーロッパでの、
  いやんなる程の奴等の悪行が映し出されてきました。

  それは特殊な手法を使い、動く魔城内部の悪魔共の会話を傍受し、
  更に映像まで鮮明に捉える事に成功したからに他なりません。

   どのような手法かと言えば、
   あ、あのぉ、三十郎様が、すっ、凄い熱視線で私を ・・・


《 何が熱視線じゃ、戯けめが ・・・ もう良い。
 ここはわしの担当地区のマサチューセッツ州に近いので、
 張り切って説明を致そう。》

   マッサチュウチュウナントカ? ・・・ フ~ン

《 あ、あのな知ってて言う事はないだろ。まあいい ・・・
 な~に、その手法というのは、
 邪龍の内部にスパイを潜入させておるのじゃ。

そのスパイは 「神の光玉」 内で、
流星火矢 を受けて亡くなった者の一部のことじゃ。

本来は邪龍に取り込まれないのだが、スパイ役を引き受ければ、
地獄の星での修行場所を、数段楽な場所にする事を確約したのじゃ。
まあ強制なんだが、皆喜んで応じてくれたわい。

つまりそのスパイを邪龍内部の要所要所に配置させ、
その魂の霊眼を通した映像と音霊そのものを、
我々が見聞きしているという訳じゃ。》

  チュウナノジャアー!

  御神示、真にありがとうございました。


  それでこの続き、凄くアホらしいですが御覧になります?
  ・・・ 見たいですよね。
  では、気乗りしませんがお見せ致しましょう。


  《 正気かおぬし?》 わたくし、もう気分が悪いでチュウ!

    「 止むを得ませんので、ご、御辛抱を ・・・」

    




 さて、人間の邪欲が具現化した場面をお送り致しました。
 無さそうで有りそうでしょう!

馬鹿馬鹿しさ100%! 
そんな雰囲気が充満しているでしょう!

 人間の愚かさは、
 これからも嫌というほど見せ付けられること請け合い ・・・

ほんとに人工UFOも邪龍も異星人も、
あなたの目の前に現れるかもしれませんね!
実際、現れてもビックリ仰天しないでくださいね!

 事実は小説より奇なり! と申しますよ ・・・

淫らな夢と妄想は、具現化しないでくださいね!
金と権力、物欲、食欲、性欲の度が過ぎると、
悪魔のオモチャにされ地獄に必ず堕とされますよ!

えっ、今でも地獄ですって? では更なる地獄が待っているのです!

 だから、邪道ではなく、神の正道に方向転換しましょう!
 勇気と愛を持って ・・・

あ、そうそう ・・・ 堕とし堕とされの恋愛ゲーム!
お互い堕とし合っては、
天国とか幸福なんて夢のまた夢でしょうに ・・・

 まさに恋愛地獄ですね! 
 そこに運悪く子供ができてしまっては、
 負の連鎖が子々孫々まで続くでしょう!
 もう、いい加減止めましょう!

  あ、私もそろそろ説教は止めます。
  恋愛狂の人がお怒りでしょうから ・・・

 純愛って、死語になったのでしょうかねえ ・・・
 実際できるカップルがほとんどいないようですし ・・・
 情けな~い ・・・

  肉食獣みたいな男女の恋愛って淫らですねェ ・・・

   ん? 愚痴みたいになってきました!
   やっぱ、止めます!


次回からの 「 戦争ゲーム 」 というお話は、
更に悪魔と人間の邪欲が具現化していきます。

 その醜悪さは度を越すものです!


   では、大阪愛の一曲を ・・・

  
ウルフルズ 大阪ストラット


私、この曲好きです ・・・ たのしいでしょう ・・・




《 第二章 》 〈 第一話 〉 正邪の進軍 ( 前 編 )

2019年02月02日 16時34分15秒 | 小説



       《 キャラクター&キャスト 》

    ( 天神七代神 )

 初  代  元無極躰主王大御神( 創造主 = 主神 スシン ) 北大路 欣〇

 天神六代  国万造主大神( 大黒天=破壊・再生・生殖の最高神 シバァ )
                      西田  敏〇

 天神七代  天御光太陽貴王日大光日大神

      ( 天照日 アマテルヒ 大神 )
       東京 「神の光玉」 守護神  中村  雅〇 



   直径一キロとしていますが、ちょっと小さいので、
   直径三キロでお願い致します。
   でないと、800万の神々は収まらないと思ったからです。

   

    《 天神七代神専用 浮遊議長席 》

  下書きで未完成です。でも雰囲気は掴めますよね。

この細部を描いて彩色するのは、時間が掛かり過ぎるのでやりません。
どうか、どうか御了承くださいませ。


更に、この「正邪の進軍」のお話は、あまりにも長文なので、
二分割と致しますので御了承ください。


さて、正邪の最終決戦の火蓋は切って落とされました!
常人には予測不能! 理解不能? 驚愕の展開が待っておりますよ!

 神の光玉の群衆達は、裁きの天使から流星火矢を受け、
 生と死に直面し、動揺を隠せません。

翻弄される人間がこの窮地を、どう脱していくのか?

 そして、主神が封印していた霊的な力が解き放たれていきますが、
 その力をどう使うのか?

  愛と憎悪の力が両極端に作用していく様を、
  想像しながら御覧ください!



          《 推奨BGM 》

       アントニン・ドヴォルザーク作曲

   交響曲第九番ホ短調 作品九十五 『 新世界より 』 第一楽章 

       ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 
       ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団   
   


  


( 執筆当時の作者時間 ) 二〇〇九年七月八日(水) 午前二時 


    二〇 X X 年十二月十九日(金)午前7時 ジャスト
          カウントダウン ( 72:00 )



   正神軍司令部の大神様はじめ四大天使の皆様は完全武装され、
   その魂と御目からは轟々と燃える闘気が溢れ出ております。

   場内には、只ならぬ緊張の糸が張り巡らされているようです。

    勿論、幾多の野鳥や昆虫等は羽根を休め、
    息を押し殺しているのでしょうから姿は見えません。

      軍配を右手に持たれ、大黒天様が神々に対し、
      開戦の宣言をなされるようです。



      《 正神軍の皆様、いよいよ時が来ました。 

            この時が!

         狂おしい程の怒りを抑えるのに、
      皆様も御苦労なされた事は良く存じております。

    そして、あの主神様の長くて太くて強い堪忍袋の緒も、
           とうとう切れました。

       この場からでも、その極限のお悲しみ、
      お苦しみが我が胸に突き刺さって来るのです。

  全く許し難い行為を、邪神軍と我が神の子人は積み重ねてきました。

        ・・・ さあ、もう時間です。

    我等は主神様の愛と悲しみが、どんなものであるかを、 
        邪神軍と人間達に誇示すると共に、
     醜く堕落した不逞の輩を拘束断罪するのです!!


    大黒天様は深呼吸をされると、
    軍配を高々と上げられ、一気に振り下ろされました。


 《 陣太鼓を打ち鳴らせぇーい! ラッパを吹き鳴らせぇーい!
   裁きの天使達よ、火矢を番え狙いを定めよおおぉーっ! 》



     ああ、太鼓とラッパの音霊が聞こえます。

    それに見上げると確認出来ます。
   有り得ない光景。不気味な程、
  暗い雲の下に無数の赤い星のような光が ・・・

  私、息が詰まって血が凍り付きながらも、
   目は血走っているような気が致します。

    そして、武者震いが ・・・ これが戦慄というものでしょう。


      叡智晶には深紅の弓に火矢を番えた
      天使の映像が映し出されました。

     その火矢とは赤い光りの束に見えます。
    その紅の火矢を、天使がギリギリと引き絞っています。


  《 とうとう始まる、始まるぞ~! 》 チュウ、チュウ~~!


    駒沢公園の皆様も黙想を解かれて、
   雲下の星に気付き戦慄で体が硬直しているようです。
  どよめく声ばかりが辺りを支配しています。

 クオォ~~~ン ・・・ クウオォ~~~~~ン ・・・

  翼を広げた鳳凰の鳴き声が響いています。 

   恐らく全次元に ・・・

     大黒天様は頭上の鳳凰と大神様方を見つめられた後、
       全身全霊から炎の神気を放出されました。


      《 只今より正神軍は進軍を開始する。
        邪神軍よ思い知るがいい!

       流星火矢を放てぇーーい!!! 》
 



     全世界の神の光玉内の人が、今何をしているのか?・・・
    恐らくそれは、私と同じく上空を見上げていることでしょう。

  流星火矢は一気に降り注ぐと思いきや、
  緩やかに落ちる光のシャワーの如くに、我等が頭上に迫っています。

 裁かれるという真実を知らぬ当人達は、
 皆と一緒にうっとりと天空に描かれる神の絵画に見蕩れています。

  ただ何事か気付いた憑依霊やその他の邪霊達は、
  ジタバタと足掻き始めました。
   無数の悲鳴も聞こえます。

     もう遅い、逃げ隠れする事等は出来ないのに ・・・


《 当然だ。流星火矢は魂に照準を合わせれば、
 自動的に魂を追って貫くのだから、外しようが無いのじゃ。

  故に速度は関係無い。

  人間の兵器で言う、
  レーダー誘導や赤外線誘導ミサイルのようなものじゃ。》

   チュウ!


「 これは、恐るべき兵器で御座いますね。」

《 じゃから、余程の事がない限り使用許可は下りんのじゃ。》


 あああ、とうとう火矢の第一波がぁ~、地上に到達致しましたぁ~。   
 うわっ、既に第二、第三波と次々に絶え間なく放たれている。

  あっ、バタバタと場内の人達が倒れてゆきます。
  逃げ惑う邪霊達も断末魔の悲鳴を上げています。

   この場内は、幾千万に及ぶであろう
   邪霊のもがき苦しむ姿で溢れ、見苦しいのなんの。

  ただ、憐れでなりません。
  こうなることは分かっていた筈なのですが ・・・

 今頃、神に詫びている者もおります。
 がしかし、その祈りも空しく火矢が命中しました。

  解せないことに、目の前には一風変わった光景が広がっています。

 急に倒れた家族や隣人を目の当たりにして、
 現実を理解出来ずにいる者が殆どですが ・・・
 そうでない者も。

  全員に火矢は当たっているのに、
  苦しまずに倒れて心臓の鼓動がしない者と、
  恍惚の表情で歓喜の声を上げる者がいるのですから ・・・

   ああ、分かった。

  そうか、人の醜い魂と憑依霊、
  その他の邪霊に火矢が打ち込まれた訳だから、
  元々魂が綺麗な者は、憑依霊の呪縛から解き放たれ、
  そりゃあ痛快軽快爽快といったところでしょう。


《 気付くのが~、遅~い。》  トロ~イ。

「 も、申し訳ございません。」


   あ、剣三郎が動きました。 ただ、涙を堪えています。


「 皆さん、落ち着いてお聞き下さい。

只今、黒須様から通信がありました。
それによると、光玉内で幾多の人が亡くなっておりますが ・・・
それは神様の御都合でそうなった事でありますから、
あまり嘆かないで下さい。

その方は救いの死を与えられたという事で御座います。
つまりは、魂は抜けてもその場で祈る事が出来る訳です。

どうか ・・・ 心を乱さずに、
これからの祈りに集中して頂きたいと思います。」


  これは、止むを得ない嘘で御座います。
  その場で祈ることができる条件は、
  あくまで魂が規定の範囲内の美しさがなければなりません。

 邪念邪欲に惑わされ、邪道に流され惰性で生きる者が、
 この聖域に留まることはできないのです。
 聖者補佐役の剣三郎が嘘をついたのは方便でしかありません。
 つまりは亡くなった遺族の志気を下げない為のものです。

  あれっ、火矢を受けた霊達が、
  まるで汚れた絨毯が引き摺られるように、
  南西の方角に向かっている。

 しかも、北東側からも絶え間なく、どんどん押し寄せて来ている。

  うわ、こっち見ないでくれ。 気ぃ~持ち悪いですねぇ。
  この火矢を打ち込まれた霊達は、
  神の光玉外に出される訳ですが、その後どうなるのだろう?


《 それはな、三日間激痛を存分に味わう以外は何も出来ない。

それと火矢を受けた魂は、
光玉の中心から放射線状に退場させられるのじゃ。

 さっきの高木や、その仲間の魂も流されて行ったわい。
 この者達は兵力にはならん。
 邪神軍も読んではいただろうが ・・・ ただ、情けないのお。》 

   チュウ。


「 絶望と激痛以外にない道ですか ・・・
 そんな道を歩む者が、無数にいるのですね。
 その姿を、主神様は見続けなければならないとは、
 それも想像出来ない苦しみですね。」


《 おぬしの言う通りじゃな。主神様が一番お辛いのじゃ。
 だが後に引けぬ者は、意地と誇りを掛けて反撃に出る。
 その霊眼でも分からんじゃろうが、
 横浜の港付近に邪気が充満してきておる。
 直に、そのおぞましい姿が物質化するであろう。》


「 横浜ですか、ちょっと邪気が向かう方向位しか分かりません。」


《 そうか、まあ聞きなさい。
 よいか横浜目掛けて北と東日本の邪気が集まる。

動物に転生していた魂と肉身まで加わるのじゃから、
とてつもない数じゃ。
それに加えて光玉内の邪気も加わるのじゃ。

 憑依霊は強制排除されたが、
 魂の輝きと性格や想念が急に聖者並になる訳ではないからな。

ほら、見てみよ。
皆の魂と臍の周りを。あれは既に、人の霊眼でも見えている。》

  チュ~ウ。


「 それは・・・
 ああ、一人一人の頭とお腹から濁微粒子が溢れ出て、
 足元に流れ落ち・・・火矢の洗礼を受けた魂と
 一緒に流れて行くのが見えます。」


《 その通りじゃ。
 それと、今から又一つ封印されていた力が解き放たれる。

 「招喚の儀」の時のように、祈りの光線は勿論の事、
 濁微粒子に加え魂の輝きが見えるようになる。
 おぬしの霊眼の能力と同じになる。

 それがどういうことか分かるかの?》


「 それは、つまり嘘や不平不満であることが、
 口に出さずとも濁微粒子が出ることで、
 誰からもばれてしまいます。

  その度に濁微粒子が、
  邪霊の化け物のエネルギーになるものと思われます。

 また魂の光が見えれば、
 光の強さで人の価値が分かってしまう為、
 平常心ではいられなくなると思います。

 つまり、それら卑しい心根を徹底して
 鍛えるということでしょうか?
 これは、相当厳しい行ですね。」


《 うむ、なかなかの答えであるぞ。

 我等神の望みは、己の魂の光は「神の子」であるという
 「証」に他ならないということの強い認識と、
 己の罪穢の認識である。見えるのは三日間だけじゃがな。

これで、他人を思いやるという利他愛の訓練になる。
醜い言霊や悪想念を出せば濁微粒子が発生し
相手や己の魂を更に曇らせる。

 まずは、こんな世話を神にお掛けしていることの
 反省とお詫びが必要じゃ。
 それらの事柄を聖者が今、剣三郎に伝えているところじゃ。》


  神の心を慮るというのは、
  自分と家族、人間中心でしか物事を判断しない人達には、
  理解するのは余りに難しいことです。

   幾度生まれ変わったか分からない我々人類。

  正善美なるものより、邪悪醜の割合を多くしてしまいました。
  家族間でもその割合は、個人の努力の仕方で変わります。

   今まで包み積んだ悪い癖と曲がった性格に魂の曇り。
   改める最期のチャンスを活かすも殺すも我々人間次第です。



     現在時刻、午前七時十七分。


   まだ、場内は混乱が治まってはおりません。

  剣三郎の話に耳を傾けるも、
  家族や親友、恋人を亡くした者の心が静まるのには、
  まだ時間が掛かるようです。

   ただ、ここでもたついている訳にはいきません。  

《 人の執着心というものは、
 進歩向上を図る時には大きな足枷(あしかせ)となる。

 命懸けで出向いて来たとはいえ、
 強烈な体験に耐えうる精神と肉体を持ち合わせる者は少ない。

  だが、これ以上お通夜に付き合う訳にもいくまい ・・・

 あの剣三郎という男は、なかなか歯応えがあるのう。
 この状況を打破する為に、有志者を招集し対策を練っておるわ。》


   三十郎様が仰せの通り、有志者数百名以上はいるでしょうか?
   暫く協議した後に、それぞれ亡くなった方の元へ赴き、
   励ましているようだ。


「 聖者から指示はないのでしょうか?」


《 いや、剣三郎に一任したようじゃ。
 これが信頼関係というものじゃ。
 任せられない聖域には、助言しているがな。》


   これほどの人数、統率を取るには骨が折れます。

  競技場では約六割の人が残っていますが、
  それでも二万人は下らないでしょうか?

 他の二箇所も然り。中心者がしっかりしていても、
 その意志を正しく伝え導くには、
 手足となって動く人の能力が劣っていては、
 全体の意志統一は望めない。

バラバラの弱い指先であれば、開いた掌のまま付き立てても、
邪神の野望を打ち砕くのは不可能。

 但し、弱くてもしっかり他の指と一体化し、
 拳を握ればある程度のものは打ち砕けるでしょう。

  更にその弱い指先という個人の能力を鍛えねば、
  低辺の底上げも全体の組織力も上がる事は無い。

   拳の威力も上がらない。


さて、通常親しい人が亡くなると、一月は心の整理は付きませんが、
この場では如何にして神の意に乗り合わせるかが重要となります。
その修行も兼ねての三日間なのです。

 今まで錆付かせた刀を鍛錬し磨き上げ、名刀に仕上げる。
 そこまででなくとも、主神様にお使い頂き、
 多少は切れるような刀になる事が必要なのであります。


   現在時刻、七時二十五分

先程から剣三郎の指示を受け、数百人の補佐役が動いているが ・・・
周りの人と協力をして遺体を移動している ・・・

 なるほど、身寄りの無い方も大勢いるようですし、
 一区画全滅の所もある。
 知らない人の遺体に囲まれていては、
 祈りに集中出来ない人が出て来ますね。

  どうやら、身寄りの無い遺体はうまく全体に配置されました。

 剣三郎から、亡くなった方と共に徹底してお詫びの祈りを
 お捧げしましょうと呼び掛けています。

  ここまで、この聖域で祈りを捧げる事を許された人達ですから、
  もう気持ちの切り替えは出来たようです。
  残された遺族も、赤の他人だった人も
  家族同様の想いになってきています。

   しばらく祈りは中断を余儀なくされてきましたが、
   ようやく再開出来るようです。

   剣三郎が全体を見渡し、魂の輝きに濁りが無いか、
   迷いの想念が無いか、じっくり見極めています。


「 皆さん、死別とは辛いものです。
 現時点全世界では、二億近い人が亡くなられたとのことです。
 中には銃を乱射された聖域もあるとの事です。

  しかし、我等が目にしたものは、
  神の雷槍で裁かれた者の死と、救いの死であります。

 裁かれた者は三日後、地獄の惑星への転生か業火へ、
 救いの死を与えられた者は、
 今もこの場で想いを一つに手を合わせておられるでしょう。
 話す事は出来ずとも、常に我等と共に神に祈る事が出来るのです。

その神の大愛に心から感謝し、祈りを再開致します。
御覧下さい。聖者黒須様の真下から伸びる太く美しい光の束を ・・・

 あれは皇居からの祈りの光であります。
 既に十分以上前から光は上がっていました。
 御見事という他ありません!

  我々は、天皇陛下と共に同じ地に座して
  祈る事が許されているのです。
  距離など関係ありません!

   他の聖域、世界中の光玉に於いても同じ事であります。

  さあ、陛下と共に、全身全霊を以って偉大なる創造主に、
  我等神の子の愛はここに有りとお示しするのです!」


「「「 おおおおおおお~~~っ!!! 」」」


  さっきまでのお通夜とは一変し、凄まじい歓声です。

 そして、もう正座でガタガタになった足ではありますが、
 気力で足を折り畳み手を合わせました。

 皆が見ている目線の先には聖者黒須の「光の十字架」があります。
 そこ目掛けて、久しぶりに脳天から祈りの光が放出されていきます。

  暫くして、他の十七箇所の聖域からも光線が上がり始めました。

   それらが、光の束になって「光の十字架」に届く度に、
   十字架の光が眩く輝き光度を増してゆきます。


《 もう充分な光度に達したようだな。直に見られるぞ。》

   チ~カ。

    「 はい。」


   だいたい、おっしゃることは分かります。
   光の十字架から富士上空目掛けて、
   強い光が放出されるということでしょう。

  あ、あああ~~、更に光の玉が膨らんでいる。
  直径百メートルはあろうと思われます。

 すると一瞬強烈な閃光を放った後、
 宇宙戦艦ヤマトの波動砲のような、太い光線が発射されました。
 良く見ると左回転をしているようです。

 その光の幅が凄い。
 恐らく四、五十メートルはあると思われます。

  この光は「招喚の儀」の時より、遥かに強く太いものです。

 その光は瞬間に消えるものではなく、
 揺らぎながらも強さを維持しています。

その光は、一直線に富士上空に届き、そこで熟成されていくのでしょう。

 そして日本と世界中の光玉からの光の帯も、富士に集束してきています。

  東京、光玉内十八箇所の聖域から集束した光は、
  上空 3,000m に静止する聖者黒須を中心に、
  球状の光となり美しい輝きを放っています。


《 のう、おぬし。高を括っておったろう。
 神の御業をなめる~でないぞう。》

  チッチッチ。

「 これは、大変失礼を・・・申し訳ございません。」


《 まあ、よいわ。これから世界中の光玉から光の帯が集束してくる。
 その光は中継無しに富士上空に目掛けて来るのだが、
 どういうことか分かるかの? 》  チー。


「 それは~~地球内部を貫いて、
 一直線に届くということで宜しいでしょうか?」


《 うむ、合格じゃ。
 おぬしは良く百円の地球儀を見ておったから分かるのであろう。
 いい心掛けじゃ。
 その通りで、祈りの光はどんな物質も貫いてしまうからのう ・・・

 むむ、こりゃあ、ちと早いのではないか? 
 ・・・ だが、こんなものか。》

「 は、何のことで御座いましょう?」


《 ほれ、映像を横浜港に移せば ・・・ 
 何と邪気はもう熟成しつつある。実におぞましいわい。》 

   ウエ~。        


  あああーー! 横浜港に 巨大な邪気の繭(まゆ) が出現しました。

 高さ数百メートルはあるでしょうか?
 御丁寧にランドマークタワーの隣に鎮座しています。

 集中すると、憎悪と恨み辛みから発せられる邪気が練り込まれ、
 紡がれているような気がしてなりません。

  ゾ~~ ッ、 と して体に悪寒が走ります。

 まだ八時前、開戦から一時間も経っていないというのに、
 ここまで差があるのか?

  そういえば 「神の光輪」 が熟成されるまでは
  二日近く掛かるとか ・・・


《 これが現実というものじゃ。
 己等が包み積んだ罪穢という怪物と相対すれば、
 如何に馬鹿な事をして来たか身に沁みるであろう。
 わしとて後悔の念で仕方ないわ。》 

    チュ~ウ。


「 私も、あの邪気の塊を造る一端を担ったとは、
 猛省で御座います。」



       ( 推奨BGM ) 

     エドヴァルド・グリーグ作曲
   ピアノ協奏曲 イ短調 作品十六 (第一楽章)

     カラヤン&ベルリンフィル           
    クリスティアン・ツィマ―マン (ピアノ)  

https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=x6Wdww8ll0w



  


      叡智晶の映像が、その邪念の権化とも言うべき
      ヘドロの繭を拡大してゆきます。

    なんという醜さでしょう!

 ドス黒い血の色をした魂の糸が、
 右回転でその聳(そび)え立つ繭に紡がれてゆきます。
 それは、邪悪な動く魔城になるのでしょうか?

巨大な繭だからモスラのような成虫が出るのか?・・・

 それはないでしょう。
 モスラのイメージは正義の味方ですから・・・

  その証拠に、美しさとは真逆の
  憎悪と恨み辛みを吐き出すかのような
  言霊の合唱が辺りに木霊しています。

   故に姿は蛾か蝶のようであっても、
   神の造型美とは一線を画すものである筈です。

  ああ、周辺の邪神信仰者の方々は当然逃げて行きます。
  でも、今更何処へ・・・?

 何と、止めどなく流れてくる汚物に足を取られ、
 肉体ごと取り込まれてしまいました。

  ビルの上、船上に地下。
  惨劇は場所を選びませんでした。

   皆、描写をしたくなくなるほどの恥辱屈辱を、
   流されながら受けています。

  これが堕ち果てた人間の姿なのか?
  肉食獣のような男女は、お互いの体を貪(むさぼ)り合っています。

 悲鳴とそれを嘲笑う邪霊共の邪声。
 果て無く続く生き地獄。

  それが邪道であります。

   やがて繭のようだった造型が、
   おぼろげながら怪物の姿に変化して来ました。

  頭部、手足と体に巻き付いた尻尾。

 どうせ、お決まりの怪獣スタイルなのだろう。
それとも邪神軍でも悪の芸術の極みを見せるつもりなのか?

いやいや、そんなもの見たくは無い。醜いに決まってる。

 ははは ・・・ さて、邪気を心行くまで取り込み満足したのか、
  少々屈(かが)んでいた邪体を、ゆっくり起こし始めた。

   ああ~、やはり芸が無い。

 こりゃあ、どう見ても ゴジラの真似 ・・・ しかも紛い物です。
ただ、これは日本の恐怖と力の象徴であることは確かです。

 全長五百メーターはあるでしょう。
   ランドマークタワーよりかなり大きい。

   なんというツーショットだ!
                                
皮膚の色と質感は、黒カビをゴツゴツした皮膚に塗(まぶ)したという感じです。
勿論、例の背びれはあり、加えて体のあちこちには
鋭い棘(とげ)が散りばめられています。

 頭頂部には、鎌の先が突き出たような角を一本生やしています。

  決定的に違うのは、その邪悪な 右目 です。


右 ・ 水気 ・ 水の神 ・女神 = アクエリアス、シリウス文明の時代。

    シリウスの五連星は全て、女神が守護神です。

   オリオン座の七連星、プレアデスの七連星も然り!
   オリオン座は既に女神に政権交代していますので、
   名称も代わっています。

     これらの情報は、K さん からのものです。

   これからの時代は、女性性意識が重要になるのです。


奴の 右目 には、大きく縦に深い傷が走り、
その亀裂からは 邪悪な黒い血 が、止めどなく溢れ出ています。

 この血は、恐らく肉体ごと取り込まれた者の
 絞り粕という邪血でしょう。

  つま~り、

・・・ 女神の政権など認めないし見たくもない! 俺達は見ないぜ!

  とでも言いたげだ。

失明した右眼に反して、左眼が爛々と邪光を放っているのが対照的だ。
正神軍への強烈な皮肉を込めたメッセージ!

 呆れるが、これで邪神軍に降伏は有り得ないと捉えていいでしょう。
 果たしてこの意思表示は、サタンかアンドラスタか?

  アポフィスは静観するのか?

 奴の左の邪眼が、関東 「神の光玉」 上空を、
 怨念を込めて睨みつけている。
  更に邪口から漏れ出す醜気が、荒々しく辺りの空間を穢している。

    すると全身の濁肉がワナワナと振るえ、
   その棘だらけの両腕を大きく広げた。

グアアオオォ ー ー ッ、ゴウアアオォ― ― ― ゥン!!
                                      
  その爆音からなる衝撃波は、
   付近のビルとあらゆる建物のガラスを悉(ことごと)く粉砕した。
    勿論、強度の弱い建物は倒壊した。

   これは全身が極限まで共鳴し空振を発しているからだろう。
  とても信じ難い威力です。

 恐らく、この邪龍の咆哮は日本海の先まで響いているだろう。
当然、この聖域にも不快な轟音が通り過ぎていった。

 その見えざる魔獣の存在を群集は感じ取った訳だが、
  まだ私が感じた恐怖までは伝わっていない。

   それで、次は当然歩き出そうと右足を上げた。

  百メートル近く上がった邪足が地面を踏み躙った時、
  地球には悪寒が走っただろう。

   その為、巨大地震が起きた。

 この化け物は邪気ばかりでなく、
 質量を伴う人間と獣の肉を取り込んだ為、
 地球を蝕む汚染物質、或いは癌細胞そのものになったのだ。

  体重は五十万トンを下らないであろう。

その巨体を動かすエネルギー源となる邪気は、
その体内と周囲から絶え間なく供給されているようだ。

ただ、これでは地球を散歩しただけで破壊してしまうだろうが、
当然それだけで済む筈が無い。

  案の定、二歩目の左足が地面に減り込んだ時、
 その邪念の塊が鈍く光り始めた。

数百億の怨念が、激痛を与えた者への憎しみが、
 あらゆる邪な波動を噴出させ怒りの放電となり、
  更に醜く己の邪体を浮かび上がらせていった。

   その負のエネルギーは、
  次第に背鰭を怪しく光らせ蓄積されているようである。 

直に背鰭の邪光は限界域まで達したのか、
溢れ出て魔獣の体を包み込んでゆく。

 その間にも、耐えがたい咆哮や唸り声は
  鋭い牙の間から発せられている。

    騒音地獄だ。地球の鼓膜が破れでもしたらどうするんだ。

    聖域の群衆は、ティッシュを丸めて耳を塞ぎ、
   必死で祈りに集中している。


《 あの駄烏めぇ! 一発目から最大邪霊力を用いて、
 邪魔龍幻死砲を放つつもりか?》

  愚かなことですわ、ふん。


「 しかし、そんな恐ろしい大砲を光玉にですか?
 つまり、試し撃ちでしょうか?」


《 まあそんなところだ。
 天照日大神様の出方を観るつもりじゃ。ふっ、無駄無駄。》


  うっ、奴の体を覆っていた邪光が萎んでゆく。
  いや、全ての邪気を吸収し凝縮でもしているのか?

 ううわあ、お腹の辺りが赤黒い光で満たされてゆきます。
 ああ、また邪腕を広げ、
 邪口からは周辺の邪気と空気を吸い込んでいる。  

  これは邪神の化学実験か?

 あらゆる怨念と、空気中に含まれる 「水の気」 を融合させ
 化学変化を起こさせるつもりか?

  その時、邪眼が不気味に光り静かに口を塞ぐと、
  腹の魔光が ビキキッ! と鈍い音を立てて数倍に膨らんだ。
  
   次に、発射時の反動に備える為か、
   巨躯の腰を落とし両足の鋭い爪を地面に突き立てた。

    そして左の邪眼が ギラリ、と光った!


【 我は邪神軍、司令長官アンドラスタ。

 天照日大神よ、我が軍に敗北と降伏という言霊は無い!

  ただ、永遠の快楽の宴を満喫するが望み。
  その宴で中座させるなど、実に無粋というもの。

   正神の皆様は礼儀を知らぬと見える。

  アポフィス様はとてもお怒りなのだよ。
  さっさと神界に帰り、
  天女達と遊興に明け暮れればいいではないか。

それが嫌なら、この溜まりに溜まった鬱憤と恨みを吐き出すまでだ。
覚悟してもらおう!】


  なんという恐れを知らぬ馬鹿者だ。
  いきなり暴言を吐くとは、
  そんな挑発に天照日様が乗る筈ないのに ・・・

  この愚かな堕天使の声は、人間の耳にも響いているようです。
  ただ、光玉上空の厚い雲からは、怒りの放電が発せられています。


《 ははははは、我は天照日大神である。

 しかし、面白い戯言を言うてくれるなあ、小僧めが!

 その大きなトカゲの愚体を手に入れ、
 気が大きくなり過ぎたようだ ・・・

 では、その溜まったゲップとやらを吐き出してみるがいい!》


   うわあ、まるで相手にされていませんねえ、当然ですが。
   しかし、その御声のなんと大きく頼もしいことか・・・

     ただ、奴は凄く怒っています。

   閉じた邪口の牙を、ギリギリ と上下に擦り合わせ、
   火花を散らせています。

    ・・・ おおお、おい 暴発するぞ!


   【 おのれ~、では、お望み通り受けてもらおう、
      邪 魔 龍 幻 死 砲 を な あ!! 】     

            
 あああ、憤怒の邪龍は長く太い尻尾を鞭のように撓(しな)らせ、  
  高々と振り上げると、憎しみを込めて地球に叩きつけた。

   それと同時に、腹に溜め込んだ邪光が咽まで達し ・・・
    とうとう、その醜い腭(あぎと)が開いた。


ゴオオオオウアアアーーーー!!!


    鳴き声なのか発射音なのか定かではない轟音が辺りに響いた。

  その赤黒い炎塊は長い尾を引き、
 天照主様ではなく、なんと聖者黒須に向かっている。

  だが、直ぐに軌道は変わり、上空の怒りの雲海に飲み込まれた。

   暫く激しい稲妻が放出され、
    広範囲に亘って炎の雲が激しくうねっていましたが、
    やがて邪なる光は失われ、
    煌々と照り輝く聖なる光球が雲下に降臨致しました。

   その光景は地上の聖域の皆様にも見えており、
  拍手喝采の嵐が巻き起こっております。
 
 あらゆる邪念を一瞬に浄化してしまう神気を、
 自在に操られる天照日様の御力のなんと偉大なことか。

  果たしてこの浄化された黄金の光球を、
   どうなさるおつもりなのでしょう?


《 さて、司令長官殿。
 汝の醜いゲップを浄化してお返し致しますが、この儀は如何に ? 》


   奴は唸りながら左目で睨み付けるが ・・ 答えないつもりか?
   ・・・ ゲッ、邪龍の体が透け始めた。


     【 その儀は留保願いたい。
       な~に今のはほんの挨拶代わり。

         何卒御容赦の程を、はははは ・・・・ 】


   すると雲下の光球は、
   凄まじい勢いで邪龍に向かって飛んでゆきます。

  ですが、鼻から相手をする気が無かったと思われる邪龍は、
  寸前で光球をかわし消え去りました。

   その光球は、一瞬で花火のように弾け散ったのです。

  しかし物質物体でありながら霊質を持つのだろうか?
  瞬間移動のような業が出来るとは・・・?


《 それはな、その霊質からなる力を更に増幅させるということが、
 今回特別に主神様が正邪に与えた力の一つなのじゃ。

 それ故、あのような巨躯(きょく)でも瞬間移動は可能になる。
 人間でも本来は同じことだが、霊質の力が衰えただけじゃ ・・・

 ところで、西の方も気になる。

 もう物質化しそうじゃから、直に見るとするか。
 叡智晶だけでは感じ取れんものもあるでの。》  


  チカチカ。

  「 はは、畏まりました。」



 

   次回、自衛隊 VS 邪龍! 乞う御期待!

    ただねえ、ちょっと分が悪すぎでしょうが ・・・
 


《 序章 》 〈 第二十二話 〉 つかの間の休息

2019年02月02日 13時07分57秒 | 小説


  《 キャラクター&キャスト 》

  伝説の神 = ひよこ様 / 谷  〇
ひよこ様の弟 = おちょい / 藤村 俊〇
創造主の末娘 = スミレ  / 石原 さと〇 



氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぞう : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇


 「神の光玉」は、世界中の要所に出現。
 日本には十箇所。
 範囲は基本、3キロ圏。

東京の 「神の光玉」 の範囲は特別で、皇居を中心とした30キロ圏。
東京の 「神の光玉」 「祈りの聖域」 は十八箇所。

 駒沢公園は、「祈りの聖域」 の一つです。



現在、午前六時を過ぎて、お餅タイムとなりました。
伝説の、木に生る餅を頂きます。

 ただ、皆さんの分はございません。
 悪しからず!

あ~~、大福餅か何かで代用してください。
それと緑茶とか ・・・

 ついでにリラックスしてお読み下さい。
 開戦前の休息タイムですので ・・・

   いやっ、でもリラックスできないかも?


      (推奨BGM)

ジョルジュ・ビゼー作曲 /《 カルメン 》組曲 
    カラヤン&ベルリンフィル




六時ジャストのニュースじゃなくて、お餅タイムになりましたが、
 私 ・・・ しょっ食欲が無いので~。

   あ、ああ ~~~ ととと、飛んだぁーー!

   かか、解説を致しますと ・・・
   産まれて間もない鶏の黄色いヒヨコちゃん、

 え~、全長三センチ程でしょうか?

私の肉ポケットから抜け出し、
チカチュウ様の頭に ピョンと飛び乗り、
そ、その小さい体の更に小さな羽根を、
 パタパタと羽ばたかせ ・・ ピヨピヨ鳴きながら ・・・

  うう、三十郎様の左の角に止まり遊ばされましたのでぇ 御座います。

   ハアハア ・・・ ももも、もう限界で御座います。 
   ああ、あふあふ ・・・

《 こここここ、これっ、待たぬか。
 わしを差し置いて気絶は許さぬぞ・・・チカ殿、何故じゃはぁ~っ!》

《 さあ、全然知りませぬ!
 でもね、ほらとってもカワユクて黄色と言うより、
 黄金の羽毛のように輝いて、ああ~、凄く素敵ですわ~。
 だから、あたくしの子供かも。》 ピッピヨ。

《 おお、おぬしが産んだのではないのかあ~!!》

《 あら、わたくし元の姿は女神で、今はネズミ。
 しかも「 ぬいぐるみ 」ですよ。
 どう足掻いても鶏の卵は産めませぬぅ~。》  

     へっ、へぶ ッ ・・・・・

《 おおお、おいっ! しっかりせぬか、うさぞう ・・・
 白目になるなぁ~!
 あああ、そうじゃ、これはきっとスミレ様の仕業じゃあ、
 そうでなければ説明がつかぬわ~い。》 

《 ああん、もうしっかりしなさい。うさちゃんたら、
 ひっくり返っちゃって、私もう、お腹の上に座っちゃおう。
 あらやだ、内のピヨちゃんが、
 うさちゃんの顔にオシッコを掛けたわ。》 ピヨピヨ。


    あああ、うん? ・・・ 雨かな?

「 あ、申し訳ございません。また気絶していたようで ・・・
 今起きますので、え~ ヒヨコ様はやはりいらっしゃいますね。」

   あ、あれっ、気のせいか向こうから鳥が二羽飛んで来る。
   しかも体が発光している!?

    で、でも ・・・?

《 あれは ・・・ んな、何? 隼に、ペリカン?
今は既に、虫や動物は光玉から出払っているから、あれは間違いない。
体を覆う眩いオーラが証拠じゃ! そそそ、そうかそうか。》

    アラマア。   ・・・アバババア、アピ~~ヨ!

   あ、私にも分かりました。
   でも、何でヒヨコ様は焦って・・・?


《 ピンポ~~ン! 正解です。毎度お待ちどう様でした。
 皆さん、わたくしペリカン卓球便の スミレ で御座います。
 頭のティアラ素敵でしょう。ふふん。》

《 私、隼特急便の竜飛丸こと、おちょい です。》

《 いやあ、お待ちしておりました。さっそくで申し訳ございませんが、
 あの、こちらのヒヨコ様をお迎えにいらしたので御座いましょう?》

《 あら、何のことで御座います。 私、気になっておりましたが ・・・
 むふふ、このヒヨコもしかして、スミレさん。》

《 まあ、そうで御座いますね。 
 面白いことになって来ましたわね叔父様、くぷぷっ。》

《 そうですね。 ぷぷぷぷ、あ、これは失礼。
 あの皆さん、我々は何も存じ上げておりませんので、
 どうか面倒を見てあげて下さいね。》

《 そうですよ。失礼があると、
 くちばしで突付かれるかもしれませんからね。お気を付け下さい。》

《 そそそ、そんな、では私の子ではないのですね。
 てっきりスミレ様が御与え下さったものと思い、
 必死にお尻で暖めて産まれて母性を感じておりましたのに、
 はあああああああ、チュウ~~ ・・・》 ピピィ~ッ!

「 ああ、チカチュウ様ぁ~。
 お気を確かに ぃ ・・ く、くう ぅ ・・・」

《 それでは、こちらのヒヨコ様は、
 いいい、一体どちら様なので~ ・・・

 私でも、このヒヨコ様の想念が全く読めない上に、
 魂の存在を感知すら出来ないので御座います。

 これは間違いなく大神以上のレベルの力が
 働いているものと思わざるを得ません!》

《 あら~ん、でも、知~りませんので御座います。
 それから、その信造のポケットの中は、
 小型ブラックホールになっているのですよ。面白いでしょ。》

「 あああああ、あ ~ へ ぇー、コガコガコガッタ、
  ぶらぶら ブラ、ブラ ほほ ほほ ホ~~ル ・・・
   ツ ツ・・ッ ーーーー・・・ 」  ピピヨ!

《 おい、しっかりせんか~!
 まだ若いのに。い、今わしも行くでのぉ。あぐッ・・》

                  ピーヨピヨ!

《 ねえ、みんな何してるの?
 せっかくお餅の差し入れに来たのに、もう ・・・
 そうそう、早く聖域の皆さんにお餅配らなきゃ。》

               ピヨピヨピヨォーーッ!

《 あの、スミレさん。ピヨ様がお餅を食べたいそうですよ。
 ちょっと、あげてみましょう ・・・はい、どうぞ。》


  ピヨッ。ムヨムヨ、ヨムヨム、ンヨム・・・ゴクッ、
   モックリ、ムックリ、マックリチョン、
    ガッチョン、ムッチョン、モッチョンチョン!!!


ガ ~~ チ ョ ~~ ン!!  ぶおフオフオフオ ・・・

 んん~~ なかなか美味であった。

わしは ベニヒワ の ガチョン じゃ。

 漢字はこう書くのじゃ 「 紅鶸 」 ・・・知っとったか?
全長は十二センチ程。

ほれっ、額の赤班と胸の赤い羽毛がイカスであろう。
 鳴き声は 「チッチッ」 とか、「チョチョ」 じゃ。
うんうん、中々気に入ったぞい ・・・

ところで何じゃ、おぬし等の格好は ・・・
 変に飾りたておって、わしのように、
それらしくて控えめで自然な変身が望ましいのじゃ。

 ふん、言いたい事があるなら言うてみよ。》


《 鶏のヒヨコがベニヒワになったのは、地球の流儀に反しますし、
 とても自然とは言えませぬ。ねえ、叔父様。》

《 そうですともガチョウ様。
 それでは余りに唐突な成長というものです。
 どうせならダチョウとか部長とか
 アチョウとかの方が宜しかったのでは?》

《 あら、今日は冴えていますわ。
 叔父様、素敵です。 ピヨチヨピヨチヨ。》


馬鹿を言うでな~~い!!

 何がガチョウだの唐突だの何だのと。
そんなもの面白くも何ともないわい。
 さっさと、餅を配って帰りんしゃい。

わしはこの者達を起こさねばならんので忙しいのじゃ、はあ~~。》


《 は~~い、では参りましょう。叔父様。》

《 そうしましょう。スミレさん。》



《 全く、こっそりと覗きに来てみれば、
 直ぐばれてしまうとは情け無いわい。

ん~? おぬし、年は幾つになったのじゃ。
あ~、聞こえんぞ。

 そうだった神通力を失くしてしまっておったのじゃのう。
 しょうがない、わしがおぬしの年を教えて進ぜよう ・・・

ほうほう、魂の年齢は一万三千五百二十七歳であるぞ。
それに今の一族の先祖であった前世、前々世が見えるぞ。

 つまりおぬしの一族に、善悪を問わず多大な影響を与え更に、
 ここの主神が造りし世を穢す一端を担ったということじゃ。

猛省せんとな、憶えておくが良い。
はあ、まだまだ若いのう。

さて、この者達を起こす前にちょっと細工をしてと ・・
 で~は、起こすぞ。

   そ~れ、そ~れ、突っ突いて、突っ突いて、
     チッチッチッチ、チョッチョチョ~イ!》


《 ああ、いた、いたたたた!》

《 きゃっ、いやぁ~~ん。痛いですわ。》

「 あたたたた ・・・ ああ、あ~れ~?
 三十郎様、つつ、角が止まり木のようになって、小鳥が ・・・
 なな、何で ヒヨコ じゃないんでしょう?」

      チッチッチーーッ。

《 なんじゃとぉー!? ・・・
 あわわ、こりゃあ、ベニヒワじゃあ。
 成長したのか、スミレ様御得意の冗談か?
 あ、あの、お話は出来ないので御座いますか?》 

      チッチッ。

《 駄目かあ~。
 だが、無礼があってはならんぞ、
 きっと、これも試練なのじゃ。
 チカチュウ殿も話は控えた方が宜しいぞ。》 

           ハイチュウ。

「 そそ、そうだ。お餅を頂けば、きっと気持ちもちもも ・・・
 あ、落ち着くのではないかと ・・・」 ぷぷ、チッ。

《 おい、もち着いて話せ~~、ぷっ。》 プチュチュ~。

「 ・・・ はは、はい。」


  え~、そんなこんなで 「鳥」 乱 し 過 ぎた我々で御座いますが、
  気が付くと周りの街路樹の枝に、びっしりと ・・・
  例のお餅が生っているではありませんかぁ。

 何か白い桃が生っているようですし、甘い香りも相俟って、
 まるで桃源郷にいるかのような錯覚を覚えます。 
 ん~、トレビア~ン。

  三十郎様の仰せの通り、たわわに実っていて壮観であります。

 ただ、針葉樹と葉の無い落葉樹、
 又は刈り込まれたサツキやツツジの枝にまで生っているのですから、
 全く有り得ない神様の御愛情に溢れた光景であります。

間も無く、場内の大勢の人達が出てきて、
上着を木の下で広げると、
不思議なことにその上着目掛けて餅が落ちて来るではありませんか。

 大きさは普通の中華まん程ですので、
 きっと食べ応えがあるものと思います。

 皆さんは、それはもう興奮して歓声を上げながら、
 わいわい楽しそうに収穫しておりました。

ただ例の小林の遺体には、真っ先に気付いた人達が上着を掛け、
何とお餅を一つ口元に供えていました。
幽体離脱した彼女の泣き声が聞こえます。

 そして手を合わせる人達に、
 何度も 「ありがとうございます」 と感謝していました。

  供えられたお餅の気を吸い、
  更に後悔の念が膨らみますが、もう遅いのです。

 高木は虫の息ではありましたが、
 数人の自警団員と看護士に応急措置を施されました。
 そして聖域に入るよう、あの結城秀人に説得され、
 後ろめたさを引き摺りながら担架で場内に連れて行かれました。

  暫くして、全てのお餅が無くなり、
  皆様それぞれの場所に戻って行きます。


   我等一行は、陸上競技場内に戻りました。

  その途中、拳三が車椅子を押して、
  下半身不随の少年を連れて帰って来ている姿が見えました。

 心身を鍛錬している拳三とはいえ、
 かなりの距離を歩いているだろう事は、
 その疲れ切った姿を見れば一目瞭然です。

  他のメンバーは、人が多過ぎて見つけられませんでした。


木に生る餅の収穫が終わり、群衆はそれぞれの場所に戻りました。
我等異色のトリオは、陸上競技場におります。

 それで現在時刻は、午前六時十六分。

場内では剣三郎が拡声器のマイクを持って注意事項を話しています。

なるほど ・・・ 亡くなられた方の遺体の上にお供えしてとか ・・・
えっ、普通の餅ではなく、
 果物のように水分が多いので貴重な水は飲まないようにとか?・・・
  歯が無い人でも問題無く食べられるとか、へぇ~ ・・・


「 ・・・それでは皆さん、御用意は宜しいでしょうか?
  主神様に感謝の念を込めて頂きたいと思います。
   では合掌して、頂きます!」

    「「「 頂きます!!! 」」」


  それにしても、こんな御褒美があろうとは、
  思ってもみなかったのでしょう。
  皆さんの喜びようは、その表情から伺えます。

  余程おいしいのか、どよめきと歓声が止みません。
  ただ ・・・ この異常な喜びようはどうしてでしょう?

《 ははは、それはそうじゃろうて ・・・

何故なら、あれを食べると霊力と体力が上がり、
加えて体の疲れや痛みが取れ、
ちょっとした傷や病気等は治ってしまうのじゃからのう。
それは幽体離脱した霊も同じことなのじゃ。

ほれ、さっきの焼け死んでしまった女性は、
餅の「 土の気 」を吸い、
火傷の痛みが和らぎ、涙を流して喜んでおる。
神の大愛が身に沁みたであろう。》

  仙豆(せんず)みたいだな。 あ、仙豆ってドラゴンボールの ・・・

    チュッチュッチュウ~。

《 ん? 餅が食べたいじゃと・・・こりゃあ忘れておったわい!》

「 私達の分もあるので御座いますか?」

《 あるぞ~~。》
                  
  すると、何故か三十郎様の顎鬚の先から、
  何か白い水滴のような物が次第に大きくなり、

  まあるいお餅が四つ生りました。
  え~っ、こんな風に生るんですねえ。

《 ほほほ~、どうじゃ、これはわしの演出じゃ。
 それぞれの大きさに合わせておいたぞ。
 あっ、まずはベニヒワ様に、
 御一つどうぞお召し上がり下さいませ。》

   三十郎様は、一番小さな餅を左の掌に乗せて、
   ベニヒワ様に献上されました。

  すると、ベニヒワ様は一口で啄(つい)ばまれ ・・・
  ムヨムヨゴックン、 と召し上がられました。

 こんなこと言うのも何ですが、
 あまりに可愛らしいので大ファンになってしまいました。

  だって、あ~ほら、今も大変御喜びで ・・・
  チッチッ と頭上を飛び周っておられます。

きっとスミレ様か、おちょい様のペットのような存在なのでしょうね。
あれ? ベニヒワ様は急に上昇されて ・・ 急降下へっ?

     ・・・グサットナって僕の額に、うあっ!

「 いいい、いったぁ~い!」 なんてことだ。違ったんだ。

《 戯け!》 チュ~イ、チュウイ。

「 申し訳ございません。
 ベニヒワ様、御無礼をどうかお許し下さい。」

   ききき、きっと大変な神様なのだ。
   あわわわ、凄く私を睨んでおられる。

  すると、チッチッ、チョチョ と
  さえずりながら、上空に飛んで行かれました。

   あれ~?

「 どうされたのでしょう? 
 おちょい様とスミレ様の所に行かれたのでしょうか?」

               チュウ?

《 さあな、我等が干渉することでもなかろう。
 我等はここに居なければならん。
 何せ、もう直七時になるでの。
 いいか、気を引き締めよ。

 あ、そうじゃ忘れとった。も、餅を食べなさい。
 おい、うさぞう。お主がもぎなさい。》

「 はは、そうで御座いました。では、失礼致します。 」

  私は、三十郎様の顎鬚から餅を三個もぎ取ると、
  三十郎様とチカチュウ様に御渡ししました。

《 おお、ありがとう。では頂こうかな・・・・頂きます。》 チュ~ウ。

「 頂きます。」

   私、この姿になってからは、
   夢でダチョウの丸焼きを食べて以来です。

  あの時は不思議と満腹感がありましたが、この餅はどうでしょう。

   ん~、匂いは甘い感じです。
 
  では、一口サイズの餅を ・・ んごんぐ ・・・
  あれ、中に ずんだ が入ってる。

   それにしても、仄かな甘みとジュシーな食感がたまりません。
   ほんと、柔らかくて不思議と直ぐ溶けて無くなる感じです。

《 おお、おぬしは(ずんだ)か。
 わしは(つぶあん)じゃ、好きだからな。

 むふふふ、おいしいのう。
 チカ殿は(チーズ)じゃな。しかも カマンベール。

 味はそれぞれの好みに合わせてあるのじゃ、有り難いじゃろ。》

  オイチュウ~。

「 ほんと有り難いです。
 小さくても満腹になって気力倍増という感じで御座います。」

《 じゃろう ・・・ あ、あまり呑気にはしておれんぞ。今何時じゃ。》

「 現在時刻は ・・・ 午前六時四十六分で御座います ・・・・
 今頃、正神軍司令部はどのような状況なのでしょうか?」

《 ふ、気になるであろう。だが心配無い。
 叡智晶があれば司令部の生中継の映像が送信されてくるのじゃ。
 良いか、指輪のままでも空中に映像を照射出来るから見ておれ。》

   すると、左手の人差し指を前に突き出されると、
   映画やテレビ等で良く見掛ける映像が、目の前に広がりました。

  言わずもがな、驚愕の神学力であります。
  人間の科学では未熟な段階でしかありませんが、この映像は完璧です。

 その映し出された大霊宮の作戦司令部は、
 恐ろしい程の緊迫感に溢れ、私にまでその気迫が伝わって来ます。

  大黒天様が議長席前の大スクリーンを見ながら、
  世界中の 「神の光玉」、
  その他の重要と思われる箇所の天使や神々に対し、
  様々な指示をされています。

   例の光玉内を監視し裁く、天使達の準備も万端のようです。

  その光玉上空に無数に輝く天使達は皆、美男美女です。
  その他の神々にしてもそうですが、

   汚れのない綺麗な魂の容姿は美しくて当然なのでしょう。

  ただ、宇宙全域の宇宙種族は異種異型であり、
  人型なのは 4 % 位に過ぎないそうです。

   つまり、美的感覚は種族によって違ってくるでしょうが ・・・

  人でも、魂が産まれた時点で醜いなど有り得ません。
  何しろ、四十八神(よとやしん)のどなたかの
  御神魂が入っているのですから ・・・

 現代の殆どの人が、既に何十回、何百回と、
 生まれ変わり死に変わりをしているか分かりません。

その繰り返しで、人類はとてつもない罪穢を積み重ね、
更に地球表層上を汚染し今日に至っています。

大概の人は、地獄の最下層まで堕ちているようです。
全人類は先祖も含め、その責任を今取らねばならないのです。

 


 

(11) Chopin: Nocturne No. 18 In E, Op. 62 No. 2 - YouTube

ピアノ : マウリツィオ・ポリーニ

 

 

 


     只今の時間、六時五十分。

   こちらの競技場では、
   剣三郎が正座をさせ開戦前の心構えを伝えています。


「 この祈りの聖域にお集まりの同志同胞の皆様、
 私は土門剣三郎と申します。

この祈りの聖域の聖者補佐役を頂いた三人の内の一人で御座います。
いよいよ神裁きの三日間が始まろうとしています。

聖者黒須様からのお言葉では、
七時になると夢想だにしない恐ろしい事が起こるそうで御座います。
その後も光玉の周りに、邪念からなる化け物が物質化して出現し、
神の光玉周辺の街を火と血の海にするとの事です。

しかし、この光玉内は偉大なる天照主日大神様が守護されておりますから、
決して心を乱さず、祈りに集中するようお願いしたいとのことで御座います。

その事を胆に銘じ、御先祖様とも心を一つに、断固遂行の想いで
この三日間を乗り越えて行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。

では時間まで黙想して精神統一致しましょう ・・・・ 黙想。」


  人々の想念界は様々です。
  恐怖や不安感を、静めよう宥めようと努力しています。

 正神軍司令部の巨大スクリーンには、
 各国の 「神の光玉」 が、何十にも分割されて映し出されています。

  慌てて時間に遅れまいと、
  急いで光玉に向かっている人の姿が見えます。

 東京の聖域にも、ゼエゼエ言いながら入って来ている人が、
 何人も見受けられます。


「祈りの聖域」 に入れなくても光玉内に入れれば、
遅れたことにはならないので、
急いでほしいものですが、とても間に合わない人が余りにも多い。

 都市部に向かわなければならないのは、実際厳しい状況です。

東京で言えば、中心部に近付くに従い道路は塞がり、
途中からは徒歩の群衆が数珠繋がりになっています。

 電車はパニックになった人が押し寄せ、収拾が付かないようです。

焦りと不安が増幅され、冷静ではいられず、
単に助かりたい気持ちが先走る。

 更に群集心理が作用して、
 聖者が言った事を思い返す余裕すらないようです。

案の定、光玉に到着したにも係わらず、
見えない光の壁に阻まれ入ることが出来ない者が多数います。

 泣いて空中を叩く醜い魂の人間を、
 不思議そうに見ながらすんなり入って行く者もいます。

入れた者は、当然心から神に感謝しています。
また、遅くなった事をお詫びしています。

 空を見上げれば日の出の時間を過ぎた今でも、
  厚い雲が太陽光線を遮り、
   深紅のオーロラ、赤い三日月、
    第二の太陽 ベテルギウス、
     暗黒惑星二ビル、
      更に、蒼く輝くクラリオンはもう見えません。


      「 闇 ・ 夜 ・ 影 」 ・・・


   これらに悪いイメージを持たれる方が居られます。

光と相反する物では御座いますが、「悪」 ではありません。
単に光が当たった反対側が、暗い影となるだけです。

強いて言えば 「 黒い光 」です。その闇に包まれると安らぎます。
生命にとって必要不可欠な物であります。  

 更に重要な事に、夜というのは睡眠に繋がります。

人の脳の中には、
松果体 (魂が宿る場所の一つ) から分泌される
メラトニン (夜のホルモン)という物質があります。

このホルモンは精神をリラックスさせ、
体温を下げて眠りを誘う働きがあります。

 睡眠とは、何か不思議な世界を連想させます。

実際、睡眠中にアカシックレコードと繋がり、
夢に現れる場合があるといいます。

 当然、魂の宿る場所の一つであり、
 神霊界、四十八神に霊波線で繋がる部分であります。

また、寝ていても自分に意識が無くても、
自律神経が作用して体内を自動制御します。

 人体は言い換えれば、機械ではない
 「神の完全なる生体ロボット」 ではないでしょうか?

それを操縦する為、魂が宿っているのです。
それで老化して使えなくなれば、
体を抜け出て幽界へ帰るという訳です。

 ただし、地球表層上に存在する幽界は、
 現在縮小し、いずれ消失します。

  移転先が火星と木星の内部世界となる訳です。

 言い換えれば、
 進化が許されない 「猿の惑星」 ではないでしょうか ・・・

物質界あるいは地球の表層上という、
宇宙共通惑星 「地球」 は魂のいい修行の場なのです。

 話がそれましたが、
 光がより強く輝く為には、漆黒の闇が必要なのです。

大芸術家の主神は、己の演出を際立たせる為に、
全次元・全宇宙の隅々まで気配りをなされているのです。

 故に、醜悪な物は存在しません。

加えて、物質の形を認識する為にも黒い闇は必要なのです。

全て真っ白な物質しかない場合では、影が無いと自分の位置すら判別出来ず、
自分自身も真っ白。 他の色も生み出す事が出来ません。

 宇宙全て、「光と影」「白と黒」 が原点であると思います。
 これは色霊に属します。

  そして、それ以前に数霊(かずたま)が存在致します。

 数学者が数の謎、特に素数の謎を解明すれば、
 宇宙の謎が解けると豪語しているのは、
 数霊の力の偉大さを良く理解しているからだと思います。


つまり、「悪」 という存在は 「闇・夜・影」 とは別個の物なのです。

主神が人に与えた欲心から、邪や悪に変化していったという事です。
その邪悪なる欲望に惑わされ、
はたまた生きるのに疲れ果て怠けの罪を積む。

 自暴自棄、惰性に任せて邪道を流されるまま! 
 哀れな人生の先は地獄だ!

  主神の領域に近づきたい!
  もっと向上したい! 更に清楚で美しくなりたい!
  大芸術家、大科学者になりたい!

   そんな正欲、聖欲、大欲をもって神理の道を歩むべきが、
   本来の人生のあり方なのですが、

    皆様は如何でしょう?



 現在、叡智晶による空中のスクリーンには、
 世界のどの光玉の場面を見ても、
 緊張感と恐怖感、不安感、そして期待感に溢れています。

但し光玉外では、今から何が起こるのか理由も知らず、
起きている現象を理解出来ない人が、少なからずいることは悲しい現実です。

 それに知っておきながら諦める者、
 信じない者が余りに多いことも認めたくない現実です。

  しかし、これだけは断言できます。

   我々、神の子は創造主が創造した、
   この大宇宙でしか生きられないのです。

    そのことを肝に銘じてください。

 




 いよいよ開戦の時を迎えました。

世にも恐ろしい正邪の戦いの最終決戦が始まろうとしています。

これから先は今まで以上に、凄まじい正邪の攻防が繰り広げられます。
 おぞましい怪物も、邪神と人間達の邪念より生み出されてしまいます。

  その醜さから目を背けないで下さい。



《 序章 》 〈 第二十一話 〉 正気の狂気 

2019年02月02日 12時00分00秒 | 小説


       ( 推奨BGM )

 ウィアー・ゴナ・グルーヴ / レッド・ツェッペリン



   

           二〇 X X 年十二月十九日(金) 0:35
          カウントダウン 78:25

 


       ここは、東京の何処かの通り ・・・


     分かっているのは、神の光玉内であること ・・・
     どの通りも車の駐車場化しています。

  その車の間を、自転車やバイクがすり抜けていますが、
  それも疎らです・・・

ただ、恐らく暴走族の類と思われる何台かが、
ズ太いエンジンの爆音を響かせ、
時にクラクションを鳴らし時に喚き叫び合い、のろのろ走らせています。

 あの独特の重低音からして、大排気量のハーレーと思われます。

  我等は、こいつ等から離れた後方上空から眺めています。

   暗いので近付かないと車種の判別は出来ません。
   私が分かる範囲は、四台のバイクの先頭は二人乗りをしているので、
   五人の暴走野郎ということだけです。

  このウサギスーツの霊眼は、霊的なものには敏感ですが、
  物質には鈍く人間並み。

    暗がりや遠くは良く分かりません。

   先程から、こいつ等の後を付けているのは、
   スミレ様の指令という事でしょうか?

                             
《 その通り。よいか奴等は刀を背負っている。
 鞘の中の刃には、ベットリと血糊(ちのり)が付いておる。
 つまりは、既に何人もの血を吸っているということじゃ。
 指令はやつ等の監視じゃよ。》 血ハ、メグラスモノデスワヨ。

「 殺人鬼ですね。
 自暴自棄 ・・・ というより、
 千載一遇の殺人ゲームを楽しもうということでしょうか?」

《 まあ、そんなところだろう。
 だが、もう既に日本中で似たような事件が何十件も起きておる。
 中には、レイプに殺人をやらかす連中もいる。

何しろ道路が塞がれ、
少ない警察官や自衛官の中から「神の光玉」に入っている者もいる。

 ということになれば、言わば無法地帯と化した状態じゃ。

純日本人だけなら、こう乱れたりはしないが、
在日外国人や混血の者、意志の弱い日本人などは例外じゃ。
当然、外国の状況は最悪となっておる。

 そいつらをさて置きバイク野郎を監視する理由とは恐らく、
 「 奴 」 が関係しているからじゃろう。》

「 その奴とは、一体何者で御座いますか?」

《 ほれ、バイクの先頭の人間に憑依しておる幾多の邪霊、
 その中の一人。奴はアンドラスタ軍の 「バグソー中将」。

 こいつはかなりの曲者で知恵も働く。
 他の四人の憑依霊も皆バグソーの手下じゃ。
 こいつが更に何かを企んでいるということじゃ。》 

       チュウチュウチュウ♪  コロコロッ、クルクルッ♪


  三十郎様は、タブレット らしき物?
  を御覧になりながら仰せになりました。

  これは、神議り場でミカエル様の議席上にあったものと同じだ。


《 あ、そうそう、その通り。
 これには司令部から様々な最新情報が送信されて来る便利な物で、
 「 叡 智 晶(えいちしょう) 」 という物じゃ。

  邪神軍の組織形態も世界の分布も然り。
  アカシックレコードの情報も閲覧可能じゃ。

 それに、ほれっ小さく形を変えて指輪にする事も可能じゃ ・・・

 それでな、立体地図モードでは、
 奴等は現在、自由通りを北に向かっておる。

  おお、止まるようじゃ ・・・ ここは、世田谷区の奥沢二丁目か。

  駒沢公園にはかなり近いのう。》


   三十郎様は念波で操作されているのか、
   ただ立体画面を見つめておられるだけです。

   しかし凄い映像で御座います。

    奴等がバイクを止めた場所は、三階建てのアパートの前だ。

   バイクは街灯に照らされ ・・・

   うわぁ、これは相当ドレスアップと、
   改造されているハーレーのローライダーだ。

    深紅のタンクにエアーブラシで描かれた、
    天使の胸にナイフが刺さって ・・・ 

    ・・・ 悪趣味だな。

    煌びやかなエンジン周りは、
    殆どクロームメッキが施されている。

    幾らつぎ込んだのだろう? それとも盗品か?

   四台のバイクは皆、個性に溢れている ・・・
   今は、心臓の鼓動は止まり、不気味に息を潜めている。

    一番前方のバイクにタンデム乗りしていたのは女だ。
    夫婦なのか愛人か? 何れもヘルメットは被っていない。

   五人の服装はアウトロー的で、
   人相は悪い上に目が血走っている。
   体全体からは、きな臭い匂いがプンプンして来る。

    血生臭い遊びを満喫してきた後なのだから当然だ。
    五人は一階の一室に、大声で話ながら入っていった。

   私達は裏に周り、窓際の外壁の中から
   目立たないように室内を伺った。


《 いいか、あの一番年長の奴は、高木京次郎、六十一才。

 一応このグループのリーダー格だ。仕事は出来るし金もある。
 柳生新陰流の使い手だが、
 こいつの目的は真剣を振り回すこと、それだけじゃ。

刀の魔力に惑わされ、
剣の極意を極めよう等とは露程も思ってはおらん。

 何時かは、人間で試し斬りをするのが夢だったが、
 その夢が叶いさぞかし満足であろうな。》 

      ヤバンですわ~~。コロコロッ。

「 狂人もいいところですね。」

《 うむ、そうだな。
 え~次は黒い皮の上下の奴だが・・・ 志田正人、四十三才。

こいつも、高木と同じ道場の門下生で、
腕はこいつの方が数段上じゃ。

 ただ、負けず嫌いで、汚い手段を使いのし上がるのが趣味じゃ。
 剣でも仕事でもな。

当然、この二人は道場の鼻つまみ者じゃ。                       
高木と行動を共にするのは、単にいい金蔓(かねづる)だからに他ならない。

 後の三人は志田のバイク仲間で、剣の心得は無い。

こいつ等の刀は、刀剣収集家の家を襲って奪った物で、
みな業物ばかりじゃ、勿体無いわい。

 ふう・・・ 次は太った大柄の男、木下祐二、三十五才。
 隣の赤い革ジャンを着た細身の男は、新井幸夫、三十才。
 女は、小林由利恵、二十八才。

それと、先程アンドラスタ軍のバグソーの話をしたが、
バグソーが憑依しておるのは、この志田じゃ。

 そして、あの女はこいつの遊び相手に過ぎない。
 今から、宴会をやって武勇伝を酒の肴に
 盛り上がろうという趣向じゃろう。
 全く、馬鹿馬鹿しい。》  ヤレヤレデチュウ。コロチュウチュウ。

   志田は影のリーダーということだろう。    
   どうりで他の四人より、胎の中も魂も腐っている。
   しかも、底知れぬ恐怖を感じます。

  奴の目が鈍く光って、笑う度にその目の奥の、
  バグソー らしき ドス黒い霊体から、
  指令が部下達に飛んでいます。
  鞭のような鋭い波動の光が見えるのです。

   五人の守護霊達は、頭の脇でうずくまったままで、
   まるで生気が感じられず、
   金縛りにでも掛かっているようにしか見えません。

  その守護霊をよそに五人共、奥の十畳の和室に入ると、
  その服装からは不似合いなリュックと刀を降ろした。
                              
   皆、興奮しながらリュックの中を開けて、
   酒の類と何かの料理が入ったタッパや、
   ハム丸ごとに果物その他をテーブルの上に無造作に並べた。

  どうせ金持ちの家に押し入り、住人を殺して冷蔵庫の中身を中心に、
  目に付いた食い物をリュックに詰めたという事だろう。

   志田が自分の手下に、
   グラスや皿等の食器を持って来るように指示を出している。


         ( 推奨BGM )

   貴方を愛しつづけて  レッド・ツェッペリン



     直に宴会の準備が出来た。

  先ずはビールで乾杯をし、貪るように食べて飲み始めた。
  志田は無作法な姿勢で、
  動物のようにローストビーフに食らい付き、ワインを流し込む。

 同じ獣でも、死肉を食べる禿鷹やジャッカルやハイエナの方が、
 神の掟の範疇での殺しであり食事である。

  故に立派と言える。
  例えライオンその他の獲物の横取りでも、卑怯では無い。

   ある意味天晴れである。

  が、こいつ等は見た目も心も魂も獣以下の腐った肉の塊である。
  口に物が入ったまま、醜い言葉でしゃべりまくっている。

 もはや、理性も知性も見受けられない。
 良心や人間性は捨て去ったようだ。
                 
 おふざけで、獣人高木は大脇差を居合いで抜刀し、
 テーブルの上のボンレスハムを一刀両断した。

  ただ下の皿まで割った上によろけて転び、
  その弾みで血刀を放り投げた切っ先が、  
  壁に貼られた金髪美女の胸のど真ん中に突き刺さり、
  血糊が僅かに滴り落ちた。

    バグソーの演出だろうか?

   拍手喝采を浴びた高木は上機嫌である。そして ・・・

「 俺は今度、兜割りに挑戦するぜェ。俺ならやれる。」 と豪語した。

  馬鹿騒ぎは一時間以上続き、皆出来上がっていた。
  だが一人だけ青褪めた顔の奴がいる ・・・ 新井だ。
  こいつは酒が弱いという訳ではなさそうだ。

 ただ、ボーッ と 回想している ・・・ 噛み締める様に ・・・


    脳裏を ・・・ 覗いてみよう。


 ・・・ 必死で命乞いをする女性の顔が見える。
 年は三十位だろう ・・・

次はうつ伏せに抑えられたその女性の首に、
刃先が食い込み血しぶきが飛んだ ・・・ 
        
  クズめ。

次のシーンは、志田がこの女性の父親と思しき男と剣を交えている。
顔面蒼白の母親の首には、
高木のバタフライナイフの刃先が食い込んでいる。

 高木の高笑いと母親の悲鳴が重なった瞬間、
 父親の左腕と刀は ボトリと畳に落ちた。

  勝負でもないのに志田は、

「 弱っちい師範だぜぇ!」 と言い放った。

  師範とは ・・・ だから卑怯な手を使ったのだ。

   まだ次がある。
                    
 その師範を、血が滲んだ畳に正座をさせ、
 志田と木下が両腕を押さえている。
   
 新井は、師範の頭を掴んで下を向かせて固定している。
 母親を抑える役は小林に代わっている。

  刀の棟で肩をトントン叩きながら、高木が醜い口を開いた。

「 おい、俺様が介錯してやるんだから感謝しろよな。
 それに、何かと説教垂れたことは水に流してやる。

  これも感謝しな。

 最期に、家族仲良く天国とやらに行かせてやるんだから、
 それも感謝しないとな。

  ええ、有り難いだろう クソじじぃ!
  首の皮一枚で斬ってやるぜぇ!! 」


  と言って振り下ろした刀は、頚椎の骨で ゴッ、 と止まった。

頭に来た高木は右手を棟に添えて グッ と力を込め、首を切り落とした。
頭を押さえていた新井は勢い余って後ろに尻餅を着いた。

そこに、転がった師範の首が開いた足の間で止まり、新井の顔を睨んだ。
そして血が滴る唇を動かし、何かを言っているようだ。

   
・・・ 殺 してやる ・・・ 殺 して ・ ・ や る ・・ ・ ぐう


 
  この時、新井の血は恐怖で凍りついたようだ。

    その感覚が伝わる。

      そして心臓の鼓動が異常に早くなった。


  この男に、師範の搾り出す声は聞こえたのだろうか?
  実際、微かに発音したようだ。
  それに、凄まじい怨念の念波が伝わる。

 憐れ、師範の妻は志田に殺され、家には火を放たれた ・・・

  言葉が出ない、獣以下の狂人である。

 その後も豪邸の何件かに押し入り、
 レイプしては殺し、略奪の後に火を放った。

  その火を眺めながら皆奇声を上げている。
  近所の者が逃げて行くが、それすら楽しげに見ている。

「 お~い、ねえちゃん、こっち来いよ。
    寒いから焚き火に当たってけよ。
       ババアは来んじゃねえぞ~!」
    
   こいつは木下だ。

  いずれにしても殺された人達は、
  祈りの輪に加わるつもりだったのかは定かではありませんが、
  迷わずに想いを一つにして早く聖域に行けば良かったのです。

   チ~カ。なるほどそういう事だったか。

 無表情なこの男の感情、結局どうなのか? ・・・

余りの強烈な体験で、単に放心状態になっているだけのようだ。
ただ、後悔の念も快楽も感じてはいない。

全て惰性であり、極度の不感症なのだろう。


 ・・・ 俺は言われた事をしただけで、自分に責任はない。
  こいつ等が悪い。心中する気はないが、まあ成る様に成れ ・・・


   という思念が伝わって来る。

  つまり自分の意志が弱いが故に、
  狂人にも邪霊にも操られ易いということだ。

「 相応の理 」 「 因果応報 」 「 類は友を呼ぶ 」 「 同じ穴のムジナ」、
 魂の曇りが同じだとこうなる。 
 性格や善徳、そして能力が違うだけである。

  何故、こんなことが起きたのか?・・・

 前世で、全く逆の立場で似たような事件が起こったと、
 考えて差し支えないでしょう。

前世で無残に殺された霊が、
恨んで憑依し復讐の機会を狙っていたのだ。

 更には邪霊の幹部クラスに目を付けられ手下となり、
 果て無く扱き使われ現在に至ったということです。

  人間は過去世の事は否定し考慮しない。
  根本の原因はそこにあるのですが ・・・

 故に裁判では様々な矛盾、冤罪が生まれ、
 そこから更に恨みと悪想念が膨らみ、
 社会全体が混迷混沌の度を増す事になる。

   「 裁きの権限 」 ・・・ それは神の特権なのです。 

  その正確、公平、平等な裁きを支えているのは、
  アカシック・レコードなのです。

 人の死後、走馬灯のように映し出される当人の過去の記録映像は、
 グウの音も出ない罪状を突きつけられます。

その個人の過去世からの正確な記録は、
個人のアカシックレコードへ ・・・

 個人個人の集約した記録と、
 世界の歴史のあらゆる記録は、地球のアカシックレコードへ ・・・

その地球のアカシックレコードは、
地球内部世界、アガルタの中心に位置する、シャンバラにあります。
地球のアカシックレコードは、超巨大クリスタルなのです。

  地球のアカシックレコードの管理者は、大天使ガブリエルです。

 この辺の情報は、御自分で検証してください。

全ては自己責任ですから、何でも鵜呑みにしたり、
依頼と依存が強い方は、人からも神々からも信用されません。

 そこを踏まえて、何事にもあらゆる角度から、
 検証する習慣を付けて頂きたいと思います。


さて、馬鹿どもの狂気染みた宴会は何時まで続くのだろう?

志田の奴が何やら静かだ。これは気になる。
きっと良からぬ指令をバグソーが出しているに違いない。

 ボソボソと独り言を言っていて不気味だ。
 ははあ、そういうことか ・・・ 少々お待ち下さい。

  直に、こいつの口が語るでしょう。
  ほら、奴の目が鈍く光り、不気味な笑みを浮かべてこう言った。

「 あのさぁ、高木さんに、みんな ・・・
 もうそろそろお開きにしようぜ。

 面白い事考え付いたんだよなあ。
 ただ、これはかなりリスクを伴うんだが、
 歯応えの無い連中ばかり襲っても面白くねぇし ・・
 ヒヒ、高木さん ・・・」

  志田は高木の顔をニヤニヤ見つめた。

「 おいおい勿体ぶるなよ。
 どうせろくでもないが~、
 快楽を極めるアイデアが閃いたんだろ、え~。」

「 こりゃあ適いませんねえ高木さん。
 いや~何ね、ちょっと肝試し的な、
 スズメバチの巣を突付く様な、ヒヒヒ・・・

 つまり俺達のような、ならず者には、
 危険な夜遊びをしようかと思いましてねェ。イヒヒ。」

   まだ言わないとは・・・嫌な奴だ。

「 もう、まさと ったら~、言っちゃいなよぉ。
 これ以上危険な遊びでも何でもこの際いいんじゃな~い。
 ねえ、みんなぁ。ふえ~~。」

  生意気に、スコッチのバランタインのボトルを持ちながら言った。

   少しは味わえ ・・・

 この女は、かなり出来上がっている。
 小林のはしたない服装。
 何だそのミニスカは膝上何十センチだ。

   パンツはどうした ・・・?

  それでバカ丸出しの女の股間に手を這わせ、
  ニヤニヤと奴の目が鈍く光った。

「 ・・・ 祈りの聖域を襲うんだ。
 ヒヒ、ここから近いのは駒沢公園だ。

 ククッ、何人殺せるか?
 というゲームをおっぱじめようという訳で~す!
 ほ~う! ウッヒヒッ。」  
 
   ということです。 馬鹿め ・・・
   剣三郎や拳三達がいる限り ・・・ んん?

  いや、拳三達は出払っているかもしれない。
  しかも、元気な人ほど誰かを救いに走り回っている筈だ。

  その虚を突こうというバグソーの作戦か? これは不味いな。

「 そうか、それは確かに面白いゲームだが ・・・
 奴等、金縛りの術が使えるんだろ。
 つまりは、綿密な作戦が必要ってことになるな。」

「 流石は高木さんだ。グヒッ、ウィ~ップ ・・・
 その作戦をこれから考えようじゃないですか。

万が一も考慮に入れて、
いくつも用意しなきゃいけないでしょうねェ ・・・

 それに、おりゃあ思うんだが、
 あいつ等は聖者面して地球を乗っ取ろうとしている悪党だぜ。

これは人間側から見れば真面目に正論だと思う。

 それに俺達みたいな本物の悪党からして見れば、
 侵略者で最大の敵だぜ。

この醜い人間が作った狂気の世界で、
俺達は他人から見れば狂人だが、                 
狂った世界で狂人なのは、むしろ普通で正気と言える ・・・
そおだろ~、だから人間の代表として、
侵略者から地球を守ってやろうぜ。

 そうすりゃあ、狂人で~も英雄だ~、
  殺人の罪も~無罪勝~お訴ぉ~っ♪
 大統領の恩赦も夢じゃな~い♪ 
  取引だぜェ~え、ジャ~ック~♪ クッククックゥ。

そうだ、ほら、アルマゲドンて映画もそうだったろ。
狂人集団が地球を救い英雄となる。
おりゃあ感動したねェ。

 だから、俺達も英雄になってやろうぜ、ヒヒッ。
 狂気の世界を守る為に立ち上がるのだ、我が同志達よ!」   

  右手を挙げて、
  立ち上がって言うほどの事か、くだらん!
  馬鹿共が拍手をするな。

   タコデチュウ! 戯けめ!

「 さっすが志田さんだぜェ。
 俺も重い尻をフリフリ立ち上がるのだ ~~ ビヨ~ン!」

   木下がその場で飛び上がり、
   着地に失敗して後ろの壁に激突した。

その衝撃で壁に突き刺さっていた例の刀が、
紙切れ製の金髪美女の胸から離れて切先(きっさき)が畳にドスッ!

 見事に木下の指と指の間に ・・・

「 動 く な っ!」 志田が叫んだ。

   バグソー中将は絶好調のようである。

    顔面蒼白の木下。

   大きく見開いた目線を、
   右手に見える刀の上から下になぞって行く ・・・

  息を止め刃先に触れないよう指を ・・・ 静かに抜いた。

  その指を眺め回し一言、

「 あっぶねぇ~~っ!」

   と言った木下を尻目に、皆は腹を抱えて笑った。    
   何でも引き攣った顔が最高だとか ・・・

 


  二〇 X X 年十二月十九日(金) 1:45 
         カウントダウン 77:15


  それからというもの、邪神軍アンドラスタ司令直属小隊、
  バグソー隊長による侵略会議は一時間に亘って執り行われ、
  その作戦遂行の為の準備と演習は、更に一時間を要するに至った。

 あ、いや、そんな大袈裟なものでは御座いません。

ただ実際、志田は高木に気を使いながらである事は言うまでも無い。
ついでに、志田は高木に対して尊敬の念の欠片も無いことは言うまでも無い。
とことん利用して、価値が無くなれば捨てようという腹である。

 当然、高木も同じ腹積もりである。

  さて悪党五人臭 ・・・ 変換ミス? 

 いや、こっちの衆だけど別にいいか、お似合いだから。
 狂人のヒーロー気取っているので、何か名前付けてやろうかな。

( 狂人変隊 ゴニンジャー!) なんて ・・・五人とも誤認とか、プッ。


「 どんなもので御座いましょう、三十郎様にチカチュウ様。」

《 くだらん、非っ常にくだらん! おまけで誤十点じゃ。》 

                  へ、誤って?  

       コロコロチュウチュウ♪ コロチュウチュウ♪ 

《 さっきから何がコロコロなのだ、チュウベエ殿。》

  オシエテアゲナイ。
  ・・・ あのお、私のお腹に何かあるのでは?・・・フフ。

《 まあ良いわ、放っておけ。》 フフ~ンダ。

  「 ・・・はは。」

 


   十二月十九日(金) 現在、午前四時四十九分

 ここは、「神の光玉」 内、「祈りの聖域」 十八箇所の内の一つ、
       駒沢公園内、陸上競技場。

 

  この祈りの聖域は既に人で埋め尽くされていた。
  他の駒沢公園、二箇所も同様である。

いずれもグランドの中だけで、二階のスタンドには入れてはいないようだ。                          
同じ神の光玉の中心、皇居上空の聖者の方角に跪いて祈る訳ですし、
同じ座面であることが重要なのだろう。

 人数は現時点で、他の二箇所を含め 十一万二千八百五十二名。

「 憑 依 霊 」   五十八万五千百二十七名。
「 その他の邪霊 」 七百二十六万四千二百九十九名。

    とにかくウジャウジャいます。

その人数は、世界中から正神軍司令部に随時報告がなされております。
その報告内容を、三十郎様は叡智晶で閲覧し確認しているのであります。

  ところで、このウサギの霊眼で見渡せば、
  恐らく七、八割の人は、
  七時の開戦を過ぎても祈り続ける事が出来るだろう。

   残りは嫌々感丸出しの人達である。

  悪霊バグソーの手下は、非常に分かり難いのですが、
  聖域の神気の影響でもがき苦しんでいるようです。

 その憑依した人間の体内で、呻き声を上げながらアガク、
 微かな言霊と動きで存在を確認出来ます。

他の邪霊、大きさはまちまちですが、小さく縮こまっています。
それで、魂が醜い人間の周りが落ち着くらしく、
皆で大勢集まりびっしりへばり付いています。

 ここで明暗ハッキリ分かれました。

  つまり、暗く醜い魂目掛けて 「流星火矢」 を放って下さい、
  と示しているようなものです。

   * 「流星火矢」

   「神の光玉」 内に、相応しくない汚れた魂を持つ者達を、
    光玉外に追放する為の措置。
    裁きの天使が上空から放たれる火矢のこと ・・・


   ところで奴等、ゴニンジャーはどうしたのか?
   もう居ます。 

  すぐそこに ・・・ 新井幸夫が一人で、南西側の端に座っている。
  こいつはさしあたり ・・・ 青ニンジャーでしょうかネェ。

 何故って聖域の神気が相当きついのと、
 極度の緊張で顔が青褪め苦しそうだからです。

  そこから凡そ12、3 メーター離れた場所に志田がいるが、
  やはり苦しくてうつむいている。
  こいつは癖が強く捻くれているので、黄ニンジャーです。
  たぶんカレーも好きでしょう。

   こちらの小隊は黄色が隊長になります。

  北西側には高木と木下がいます。
  二人の距離は10メーター以上あるでしょう。

 高木は血を好むので赤ニンジャー。
 垢でも構いませんが、お好きな方でお呼び下さい。

  木下は順番からいってミドニンジャーです。
  ウシガエルみたいに動きも鈍いので丁度いいです。

 その二箇所は、
 東側中央にいる剣三郎からは一番離れた位置になります。

  つまり、やましい事をする為、
  暗い隅っこに居ないと都合が悪いのです。

 面が割れ、犯人が特定される事を恐れてのことです。
 それさえ気を付ければ金縛りは掛けられないと踏んだのです。

問題なのは小林です。
この女は桃ニンジャーでいいでしょうが、
こいつは競技場にはおりません。

 競技場の東側に面した自由通りの道路脇にいます。
 それで、あの恐ろしい作戦を決行しようというのだ。

狂人が考える事、バグソー中将が裏で仕切っているだけあって、
とんでもないテロ作戦なのである。

 それはともかく、気になるのは狂人四人の周りの人達である。

  殆どの魂は四人ほどではないが、相当醜く汚れている。
  恐らく、憑依霊や周りの邪霊が協力し合って、
  狂人の側にくっ付けたということだろう。

 当然、バグソー中将の指令だ。

  魂の美しい人は守護霊の霊力が強いので、
  不幸には巻き込まれないのである。
  更には、守護神に守護天使からも強力な後押しを頂けるのである。 

 ただし、「 人間の99%の努力に対し、神は1%報いる!」

  この原理は、全ての人間に平等に働きますので、肝に銘じてください。


《 よいか、うさぞう。
 バグソーは決死の覚悟でこの作戦に挑んでいる。

奴等にすれば、無謀この上ないことだからじゃ。
この聖域以外であれば、まだ自由は利くが、
ここには魂が綺麗な者が多い為に守護霊の力も強い。

それに全体の団結力も増した為、邪霊が行動しにくい領域になった。
ただ、邪神軍にしてみれば開戦前に、一兵でも兵力を削いでおきたい。

 その命令を断固遂行する。
 でなければ自分の存在意義が無くなる。
 失敗の後は激痛を伴う罰が待っているだけじゃしな。

 夢も希望も無いのが邪霊界ということじゃ。ああ、空しいのお。》

   アア、ヤダヤダ。 ころころ、くるくる、くるりんりん♪

「 どんな激痛を味わっても、死ねないし逃げ道も無いとすれば、
 邪の道を極めようということしか考えなくなるのでしょうか?」

《 まあ、そういうことじゃ・・・

 おお、こちらの作戦も始動するようじゃ。
 よく見ておきなさい、新井の隣の男性をな・・・》

   「 はい、畏まりました。」

 


        ( 推奨BGM )

    アキレス最期の戦い LED ZEPPELIN


 

  新井の隣・・・この男性、魂は結構綺麗です。

   年は六十位でしょうか?

  角刈りに精悍な顔つき、風格すら漂っています。
  只者でないことは一目瞭然。

  そうか正神軍も下らん邪神軍の抵抗を迎え撃つ準備は
  万端ということなのだ。

   その偽善を見抜く鋭い眼が光った。

「 あの失礼ですが、どこか具合が悪いのですか?
  先程から、苦しそうに見えますが。」

「 ・・・あ、いや、何でもないですよ。気にしないで下さい。」

  そう言いながら、しきりに携帯の時計を気にしている。
  暗がりでは、デジタル表示が丁度いいようです。

   隣の男は続けた。

「 それから、もう一つ気になるのが、酒の臭いなんですよ。
 あれほど聖者様が禁じられた事を、何故破ったりしたんです。
 追放されかねないですよ。」

「 ああいや、俺は酒好きだから。 
 最後ぐらい、いいじゃないかよ。 勘弁してくれよ。」

  イライラして毒付く新井だが、
  周りでは酒を飲んだ奴がいると騒ぎ始めた。

  後ろから中年女性の声がする。

「 あなた、掟を破るような人はここにはいられないんだよ。
 まず酒を飲んだ事をお詫びしなくちゃ駄目よ。
 私達もお詫びしてあげるから。 いいでしょう、みなさん。」
          
   すると、顔を顰(しか)めている者が多い。
   嫌そうな愚痴も聞こえる。

  新井は冷や汗を拭いながら、時を急かしていた。何故なら、

 ( 由利恵の奴、もたつきやがって早くしねえか バカヤロウ。
   もう10分経ってるだろうが、クソッタレ ・・・ )

10分後、それは 変態ニンジャー下劣作戦 決行の時間なのだ。
小林が合図を出さないと始まらないのである。何しろ連絡が取れないのだ。
ただ、もう見え始めている。

   邪神軍反撃開始の狼煙(のろし)が ・・・

   場内でも気付いて騒ぎ始めた。
   間も無く、連続して爆発音が響いた。
           
  テロニンジャーは、予め自由通りの20メートル程の区間に、
  灯油を車に振り掛けた後、
  それぞれの配置に着いたのだ。
  10分あれば充分配置に着けるとの判断からだ。

 着火役が小林という訳である。

奴等の思惑通り、集まった群衆は場外の爆発に気を取られている。
剣三郎は、皆に落ち着くよう指示を出した。

  この時 ・・・ 愚かな作戦は決行されたのである。

爆発寸前の新井の心臓 は、
 震える体を何とかリュックを持って壁際に走らせると、
  急いで地面に置いたリュックの中から、
   ペットボトルとマッチを取り出した。

   慌ててペットボトルのキャップを取ったのはいいが、
  その右手首をある男に絞り上げられ、
 地面にうつ伏せに押し付けられた。

  その男 ・・・ 先程、新井の隣にいた男だ。
   彼は余裕で新井の背中に腰を下ろした。

おい貴様! このペットボトルの中身 ・ ・ ふん、灯油か。

 私の名は結城秀人。お前のような悪党の顔と挙動は、
 何百人と見てきたから直ぐ分かる。

 場内で見掛けた時からお前を付けて隣に座ったということだ。

 尻の財布も命を掛ける気など更々無い事の証拠。
 もう神様からも見放されているだろう。

 暫く、じっとしているんだな!

  恐らくは七時までだ。覚悟しろぉ!


   遅ればせながら申し上げます。
   この人、自警団の団員です。

  だって、あの真っ赤なジャケットを着ているのでぇ・・・
  知っておきながら人が悪いですね、ス~ミマセ~ン。

  しっかしカッコイイわ~。
  しかも、渡哲也さんに姿も声も似ているのであります。

   彼は、新井の背中から腰を持ち上げ右手を離すと、
   左手のペットボトルを静かに地面に置いて合掌した。

「 バッ、馬鹿な事やってんじゃねえぞ~。クソ野郎がぁ!」

   逃げながら捨て台詞を吐いた青色獣人だが、
   直ぐに動きが止まった。

  とは言え、妙な事に壁際まで、ぎこちなく歩き ・・・・
  壁を背にして両足を揃え、両手を真横に広げた ・・
  ああっ、こりゃあ十字架だ!

   は、磔(はりつけ)ってことかぁ! うわっ、

   バリバリバリッダダーーーン !!!

  せっ、閃光と共に凄まじい爆音が響いた。
  く う ぅっ ・・・ 落雷か?

   あ、あまりの轟音に、私を含めた群集は、
   悲鳴を上げ腰を抜かした。
                  
《 こりゃ、しっかりせい。これは「 神の雷槍(らいそう)」じゃ。

 ここの守護神「天照日大神(アマテルヒオオカミ)」様が、
 祈りを聞き届けて落とされたのじゃ。

  聖域の者に対して殺意を抱けばこうなる。
  金縛りなどは生温いからな・・・

 あの新井自身の魂も含め、何体もの憑依したバグソーの手下は、
 無数の「 雷 撃 針(らいげきしん)」を全身の霊・幽細胞に打ち込まれ、
 三日間激痛にのたうつことになり、
 邪神に使われることも無くなるのじゃ。》 

    オキノドクサマ~。コロコロ、コロコロ ・・・
    こここ、こわ~~。

    磔状態の新井の体は微動だにしない。

  勿論、体から煙が上がっている、
  なんだ、何処からか悲鳴が ゲッ 、

  バリバリバリダッガーーーン ! ! !

  また落ちたー!
  反対側ぁーー! あっちは火の手も上がっている。

   犠牲者が出たのか?

《 ちぃっ、三人やられたぞ。気の毒なことじゃ。》

  まあまあ酷いですわ!

 剣三郎が皆に上着を用いて消火するよう指示している。
 それにしても、祈りを捧げるのが間に合わなかったのか。

  我等は直ぐ北西側に向かった。

 


        (推奨BGM)

 フレデリック・ショパン作曲 『 ノクターン 』(夜想曲集)
  Nocturne Nr.13 C-moll Op.48 Nr.1 - Lento
    マウリツィオ・ポリーニ (ピアノ)   




            

 被害状況は、皆落ち着いて消火作業に当たった結果、
 二人の火傷は致命傷には至らなかったが、一人は全身に火傷を負った。

  運悪く灯油を浴びた量が多過ぎたようだ。

 その上、火の手にも阻まれ助けようとする者が暫く近付けなかったのだ。
 裏では邪霊同士で協力し合い、この状況を作り上げたということだ。

  辺りには、奴等の笑い声が木霊している。

   その笑う者を詰(なじ)る守護霊達の言霊も聞こえる。
   さぞかし悔しいだろう。
                               
  倒れた女性には、十才位の女の子が泣いて縋(すが)っている。
  どうやら母子家庭のようだ。もう、母親の肉体の火は消えかかっている。

   最期の力を振り絞り、火傷を免れた左目を娘に向けた。


「 ・・・ ゆ、由美、ごめんね ・・・・ 
 り ・・ 離婚 して 苦しめて  しまって ・・
 全部 ・・ 私の 我がままを ・・・ 通した から なの ・・
 それに、もう ・ ・ い、一緒に居てあげられ ・・ ない ・・
 けれど、死んでも ここで ・・ 祈るから ・・・」

「 お母さん、私はお母さん一人が居てくれるだけでいいの。
 私を一人にしないで、死なないで ・・
 うう、お、お母さん、お母さん ・・・」

   母親は焼け爛れた右手を、側に居た老婆に差し出した。

「 こ、この子を お願い します。 
 うう ・ ・ みなさん、どうか お願 い ・・ ・ グ ・ ・」

   母親の悲痛なる叫びに皆応えた。

「 大丈夫、私達に任せなさい。何も心配はいらないんだよ。
 私があばあちゃんになってあげるからね。」

「 俺が父親になってやるから心配するな。」 彼は、火傷を負った一人だ。

「 うえ、うう ・・・ あ、あたしは姉になるぅ。」

   泣きながら、セーラー服を着た少女が叫んだ。

「 私は母親になるわよ。」

   彼女は火傷したもう一人だ。側に夫と子供が二人いる。

「 ぼく、おとうとになるよ。」 かわいい幼子が名乗り出た。良い子だ。

「 ・・ ・ あ あ 、ありが とう ・ ・ あ り が ・ ・ と ・ 」

   激痛の体内の心は安らぎに満ち、
   静かに魂と幽体は浮かび上がっていった。

  まだその 「肉体」 と 「霊・幽体」 を繋いでいる
  霊波線 という光線は、微かに見えている。

   人は死後二十四時間、霊幽体と肉体は繋がっているということです。

「 お母さん、お母さん ・・・・」

   叫び続ける少女の想いも、絶望感までには至っていない。
   そのことが本人も不思議そうだ。

   自分の周りが暖かい光で包まれる感覚がして、
   流す涙の感情は悲しみから、
   今まで味わったことのない幸福感に変わっていた。

 ( わたしは不幸じゃないんだ。
  お母さんは幽霊になったけど、生きているんだ。

 それに人類は皆家族だって聖者様が言ってた。
 まだ信じられないけど、ここにいる人達は信じられる。
 わたしは生きてゆける。

  みんなと一緒に ・ ・ お母さん、わたしは大丈夫。
  きっと三日間がんばるから、心配しないで一緒に祈ってね。 )

   そんな少女の心に、暖かで柔らかな手の温もりと愛の言霊が、
   幾つも幾つも触れては沁みてゆく ・・・

  全ては神の愛、人類愛に目覚めたからこそ、
  二人の母子が救われたのである。
 
  暫く辺りは悲しみに包まれていましたが、
  次第にその感情が怒りと使命感に変わり轟々と燃えて来た。

   負けてなるものかと、目付きがまるで違っている。

  あまりの気迫と神気に、
  周りにウジャウジャ居た浮遊霊は居たたまれず離れて行った。

 憑依霊にしても、神に開眼した魂に憑いているのが苦しいのだろう。
 苦悶の表情の霊が、
 あちこちで体から抜け出ようと必死でもがいている。

  まるで、光の泉に溺れまいとしているかのようだ。


ところで、気になっておられるでしょうから申し上げますが、
こちらで放火テロを行った者は誰か ・・・

  それは木下です。

奴なら、ほら、壁際の邪魔にならない所で磔処刑され、
さっきまでカエルの串焼きのように炎が上がっておりましたが、
今ようやく消えました。

 もう一つ、私も気になることがございます。
 志田と高木の行方です。

  うっかりしていまして、二人の姿を見失ってしまったのです。

 この二人も、予定では同時に放火テロを行う手筈でした。
 ところが、示し合わせた訳でもないのにやる気は無かった。
 それは何故か?

  とにかく怖いので、
  まずは二人にやらせて様子を見るという腹だったのです。
  何しろ得体の知れない恐ろしい敵が相手なのですから ・・・

   それで、とんでもなく不利なことが分かり、恐れをなし、
   人知れず外に逃げたということでしょうが、

「 あ~、申し訳ございません、三十郎様。
 奴等は恐らく、外で女と合流しているのではないかと思われますので、
 お連れ頂きたいのですが ・・・」

《 あのなぁ、うさぞうよ。
 たかだか四、五箇所の状況を常に把握出来んでどうする。

  視力は人並みとしてもじゃ。

 場所は確認済みなのだから、
 意識と霊眼を集中しておれば分からぬ筈はない。

わしはこの場に居ながらにして、外の事も把握できる。
壁などの物質は霊視の障害にはならんのだからな。

 ほれ、見るが良い。
 こそこそと、志田の奴が場外に出て、
 街路樹に引っ掛けて隠していた刀を身に付けている。
 高木は志田の後を追っている。》

 フフ、チュ~イリョク。 フンフンコロコロ♪ フンコロコロ♪

「 これは意識が足りず、面目次第も御座いません。 
  ・・・ 集中すれば微かに見えます。」

《 だろう。まあ良いわ、では行くとしよう。》

 


        ( 推奨BGM ) 

   幻 惑 されて  レッド・ツェッペリン 

     


 

クズ共に気付かれぬよう競技場の壁の中から辺りを見渡すと、

 奴の姿を視認出来ました。

志田は街路樹に背をもたれ掛けて、
路上の先の何かを冷たく見つめている。

 そこから少し離れた場所 ・・・ 
 炎上する車群を背に、小林の姿が見えた。

  ああ ・・・ 憐れなことに下半身に火傷を負ったようだ。

 爆発時の飛火でも浴びたのだろう。
 火は消えているが、自慢の素足は無残に焼け爛れていた。

激痛に身悶え涙するのは痛みからだけではなく、
勿論二度と戻らぬ美しい肌に対する絶望感からである。

 彼女の濃い化粧が、涙でぐちゃぐちゃになり、
 脳裏には女友達や志田に笑われている姿が見える。

  その思念に割って入って来たのは、
  地面から伝うブーツの靴音である。
                                
   その憎々しい音霊から感じ取れるのは、
   醜く嘲笑うかのような邪念だ。

     その雑音は直に止まった。

    ・・ ガツッ、ザザッ ・・・

「 ざま~ねえな。ケッ、きったなくなっちまってよう。」

   女は醜い言霊に耐えながら、涙で汚れた顔をゆっくり上げた。

  見えたのは腕組みをし、薄ら笑いで冷ややかに見下し、
  炎に揺らめき鈍く光る志田の細い目だ ・・・

   彼女はある事を瞬時に悟った。

「 ・・ ・・・ あ、あたしを殺すのね。」

「 へっ、物分りのいいメス豚ちゃん だねえ。
 ケッ、俺が足フェチなの知ってるだろ。

 それがこの様だ! 

 触りたくも見たくもねえよ、もう ・・・
 お前より具合のいい女体は、いくらでもあるんだぜェ~。

 ヘヘッ、どう斬って欲しい? その願いだけは聞いてやる。」

    ・・・ クズ め。

「 首を ・・・ 一瞬でお願い。」

   絶望 ・・ 果てのない地獄に行くんだという思念。
   底知れぬ恐怖 ・・・ 震えは止まらない。

「 もう遅い、もう遅い、もう遅い ・・・・・」 何度も呟いた。

   そう言いながら上体を起こすと、
   頭を下げ長い髪をどけて ・・・

  奴に首を差し出した。

 知らぬ間に抜刀された妖刀に、
 狂乱の炎と獣人の冷たい目が写し出された。

 その刃文が笑っているかのように見えるのが、
 ・・ あまりに不気味だ。
    
  刀の棟で肩をトントン 叩きながら、志田が醜い口を開いた。

「 さ~て、あのおっさんが失敗した首の皮一枚で斬るってェ見本を、
 見せてやろうじゃあねえかぁ!」

  志田は刃先を、揺らめく炎に映し出された頚椎の影の谷間に当て、

    振り上げて一閃、

「 お~りゃあ~っ!」 と、斬り込み様、直ぐに刀を持ち上げた。

   彼女の首は ・・皮一枚で繋がりながら、
   ゴッと、鈍い音を立てて地面にうつ伏した。

  憐れな小林の意識は、まだ頭部にはある。
  激痛の中、恨めしそうに志田を睨んだが奴は気付かない。

  どういうつもりか、周りのバグソー配下の雑魚共が、
  スタンディングオベーションで喝采を浴びせている。

   ・・・ 馬鹿共め。

「 やったぞ~っ! ・・・ やっぱりすげえや俺。
 あ~でも、公儀介錯人の口 はねえか?
 ヘッ、子連れ でもねえしな。」

   すると、後ろから パチパチパチ と、拍手が聞こえる。

   「 いや~、御見事だよ志田君、動 く な ・・ アゥ? 」

   言い終わらぬうち、
  志田は後ろ向きのまま迷わず己の左後方に走り出し、
 振り向きながら両手を大きく開いて飛び上がった直後、
体を瞬時に丸めた。

面食らった高木は、
 急いで左脇に挟んだ 拳銃 を右手に持ち変え、
  慌てて一発発射したが、凡そ見当違いの空を切った。

   もうその間に魔獣の体と邪刀は、
    地を這う風のように高木の足元に迫り、
     二発目を放とうとする高木の 邪脳 からの 電令 を、
      右腕ごと断ち切った。

   「 つ え あ ー ー っ!!!」     あ ぐぅ ・・ ・」

    二人の対照的な言霊が響いている間に、
   ガッ、ドッ、 と いう音が冷たい地面に落ち、
  直に高木の両膝と左手が続いた。

  ボトボト という音霊は 血の滝壺 に注がれている。

   「 あがっ、ああ ・・・ ぐう ・・」

     激痛が全身を貫き、脳神経は破裂しそうである。

     辛うじて意識を保つ高木の背中に、
    奴は ニヤニヤ しながら邪刀に纏わり付いた
   ドス黒い血 を擦 り拭っている。

「 何だよ、汚い血がなかなか取れねえじゃねえか。
 いい加減にしてくれよなぁ。ケッ、無っ様だねえ。」

「 ・・ ・ あ ぐっ 、うう・・ なあ、志田よぉ ・ ・」

「 ああ、言いたい事は分かるぜェ。
 知っての通り、俺の後ろに目は付いてはいねえ。

ただ、あんたの行動は始めから読んでいたって事だ ・・・・

 ほら、以前 トカレフ を暴力団から手に入れたって時に、
 試し撃ちに皆と夜中、山に行ったっけ。
 あん時は嬉しそうだったねェ。

そんな大事な物は、
俺達に内緒で持ち歩いていても可笑しくはねェ、そうだろ。
こんな時は特にだ。内緒で持って何をするのか?

 それは、いざとなれば邪魔者を消すのに使う。
 俺はあんたの弱みを少なからず持っているしな。

だから、俺に銃口を向けて近付いたのはいいが俺の背後を取り、
余裕が出来たので拍手なんぞをしてしまった。ギヒッ


「 ・・・・・。」

「 なんだ、グウ の音も出ねえか?
ヘッ ・・・ そんでな、都合の良い事に拍手の音が、
あんたとのある程度の位置と距離を教えてくれた。

 意表をつかせて一秒、飛び上がっては体を丸め、
 狙いを付けずらくして二秒ってとこか。

おまけに抜刀する必要も無かった。
それにしても、あんた焦り過ぎだぜ ・・・

 つまりは、邪神の女神が俺に微笑んだってことだよ。
 俺って今日は特に冴えてるぜ。

ただ、如何せん刺激って奴は、直ぐ無くなるのが欠点だよなぁ。
楽しいが幸せって感じでもねえし ・ ・・
なあ、その腕いてえだろ。」


「 ・・ う、聞いてどうする?・・・

 所詮、俺達の行く道は邪道だが、
 先に地獄があるのは分かっている。

そこでは、槍や針で突付かれるか、
聖者が言うような火炙りにされるのか?・・・

 お、お前も見たろ。 新井や木下は公開処刑されたよ。

鼻からやる気は無かったが、やらなくて良かった。
金縛りなんて嘘じゃねえかよ!

 はは、いずれにしても永遠の苦痛が待っている ・・
 この腕の激痛もまだ増しかもしれんぞぉ ・・・

怖いねえホント。 死より怖い事があるとは、ぐぐぅ ・・」

   そう言いながら、地べたで横になった。

「 なあ、おっさんよお。
 こんな時しか本音で話せないっていうのは、
 悲しい事だよなあ。

 はは、こうなったら激痛を快感に変える他ねえな。
 マゾの訓練やってけば良かったけど、おせえかなあ。」

「 ははは、お前らしい発想だが、
 サディストのお前には無理だろう。
 もういいから ・・ うう、さっぱりやってくれ。」

   高木は起き上がり、首の上に トントン と手刀を当てた。

「 ええ? 面倒だなそんなもの。
 また血で汚れちまうじゃねえか。

これでも俺はこの刀、大事にしてるんだぜ。
幸いまだ刃こぼれは無いからいいけどよ。

 それに出血多量で直に死ねるだろ、世話を焼かせんなよ・・・

そうだ、あんたの刀とトカちゃん貰ってくぜ。それと財布よこしな。
こんな時は現金だ。ATMは荒らされて使い物になんねえし ・・・」

「 ・・ ・ なんだよ勝手に持ってけ。
 フン、地獄の閻魔様に賄賂でもやるつもりか?」

「 そんな勿体無い事するかよ ・・・ 
 全く、いやんなるほど同じこと考えていやがったとはな。」

  志田は高木の財布から現金だけ抜き取り、
  刀は自分の刀と揃えて背負って胸で紐を縛り、
  トカレフはジャケットの内ポケットに入れ、
  溜息をつきながら歩き出した。

「 お~い、俺は先に ・・はあ、金髪ねえちゃんをはべらせて ・・・
 地獄の五右衛門風呂に浸かって、待ってるぜェ!」

「 飛びっきりグラマーな姉ちゃんを用意しとけよ~!」

  志田は振り向きもせず、
  止めて置いたバイクのタンクに描かれたエンジェルを愛撫した ・・・

  ・・・ 今日のおまえは痺れるほどイケテルぜ ・・・

  などと脳裏で呟いている。
           
 ニヤリ と笑いシートに跨ると、
 妖気を纏った鋼鉄の美獣の心臓に火を入れた。

ドブルッ、ドブルン、ドブルッ、ドッドッドッドッ ・・・

  奴は内ポケットから、細巻の葉巻を取り出すと、
  ジッポで火を付け一服した。


「 はあ~あ、取りあえずは神の光玉とやらから出るしかねえな。
 しっかし、おっかねえ正神軍に勝てんのかねえ。

ほんと小便ちびるかと思ったぜ ・・・
今は六時前か、俺、邪神軍に入隊でもしてえよ。

 お~い、悪魔か邪神さんよ~お、聞いてるか~い♪
俺が加勢してやるっから~あ、いつで~も言って~えくれよなぁ♪
 俺が入れば百人力~い、いや~あ千人力だぜ~え♪
ラ~ララァーーイ♪  ララッ、ラッ ・・・ は っ は は ・・」

   カツ、ダルン、ズドドドド ロロロ ロロ ーーー


  あいつ、邪神軍入隊済みで、バグソー隊長宿してるんだし、
  既に最前線に送り込まれているんだけど、
  そんなこと知る由もありません。

 そういや小隊は崩壊か?
 これから、バグソーがどう動くのか?

  アンドラスタから罰を受けるのではないかと思います。
  何れにしても、志田は邪道を貫くようです。

「 放って置いて宜しいですか?」

《・・・ん? 構わん、もう用は無い・・・ヤレヤレじゃな。》

   アア~ア・・・マダカナ、マナカナ~フンフン♪

「 結局は、バグソーの作戦は失敗ということでしょうか?」

《 大失敗じゃな。こちらは広い意味で誰も失ってはいない。
 逆に奴等の兵は、あのテロリスト四名の本人と、
 その憑依霊を拘束することが出来た。

そればかりか、この聖域全体の炎の闘志に油を注いだようなものじゃ。
既に体力的な問題で数十人亡くなってはおるが、魂は健在じゃ。

 ふふ、開戦前に気合も闘志も轟々と燃えて来て、
 理想的になっておるわい。

他の光玉も多少の邪神軍の襲撃はあったが、
何とか被害は最小限に抑えられておる・・・

 え~とだな、「 叡智晶 」を見てみようかな。

おっ、今入った情報によると、
日本全体の「神の光玉」内の総数は、
現時点に於いて四千二百五十二万千百十六人。

世界全体では、二十五億八千二百十万三千飛んで十五人じゃ。
これは勿論、人だけの数じゃ。》

「 そそ、それは凄い人数で御座いますね。
 しかし、七時には大分減ってしまうということでしょうが・・」

《 ただな、もう六時になるじゃろ。
 みんなで餅を食べれば元気百倍で信仰心も向上するじゃろうて・・
 ああ、神も苦労するわい。ところで今何時じゃ。》

「 はっ、五時五十九分を回っております。」

《 あ、う、産まれる産まれるぅ。》 コツコツ、コツッ、コツコツ・・・

《 何を言っておるのじゃあ。チカ殿わぁ。》

「 ああ何か、お、お腹が、うう、産まれるって、
 ま、まさか私が何かを産むので御座いますか?
 男なのに、チカチュウ様ぁ!」

・・・ ピヨピヨ、ピヨピヨ ・・・ ぶうぅぅ~~~っ !!!

《 キャッキャ、産まれた~~! わたくしの雛ですわ。》

   ・・・ んなななななあぁぁ~~ 
     気が遠くなってきたぁ ・・・ 気絶したい。

《・・・あ、あのねェ・・・わしも気絶したい。》 

 


《 序章 》 〈 第二十話 〉 悪魔の偵察隊

2019年02月01日 19時56分13秒 | 小説




    《 キャラクター&キャスト 》

総  帥 サタン (ルシフェル/クラウド) アントニオ・バンデラ〇

  彼を知らない方へ、下記をクリック! イケメンですよ~~!
    画像集 アントニオ・バンデラ〇 
    映画 PV デスペラード


    ( 七大悪魔 ) 

  通説の呼称を無視し、私が命名致しました。
  あたくし作者なので職権乱用です!
  悪魔ちゃん、ごめんなさいね ・・・

司令長官 アンドラスタ / ジョージ・クルー〇―
 将 軍 グリオス   / アンソニー・ホプキン〇
 将 軍 オルゴラン  / トミー・リー・ジョーン〇
 将 軍 バクスト   / ウイル・スミ〇
 将 軍 ドルン    / ウェズリー・スナイプ〇
 将 軍 シアニード  / アンジョリーナ・ジョリ〇
 将 軍 フレッタ   / アン・ハサウ〇イ



      《 推奨BGM 》

   Queen - Innuendo イニュエンドウ





   二〇XX年十二月十八日(木) 23:30
      カウントダウン ( 79:30 )

(執筆当時の作者時間) 二〇〇九年五月二十九日(金)午前一時



   我等が駒沢公園を抜けて上昇していたその時、見えました。
  「神の光玉」の光の輪郭が ・・・何と美しいことでしょう。

  この輪郭は結構厚みがあるようで、
  まるで地球の成層圏の青い輝きと似ています。
  ただ、部分的に光の強弱や、くすんだ所が見受けられます。
               
   その時、三十郎様が眉を顰(しか)めて仰せになりました。


《 居たな、あの馬鹿者めが、おぬしにも分かるじゃろう、
 あの黒光りした魂が・・・》


「・・・とおっしゃいますのは、
 光玉外の横浜付近に蠢(うごめ)く邪気を帯びた光の中に、
 一段と強い邪気を放つ光の事で御座いますね。」


《 その通りじゃ。
 いいか良く聞くのじゃ、そして目に焼き付けよ。

 あれは邪神軍の「アンドラスタ司令長官」じゃ。
 奴は「サタン総帥」の右腕じゃ。

 サタンの命で偵察に来たのじゃろう、部下は数万居るわ。
 奴は、邪神軍の中では最も冷徹で狡猾で、
 飴と鞭をうまく使い分ける戦術を得意としている。

 勿論、腹では部下など単なる捨て駒位にしか思ってはいないがな。》

    チュウチュウ! 

「 邪神アポフィスの手下ということで御座いますか?。」

《 何故、邪神の名を知っておる?》

「 知っているというか、
 魂に焼き付けて頂きました ・・・スミレ様に。」 


      チュウカ。  ルンルン♪  ルンルン♪


《 ほう、そうか。
 では臆病者で卑怯者で、最低な馬鹿者である事もお教え頂いたか?》


「 はあ? いいえ、そのようなことは ・・・
 私が見たのは、十二神将をも恐れぬ、
 大胆不敵な奇襲を仕掛けようとした邪神という、
 スミレ様の恐るべき演出で御座いました。」 フンフン♪  フンフン♪  
  

《 ははは、さもありなんじゃな。

いいか、奴は臆病で用心深い、故に面に出すのはいつも部下だけ。
わしもここ数千年は奴の姿を見てはおらぬ。

邪神軍を任されているのは、サタンじゃ。
全ては奴が作戦指揮を取っておる。

 その作戦を、忠実に完璧に遂行するのが生き甲斐、
 というのがアンドラスタ司令長官ということじゃ。》


「 ところで、そのアポフィスは、
 一体何処で何をしているのでございますか?」


         コレイイカンジ♪  ルンルン♪


《 奴は、地球マントル深くに亜空間を造り、
 そこと本拠地 「 小惑星アポフィス 」
 その他の小惑星に次元光廊で繋げておるのじゃ。

幾つかの拠点を行ったり来たりして、所在を解り難くしておる。
それが臆病者たる所以じゃ。

 わしの様な下級の神には所在は分からぬが、
 上級以上の神々は把握出来ておる。
 その辺は下級の神の鍛えなのじゃ・・

  それと奴が普段何をしているのか?

 ・・・それは、ピアノで演奏と作曲をし、
 部下の楽団を指揮して演奏を楽しみ、
 それ以外は盆栽の手入れをしながら、
 メソメソと自作の絵を眺めている・・・

  というのがわしの掴んだ情報だ。

 奴は芸術の才能に秀でておるのじゃが・・
 プライドが高過ぎて、己の才能より優れた神に喧嘩を吹っ掛け、
 それに敗れたばかりか大神様にお叱りを受けたのが我慢出来なかった。

 それが原因で不平不満を募らせ果てには邪神に堕ちた。
 全く男神の風上にも置けぬ奴じゃ。

  終いには妻に逃げられ行方知れずじゃ。》 


   アホアッホ、アッポヒチュウ!

    デキタッデチュウ♪  ビーズのアクセサリー完成なの~♪
    鏡を出してと・・アラアラ、われながらイイデキですわ!


「 いやあ、驚きました。全くイメージが違っておりまして・・・」


《 そうであろう。

 全ては神々もしくじる
 「我と慢心」を制御出来ん事が要因となっておる。

 天狗の鼻はへし折られると、人に示した通りじゃ。
 わし等も常に気を付けなければならん事柄であるがな。

  あ~~ところでチカチュウ殿。

 さっきから、チマチマ何をしておるかと思えば、
 アクセサリーなど造りおって・・・》 イカガデチュウカナ?


  ・・・あれれ~~、何時の間に洒落た宝石かビーズの装飾が・・・
  額から後頭部を通り、首飾りへと繋がっている。
  こんなデザインは見たことがありません。

  気品に溢れながらも派手過ぎず、流れるように纏まっています。
  あ、それと黄金の腕輪も。

     モット、ホメテチュウダイナ。


《 なな、なんじゃ!
 いい気なものじゃな全く・・・ 女鼠わ~。
  うさぞうも褒めるでない!》


   お洒落は、女神のたしなみジャぞよ、チュウ~!!             

  あわわわわ、お鎮まり下さい。

  あ、あの、ナセル様は私のポケットから、
  ピヨ~ンと三十郎様の髭に飛び移られました。


《 コオラッ、髭をかじるな! 止めんか、分かった、悪かった・・
 その程度は許されるであろう。多分な・・・

  はあ、そろそろ富士山麓に到着じゃぞ・・・
  しかし汚いな、ゴミだらけじゃ・・ん~?

 ほ~ら、案の定、富士の樹海にサタンが居るぞ。

  自殺の名所で、
  自縛霊共を集めて強制的に軍に入隊させておるわい・・

 ちぃ、数百万は居るかのう・・・馬鹿な堕天使めが ・・・
 ふん、気に入らんのは奴の長い黒髪じゃ。
 まるで女のように気色悪いわい。》 チュウデス。


「 はあ、しかし恐ろしい邪気で御座いますね。
 他に部下はいないので御座いますか?」


《 そりゃあ居るわい。
 サタンを除く堕天し悪魔と化した奴は七人じゃ。

こやつ等は七大悪魔と言われておる。
さっきの司令長官に加え、四人の男に二人の女。

何れも超弩級の馬鹿者であ~る。
皆、位は将軍で一人に付き数千億の部下がおる。

 ただ何かと将軍同士で対立しておるのじゃが、
 サタンと邪神には絶対服従しておる。

 奴等は腐っても鯛。身の程は弁(わきま)えておるのじゃよ・・・
 次は、関西に行くぞ。》 


  チュウチュウ♪  タコカイナ~♪  タコヤキッ♪


「 はは! た、たこ焼き食べた~い。」


《 戯けめ、まとめて食べてやろうかあ?・・・

 ああ、まだ三日もあるぞ~。愚痴を言っても仕方がない・・・
 さてと、大阪を過ぎて~~、ん~!
 おいっ、あそこにおったぞ~、血に飢えたハイエナが。》


             ナンデ、オオサカスギタノ~?


「 あ、あれで御座いますね。
 何とも不気味というか悪趣味でド派手な服装ですねえ。」


             グリグリグリオ~ッス♪

  チカチュウ様をニヤッと御覧になられて、
  三十郎様はおっしゃいました。


《 奴の名は、「グリオス将軍」と言うのだが、            
 奴はその風貌のままに相当灰汁(あく)が強い性格じゃ。

常に冷静で、恐ろしい任務を、
癖のある演出で坦々と確実にこなして行く・・・

 それが奴の生き甲斐、快楽なのじゃ。

何れにしても将軍クラスは、曲がりなりにも完璧主義者揃いじゃ。
皆、目標は同じ方向なのだが、やり方は違う。

 やり方が同じなのは、手下の邪霊共を操る方法が
 「極限の恐怖と苦痛」であることだけ・・・

それに加えて「快楽と飴」をうまく使うのがアンドラスタじゃ。
故に、邪神と総帥に信頼を得、司令長官にまで昇り詰めたのじゃ。

つまりは善悪を問わず、トータルバランスに優れ、
大局を見据えて任務を遂行出来る者が、神に使われるということじゃ。》


   チュウナノデチュウ。
   やっぱり卵って回さなきゃいけないわよね。フンフン♪


「 では、少なくとも日本には邪神軍の総帥と、
 その側近が二人もいる訳ですね。
 やはり、決戦の舞台は日本になるということでしょうか?」


《 それは勿論じゃ。

 富士山麓にサタンがいたのは、
「神の光輪」が出現する場所だからじゃ。

 他の奴が東京関西にいたのは「神の光玉」への偵察もあるが、
 もう一つ・・・日本で最も邪気が溢れた都市だからじゃ。》


「・・・ 邪気が溢れた都市で御座いますか?
 それは分かりますが ・・・
 悪魔がいた理由とは・・・?

 以前、三十郎様が仰せになられた、人の想いが、
 恐ろしい化け物になるとか ・・・
 それに関係があるので御座いましょうか?」


《 まあ、そんなところだが、
 もっと想像を働かせるのじゃ、うさぞうよ。

良いか、邪気が溢れ渦巻く場所に化け物が出現する、それは間違い無い。
日本では二箇所と見た。他は中心核となるような場所が無い。
サタンの作戦は、関東と関西を手始めに火と血の海にするつもりじゃ。

 まず、日本を混乱に落とし入れ、
 西と南に別れ徐々に他の将軍達と合流しつつ五大陸を制覇し、
 日本に戻り止めを刺すつもりじゃ。》


   チュウナノ? 
   ホホホ、ワタシノタマゴ、ツンツン♪ コロコロッ♪


「 それで、正神軍はどのように対抗して?
 あッ、いや、それは、
 人の主神様への愛の祈りしかないので御座いますね ・・・
 ところで 「神の光輪」 って一体何でございましょう?」

《 んん~? ちょっと待て・・スミレ様からじゃ・・
 はは、仰せのままに・・よし、東京へ急ぎ戻るぞ。》 


          エエ~、ホナサイナラ~~!


「・・・はい、畏まりました。」


  ・・・あれ、あれれ? 

  さっきからお腹の中が妙な感じ?

  ・・・エエ~、ソウナノ? フフ ・・・


   現在時刻、あっ、午前零時を回り、三十分か ・・・

    とうとう、十九日に入ってしまった。
     明日の七時まで六時間半。

        カウントダウンは、七十八時間三十分。




《 序章 》 〈 第十九話 〉 光の絹織

2019年02月01日 19時25分10秒 | 小説





    《 キャラクター&キャスト 》

氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぎの妖怪 : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇



東京光玉の聖者 ( 黒須 光明 ) 高橋  秀〇

聖者補佐 ( 土門 剣三郎 ) 渡〇  謙
聖者補佐 ( 土門 ミツエ ) 松坂  慶〇
     ( 土門  拳三 ) 妻夫木  〇
     ( 土門 かすみ ) 成瀬  璃〇

マーフィー・ラッセル / ヘイデン・クリステ〇セン
エミリー・マーティン / ベッ〇―
ミランダ・マーティン / アヤカ・ウィルソ〇

聖者補佐  川島 章二 / 草薙  〇
父島島民  駒田 幸雄 / 水谷  〇 




   二〇 X X 年十二月十八日(木) 22:10
        カウントダウン ( 80:50 )


《 さて、この聖紀のイベントを静観せねばならぬのは、無念であるが止むを得ん。 一瞬も見逃さず魂に焼付けようぞ。》 ソウシマショ。

「 は、畏まりました。」


さてさて、いよいよ見た事も聞いた事も無い「招喚の儀」 が始まるようです。剣三郎がトランシーバーで準備の為、他の二箇所と連絡を取り合っています。

   暫くして、聖者 黒須 からの通信があったようだ。
   彼の思念を読み取ると、
   「 招喚の儀 」 と 「 次元光廊 」 の説明がなされていた。

  彼はメモ帳に書き取ると、暫し戦慄で茫然としていたが、
  直ぐに気を取り直し、ミツエと川島に思念波で伝えた。

   聖者補佐同士は思念波での交信が可能なのです。
   思念波が使えない者はトランシーバーで交信しています。

  先程の皇居からの光の帯は、今は見えていない。
  即ち、救いを求める者の祈り次第ということだ。

   皇居内の様子はどうなのだろうか?
   少なくとも、数万以上にはなっている筈である。

《 五万五千名を越えたようだ。
スメラミコトと皇族は、宮中三殿の境内で祈りを捧げておる。
神前には上がらず、皆と同じ地面に座して祈りたいとの事だ。
 ミコトはそこまでせんでもよい事だが、
 その徹底した神に対する真摯な想い、見事と言う外ない。
その神々しい程の姿に群衆は心打たれ、
体力や自信が持てなかった者達も魂が震い立っておるのだ。

 何しろ、ミコトと皇后の肉体も年じゃ。
 それより若い者達が、不平不満を漏らせる筈もなかろう。
 このわしでさえ感動で涙が止まらん。
 これでなくてはならんのじゃ。

高貴で高潔に加え、威厳があるのに決して驕おごらない人間等、
この現界では数える程しかいなくなった・・・実に残念じゃ。》

    チュウチュウ~~。

「 何と、そうで御座いますか。
 陛下らしい慈愛と無私な御姿が目に浮かんで参ります。
 これぞ、世界を統べる王たる証で御座いますね。

 あ、あの、ところで皇居の情報はどのようにして
 お知りになられたので御座いますか?」

                       
《 戯けめ、あんな近くのもの「神の霊眼ひがん」では、
 いとも簡単に見えるわい!

鷹の目でも、数キロ先の獲物が見えるのだぞ。
それに地獄耳じゃから、ひそひそ話も聞こえるのじゃ。

 驚いたか! ふふ~~ん?
 ・・・いかん、しょぼい人間なんぞに自慢話とは情けない。 
                
ああ、それとな、次元光廊を潜れた者は、まだ三名しかおらん。
神の審査は厳しいからのう。》        


「 こ、これは恐れ入りました。
 しかし、まだ三名とは ・・・何とも歯痒いですね。
 裏を返せば認識が甘い、或いは危機感が無いか、
 信じていないか、知らないか? でしょうね。」    


    デチュウヨネェ。 チ、チーズタベタイデチュウ。
    ン~ト、カマンベールトカ・・・


《 まあ、そんなところだろう。
 今だにこの事態を知らぬ者も居るでな。
 それも己の曇りよ・・・ん~?

 どうやら一人目の依頼が来たようじゃ。》



         (推奨BGM)

    ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
    『 ロマンス 』 第二番 ヘ長調 作品五十   

    Orchestra: Berliner Philharmoniker

    Conductor: Daniel Barenboim

    Violin: Itzhak Perlman   





  剣三郎は 「 招喚の儀 」 の説明を皆にした後、
  どよめく群衆に対し正座をして合掌するよう指示を出した。

   そして、次にメモを見ながらこう言った。


「 ・・・ 招喚の対象となる人は、
 小笠原諸島・父島在住の駒田幸雄様、五十六才で御座います。
この方は、妻と子供一人をインフルエンザで亡くしているそうです・・・

 では、これより招喚の儀を執り行います。

私が祈りの文言を口に出して言いますので、
皆さんも私に続いて御唱和して祈って下さい・・・

 主神様、父島の駒田幸雄様を、
 この場に招喚賜りますよう御願い申し上げます。もう一度 ・・・」


   剣三郎は何度か繰り返した後、自分もその場に正座をして祈った。
   だが、暫くして後ろが騒がしくなったので振り向いて、驚愕した。

  彼が見たものは群集全員の美しき 祈りの光線 であった。
  それが上空に行くに従い左に巻き付き太い光の帯になっていく ・・・

   あたかも 「 光の絹織 」 のように ・・・
   太さや強さは違えどはっきり光線が見えるのだ。

    一人一人の脳天から美しき絹のような光線が ・・・

   剣三郎は元より群衆達は、
   自分の光と周りの人達の光を見て感動に打ち震え泣いていた。
        
  興奮の坩堝と化した競技場ではあるが、
  間も無く光が薄くなってきた事に皆気付いた。
  当然だ。祈っている者が少なくなっているのだから。

   剣三郎は慌てて、皆を宥(なだ)めてからこう言った。

                          
「 皆様、如何ですか?
 神の偉大なるみ業を、そして我等の祈りが通じることを ・・・

 さあ、感謝と感激を以って強く祈るのです。
 主神様と黒須様、そして駒田様と我等が繋がるようにと ・・・

 では、改めていきますよ・・・」

 
   剣三郎は、また愛の言霊を繰り返した。 幾度となく ・・・

    おお、これは ・・・

  先程とは比べ物にならない位、
  強い光の絹糸がゆっくり絡み合い紡がれてゆきます。

   その美しき愛の織物が次第に上昇し、
   聖者黒須が待つ皇居上空三千メートルへ向かって行きます。

  耳をすませば、その聖者の言霊が聞こえて来ます。


 ( ・・・ もう少しだ。もっと、もっと、がんばって下さい。
   もう少し ・・・ そう、三分の一位まで昇っています。
     がんばれ、がんばれ ・・・)


  こうしている間にも、続々と人が集まって来ている。
  「光の絹織」 を見て興奮したのだろう、目付きが違う者が多い。


「 三十郎様、我々は何も出来ないのですか? 」


《 出来る。観察じゃあ。一人一人感性が違うし、霊層も違う。
 守護霊の導きも違うしな・・・その違いを見極めよ! 》 チュウ!


「 は、はい、畏まりました。」


   いや~、しかし、小さいから良く見えないが、
   守護霊は皆必死で呼び掛けている。

    見渡せば、十人十色の魂の輝きです。

   ん~、祈りへの想い入れが弱く、
   広く深いイメージを持てない人が、多いような気がしますねェ。

  まだ、指示通り義務的な祈りの方が多い気がします。
  ただ、これは積み重ねでコツを身に付けるしかありません。

  それでも魂の光が強く愛情深い者の祈りは、
  人の何倍もの強く太い光線になっています。

   競技場では、およそ五百名中十名程か?
   中位の強さの光線は百名位。

    後は弱いですが ・・・ 徐々に強くなっています。

   体力が弱い人は、それに比例して気力も弱いようです。
   隣の病院からいらした方々は相当きつそうです。

  中には看護士に付き添われ点滴を打ちながら、
  車椅子で祈りを捧げるお年寄りの方も ・・・

   しかし看護士とお年寄りの祈りは、
   かなりの強い光を発しています。

  並々ならぬ覚悟が伝わって来ます。
  実に神々しくあります。涙が溢れて来ます・・・

   何とか一日でも持ってほしいものです。


  この段階で、亡くなりそうな方が数人おります。
  周りの人が励ましています。

    しかし、強い意志を感じます。
    きっと、死しても祈る資格がある人に違いありません・・・

   せめて明日の七時まで持てばよいのですが?


    ところで思い出しました。


「 三十郎様、一つ忘れていたことが御座います。

 明日の六時に何か御褒美があるような話を聖者がしておりましたが、
 それって一体何かお教え頂けますでしょうか?」


《 あん? まあ、よかろう。但し、守護霊達には内緒だぞ。》

「 はい、お約束致します。」

《 それはな、も~ち~じゃ。》 モチュウデス。喪中ジャナイヨ、プッ。

「 はあ、もっ、餅で御座いますか?」

《 そうじゃ、木になるであろう?》 ププッ。

「 はあ、はい。はっ?」

《 木に生る餅じゃ!》 モチュモチュモッチュモチュ♪

    オモチュウダイスキ。テヘッ、チ~ズアジガイイナ~。

「 木に生る餅ですか。どどど、どの木に生るのですか?」


《 光玉内、各聖域全部の木にじゃ。

 たわわに生るぞ、たわわにぃ。

 腹が減っては戦が出来ぬと申すでな。但し、一人一個じゃ。
 足りるじゃろ。前祝いじゃ、ははは・・・》


「 でえ~っ全部の木にですか、
 うっわあ、それは元気百倍になりますね。」


  だ、唾液出てきた。・・・チュウナノ? 垂らすでないぞよ。

  ・・・は、はい。


《 あ~それとな、木が少ない聖域や北国では降り積もった雪が餅になる。
 砂漠地帯では砂が餅に成るのじゃ。掌一杯が一人分じゃ。

 それを食べれば二、三日は食べずとも空腹にならずに済むのだ。
 どうじゃ夢があるじゃろう。
 これが神の愛なのである。感謝せねばな。》 チュウダゾヨ。

「 ははあ、もうお聞きしただけで有り難くて、
 お腹と胸が一杯になりました。」  アラチュ~ウ?



    二〇 X X 年十二月十八日(木) 22:30
       カウントダウン ( 80:30 )



  おお ・・・こうしている間にも、
 光の絹織が深紅のスクリーンに鮮やかに映し出され上昇してゆきます。

  次第に太い筒状の帯に織り込まれて行く様は、
  何と幻想的なのでしょう。

   それは神と人の愛 ・・・そして光の芸術、
   赤いオーロラとの競演 ・・・

  その様子を、第二の太陽となったベテルギウスと、
  深紅の三日月は優しく見守っています。

 暗黒惑星二ビルのアヌンナキは、神々の監視により地球に手出しできず、
 不満と鬱憤は頂点に達していることでしょう。

  ムムッ ・・・ 更なる共演者が合流してきた模様です。

  それは、蒼く輝く星 ・・・ あれが 「第二の地球」 と呼ばれる
  「 第十一番惑星 クラリオン 」 なのだろう。

 その「クラリオン」は地球と同じ軌道を公転しているという。
 いつもは太陽の影に隠れて見えないのだ。

信じられないと言っても見上げれば存在していますよ。ここでは・・・



  そのクラリオン及び主な太陽系内惑星情報 ・・・

 下記の情報は既に地球内部世界アガルタに、
 アセンションを果たされた K さんによるものです。


11.ク ラ リ オ ン ( Clarion )

  『 反地球 』 地球とほぼ同じ大きさ

  推定総人口数 : 3 億 6 千 400 万人
  物質 - 非物質次元領域 ー 5.1次元領域 ~ 6.9次元領域
  霊的次元領域 ー 8.1 次元領域


12.二 ビ ル ( Nibiru )

  『 暗黒惑星 』 地球の約250倍の大きさ

  推定総人口数 : 1278億人
  物質次元領域 - 3.1次元領域 ~ 4.9次元領域
  霊的次元領域 - 5.1次元領域


3.地 球 ( Earth )

  推定総人口数 : 70億人 ( 地表 )
           180億人 ( アガルタ )
            90万人 ( シャンバラ )

  物質次元領域 - 4.1次元領域 ~ 4.9次元領域 
           ( 3次元から上昇している為 )

  霊的次元領域 - 5.0次元領域 ( 地表上 )

  内部世界 ( アガルタ ) 
     - 5.1次元領域 ~ 6.9次元領域 ( 2010年2月時点 )
  内部世界 ( シャンバラ )
     - 9.1次元領域 ~ 11.1次元領域 ( 2010年2月時点 )

   シャンバラマスター ( 聖白色同胞団 ) 144000人
   アセンデッドマスター ( 大聖 ) 144人


〇 火星と木星について

  火星と木星は、現在、
  地球からの3-4次元領域移行転生の受け入れ中で、  
  これは西暦2020年末まで続きます。

   また、火星と木星では多少事情が異なります。

  火星は地球物質界での学びが希薄で、
  無に等しい方々が対象となっており、
  木星は霊性進化の学びを、
  少しでも習得することが出来た方々が対象となっているようです。

   火星よりは木星での転生のほうが、
   まだ比較的安心できる世界のようです。

  ちなみに、火星と木星の次元領域は以下の通りです。

物質次元領域 - 1.0次元領域 ~ 3.9次元領域
霊的次元領域 - 4.0次元領域 ~ 4.1次元領域


* 太陽の次元領域

( 太陽は地殻天体である。
 電波望遠鏡により証明済み! 当然隠蔽されている。)

 太陽内部世界の非物質次元領域 - 16.1次元領域
 太陽内部世界の霊的次元領域 - 23.1次元領域

 ニュートリノは、太陽内部世界より、
 1985年 2月3日 午前 0 時 0 分から、
 地球に降り注がれてきている素粒子です。

 太陽内部に住む太陽神人たちは、
 これを地球のアセンション計画に伴う、
 地球人類の霊性進化のために開始しました。


   K さん 情報はここまで ・・・



 あっ、忘れてならないのは太陽の存在です。
 例え夜でも関係ございません。

  つまり太陽は地球の裏側を現在照らしているのです。

 それでも太陽から放出されるニュートリノや、
 光子(フォトン)は、地球を貫き我等の体も貫き、
 一つ一つの細胞内の原子にエネルギーを、
 送っているのではないでしょうか?

  ニュートリノは人の体を、一秒間に数百兆個も貫いているそうです。

 これこそ太陽神の愛が物質化した姿なのだ。 
 ありがたいことですね。

  あなたの時間は今現在、夜ですか?

では休む時は、主神様と地球の裏で御活躍の太陽神に感謝して寝て下さい。

  あ~~宇宙は夢とロマンに溢れていますねェ。

そう、我等人類神の子人は常に、天の川銀河のオリオン腕に抱かれた
太陽系の宇宙共通惑星 地球という、奇跡の星に住まわせて頂いているのです。



 そこは、無限の主神の「天意の光と夢」に包まれた世界なのです。
 これ以上、何の不足があるというのでしょうか ・・・

あっ、宇宙科学、天文学の勉強もお忘れなく ・・・
要点だけでいいんですから。

 注意点としては、一つの事だけに熱中し過ぎると、
 他の大事な部分が身に付かず、
 欠陥人間になり神様は使いずらいですから、
 満遍なく学ばせて頂きましょう。

ただ人間様の作った仮説を捏ねくり固めた文明って、
つまらなさ過ぎますよねェ。

 それを真に受けて生きる人には、夢も希望もロマンも一握り。

 神の世界は無限の愛で満ちているというのに、
 いやはやお叱りを受けて当然ですね。


 こうして天空全体を見渡すと、赤き炎の正神軍が、
 愛と正義を誇示しているようにしか見えません。

  邪神軍からは鬱陶しくも嫌味な、
  宣戦の狼煙にしか見えないでしょう ・・・

 奴等の歯軋りが聞こえて来そうだが、
 恐らくはこれだけの神気が充満していれば、
 そうそう邪魔は出来ない筈です。

しかし、どこかで必ず奴等は隙を伺い潜んでいるでしょう。
何しろ 「神の光玉」 内で活動出来るのは、
後八時間十五分程でしかないのですから ・・・


 さて遥か彼方、海の向こう側からの祈りの主は、
 必死で叫んでいるに違いありません。

  もう少し、もう少しで光の帯は聖者黒須の十字架に届きそうだ。

 剣三郎や拳三、マーフィーにその他の奉仕者達は、
 光の弱い人に激励をしています。

  その甲斐あってか、あまり利他愛の無さそうな人も、
  祈りの波動が強くなって来ている。

   チラチラと、上昇する光の束を確認する度、
   勇気と力が湧いて来ているようだ。

   ・・・ あああ、遂に遂にこの時が ・・・


   駒沢公園に集結した、千数百名の皆様の祈りが、
   光の絹織が今、光の十字架に繋がった!

  おお、聖者黒須の十字架が強烈な閃光に包まれた瞬間、
  南の空の彼方に太い黄金のビーム光線が放たれました。

 しかし何故か、そのビーム光線と地上からの光の帯は、
 一瞬で弾け散りました。


  ・・・おおお、その光の粒子が頭上から、
  まるで大輪の花火が散った後の枝垂れ落ちる火花のように、
  宙を舞ってゆらゆらと降りて来ます ・・

  美しい ・・・ 言葉が出ません。

   皆、見とれて溜息があちこちで漏れています。

    「 あああっ!!」

   ぬ、群衆の後方で誰かが叫んだ。そうか忘れていた。
   皆が向いた場所には、光を帯びた一人の男性の姿があった。


《 良くやった、見事だ! 我が子供達よ。》

  チュウダワネェ、ホホホホ。

「 本当に良かったですね。」

 
  その男性、駒田の元に皆集まって行く ・・・
  彼は横になって倒れている。

  表情は夢見心地という感じである。
  だが、直ぐに意識を取り戻した。


「 ここは、一体何処です。・・・どど、どうなっているんだ。」

「 ここは、神の光玉内の駒沢公園、祈りの聖域ですよ。」

  近くの女性が答えた。
  彼は、興奮して事の経緯を話し始めた。


「 わわ、私は見たんです! 天使様を!
 ・・・ 薄っすらと光の中に、優しく微笑んで ・・・

 こっ、この私の体を抱きかかえ ・・・
 それから意識が無くて、気付いたら此処にいました。

  そ、それがまさか、駒沢公園とは ・・・
  信じられませんが、祈りが通じたんですね ・・・

 か、神様、本当にありがとうございました。
 天使様ありがとうございました。
 ううう、うあっ、ああああ~~~っ!」


   拍手喝采の中、駒田は周りの皆から胴上げをされた。


「 やった、やったんだ! 俺達はやったんだ。」
「 凄いよ! 奇跡が起きたんだ。祈りが通じたんだ。うあ~~!」


  皆、喜び涙を流しながら、
  お互いを讃え合い神の偉大さを実感していた。

   感動とは神動。歓喜は神喜なのだろう。

  皆の血が沸き立ち、無限の力が噴出するのを感じます。

  更に私が体感した、あの大霊宮、神議り場での
  究極の感動の一端を垣間見た瞬間でもありました。

   実に素晴らしいことです。

  しっかし、天使が次元光廊を潜って来ていたとは ・・・
  何とも凄い演出です。


《 そうじゃろう。神の演出とは芸術そのものじゃからのう。

   「神様お願い申し上げます。 ポンッ!」

 で目の前に現れたら芸が無いし感動も薄れるからのう。

 そうは思わんか?》


    ポンッ!?? 

  ・・・ああ、あ、アレッ? タマゴ 産まれた、フフ・・・


「 おっしゃる通りで御座います。
 では、先程三十郎様が天使の件をおっしゃられなかったのも
 演出といういことで ・・・」

《 おお、分かるようになって来たではないか。
 物事、始めから全部言ってしまっては、
 面白くないからのう。ホーホホ。》


   お、他の二箇所からの人達も駆け付け、祝いの輪に加わった。
   ミツエとあの姉妹の姿も見受けられる。

    剣三郎か連絡を取ったのだろう。

   そこに、群衆を掻き分け剣三郎が入って来て、
   南方からの同志に挨拶をし、
   涙ながらに 「招喚の儀」 の説明をして聞かせた。


「 ・・・ そのようなことで、あなたは此処に招喚された訳です。
 本当におめでとうございます・・・

  お集まりの皆様!
   盛大なスタンディングオベーションをお願い致します。」



    うおおおおおおおおお~~~~っ !!!


    と、歓声交じりに万雷の拍手が巻き起こりました。
    いやあ、彼は人をうまく乗せる術に長けていますねェ。

   すると、剣三郎に新たな指令が下った様だ。
   彼の大きな目が更に大きく見開いた瞬間、
   慌てて左のポケットからメモ帳とペンを取り出し書き取り始めた。

    そこを拳三がペンライトで照らしている。

   次に走りながら元居た場所に戻るよう皆に指示した。
   急いで拡声器のマイクでメモを見ながら話始めた。


「 え~、黒須様から、次の指令を頂きました。
 それは、この光玉外に救いを求める人がいるとのことです。

横浜市港北区の相田由実子様、62才、一人暮らしで足腰が弱く、
近所では直ぐにこちらへ向かう人が居ない為、
大通りで車に乗せてもらおうとして、
そこに向かう途中転んで足を捻挫して、
その場で動けなくなったそうです。

 この方を、直ちにこの場にお連れするようにとのことです。
 つまり、招喚の業は余程の事が無い限り許されないのです ・・・

  拳三、この役はお前に任命する! いいな!!」


   この時私は、拳三に流れる血が一瞬で沸騰したように感じた。


「 はいっ、喜んでお受け致します!」 けっ、敬礼ですか! 


  うひゃひゃひゃ、やったぞう! 一人レスキュー隊だあ。
  ヒーローだあ、くうう~。あ、いや不謹慎だな。
  それに、そうはしゃいでもいられない ・・・

   拳三の思念である。 彼らしい発想だ。


「 ねえ父さん、その相田さんは、ど、どうやって探すのかな?
 携帯もここ数日、通話もメールもダメだし、番号分かるの?
 それとも住所で探すの?」

「・・・それが、何でも赤い光が指し示すとの事なんだが、
 お前見えるかああ~、あれじゃないか?
 ああ~そこだよ、あそこ~!」


   剣三郎が指さした先には、
   光の灯台から伸びた赤い光が確かに見える。


「 えっ、うっわあ、見えるよ。
 あの先にいらっしゃる訳だ。凄いよ全く!」

「 えっ、どこどこ? 僕には何も見えないけど。」

  マーフィーが顔を顰めた。

「 あ~たしも、見えないいーー!」


  かすみが双眼鏡を覗きながら叫んだ。何持って来てるんだ。

「 ちょっと貸しなさい ・・・ああっ、あたしもーーー!」

  ミツエが、その双眼鏡をかすみから取り上げて叫んだ。 あのネェ ・・・

「 え~、どこなの、どうなってんのよ、お~い!

  叫んでどうすんのよ~い。

「 ああ、お姉ちゃんのお腹がグウッて鳴った。ププッ。」

  ソッチですかぁ~い。ミランダをニランダエミリー、ププッ。


「 ・・・ お、お前達なぁ、

 いいか、あの光は私と拳三、
 つまり救いに向かう者にしか見えないそうだ。

 これから、何人も人海戦術で救わねばならない為、
 混同しないようにとの配慮からだ。

 いやあ、全く素晴らしい ・・ ん? 
 おいおい、ミツエと川島君達は早く戻って ・・・

 あ、そうだ。体力、特に持久力に自信のある者を選抜しておいてくれ、
 指令が降りたら順次救いに向かってもらうからね。頼んだよ。」


「「 はい、了解しました!!」」


  そう敬礼して、ミツエと川島は、
  それぞれ連れて来た同志達と戻って行った。

  皆、高揚して益々血が熱く燃え滾って来たようだ。
  お互い笑顔で励まし合っている。

   団結心が更に増したことでしょう。




       (推奨BGM)

  ジョージ ・ ウィンストン  DECEMBER


  




  二〇 X X 年十二月十八日(木) 23:00
     カウントダウン ( 80:00 )



   さて、剣三郎は拳三と何人かで、
   地図を囲んで道順を検討している。

  これは大事な作業だ。

  赤い光線辿って行けばと思っても、
  徒歩で道を誤れば数十分かそれ以上の時間が無駄になる。

 光線はカーナビのように、道路の上には示されない。
 故に最短距離を導き出す作業は絶対不可欠だ。

  こういう時に無計画な奴は使えないし使われない。
  なんとかなるさ方式も通用しない。

   人の命が懸かっているのだ。

  どうやら道順が決まったようだ。
  車椅子を押しながら向かうことになるので、
  ここから横浜まで、片道一時間以上は掛かるだろうか?


「 父さん、じゃあ行って来ます。連絡は取れなくなるけど、
 必ず相田さんを連れて戻るから祈っててよね。」

「 勿論だとも。それと、今気付いたんだが・・・
 あの赤い光線は私にも見える訳だから、
 お前がこちらへ向かうようになれば一目瞭然だ・・・

 こりゃあ凄い。何かあれば、助っ人を向かわせる事も可能だ。
 これは、何と言う神様の御愛情だ。」


   なるほど~。ナルヘソ~。


「 いやあ、ホント凄いや。と、とにかく行って来るよ。
 それでは皆さ~ん、行って来ますので応援宜しくお願い致しま~す!」



  と、手を振り、群衆からの声援を受け、
  空の車椅子を押しながら拳三が走って行った。


「 お~い、ペース配分には気を付けるんだぞ。
 ああっ、おい待て~、水を持って行けぇ~!」


  慌てて剣三郎が、水の入ったペットボトルを抱えて走って行った。
  そう言えばそうだ。水無しじゃ無理だ。危ないところだった。

  ということは、予備の水がかなり要りますネエ。


《 まあ、それもそうだが程々にせんとな。
 人間、無いものねだりもするが、
 有ればいいだろうということにもなる。》 チュウダヨネエ。

「・・ それは、つまり明日からの話ですね ・・・
 二日目位で自分の水が無くなった時、
 予備の水をくれという事になると ・・・」

《 その通り。忍耐と自己管理の訓練でもあるのに、
 それではいかんじゃろうが。》 チ~カ。

「 水をニリットル以上飲むと、いったいどうなるのでしょう?」

《 いや、それは飲めんじゃろう。
 何せ規定の量を超えると、水が血に変るのじゃからな。
 神は甘くはないのじゃ。》 チ、チカ、血~カ? 血ュウ~~!

「 うえっ、血で御座いますか。それは、飲まないでしょうねえ。
 で、では木に生る餅を二つ食べたら、如何でしょう?」
      
《 その場はお咎め無しじゃ、
 だが勿論、神との約束を守れん奴は使えない。
 因って七時までの命となる。言うまでもないわ。》

    ハシタナイデチュウ。

「 はは、本当の最期の晩餐で御座いますね。怖い。」

《 ふん、食べられただけでも増しじゃろう。

 どれどれ、あまり一箇所に留まっていても状況は掴めん。
 あちこち視察と洒落込もうかのう。

 スミレ様からは、その辺の自由は与えられておるから心配は無い。
 どうじゃ、チカチュウ殿に信造よ。》 

 イイゾヨ、チャンチュウロウ殿。

「 私も賛成で御座います。」

《 しかし何だな信造。

  そんな姿なのに、おぬしだけ愛称じゃないとは・・・
   これから「 うさぞう 」と呼ぶが、良いな。》 

「 ははあ、有り難き幸せに存じます。」  

   ウサゾ~~オサン、ゾ~~オサン、ププッ・・・

《 よ~し、では出発進行じゃあ!》

 チュウ~~!

「 おおお~~~!」




 あああ、木に生る餅食べたいですねェ ・・・

ところで、その木に生る餅ですがぁ、架空の話ではないのです。
この地球は過去に幾度も大天変地異がありました。

 その都度、人類の救済措置として、木に餅が生ったと、
 人類最古の古文書である、「竹内文書」に示されているのです。

それ故、日本人は特にそのご恩を忘れまいと、
正月には餅を神前や仏前にお供えしたり、
東北や一部の地方では、
紅白の餅を小さく丸めて木に直接つける風習があります。

また旧約聖書にも、モーセとイスラエルの民がエジプト脱出した後に、
荒野をさすらい苦しみましたが、ある時の夕方、
うずらが飛んできて宿営を覆い、
朝には、宿営周辺に霜が降りたといいます。

その霜が、「マナの奇跡」と言われる、白く甘い食べ物だったのです。

 ただ、旧約聖書はサタンが書いた
 偽書であるとの情報がありますが ・・・

それに、これから起きうる七度目の大天変地異の際には、
どうなるかは知れません ・・・

 あったらいいですね!



《 序章 》 〈 第十八話 〉 招喚の儀

2019年02月01日 17時03分05秒 | 小説

 


     駒沢オリンピック公園総合運動場  参照



                          
        ( 推奨BGM )

      サンクスギヴィング ( リピート )
      ジョージ・ウィンストン ( ピアノ )



    

 二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:30
      カウントダウン ( 84:30 )



  拳三達は、まず剣三郎の所へ向かった。

駒沢公園内の陸上競技場に入り、東側トラック中央付近に行くと、
集まった数百人の中に剣三郎の姿があった。

 いち早く集まった者達の魂は、流石に強く光って見える。

剣三郎の脇には暖を取る為のドラム缶から、バチバチと炎が上っている。

それに拡声器にメガホン、トランシーバー、
大小様々なライトと電池に ・・・

 これは何の為に使うのか、車椅子が十台程と担架? が並べられていた。

場内の前後には発電機から電源を取った、
大きな照明のライトが煌々と光っている。

  剣三郎は拡声器で皆に何やら指示を出している。
  拳三達は、話が終わるまで待たねばならなかった。


「・・・それでは皆さん、
 今お話した事をしっかり念頭に置いて行動して頂きたいと思います。」


   剣三郎の話が終わった。

  自警団のジャケットを着たメンバーは、
  拳三達に笑顔で手を振りながら球場の外へ走っていった。
  その他の人の一部も後に続いた。

   剣三郎は、拳三達に話し掛けた。


「 皆、御苦労だったな。

見ての通りまだこれしか集まってはいない。
ここで二百十二名、母さんの所は百五十、川島君の所は百二十五名だ。

黒須様のお話ではトータル千名集まらないと、
次の指令の内容は明かせないとの事だ。

だから、何としても早急に千名集めなければならない。
それはお前達にも協力してもらう。
道路に出て呼び掛けてきて欲しい。

但し、強引過ぎてもいかんぞ。
純粋な祈りが出来なければ意味がない。分かったな。」


「 分かったよ父さん ・・・

僕は父さんの事を凄く誇りに思ってる。

同じように、補佐役になりたかったけど・・・
でも考えてみれば、すべき事は同じなんだよね。

僕は精一杯、父さんの補佐役に徹すればいいんだ。
父さんの子供で良かった。

ありがとう、父さん。本当にありがとう ・・

・・うあああ~~っ ・・・」


   拳三は剣三郎に抱きついて、大声で泣いた。


「 私もがんばる ・・ 父さんありがとう 、父さん ・ うう ・・」

「 先生、僕も ・・ 全力で ・・・ ううっ。」

叔父様ぁ~~、うわ~~ん ・・・」

「 パパー ・・ うう ・・・」 ミランダには、パパなのですね。


  剣三郎は皆を抱き寄せ、ただ黙って涙した。
  聞こえて来るのは、心に響く愛の言霊です。


( 果たさねば、我等が使命を ・・・ 
  示さねば、光ある道を ・・・
   この子達と、世界の同志の皆様と共に ・・・
    何としても神が望まれる文明の礎を築かねば、必ず、必ず。)


  目をカッと見開き歯を食い縛り涙を流しながら、
  炎の闘志が更に燃え上がっていった。 


「 お前達は ・・・ 私の誇りだ。
 そして世界にも神様にも誇れる。

 母さんも言ってたぞ、
 お前達との生活が幸せで仕方ないと、
 いつも神様と御先祖様に感謝してた。

 マーフィー、君のアメリカの御両親も
 神の光玉に向かっている筈だ。
 連絡が取れなくても心配はないだろう。

 地球の何処にいても、
 我等が使命は変らないのだからな。」


「 はい、ありがとうございます。
 僕は、聖者木戸様のお話を聞いて、
 強い人類愛が無いと、神様には通じないことが
 嫌と言うほど分かりました。
 それにどれ程、主神様を蔑ろにして来たことも ・・・

 だから、僕は与えられた使命を全力で遂行します。
 拳三とみんなと力を合わせて・・・」


「 良く言ったなマーフィー。同感だ。
 君は僕の兄弟だ。永遠にだ。覚悟しろよ!」


  二人ともニヤッと笑うと、抱き合ってまた泣いた。
  するとエミリーが剣三郎に言った。


「 叔父様、私とミランダは
 叔母様の所でお手伝いをしたいんです。
 行ってもいいでしょうか?」


「 勿論だとも。お前達がいれば母さんも喜ぶだろう。

 ミランダ、お前はまだ若いが立派に神の使命を果たせる力がある。
 エミリーと他の皆さんと力を合わせて、
 神の子人にはまだ大きな愛があることを、
 主神様にお見せして救って頂くのだ。」


  剣三郎は片膝を着いて、ミランダを優しく抱きしめた。


「 パパ、私出来るよ。主神様のお役に立ちたい。
 だから ・・・ 辛くてもがんばる。」

「 そうか、お前ならきっと出来る。」


   剣三郎は、ミランダの涙を優しく指で拭った。


「 さあ、みんな。任務だ。
 千名集めるのは特別な理由があるに違いない。
 これは神の試練だ。急がなきゃいけない。」 拳三が言った。


「 拳三、エミリー。
 これを持ってゆけ、周波数は合わせてある。
 人数が揃った時点で連絡するから急いでくれ。頼むぞ、みんな!」


「「「 はい!! 」」」


  剣三郎は、笑顔でトランシーバーを二人に渡した。
  拳三はエミリーに、歩きながら使い方を教えた。
  すれ違いに、祈りに加わる者達が歩いてくる ・・・

 後、五百名余り、どれほど時間が掛かるだろう。
 残った者はお年寄りと病弱な者ばかりだ。

その人達は、一人でも多くの同志が参集出来るよう祈っている。
それとは別にカウンターを持って、
集まった人数を数えている人がいる。

  なるほど抜かりはない。
  しかし、千名集まると伝えられる使命とは何か?


《 知りたいか? 》 チ~イ?

「 えっ、宜しいのですか?」
 
《 構わん。その前にあれを見よ。》


  三十郎様の指差した上空には、
  皇居付近から一直線に伸びる太い光の帯が、  
  上空の光の灯台に繋がっている。

  そして、その光の灯台から南の方角に、
  更に強くなった光の帯が伸びたと思ったら、一瞬で消えた。


《 今の地上の光源は皇居からのものだ。
 そして 光の灯台、聖者黒須 からの光の行き先は、小笠原諸島じゃ。》

「 西の富士上空ではなく、南にですか?」

《 思い出すがよい聖者木戸の話を ・・・
 何らかの理由で「神の光玉」に来られない場合は、
 最期まで諦めずに祈れと。

つまり、その強い祈りを持つ者が南の島々に居るのじゃ。
離島では、ヘリや飛行機でなければ明日の朝までは間に合わん。

 自衛隊の協力が無ければな。が、それは無い。
 政府は島民からの要請を拒否した。

その憐れな者達への救済措置が
「 招喚(しょうかん)の儀 」というものじゃ。》

チュウデス。
   

   招喚 = 招き入れること。  
   召喚 = 役所が人を呼び出すこと。強制的な意味。

 

「 招喚の儀、で御座いますか?
 え~、瞬間移動のようなもので?」


《 まあ、似て非なるものじゃが・・・
                   
つまり、先程の「光の帯」の中は「次元光廊(じげんこうろう)」になっており、「神の光玉」に入るに相応しい者だけが通り抜ける事が出来るのじゃ。
勿論、一瞬にな。

 千人という数が必要なのは、神議りでの決議故の事。

言ってみれば神鍛えなのじゃ。
明日からの本番に備えての予行演習も兼ねている。

 神に祈りが通じる事の実感をしてもらう。
 それが、今の人類には最も大事な事じゃからな。

それに、皇居内は付近の住民で溢れるだろうから、
他に振り分けねばならない。

まず、島にいる者からの強い祈りを受け、
この場内に入る資格者の名前を一人ずつ祈り迎える。
その繰り返しで、明日の六時ギリギリまで続ける。

 全世界でも同様にだ。

又、関東付近の障害その他の問題を抱え、
光玉に来れない者が居るが、そこは人海戦術となる。》


「 それで、車椅子や担架があるのですね。」


《 その通り。

 神から許された者は、聖者から地上の補佐役に
 名前と住所が伝えられえる。

それだけでは不十分だから、
その者から発せられる祈りの光線を、肉眼でも見えるようにする。

 つまり、本人と聖者との間には、
 分かりやすいように赤い光線が道標となり、
 救うべき者の場所へ確実に導く。

その赤い光線は混乱を避ける為、
救出する者だけにしか見えないようにするのだ。

ただ承知の通り、全ての道は放置された車が溢れておるから車は使えん。
歩く他ないから、距離があるほど時間が掛かる。
その時間と体力と人数。車椅子や担架では二人必要じゃな。

 後は何人かで行って、
 背負うのを交代しながら戻るの繰り返ししかないか・・・

余りの遠距離であったり、時間的な問題があれば、
特別に 招喚の儀 による救済が許されるだろうが、
何れにしても祈りの強さの度合いで決まる。》


「 これは、なんという細やかな御配慮であることか、
 私、感動致しました。
 ただ、人を真の意味で救うということは、
 とてつもない神と人との愛の繋がりがないと適わないのですね。」

    チュウダヨ!





      ( 推奨BGM )

 エクトル・べルリオーズ / 幻想交響曲 Op.14

 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団




  二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:30
       カウントダウン ( 84:30 )



《 では、ここに居るより
 拳三達の働き振りを見たほうがよかろう。参るぞ。》

  チュウ~~。

「 はい、畏まりました。」


  私達は拳三達の後を追った。

  陸上競技場の入口では、女性の案内係りが一人立っている。
  今、一人入口に入ろうとした人に、
  元気よく声を掛け励ましている。

 見ていて気持ちがいいですね。

ところでェ、一つ忘れていたことがございます。
それは、豆柴、犬四郎のことですが、
彼は祈りの聖域には入れませんので、
駒沢公園の入口付近で待つように拳三に言われていました。

 拳三達が自由通りに出ると、
 犬四郎と合流して主人のお手伝いをすることに ・・・

ただ車の渋滞は相変わらずですが ・・・?
あれっ、もう諦めたのか車の中には人影が無かった。

 皆、歩道を力無く歩いている。
 当然、ぼやく声が聞こえる。


なんてことだ。家まで十数キロはあるのに ・・・
しょうがない、近くの駅わ~っと、都立大学だったか?

 でも、混んでるだろうな。
 しかも、本数も大分減ったし、でも歩いた方が速いかもな・・・

祈るのはどうしよ。
はああ、俺なんて居ないほうがいいに決まってるし、
三日もどうしろってゆうんだ。

 地獄の惑星の転生とか業火は嫌だけど、
 政府やマスコミの言うとおり  
 宇宙人の侵略説も有りかもしんないし、んん~~ ・・・

でも、あの光の灯台とかの光も望遠鏡で見れば、
ちゃんと聖者の姿が見えるって言うし、
まあ、聖者かどうかは分からなくても、
光自体の存在はここからでも見えるし、
あの聖者の言う事は説得力あるしな。

間違いなく政治家なんぞより、
言ってることが遥かにまともだし愛情も感じる ・・・
まあ、まだ時間あるし家帰ってからじっくり考えよ ・・・


 これは、二十代位の男性の思念であるが、
 彼の言う通り大都会での交通機関は乱れに乱れ、
 JR職員も現在では以前の半数以下になってしまっている。

何故なら細菌性、ウイルス性の伝染病は、
交通機関から広がってしまうという宿命があるからだ。

 勿論それ以外の人が大勢集まる公共施設、
 スポーツその他のイベント会場も、大概は運営を自粛していた。
 というより、状況が許さないと言ったほうがいいだろう。


  さて恐ろしい事が起きる前夜です。
  今し方、あり得ない物が見えて来ました。

    血のオーロラです。

  いやあ、お見事ですねェ。
  正しく芸術そのものではありませんか ・・・

  ワインレッドのカーテンが夜空に映えて、街行く人に ・・・
  そりゃあ歓声は上がりません。

 益々恐怖が圧し掛かり、人々の心の悲鳴だけが響いて来ます。

神様の演出は強烈ですね。
戦慄が全身を貫き血の気は失せます。         
ある者は血が滾(たぎ)るかも? 私は両方です。
ははは、血は霊そのものです。

その血が失せたり、滾ったり、凍ったり、
燃えたりするとは実に面白い!

 神々に恐れを、そして賛辞を ・・・
    
この真紅の緞帳(どんちょう)が上がった瞬間、
流星火矢が天空から降り注ぎ、三日間に亘る短くも長い、
全次元を巻き込んだ激闘の舞台が始まります。

 そして三日後、
 幾億万年の「正邪の戦い」に終止符が打たれるのです。

そうだ、陛下の御生誕の日は四日後だ。
いやあ、おめでたいことですねェ。
偶然? 在り得ないでしょ。必然ですよ、神仕組みですから。

 それに月ではない、何か不気味に光る赤い巨星が見えます。

  これが噂の二ビルなのでしょう!
  アヌンナキの巣窟、悪魔の星、邪神の故郷 ・・・

 更には、オリオン座のベテルギウスが大爆発を起こし、
 太陽の如くに輝いております。

  日が落ちるまでは、太陽が三つ存在したと言えるでしょう!

 まあ、この異常な状況ですから、
 何があってもおかしくはありませんが ・・・
 ただし月は新月間近の為、細い三日月での共演です。

  これでは月の赤うさぎがどこにいるのか? 
  あ~~、分っかりません!


《 紅の二ビルと、太陽と化したベテルギウスと血のオーロラか・・・
 もう一人の役者はまだだな。

 信造よ、おぬしも良く見ておくのじゃ。
 この光景が見られるのも今晩だけじゃからのう。

 何せ明日からは地球全体が厚い雲の絨毯で覆われてしまうのでな。》

  チュウチュッ。 

「 はい。」


  だいたい大きな天体の動きは、
  NASAやら世界中の宇宙観測をしている科学者等は、
  かなり性格に把握していた筈です。

 ただ、人類の存続に関わるような恐ろしい事実は、
 各国示し合わせて報じられることはありません。

  メディアには強力な圧力が掛かっているからです。

 恐怖に慄きながら暮らすよりは、最期まで能天気に暮らして、
 真実を知らずに天国に召された方がよっぽど良いと言う訳です。

  それは、止むを得ない措置であるとは思いますが ・・・

 当然、イルミナティーを始めとする世界の重要人物、
 一部の金持ち権力者等は、必死で生き残る方法を模索し、
 地下に潜ってジッ、としていようとか下らない策を巡らし、
 巨大な地下施設を作ったりしている訳です。

  見苦しくも無駄な事ですが ・・・

 正神軍は、そういう邪心邪欲を逆利用して、
 自らの墓穴を掘らせているのですがぁ、 
 本人達には知る由もありません。

  お気の毒ですがお別れです。

    モグラの皆様、永遠に ・・・


  ところで、え~、拳三達はと ・・・ あっ、いたいた。
  拳三がさっきの青年に声を掛けている。
  犬四郎も尻尾をフリフリ愛想を振りまいている。  

「 あの、すみません。家に帰るところですか?
 それでしたら、帰らないで下さい。

 この駒沢公園が「祈りの聖域」になっていますから、
 家に帰って心の準備したいでしょうけど、
 今、千人集める使命が神様から与えられましたので、
 何としても早急に人数が必要なんですよ。」

「・・・ い、いや、でもちょっと家に帰って、
 風呂入って旨い物食べてからにしたいんだけど ・・・
 来ないと不味いのは分かるんですが、
 決心が今一つ付かないというか ・・・」

  暗いし冴えない。以前の私みたいだ。

「 家は遠いんですか?」

「 川崎なんですけど、
 まあ歩いても今日中には着けるんじゃないかと・・・」

  歩くのか?・・・今、19 時を回ったところ ・・・

「 川崎は光玉の外に出てしまいますね。
 ・・・ のんびりしていると、戻れないか?
 もしくは、光玉内に入れないかもしれませんよ。
 この中に居ることが重要だと思うんですが ・・・

あなた見てると、ホント入れなくなるかも?
ああ、悪気は無いんですが、危険ですよ外は ・・・

 あっ、水の準備ですか?
 僕の家、近いので持って来ますから、
 まず競技場に行きましょうよ。

偉大なる神の御計画に参画出来るんですから、
迷わずに行きましょう。ねっ・・・」

  そうだ~。チュウ~。ほほほ~いいぞ~い。

 暗い青年は、しぶしぶ拳三に付き添われて
 競技場に入って行った。

  おっ、他の人もぞくぞく連れて来た。
  みんな必死でがんばっている。

 拳三達は手分けして、何往復もして人を集めてきた。

剣三郎から集合の連絡が来たのは、
22 時を回った頃であった。無理もない。

 あの青年じゃなくても、
 ゆっくり考える時間が欲しいと思うのは誰しも同じ事だ。
 一回帰ると言い張る者がほとんどであった。

  まあ、家族と話す時間も欲しいだろうし ・・・

 ただ時間が在り過ぎると、
 堕落した人間は重い腰が更に重くなる傾向がある。
 だから、半日余りしか時間の猶予が与えられなかったのだ。

  神は全てお見通しということだ。

 しかし、時間は十二分に与えられていたのだ。
 何千年も前から、幾多の預言者や聖者を通して
 警告を発せられてきた事をお忘れなく ・・・

 
自由広場のミツエの様子は、
女性らしい細やかな気遣いと的確な指示に、
皆、喜んで従っているようだ。

 エミリーとミランダは、
 テキパキと満足そうにお手伝いをしている。

他にも、進んで世話役を買って出る者が多数いるので楽しいだろう。

 ミツエは不安で暗い想念になる者達に対して、
 主神様にお使いする喜びを力説し、やる気を出させている。

硬式野球場の川島にしても、
聖者からの指名があるだけに中々の働き振りである。

 この辺は自警団で剣三郎から、
 厳しく鍛えられていただろうことは容易に想像が付く。

  群衆からの不平不満に戸惑うこともあるが、
  他の自警団のメンバーと協力して、
  人々の想いを主神様に向かうように、
  試行錯誤しながら訴え掛けていた。



《 序章 》 〈 第十七話 〉 神の光玉

2019年02月01日 16時03分48秒 | 小説



  二〇 X X 年十二月十八日(木) 18:00
       カウントダウン ( 85:00 )

( 作者執筆当時の時間 ) 二〇〇九年四月二十五日 午後五時十分



 ところで我々は真っ暗になった外に出ましたが、
 皆、LEDのライトを手に持ちリュックを背負って歩いています。

  駒沢公園は近いのでしょうね。
   ビル明かりも疎らな大都会の現在。
    私には天の川が辛うじて見えています。

    無粋な車のクラクションや、その他の騒音は聞かぬ振りをして、
    あの音だけに集中して下さい。



        ( 推奨BGM )

       ジャン・シベリウス作曲
    「 樅(もみ)の木 」作品七十五―五 (リピート)

       (演奏者) 志鷹美沙

 これ以上、私のイメージに合った演奏が探せませんでした。

        


          

      何処からか、ほら、聞こえて来るでしょう ・・・

     私とあなただけに聞こえる儚げなピアノの音色 ・・・

   ただ、聞き耳を立てているのは我々だけではありません。
  守護霊に街路樹や風の精霊達。

そして、隙あらば人間を不幸に落とし入れんとする邪念の持ち主 ・・・
邪神の操り人形である憑依霊・浮遊霊、自縛霊等。

ですが、気にする必要はありません。
邪念邪心邪欲を持たずに、
ひたすら神の御為と人類愛で祈り行じれば、
邪霊悪霊の類は邪魔出来ないのです。

それは、守護霊が邪魔出来ないよう守護して下さるからです。
天使や神も後押しをして下さいます。

 そして大愛なる神は邪霊をも救おうとされます。

  何故なら、皆、我が子だから・・・


   愛する人を守る。

  誰もが望む事ですが、
 人間一人の力が及ぶ範囲は余りに狭いものです。

守りたい救いたいと願う範囲が、自分だけか?
恋人だけか? 身内だけか?・・・それでは範囲が狭すぎます。

その狭い視野には、全人類と神の姿は入ってはいないでしょう。
であれば神に祈りは通じません。

神を信じていると言って、僅かな賽銭を無礼にも放り投げ、
自分や家族のことしか祈らない。

 神に礼を尽くさず、侮辱した振る舞いに加え、
 普段は信仰心の欠片も無いのに、
 その時だけの俄(にわ)か信心からなる祈り。

 人間でも、その卑しき心は見抜けます。
 加えて、たいした努力もしない人間を
 守護してあげよう等という神は、何処にも存在致しません。

狐狸(こり)の類に化かされ面白がられるのが関の山です。

遂には守りたいと思った人は、目の前で不幸に落ちてゆく。

もはや、御利益信仰が罷(まか)り通る時代ではないのです ・・・
時代遅れだと神に呆れられます。

我々の魂の寿命は永遠です。そう考えれば百年足らずの人生は一瞬。

ですが、我等人類に残された時間は後僅かです。

その貴重な時間の中で、与えられた型示しから、
 神の御意志を少しでも掴ませて頂きたい切なる想いを常に持ち、
  聖使命に邁進させて頂きたいと思うのであります。

   くどいようですが、その道しかないのです。 

    ほら、まだ聞こえているでしょう・・・光の音霊が・・・


   ピアノは美しきアルペジオから、緩やかに鍵盤を指が滑りゆき、
  清流の水面に煌くような音色を奏でる ・・・ 

一音一音、一滴一滴。

広がる波紋が幾重にもなり、儚く消えゆく神の紋様 ・・・

その華麗なる旋律は時に激しく、時に優しく響く光と音の芸術。
それは音霊と数霊の妙技であり、宙を舞う見えない光の幻想。

 一瞬の芸術。

  その悲哀に満ちた調べは、
  人類の醜い文明の黄昏に失望した神々の
  溢れる涙の雨音のように、私の胸に落ちて参ります。

  この憤りと哀しみに涙する心は、あなたにもある筈です。

  何故なら、あなたは赤い神の血が流れる神の子であり、
 私の家族の一員なのですから ・・・


ピアノが奏でる愛の波動。

作曲者シベリウスが見上げた樅の木は、
北欧の寒空の下で枝葉が揺れていたのだろうか?

そんな情景を音霊で奏でるピアニストの愛、
そしてその音色に乗せた神と私の愛。

 その愛は、きっとあなたの心の奥底にある、
   魂まで響いていることでしょう ・・・



   ふと、拳三が立ち止まった。上空を指差している。

  一同は一緒にその方向を見上げると、
 強い決意と燃える思いが更に増してきました。

おお~、そうかあれが関東圏の「光の十字架」「光の灯台」なのだ。
聖者木戸の光にも匹敵する強烈且つ美しい光だ。

希望の光の主は、確か黒須光明。 クロス は 十字 なのだ ・・・


聖者や救世主の魂は、
天上界から天降る為に魂が綺麗な夫婦の女性に宿す必要がある。  

 いつ、どのタイミングで宿すべきなのか ・・・?


 ・・・ この夫婦は産児制限をして暫く子を作る気はないようだな。

   守護霊は、指導霊は何をしておる、
  愚か者め、産めないようにしてくれようか ・・・

 しかし、今でなければ間に合わん。誰か他はいないのか?
もう、何ヶ月も待っておるというに、候補者の名簿を見せよ ・・・

止むを得ん、強行策を取る。
少々曇り深い一族だが、この夫婦に汝を託す事にしよう。

この夫婦の曇りに釣り合わせる為、
汝には産まれて直ぐ障害を与えねばならん ・・・

 す、すまぬが耐えるのじゃ。苦しみも喜びとせよ。
  行け~い、愛する我が子よぉ!・・・ 

    「 ははぁ!! 」


このように 『 産霊(ムスビ)の神様 』 の
御苦労なされる御姿が脳裏に浮かんで参ります。

 上記の描写は勿論、私の推測でしかありませんが ・・・


落ちぶれ果てた我等が人類。
恥ずかしくはないのか? 余りに情けない、無様だ!

 もう、人間ですらない・・・

残念ながら今の現代人は、
殆ど地獄界、あるいは火星から転生してきているのが実情です。

辛い地獄の修行に明け暮れ、サトレずに更に堕ちる者もいるでしょう。

そんな中、物質界で人間の男女がSEXをしたとすれば、
妊娠後その男女の曇り(悪徳)と
釣り合いが取れる魂が胎児に宿されます。

 善徳や能力は別になります。

どういうSEXかはともかく、曇りを積む一方で、
神と己の為に向上しようという努力が無ければ、
ほぼ間違い無く地獄から魂が招喚されます。

 そして、妊娠から十月十日前後に誕生する訳です。

当然、SEX は夫婦の営みでなければならないと私は思いますが ・・・
現代人にはその常識が通用しないですね!

 完璧に狂っているのです!

ここは、よくよくお考え頂き、
淫らな性欲を抑制して頂きたいと思います。




  ところで、彼等の服装。

エミリーは洒落たスーツ、ミランダは学校の制服。
二人ともコートを羽織っている。

拳三、かすみにマーフィーは藍色の道着の上に、
自警団専用と思しき 深紅のジャケットを着ている。
そしてオレンジ色の手袋、足にはスニーカー。

 彼等もスーツは持っているでしょうに
 気合が入る方を選択したのでしょう。

そのジャケットの胸と背中には、
オレンジ色と黄色い炎のような 「暁」 という
筆文字のマークが貼り付けてあります。

 その文字と前腕の外側 ・・・ん? この部分は妙にゴツイ。

これ ・・・ 恐らくは急所を防御する為、
ナイフ等の刃を通さない素材と、
光を反射する素材とが使われているようだ。

 街灯や懐中電灯に強く反射して光っている。

確か光玉内の気温は世界中どこでも二十度に保たれるとのことですが、
それは当然、明日の七時になってからでしょう。

今はかなり寒いですから、厚着をしていないと風邪を引いてしまいますね。
私のウサギスーツは寒さは感じませんが ・・・

彼等は途中、示し合わせていたのか御近所の皆さんと合流しながら、
駒沢公園に向かっている。ただ、どうにもならない車の渋滞です。

 バイクや自転車、徒歩の者しか進めないようです。

そして聞こえるのは、車の乗員の罵声とクラクションです。
これは、戦で小競り合いをしているようなものです。
車で何処に行くのか?

 それぞれの祈りの場所への移動手段なのか?
 単なる夕方の渋滞なのか?

何れにしても、交通の大混乱は避けられないとは思いましたが
収拾はつかないでしょう。

 当然ながら、汚い言霊を使って罵声を上げる者の魂は真っ黒です。

何しろ汚い言霊を使った時は、まず己の魂と心を曇らせ、
言霊から音霊が融合し、
最後に言葉に変化し周りの人の心と魂を曇らせます。

言葉に加えて顔が醜い表情になると、相手に与える影響は増します。
すると他人を苦しめた罪が、
又、己に戻って来て汚れるという悪循環が生まれます。

 その汚れは肉体、特に血液に大きく影響していきます。

   血は霊そのものなのです。

 普段から不平不満の想いを募らせ、
 汚い乱暴な言霊と言葉を使う人は常に魂が汚れ、
 邪霊・憑依霊に操られ易くなりますから要注意です。

  言霊の力は人を生かし、殺す事も出来るのです。

 こうして醜い魂から溢れ出た濁微粒子が、
 まるで汚泥が流れ落ちるかの如く地面に溜まっていきます。

 その影響は連鎖反応をして周りに広がって行きます。

  邪神の思う壺です。

   こういう人達が明日、流星火矢で亡くなるのでしょう ・・・


拳三達は、この状況に呆れながらも時たま、
車を降りて駒沢公園に向かうよう勧めています。

 たいがいは罵声が返ってきていますが、
 守護霊の皆様も五人に一生懸命働き掛けています。

歩道を歩いて公園に向かっている人の魂は、比較的綺麗に見えます。
勿論それは、命懸けでこの人類の一大危機に立ち向かおうという
覚悟がある人だからこそでしょう。

 ただ、皆一様に表情は硬く青褪め、
 心は不安と恐怖に満ちています。

無理もありません。
しかし人類はこの難局を何としても乗り越えなければ、
未来は無いのです。


  距離にして約三百メートル。
  信号のある十字路に差し掛かった。

 左手は駒沢公園だ。随分近かった。
 右手には東京医療センターという病院がある。

そこから、ぞくぞくと入院患者と思しき人達が、
家族に付き添われ歩いている。

 車椅子の人や、ある者は一人でよろよろ歩いている。

拳三達は手分けして、歩くのが辛そうな人や車椅子の人に
手を貸し励ましながら付き添って歩いた。

当然と言えるが、彼等の心情は死を覚悟して悲愴感が漂う者と、
生きがい死にがいを見付け、
目が爛々と輝き気迫に満ちた者とに分かれた。

 恐らく、信じない、やる気のない者は病院から
 出よう等とは思わないだろう。

体力が無い者は、三日間水だけでは身が持たないのは明らかだ。

いずれにしても魂の曇りはともかく、
何処までやる気があるか否かが問われることになるでしょう。


 駒沢公園内に入ると、
 拳三達は五人集まって両親どちらに付くか相談している。

 ただ、もう腹は決まっているようだが、離れ難いようだ。

彼等もいい大人だ。
この状況では、好きに場所を移動出来ないこと位分かっている。

どうやら三十郎様のおっしゃる通り、拳三・かすみ・マーフィーは剣三郎に、
エミリー・ミランダはミツエに付くことになった。

 彼等の話によると、剣三郎は陸上競技場に、ミツエは自由広場に、
 自警団員の川島は硬式野球場にいるらしい。


  風が強くなってきた。

 闇の中で、街路樹が大きな枝葉を揺らしている。

 風の音や樹木の枝と葉が擦れ合う音も、
 落ち葉が地面と擦れ合う音も実に悲しげだ。

今、世界中で我等が家族同志同胞の皆様の心情は幾許だろうか?

この瞬間にも、天災人災あらゆる災厄で、
苦しみ抜いて亡くなる方が何千何万とおられるでしょう。

 どれほど無念なことか、そして残された御遺族の悲しみは・・・?

そして、その姿を常に見続けなければならない主神様のお苦しみ、
お悲しみは計り知れません。

  それを想うと、胸が張り裂けそうになる。

 ただ、主神様の天意に目覚め奮起して、
 希望と救いの灯台を目指している人は大勢いるに違いない。

  そんなことを、ふと想いました・・・


  その時、大きな樅の木が怪しく光りだした。

  そこから現れたのは木龍神様だ。
  穏やかな眼差しでこちらを見ておられる。


《 お役目ご苦労。全ては主神様のみ心のままだ。
 心して掛かるのじゃ、手筈通りにな。》

  チュウ。

《 心得ております。》

 木龍神様は会釈をされ、静かに樅の木と同化してゆきました。

  木龍神としての修行は、いつまで続くのだろう。
  百年か? 二百年か? 木が朽ち果てるまでか?

そうだ、水龍神の御修行は楽しいのでしょうか?
チカチュウ様、如何ですか?

 タノチュウヨ!

そうで御座いますか、
湖の守護神で在らせられるのですから、やり甲斐がありますね。

 私もがんばらねば! ガンバッテネ!フフ。


 拳三達は、まず剣三郎の所へ向かった。

陸上競技場の中に入り、東側トラック中央付近に行くと、
集まった数百人の中に剣三郎の姿があった。

 いち早く集まった者達の魂は、流石に強く光って見える。

剣三郎の脇には暖を取る為のドラム缶から、バチバチと炎が上っている。

それに拡声器にメガホン、トランシーバー、大小様々なライトと電池に・・・
これは何の為に使うのか、車椅子が十台程と担架? が並べられていた。

場内の前後には発電機から電源を取った、
大きな照明のライトが煌々と光っている。

 剣三郎は拡声器で皆に何やら指示を出している。

 拳三達は、話が終わるまで待たねばならなかった。



《 序章 》 〈 第十六話 〉 決戦前夜

2019年02月01日 14時20分01秒 | 小説

 


   《 キャラクター&キャスト 》

東京光玉の聖者 ( 黒須 光明 ) 高橋  秀〇

聖者補佐 ( 土門 剣三郎 ) 渡〇  謙
聖者補佐 ( 土門 ミツエ ) 松坂  慶〇
     ( 土門  拳三 ) 妻夫木  〇
     ( 土門 かすみ ) 成瀬  璃〇

マーフィー・ラッセル / ヘイデン・クリステ〇セン
エミリー・マーティン / ベッ〇―
ミランダ・マーティン / アヤカ・ウィルソ〇
豆芝 : 犬四郎 /  加藤 〇史郎
聖者補佐 ( 川島 章二 / 二十七才 ) 草薙 〇



      《 推奨BGM 》 




    二〇XX年十二月十八日(木)16:30  
      カウントダウン ( 86:30 )


  ・・・ はぶるる ・・・ ビュルルるる~~ ・・・
・・・・耳がプロペラ~~ ・・・ 遠心分離機い~~・・・
・・ ヒュルヒュルルル ~・・ ゴヒュウ ~~ ・・・ キキキーーッ!

・・ あうう~? 止まった。 しかし、随分回ったなあ。 いやあ~参った。
   まだ、くらくらする。 ののっ、脳みそが偏った。

 あっ、そうだチカチュウ、お前まだ石を持ったままだな。

その両手の石は僕のポケットに入れて置きなさい。もう使わないだろ、きっとね。
ついでに君もポケットに入って、顔だけ出していればいいよ、チカチュウ!

なはは、かわいいな君は ・・・ チ~カ ・・・ ぷッ、ピカチュウみたいだ。
それに僕カンガルーの気分だ。 あと、ドラエモン。


   《 お~い、もし。わしを忘れておるぞぉ。》 へッ?


     うわあ、龍の円座から声ががががぁ ・・・ 
      しかも上半身を持ち上げられて ・・・

        気が変になりそうだ。


「 ああ、これは失礼を致しました。あのお、龍神様でいらっしゃいますか?
 それに、ここまでお連れ頂きましたのも、あなた様のお陰ということで?」

《 まあそうだが。あまり硬くならんでよいぞ。三日だけの付き合いじゃ。
 スミレ様からは下座の行じゃとの仰せでな。
 つまりは、おぬしの監視役ということじゃあ。

 しかし面白い組み合わせじゃのう。龍と鼠と兎か、はははは ・・・

 ところで、わしの名は ・・・ 

 そうさなあ、三 十 郎 で良いわ。椿が好きだからな。
 生まれて三十九万年、もう直ぐ四十郎だがな。まあ、宜しく頼むぞ。》 


    さ、三十郎様? しかもパクリ?  ・・・ 
    これ、映画「 椿 三十郎 」 の名場面です。 

   流石は神様、パクる部分が違いま? 
   ああ、とんだ失礼を ・・・ に、睨んでおられる ・・・・・


「 は、はい、あ、御挨拶が遅れまして、私、関口信造と申します。
 こちらこそ宜しくお願いを申し上げます。
 しかし、このままのお姿で三日で御座いますか?
 私はとても恐れ多くてなりませんが。」

《 ん~、気持ちは分かるが、おぬしはおぬしで、
 常に神に対してのお詫びと感謝の想いを強く持つということが大事じゃ。
 その行をせよということなのだよ。
 それに、スミレ様もいちいちおぬしに構ってはおられないのでな。》

「 はは、胆に命じまする。
 はあ、ど、どうりで円座が妙に暖かい訳です。
 それに、単に『 とぐろ 』 を巻いておられるだけで御座いますね。
 しかしながら我々のこの姿、
 鏡で見たらさぞかし奇妙に写るのでしょうね。」

                 チュウチュウ。

《 奇妙で滑稽なことがお好きなのが、スミレ様じゃあ!
 このトリオの絶妙なバランスは凡人には理解できんじゃろうな。》

「 そうおっしゃいますれば、そうで御座いますね。
 あっ、ところでここは土門家の居間に戻ったのですが、
 誰もおりませんねえ。
 ああ、豆芝の犬四郎が部屋に入って来ました。
 お~い、犬四郎。みんなは何処に行ったんだ?」


「 そ、そとだよ。あとはよくわからないよ。」 クウ~ン??


  プッ、相当不思議そうだ。無理もない、この姿を見ればね。
  それに知る訳がないよなあ。

  きっと、あの聖者が示したことを信じて、
  親戚、友人、知人や御近所の人を救う為に駆けずり回っているのだろう。

《 わしも、おぬしの考えた通りじゃと思う。
 暫くすれば帰って来るだろうから待っておれば良い。》

「 はい、畏まりました。」  チカチュウ!


《 では、待つ間に伝えておこう。
                 
よいか、この関東の聖者は黒須光明(くろすみつあき)と申す者でな、
既に「神の光玉」の上空に居る。「神の光玉」の中心部は皇居である。
そして、この家の場所は東京の八雲である。
ここは光玉内であるから移動することもない。

何処か近くの大きな公園その他の広場などが 「祈りの聖域」 となり、
そこに付近の者は参集して祈るということになっておる。

 ここからだと 駒沢公園 が「祈りの聖域」 に指定されておる。

ただ東京の神の光玉は、世界の要の領域になるのでな、
特別に範囲を広くして、30キロ圏 となっておる。》


「 そうで御座いますか。ところで三十郎様。
 気になるのは「神の光玉」内に於いての事で御座います。

 つまり、あの掟の三ヵ条の中に、
 相応しくない者は追放されるという件ですが、
 この光玉内で仕事場や住居を持つ者の中にも、
 相応しくない者など何百万人も居ると思うのですが、
 いったいどうやって三十キロ圏外に追放するというのでしょう?」 

                          チュウ?
                    
《 それはな、「 流星火矢(りゅうせいびや) 」 を使うのじゃ。
 この神裁きの三日間では、
 光玉内での善魂悪魂を選り分けるのは神々でも厄介でな。

そりゃあ、魂の光具合で区別は付くが、
物理的に悪魂人間だけ外へ出て行けというのは、土台無理な話だ。

 そこで、主神様は流星火矢使用の決裁を成された。
 その火矢の特性は、人の肉体に外傷を付けない事にある。

一瞬で脳幹の神経を貫き絶命させる。痛みすら感じずに死ねる。
それは傍(かたわら)に居る者を含めての配慮であり、神の慈愛じゃ。

 但し魂が肉体を離脱し後は光玉から追放され、憑依した霊と共に
 三日間激痛を味わうことになる。

それから動物や昆虫はペットを含めて、
聖域である光玉から外に追い出すことになっている。

 地震の時と同じように電磁波その他の粒子を使ってじゃ。
 ただ、檻や室内にいるものはしょうがないがな。》


「 はああ、お、驚きました。
 そのような細やかな御配慮が成されていたのですね。
 考えただけでも恐ろしいですが、
 その流星火矢はいつ放たれるのでしょう?」


《 それは、明日の午前七時丁度にだ。
                                           
 七時に光玉の門が閉ざされたその直後、
 光玉上空から火矢を番えた弓を持つ
 数千の裁きの天使達 が一斉に火矢を放つ。

一度に十の矢を番(つが)えて射る事が可能だ。

その火矢が一斉に放たれる様は、
まるで流星群のように見えることから、流星火矢と名付けられたのじゃ。
まあ火と言っても肉眼では光のシャワーにしか見えんだろうがな。

 明日からの三日間、
 空は厚い雲で覆われ太陽を拝む事は出来ないから、 
 火矢の光は鮮やかに見えるであろう。》

「 えっ、肉眼でも見えるのですか?」 チ~カ?

《 見える。そればかりか 祈りの光の帯もじゃ。
 おぬしが霊眼を以って見えるものが、常人にも多少は見えるようになる。

人間は他人と比べ愕然とし、誰にも頭が上がらなくなるであろう。
つまりは魂の光を実感させ、
己が神の子であることを自覚させることが目的なのじゃ。

 又、唯物主義の人間に、
 神の存在を分からせる為の強硬手段という意味もある。

それと火矢を使うのは随時じゃ。
その為、裁きの天使達は人間には分からぬよう、
常に光玉内を監視するという役目を帯びているのじゃ。》

「 そ、それは、なんと恐ろしい事でしょう。
 つまり、それらは主神様が封印を解かれた力なのですね。」 チュ~ウ!

《 その通りだ。まだまだ人と神を鍛える為の仕組みが幾重にもある。
 それらは段階的に執行されてゆく。
 そこで人と神は徹底的に鍛え育てられる。

 でなければ、これから迎えようとする神と人とが一体となった、
 神十字文明を成就することは適わないのだからな。》

「 そうで御座いますか。
 そこ迄の大いなる神の愛の中で生かされて来た人類なのに、
 神を蔑ろにし恨み呪う者さえいる始末。

 そのとてつもない罪穢を、
 明日からの三日間でどれだけ真剣にお詫び出来るのか?  
 私達には、祈りつつ最期まで見届ける以外にないのですね。」

《 まあ、そういうことだ。
 今のおぬしには、直接人間に関わる事は許されてはいない。
 そして、わしと、その鼠もじゃ。》  チュウチュウ!

「 ところで、もう一つ御質問を宜しいでしょうか?」

《 構わんぞ。どうせ暇じゃからな。》

「 ありがとうございます。

 え~、主神様の封印されていた力は、
 邪神にも与えるということで御座いますが、
 実際はどのような形になるので御座いましょう?」 チュウ?

《 世にも恐ろしい事になる。な~に実に簡単明瞭。
 人間の望んだ物が形になるだけのこと、
 それが正義の味方か悪魔か化け物か?

 人間の望むイメージが物質化する。

恐怖の体験、痛快な出来事、
栄光の日々に戦争の悲劇、それに伴う喜怒哀楽。
それら人間の過去の、
あらゆる感情や転生中の潜在的記憶も影響してくる。

 つまり堕落し神から離れた人間の悪い部分を炙り出し、
 再認識させた上で払拭フキハラウという、
 主神様の最終手段なのじゃ。
    
言っておくが、それは邪神軍だけでなく正神軍にも影響するのだ。

光玉内でも力でなんとか邪神軍をねじ伏せよう等と、
良からぬ邪念が過(よぎ)ることが推測出来るからのう。》

「 こっ、これは声も出ません。
 精神的に付いて行けない者も出て来るでしょうね。」

《 ふっ、なんだ、怖気づいたか? 侍が聞いて呆れるぞ!
これでは、池の中の鮒じゃ。ふなふな、鮒侍じゃ、ぶはははははーー!

いや~、龍の空飛ぶ円座花火は実に痛快じゃったのう。
 思い出すだけで笑えるわい! 

 が~はははは。

おぬしが大山様とのやり取りで、
途中からスミレ様がおぬしの口を借りて、うまい芝居を打たれて、
大山様を褒め称えられた時は、
流石は主神様の御嬢様だと感心しきりじゃったわい。

 しかし、あのスリルときたら ・・・ 
  小筒花火を銜えて ・・・ぷぷっ。》


「 あの~笑い事では御座いません。

 確かに私も感心は致しましたが、
 ああいう目に会ったのは二度目なんですよ。

 もう~~、幸い気絶は致しませんでしたが。」


《 なんじゃ二度目じゃったのか。
 聞いたか、ねずみぃ。だあ~はっははは・・・》    

   チュチュ~ウ。

「 あ、あの、もう一つ御質問が ・・・

 あの、こちらの鼠様はもしかして、
 神の化身だったりするのではないかと・・・?」

   エッ、チ~カ?

《 決まっておるじゃろう! 何だと思ったのじゃ、戯け!
 いつ気付くか見ておったが ・・・

寝惚けた事を言っておると、亀から追い抜かれるぞ。
兎は足が速いと自惚れ油断し過ぎるのが欠点じゃ。

 おお、そうじゃ、おぬしは鮒侍じゃなくて、
 居眠りこいて鼻風船を膨らます鼻風船侍じゃ。
 ふはふは、ふはは?・・・いや~、ちと長いなあ。

これでは減点の対象になるぞ、いかんなあ ・・・鼻侍?
風船兎。捻りがないぞ、ぬうう ・・・》


「 あああ~~、何と言う失態を~~。
 鼠様、もーしわけ御座いませんでした。
 ところでこちらの鼠様のお名前は何と申されるので ・・・」 

   チカチュウ!

《 あん? チカチュウで良かろう。この者も気に入っているようだしな。》

   チカチュウ!

「 しかし、それでは余りにふざけていると・・・」

《 あ、そうそう。別に内緒にする必要もないから言っておこう。
  良いなチカチュウ殿。 ぐふふふゥ ~~ 》 ・・・チチチ、チ~カ。

《 なあ、おぬし、あの神議り場におったであろう。
 それで、大黒天様からお叱りを受けた
 下級神がいたことも間近で見ていた ・・・

  恥ずかしながら、その下級神の中に我等がいたのじゃ ・・・

 わしの名はアメリカの氏神、
 マサチューセッツ州の スプリングフィールド じゃあ。

そして、こちらの鼠様はエジプトの偉大なる湖神 ナセル 殿じゃあ。

 だから、胸を張って名乗れなかったのじゃ。
 全く情けないわ。おまけに、しょぼい兎の面倒を見る羽目になるとは ・・・

  ああ、いかん。愚痴と不平不満はいかん。  
  スミレ様、申し訳ございませんでした。お許しを~。》



     《 キャラクター&キャスト 》

氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぎの妖怪 : 信造 : 作者  / 伊藤  敦〇



   二〇 X X 年十二月十八日(木) 17:10
      カウントダウン ( 85:50 )



「 ああ、じ、事情は良く分かりました。
 でもあの時、下級神の皆様は地獄界に行って一千万の魂を集めるという、
 恐ろしいお役目を頂かれたのでは?」 チ~?

《 まあ、そうなんじゃがのう。

わしら二人はスミレ様の特命を受け、急遽おぬしと合流した次第じゃ。
訳は申されなんだが、わしらは足手纏いになったのかもしれんのう。

・・・んん? いや、そうじゃそうじゃ。
その暗い発想がいかんのじゃ。

 どんな、しょぼいと思われるみ役でも、
 一つ返事で謹んで御受けし、全身全霊で遂行するが神の使命なれば、
 愚痴を言うなど言語道断とお叱りを受けるは必定。

そうじゃスミレ様はわしらの欠点を見抜き、
わざとしょぼいおぬしの元で修行をするよう仕組まれたのじゃあ。

 おお、なんと有り難い大愛なるみ意じゃ ・・・のう、鼠殿。
 おぬしも地獄での魂集めに気が向いていたところに、
 肩透かしを食らったようじゃと嘆いておっただろう。

良いか、わしらは他の神々とは一線を画し、
この兎と共に明日からの三日間、
戦いの最前線を渡り歩き、
神々の偉大なる御業と天意を我等が魂に刻み付けるのじゃ!》 

  チュウチュウ! しょぼ~い、おっしゃる通りです。ガクッ。

「 私も胆に銘じまする。
 と、ところでナセル様はなんとお呼びすればよいので ・・・?」

《 じゃから、チカチュウで良いと申しておるに分からん奴じゃ。
 それで、わしは三十郎。良いな!》 チュウ!

「 畏まりました ・・・ ところで、チカチュウ様は
 普通にお話することは禁じられているのですか?」 チ?

《 ばはははは。この鼠殿はのう、余りにおしゃべりが過ぎたのが原因で、
 過去に幾度となく失態があっての。

 きっと、それでスミレ様はおぬしに対して、
 通常の言霊はなるべく使わんようにと仰せになったのじゃろうて ・・・ 》

  あは~~、それはそれは・・・

     わんわん、わんわん。

  犬四郎が玄関に走って行った。誰か帰って来たのだろう。

 外は随分暗くなって来ている。現在時刻、午後五時を回ったところです。 ただ、私達のこの姿を彼等の守護霊が見たら、悲鳴を上げて卒倒するかも?

《 構わんじゃろう。この位で驚いていたら、
 これからの地獄の光景には耐えられんぞ。
 それと流星火矢と他の事柄は内緒にしておくのじゃ、分かったな。》

「 はい、畏まりました。」




      ( 推奨BGM )

   ペーター・チャイコフスキー作曲
   舟歌 「四季 作品37b第6曲:六月」 (リピート)
  ピアニスト 不明





   むむっ? どやどやと、何人かが部屋に入って来た。

  犬四郎は大喜びであるが、守護霊の皆さんは私達を見た途端、
  悲鳴を挙げたと思ったら直ぐ頭や体の後ろに隠れた。

   守護霊は一人に一人付くという決まりはなく、
   志願した者はなれるようですので、
   ここの住人にはかなりの人数の守護霊が付いています。

  それを他所に帰ってきた住人は、興奮して話続けている。


「 おいっ、みんな急げ。そこの棚に空のペットボトルがあるだろ。
 後、ライトと電池とメモ帳とペンを有りっ丈いるぞ。
 それと、地図がこの付近から ・・・
 川崎と横浜だったな、そのコピーを有りっ丈。

 後は、犬四郎の水とご飯を四日分位はないとな ・・・
 えーと、水の貯蔵タンクはと ・・・ 
 あっ、これくらいあれば足りるだろ。」

  拳三が言った。マーフィーは地図のコピー。エミリー姉妹は犬の世話。
  かすみは、水をタンクからペットボトルに移し替えている。
  水道は止まっているのだろうか?

メモ帳は恐らく、聖者から受け取った指示を書き留める為のものだろう、
間違って伝えては話しにはならない。成る程抜かりは無いようだ。

  ただ、剣三郎とミツエがいない。

    別行動か?・・・ 


「 三十郎様、チカチュウ様、守護霊に事情を聞いてみましょうか?」

《 うむ、そうするがよい。まずは挨拶からじゃ。》 チュウ! 

   は、畏まりました。

「 守護霊の皆様ぁ~。お取り込みのところ恐縮ですが、
 こちらへいらして頂けないでしょうか?」

  恐る恐る、皆の守護霊が集合した。

 まずは私から三十郎様とチカチュウ様の御紹介をさせて頂き、
 次に守護霊から、それぞれ挨拶をして頂きました。

  それから事の経緯を説明させて頂きました。
  言わずもがな、皆、神妙なお顔で聞いておられました。

   私もかなり複雑な心境でありますが、
   彼等の方は余裕が全く無い様子なので、
   手短に質問を投げ掛けました。

「 剣三郎さんとミツエさんは、どうされたか教えて頂けますか?」

   すると拳三の守護霊、栄来様が答えて下さいました。

「 はい彼等は聖者 黒須様の御指名により補佐のみ役を頂き既に、
 この近隣の祈りの聖域として選ばれた駒沢公園に向かいました。
 私等は単に水を人数分と、
 筆記用具その他を持ち帰る為だけに戻った次第に御座います。」

「 何と夫婦共にとは ・・・
 それでは夫婦といえど持ち場は離れなければなりませんね。」

「 おっしゃる通りです。しかし、御心配には及びません。
 彼等の絆は半端なものではありません。喜んでみ役をお受けしたのです。
 その時程、我等先祖が歓喜したことはありません。

ただ子供達はそれぞれ辛い立場で、特に自尊心の強い拳三は、
自分が補佐役に選ばれなかったことが、かなり堪えておりまして ・・・」

「 しかし、彼はまだ若いではありませんか。
 あのような覇気が無くなるほどのことでしょうか?」

   若干、気の抜けたような拳三を見ながら私が言うと ・・・

「・・・ それが、同じ自警団のメンバーに
 二才上の川島章二という男がおりますが、
 これが補佐役に選ばれまして ・・・ 

 勿論それに相応しい魂と人格の持ち主ではありますが、
 内の子孫とマーフィーと比べても格下にしか見えないのに何故かと、
 我等守護霊も思案に暮れているので御座います。」 チュウ。

《 まあ、汝等の気持ちは分かる。
 不満に思っている者は居らぬようだから訳を話そう。

良いか、拳三、マーフィー、かすみの三人には
特別なみ役が与えられておるのじゃ。
まだ、その時が来ていないだけの事。恐らくは二日目以降となるだろう。

 詳細は言えぬが注意点として、拳三は侍の血が強く出ており、
 正義感が暴走し血気に逸(はや)る嫌いがあるという事。

それを汝等守護霊が抑えていたから、暴力沙汰にならずに済んだのだ。
マーフィーは若干温厚だが、拳三と同調する事が多々あるから、
これらに気を付けねばならん。

 かすみの役目は、
 強い正義感が暴走しないように間に入って緩和させる事にある。

これから二人の正義感を刺激するような、邪神軍の攻撃が一層激しくなる。
だから憎しみや怒りの想念での反撃や先制攻撃をさせてはならん。

あくまでも徹底した慈愛の心を強く引き出すのじゃ。
皆、それを胆に命ぜよ。》 チュウ。

「「 はい、畏まりました。」」

  皆さん納得した返事でありますが、エミリーとミランダの守護霊の、
  アルクルとメイフィは随分気まずそうだ。

  無理も無い、彼等の一家から聖者の補佐役は出ない上に、
  新型インフルエンザの犠牲者を三人も出しているのだから ・・・

  すると、三十郎様がその辺を察してか、二人に話掛けられました。

《 おい、アルクルにメイフィ。汝等は自分のお家の霊的水準が、
 土門家にかなり劣っている事が負い目のようだが、
 そのマイナス思考が良くないのじゃ。卑屈になるでない。

人と比べるのも悪くは無いが、そのお家の良い所から学び行じて、
更に上を目指すのが基本の信仰の考え方でなくてはならん。

 それに三人が亡くなったことで一族の曇りがアガナわれ、
 かなり汝等の負担も軽減したであろう。

だからこそ土門家との縁も深まり、
子孫共々高水準な修行をすることが許されたのじゃ。

 加えてこれからの三日間で、更に大きく救われ、
 一族全体が栄えてゆける機会が与えられたのだから、
 一心不乱に精進することじゃ、良いな。》 チュウチュウ!

「 ははあ、有り難いお言葉を賜り恐縮に存じます。
 我等と子孫共々、断固遂行の想いで精進致しまする。」

   感極まったアルクルが応えた。

《 うむ、良いか、汝等二人はミツエの側に居て彼女のみ役を補佐するよう、
 エミリーとミランダに働き掛けるのじゃ。

 ミランダはまだ若いがミツエを助けようと、必死でがんばる筈じゃ。
 更にエミリーと助け合い、
 多くの迷える人々に強く神の愛を伝えられる魂であり、
 将来有望な神の使徒に相応しい者に昇華出来ると、わしは信じておる。
 主神様も確信を持たれての、この度のお仕組みなのじゃ。

そして、他の三人は剣三郎の側に付いて、
しっかり補佐するよう働きかける事。
皆、その事を胆に銘じるのじゃ。》 チ~カ!

皆の守護霊達は、三十郎様の深い慈愛の波動に感銘を受けておられました。
そして、三日間の夢想だにしない修羅場を迎える緊張感があるにも関わらず、  沸々と湧き上がるような強い闘志に、自分で驚いておられるようでした。

   皆の気迫の強さは、魂と目の輝き、
   そして全身全霊からなるオーラの光に表れていました。

  実に頼もしい限りです。
  三十郎様もチカチュウ様も御満悦の様子です。

   そして拳三の守護霊、栄来様が御礼を述べました。

「 三十郎様、我等守護霊に対し直々のお言葉を賜り
 真にありがとうございます。

明日からの大節の三日間を迎えるに当たり、
我等は極度の不安と緊張を持っておりましたが、
それも今は全く御座いません。

 この御恩に報いる為にも、我等が先祖と子孫一丸となり、
 与えられた聖使命を全力で全う致す所存に御座いますので、
 宜しく御願い申し上げます。」

《 良くぞ申した。見事な心掛けじゃ・・・

良いか、主神様は汝等に多大な御期待を寄せておられる。
それを重荷と思わず喜びを持って、
どんな神鍛え神試しをも乗り越え任務を遂行するのじゃ、
頼んだぞ、我が子等よ!》 チカチュウ!

  守護霊の皆様は、それぞれ感極まり涙しながら、
  三十郎様とチカチュウ様に御礼を述べられました。

《 よいよい、ほら、子孫達は準備が出来たようじゃ、もう行きなさい。
 我等も、暫くは駒沢公園で様子を見て居るから安心しなさい。

それから、光玉内にのさばる馬鹿者どもが、
何かとちょっかいを出してくるだろう。

嫌がらせ、暴力に殺人、邪神の操り人形になり襲って来るだろうから、
その時は迷わず恐れず皆を落ち着かせ神に祈らせるのだ。

さすれば、神は直ぐ様その者に金縛りを掛ける。

 誰にも、暴力で対抗させてはならんぞ。
  曇りを積み、光玉から追放されてしまうからのう。

    ささ、一緒に参ろう。》 チュウ。


    「 参りましょう、皆様、いざ出陣ですぞ~! 」

    「「「 おお~う! 」」」


そんなこんなで、三十郎様から温かくも的確な御教示を頂き、
守護霊の皆様はやる気満々の様子で、それぞれの子孫に付き添われました。

 むむっ、拳三達の心が悲しみに満ちている。

    何故だろう ・・・



     ( 推奨BGM )

ジョゼフ=モーリス(モリス)・ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 

指揮・ピアノ:レナード・バーンスタイン 

フィルハーモニア管弦楽団 録音:1946年1月7日




   そうか、犬四郎は置いていかなければならないのだ。

  皆、犬四郎を見つめて涙を流している。これは辛い別れだ。
  全員が生還出来るか否かは、未知数でしかない。

  犬四郎もそれを察してか、とても不安げで落ち着きがない。
  エミリーが抱っこをしている。


「 ねえ、犬四郎。私達必ず戻るから、いい子で待ってるのよ。
 人間って身勝手だから、
 いつも何かあれば犠牲になるのは動物に自然よね。
 不用品は殺して捨てて破壊して・・・

 私達人間は、その責任を取らなければならないの。
 人間が神様から見ていい子にならないといけないのよ。

 そうでなければ何も解決しないんだわ。
 ごめんね ・・・ 私達いい子になって必ず戻るから、
 こう見えても結構丈夫だし、食は細くても働き者だしね。
 だから、あなたもがんばってね。うう ・・・ 犬四郎。」


    クウン、クン・・・ウウゥ ・・


  犬四郎は、エミリーの頬に伝う涙をペロペロと舐めた。
  涙を流しながらエミリーは、ミランダに犬四郎を渡した。


「 ごめんね犬四郎。わたしも必ず戻るから、
 どんなことがあっても外に出ちゃダメよ。
わたしの大好きな犬四郎。三日だけ我慢してね。うわ~ん、うう ・・ 」


    ウウゥ、ワンワン ・・・


  ミランダは犬四郎を静かに床に置いた。
  ただ何だろう? 犬四郎は納得していない様子だ。


 (( いやだよ、置いてけぼりはぜったい やだよ! 
     ぼくだってみんなの役に立てるよ!))


  犬四郎の思念は、そう叫んでいる! 流石は日本犬だ!
  すると拳三が腕組みをして犬四郎に話し掛けた。


「 犬四郎、お前は土門家の末っ子として育てられた。
 まだ四才だがこの家は一人で守れる筈だ。

 いいか、僕達が帰るまでお前は一家の主だ。それを忘れるなよ。
 それに、自警団のメンバーの一人であることもだ ・・・

 そうだ三日間家を守り抜いたら、
 お前専用の自警団のジャケットを作ってやるよ。」

   ワンワン、ワンワン!!

「 何だ! どうした犬四郎。留守番は嫌なのか?」

   ワワン、ワン!!!

「 ははは ・・・
 そうかお前の意志も確かめずに勝手に判断して悪かったな!
 では、僕等と共に戦うんだな!」

   ワンワン、ワワンワン!!! 

「 そうか、そりゃ頼もしい限りだ!
 ただな、明日の7時を過ぎると
 東京の神の光玉から出て行かなくちゃいけない。

 だから、ずっと一緒にはいられない。
 そんな事情は分からんだろうが ・・・

 みんな、ここは犬四郎の意志を尊重してやろう。
 僕たちの勝手でこれまで狭い家の中に閉じ込めていたんだ。
 これからは彼の自由にさせてよろうよ。」

「 僕は異議無しだよ。彼にもプライドや意地はある筈だからね。」

   マーフィーは答えた。

  女性陣は心配そうだが、犬四郎を置いていく方が残酷だと捉え、
  一緒に連れていくことに同意した。

  犬四郎は、
  その場で飛び上がっては吠えてぐるぐる回って喜びを表現した。

「 ははは、流石は自警団の一員だな。
 ふふふ、いいか犬四郎! 僕達は邪神軍と戦う!

 どんなことをしても勝たなければならない。
 だから身を挺してでも、皆を守らなければならない時もある。
 不意打ちを喰らえば殺されるかもしれないしな ・・・

 その時は、ここに戻る事もない。

下手すれば、明日の七時になるまでに生きていられるか分からないからな。
 なあマーフィー、君はどうする?」

「 愚問だな、決まってるだろ!
 馬鹿共が光玉内から締め出されるのは明日の七時だ。
 それまでは、言ってみれば野放し状態。聖域内を誰が守るのか?

 それは僕と君と、後は自警団のメンバー、
 そして腕に自信がある者達だけだ。まあ、玉砕覚悟だが ・・・ 

 ただ気になるのは、
 暴力を振るえば神の光玉に入る資格を剥奪される ・・・
 という件だが ・・・ ん~、それは不味いなあ。
 本当に金縛りの技なんて使えるのかな~~?」

   さっきから、二人を睨んでいたかすみが口を開いた。

「 何言ってるのよ二人とも。駄目に決まってるじゃない。
 邪魔する人がいた時には、神様に祈れば金縛りになっちゃう筈よ。

 だからぁ、暴力じゃ人を守ったり、
 救ったり出来ないってことを神様はおっしゃりたいのよきっと。
 そんなんじゃ、立派な聖者様や
 皇族のような崇高な存在にはなれないわよ。」

   拳三は顔を顰めて言った。

「 なんだこらあ、かすみぃ、
 どうせ僕は補佐役にもなれなかった役立たずだよ。

 そうだ、金縛りの術を試してみよう。
 信じていない訳じゃないけど、
 いざという時の為の予行演習は必要だしな。」 あのねェ・・・

「 おっ、そうだな、それはいい考えだ。」 マーフィーが乗ってきた。

「 ええ~、ふざけて祈ると怒られるわよ。」 かすみは呆れた。

「 でも、一回位はいいんじゃない。」  うわ ・・・

「 エミリーまでそんなこと言って、知らないわよ。」 拳三が手を合わせた。

「 議論なんぞはいい。
 え~神様、かすみに金縛りを掛けて下さい。お願い致します。」

   いきなりはやめなって。

「 な、なんであたしなのよぉ。酷いよ兄さん。うわ~? あ、何ともない。」

「 えぐ、ごおお ・・・ かあ ・・」 拳三の時が止まった。

   馬鹿だねェ、守護霊の栄来様もビックリです。

「 あああ、ぶええ~~っ、かっ、神様申し訳ございませんでした。
 どどど、どうかお許しを~」

   時が戻り、拳三殿が生還した。お疲れでした。そして皆呆れた。

《 今のは、わしのちょっとした悪戯じゃあ、
 この位は構わんじゃろうて・・・

 神を試すとはいい度胸じゃな。それに暴力は相手を裁く事に繋がる。
 裁く権利は人間には与えておらん。神の特権なのじゃ。

 おまけに人を傷付ける事など言語道断。
 悪いと断定し相手を裁く、
 何がどう悪いのかは神でなければ判断出来ん事なのに、全く・・・
 だから許さんと申しておるに、分からん奴じゃ!》 チ~カ。

「 三十郎様、申し訳ございませんでした。
 止めろと言っても中々頑固で、お恥ずかしい次第で御座います。」 

   栄来様が冷や汗を掻きながら言いました。

《 まあ、気にするな。拳三も懲りたであろう。
 おぬし等も苦労するのう。めげずに精進しなさい。》 チュウ!

「「「 ははあ、胆に銘じます。」」」

一同は、首輪を外された犬四郎を引き連れ、玄関の鍵を掛けて外に出た。
 すると栄来様が私に話しかけてきました。

「 いや~、信造様。
 一緒にテレビを見ていて突然お姿が見えなくなった時は驚きましたぞ~。
 それで、お帰りになられたら二体の神様と御一緒とは、
 しかもそのお姿で・・・」

「 それが、こうして御一緒させて頂いていても、
 いやはや恐縮でして ・・・」

  すると三十郎様は私の両耳を顎(あご)で掻き分け、
  そのまま頭にお乗りになりました。
  鼻の下のお髭(ひげ)と顎髭が、目の前でユラユラ揺れています。

《 まあまあ良いではないか、わしとおぬしの仲ではないか、
 ほれほれ、どうじゃ~・・・》

「 グヒッ、ははは、三十郎様。
 いっ、何時の間に両手を生やされたので ・・・ うぐっ、ぶひひ。」

《 ははは、愚か者めが。
 今までは円座に成り切る為、嵩張(かさば)るから出さなんだだけじゃ。
 ほれっ、くすぐったいかぁ?
 しかし、この体勢はなかなかいいのう。ほれ、お前達も容赦はせぬぞ。》 
                     
   三十郎様は、髭を伸ばして守護霊の皆様の脇腹をくすぐられた。
   皆さん悲鳴を上げて逃げ回っております。

   ただ、チカチュウ様が妙に大人しいですね。
   どうなされたのでしょう?

《 チュウチュウタコカイナ。ナンチュウカ、ホンチュウカ。
 ヤギュウチュウベエ~~。も~、わたくしも、お話ししたいですぞ!》

「 チカチュウ様、不味くないですか?」

《 あきまへん、減点ですぞ。三日ぐらい我慢なされよ。
 そのような姿でも、神の威厳が無くてどうされるので、ナセル殿?》

《 チュウ~~! この格好では威厳も何も無いですぞよ!! 》 

   あっ今、小さなほっぺがプクッて膨れた ・・・ かーわいい。

《 なんじゃあ~不満か? わしを睨んでも何も出んぞ~い!
 こおらっ、髭を掴むな。》

《 チュッチュ、ゴメンチュ~ッ・・・フンだ!》

《 ぬぬぬ・・・まあ分かれば宜しい・・・全く女って奴わ~・・・》 

   はは ・・・
   すると栄来様が、二体の神様の間に割って入って来られました。
   ・・・ くうう、いいタイミングです。
 
「 ああ、ところで皆様。

 天皇陛下が皇居の門を全門開放なされて、
 近隣住民を無制限に中に入れて、皆と一緒に祈りたいということと、
 なるべく聖者の言う事に協力するよう、
 政府に要請されたとの報道が御座いましたが、

 御存知でいらっしゃいましたか? ・・・

 それで公園や競技場、球場等が止む無く開放されたのです。
 政府も、そうすることでパニックを
 最小限に食い止められると踏んだようです。

 ただ、侵略者が攻撃を仕掛けて来るならば、
 武力を以ってこれを制圧する等と、
 愚かなことを申しておりましたが。」

   おお~凄い、流石は陛下です。

《 おお、それは予定通りじゃ。
 天皇は聖者とは別格じゃから神示も違う内容なのじゃ。

そうすれば、世界と日本国民との距離も縮まり親近感が増し、
その上、本来世界を統べるみ役が天皇であることの
潜在意識も蘇るきっかけになるじゃろう。

 しかし、人間というのは愚かだ。

モーセと対峙したラメセス2世のように、どんな奇跡を見ても、
如何ともし難い事態に陥るまで神に従おうとしないとはな。

 ほんに、あの男ときたら頑固なハゲ親父だったわい。
 あの時はナセル殿も困ってなあ。

ファラオか何か知らんが、人間の分際で威張り腐りおって・・・
これでは知的レベルの高い生物とは認められん!
下等生物は実に扱いにくい。

 まあ政府に圧力を掛けたのも、
 うまく邪神軍の裏を掻いた正神軍の力じゃがな。

  全く苦労を掛けてくれるのう・・・
  しかし、地上は臭くて堪らんなあ。

    豚人間か、鳥人間しかおらんのかな。》

      ブブウ、フゴッ、チュン、コココーコーコケッ!

        いやあ~、なるほど納得で御座います。
         しかし益々ワクワクしてきました。フゴッ!



《 序章 》 〈 第十五話 〉 迷子の兎

2019年01月31日 21時30分09秒 | 小説




   《 キャラクター&キャスト 》

創造主の娘 : スミレ / 現在分身を地球に派遣! / 石原 さと〇
 ( 極秘情報 / 彼女は自分の宇宙を創造中なのだ!)

十和田湖 : 神の光玉の守護神 : 大山津見神 / 境  正〇
                 
円座の龍 ( 筒状花火付き ) / ジャン ・ レ〇

円座を知らない方は下記のサイト参照。 
http://www.shinguya.com/enza.html

うさぎの妖怪の肉ポケットの中は、ねずみのぬいぐるみです!

  キャスト / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇

うさぎの妖怪 : 信造 : 作者 / 伊藤  敦〇




    ( 推奨BGM )

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
クラリネット協奏曲イ長調 K. 622

クラリネット:レオポルト・ウラッハ

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団





   さて~~、空中であたくし一人じゃなくて一羽!

   いつまでもこうしている訳にもいきません 。
  そろそろ戻るとしましょう。

  ・・・が、しかし戻るって何処へ?
  何処だあそこは、土門家。

   十和田湖なら、別に地球上何処に居たって来れますけど・・・
   もももも、もしかして、物凄い失態をやらかしたのでは?

    住所知らないぞ ・・・


  「 超接近! 恐怖の花火見物 」 の後、
  気絶して気付いたら土門家の前に居たんだから、
 住宅街としか知らない。しっかし、気絶するとは情けない。

もしかして、土門拳三とか剣三郎とかいたから、
山形県の酒田市じゃないのかな?

あの、土門 拳、ていう人御存知です? 写真家の。
あの人の写真は凄いですよぉ~。
でも、あの家の人達、ず~ず~弁じゃなかったし、
いやっ、ず~ず~弁は内陸地方で、酒田の辺りは違った。

 んだのぉ~、とか言って・・・あっ、いや失礼。
 山形の皆さん御無沙汰しております。

とにかく、標準語で大きなビルが見えたから大都会です。
多分東京の純日本家屋 ・・・ですよね?
あ、あの~、もしかして御存知では?

私、たまに気絶して知らないことが結構御座いまして ・・・
そのぉ、教えて頂くと有り難いのですが ・・・

 あ、いえ、ただとは申しません。
 私、一日ペットとして伺います。

 駄目か、人には見えないんでした。

では今日の夜、あなたの夢に出て夢の共演とか、ぷっ、如何でしょう。
そんなので宜しければ・・・えっ、いいですか。

 やっぱりそう言って下さると思いました。

では私、この大きな耳をすましておりますので、
土門家の住所を念じて下さい。

はい、どうぞ・・さあどうぞ・・何か目印は?
気合を入れてもう一丁 ・・・

助けて下さいとか、スミレ様にお頼みするのは、ちょっとまずいので・・ 
あなたもお分かりになるでしょう ・・・・

 空の上で何やってんだ僕 ・・・


  《 あ、あ~これ、もし ・・・ 》


  まさか、あなたの声が聞こえた。

 いや、後ろでどなたかの声が ・・・
 私は、ゆっくり後ろを振り向いた。

  あれえ、水戸黄門?


「 あの、どちらさまで御座いましょう?
 アアッ、もしかして大山津見神様でいらっしゃいますか?」


《 おおーっほっほっほっほっほぉ~、御名答。
 わしがさっきの鬼雲、大山津見神である!

この衣装は、たまにはいいかなと思ってな。むふふ ・・・
ああ~コスプレとか申すなコスプレとかぁ ・・・・

それに言っておくが、この印籠には葵の御紋は無いぞ~。
ほれ、神の御紋は十字と決まっておるでな。

それから、さっきの忌々しいヘリの残骸を空き地にばら撒いたのは、
十和田湖を汚さない為の配慮じゃ。全く、世話ばかり焼かせおって ・・・

ところで、おぬしが信造じゃな。
どれどれ、ちこう寄りなさい。》


「 は、はい。お初にお目に掛かります。
 全く以って光栄の極みに御座います。」


《 おお、そうかそうか。ん~しかしおぬしはちっこいのお。
 その割りに耳は長いかな。ほほお~なるほどなるほど・・・》


「 あ、あの、耳の中を、く、くすぐったいでごさいます。グヒッ。」

《 ファスナーは付いておらなんだな。スミレ様のおっしゃる通りじゃ。》

「 そっ、それは、ないと思いまする。」

   あっ、そう言えば鏡で自分の背中見た事ないんだった。

《 よく出来ておるのお、流石は大黒天様じゃあ。
  この毛並みの色艶が何とも言えんわい。

   きめ細やかな白い毛を光に透かすと、
    七色に輝いて見えるわ。う~む。》

    「・・・お、恐れ入ります。」


《 おぬしに言っているのではないわ。
  ふむふむ・・・この皮膚は良く伸びるのぉ。
    着心地はどうじゃ?》  ほ、ほっぺやあは、ちょっと・・・

「 は、はい、それはもう何の違和感も無く、快適そのもので御座います。」

《 そうであろう、そうであろう。
  何よりは、そのペンダントと腕時計じゃ。実に見事じゃあ。
   ここは、わしからも何か贈り物をせんといかんのお。》


「 あ、いえいえ、勿体ないことで御座います。」

《 まあまあ遠慮せんで。おお、そうじゃ。これなんかどうじゃ。》

   すると、小さくて真っ赤な、ざざっ、座布団が僕の体の下に ・・・

《 むふふふ、ピッタリじゃ、一片が八寸の赤い座布団じゃ。
  おまけで、神の紋章を四隅に付けてあげたぞい。金糸でな。
   白と赤で、めでたいのお。

  それに、ここは日本じゃから、空飛ぶ絨毯というのも不似合いじゃ。
  だから、空飛ぶ座布団! こりゃあ~受けるぞい、スミレ様に!

 あっぱれ、あっぱれ、大黒天さっまにっも受っけるぞい~♪
 で、どうじゃ、座り心地は?》

   大山様は、左手に扇子をパタつかせておっしゃいました。

「 それは勿論最高に御座います。
 このような物を賜われるとは無常の喜びに存じまする。」


《 おお、そうかそうか。それは良かった。
  でな、その~気になるんじゃなあ。 
   スミレ様の評価なんじゃがあ~、おぬしは何点と見るかの?
    無礼講じゃあ。遠慮はいらんぞ。》


「 そそそそ、そんな、大それたことなど私、とても・・・」

《 良いと申しておるに。》

「 そうおっしゃいましても・・ん?
 あの、何故ぇ、小声なのでいらっしゃいますか?」

《 大声なら、おぬしも言い難いじゃろ。それにわしも恥ずかしいでの・・・》

  「 そういうものでございますか?」

    《 そういうものなのじゃ。ほれ、わしの耳に。》

       「 了解致しました。」

          《 よく聞こえんぞ。》

            「 これは、失礼を致しました。」

              《 でぇ、どうなのじゃ。》

               「 はあ~~、ん~~。スミレ様は ・・・」

               《 はよう、言わんか。》

               「 よ、四十点位で御座いましょうか?」

             《 四十点はきついのお~。そんなものかのお。》

          「 恐らく、相当厳しい採点になるものかと存知まする。」 

        《 そうであろうのお~。》

    「 もう少し、座布団に工夫が必要と思いまする。」 えっ、おう?

《 おお、ど、どうするのじゃ、それは。》   あ、あの私は、うぶぶ。 

「 それはですな。これを、あ~してこ~して、こんなもので如何でしょう?」

《 それはまた、面白い趣向じゃのう。おぬし只者ではないな。ふふ~ん。》
 
「そうで御座いましょう。むふっ ・・・ あああ、お待ち下さい。
              危険ですので今のは無しということで。」

《 なんじゃあ、急に? 言いだしっぺはおぬしじゃろうが。
  可笑しな奴じゃなあ。

   ん?・・スミレ様 ・・ははあ ・・おお ・・・それは ・・
    ほほほほ、ではお待ちしておりまする。

    おいっ、信造。今スミレ様から御連絡があってな、
    直ぐお出ましなされるそうじゃから、しゃんとせい、しゃんと。》

    「 はは、はいっ、畏まりました。」

   こりゃあ、あかん、いかん、あかん、いかん・・・

《 だあ~まらっしゃい! 気持ちは分かるが落ち着かんか。戯けが。》

   う、うひぃ~~

「 はい、申し訳ございません。」

   うう~、ん、ん? 空の彼方から ピユ~~ッ と、
   金龍のお姿でお出ましで・・御座いますが、どうしてでしょう?

《 おお、お久しぶりですな、大山殿。》  あれっ、男性の声が・・・?

《 ほんに、御久しゅう御座いまする。
 しかし、随分と金属っぽい龍体でいらっしゃいますなあ。》

   あ、そう言えば大山様のおっしゃる通り、金属だ。なんでかな?

《 よく思い出して見られよ。天の岩戸を開いた時の私の姿を ・・・》

《 おおっ、そういえば ・・・ あっ、もしかして、あの神々が絶賛した髪型の「髪飾りの龍」で御座いますな。
とすれば今スミレ様は、後ろをお向きでいらっしゃるということで・・・》
 
《 御名答で御座いますよ。大山殿。》

   ギョギョギョギョ~~~~~ン!



右端の「髪飾りの龍」、 実にしょぼくて大雑把であります。
何故なら、面倒なのでこれ以上細部を描くのは断念致しました。
この黄金製の龍は、スミレの意思でどのようにも動きます。



龍が両手に持っているのは、下記図の「天意の杖」です。
この杖も未完成で、赤青2種類の螺旋表面に
アジチ文字が彫り込まれるデザインとなります。

ちなみにアジチ文字は、モーセの十戒石に彫り込まれたもので、
ヘブライ文字とも共通点が多いのです。
詳しくは、「超図解」 竹内文書 Ⅰ/高坂和導 編著 徳間書店
でお確かめ下さい。

これらはインクスケープというフリーソフトでの作成です。





 むむっ、龍の口からスミレ様の御声が・・・

あああ、そう仰せになると、
金龍の龍体の途中から真っ二つに切り裂くような光が走り、
そのまま左右二体に別れてかっ、髪の毛になり、ひえっ、
徐々に途中で交差をし、尻尾の先がスミレ様の後頭部に繋がった。


《 おおおおお~~、ぶはあ~~っ!》
「 おおおおお~~、ぶはあ~~っ!」


   あれっ、大山様と妙にハモって仰け反った。

   改めて見ると後ろ側は凄過ぎる。
   お口あんぐりであります。


《 ほほほほ、いいハモリ具合ですこと。》


   振り向かれたスミレ様がおっしゃいました。

   すると、大山様に何やらゴニョゴニョと言霊で耳打ちを・・・
   それで、わたくし判決を待ちます ・・・ ゴオ~~ン。


《 ・・・おほほほ、それはそれは、ところで大山殿。
 ミカエル殿は二十五点でしたが、大山殿は五十点で御座います。

 いやはや、龍を模った円座を信造に授けるとは、
 ほんに粋な上にユーモアが効いて御座りまするなあ。

 しかも龍の口に銜くわえているものが筒状の花火とはプッ、
 これでは、まるで鼠花火ならぬ龍花火では御座りませぬか。
 もう可笑しくて堪りません。

 それに、この点数はおちょい様と同じですから、
 誇りに思われて宜しいですぞ。》

 
《 おほ~~、そこまで御喜び頂けるとは、
 わたくし無常の喜びに存じまする。
 くう~~、良かったな信造よ。実はスミレ様、これはですな。》 

   あたあ~~

《 のおのお、細かい事はともかく、わたくし早く空飛ぶ龍の円座花火を
 見たいのですが、宜しいですかのぉ?》 ・・・ いえいえ

《 勿論で御座いますとも。
  しかし、この者はよっぽど回るのが好きと見えますなあ。
   ところで、点火はどうなさります?》

    キターー!・・・蘇るトラウマ!

《 大山殿、実はこの者は花火が大好きなのじゃ、
 じゃから他の者には着けさせんと思いまするぞ。のう、信造。》

「 ぎょ、御意に御座います。
 もう是非ともわたくしに着けさせて下さいませ。」

《 おっほほほほ、こりゃあいいわい。
 物好きにも程があるというものじゃあ。
 ただ、見方を変えれば怖いもの知らずとも取れなくも無い。
 まあ、侍の末裔だから勇猛なのは当然なのかな?》

《 その通りで御座いますぞ大山殿。 あ、そうそう信造よ。
 ほれ、おぬしのお腹のポケットに
 点火装置が入ってある筈だから、探してみよ。》

 「 ぽぽぽぽ、ポケットぉーで御座いますか?
  はあ? お腹を ・・・そんなものは元々ありませんがって?
  あああ、ありました。

  ええ~、てて、点火装置らしき? ん?
  ねずみのぬいぐるみ?・・・が御座いました。」
 
     エエ~ッ、何これ? 

《 何と、先程はポケットなど見当たりませんでしたが、
      流石に大黒天様で御座いまするなあ。》

《 で御座いましょう。それで、その点火装置の商品名は、
「 点火でチュウ!」 なのですよ。面白いでしょう。
 むぷっ、ではさっそく点火を心置きなく、信造よ分かっておろうな。》

   と、とっても優しくおっしゃいました。
    
  「 ははは、はい~。」 なんか震えが ・・・

   しかし、この点火装置とは思えない白鼠のぬいぐるみが、
   両手に石を持っていて? ど、どう使うのか? はて???

《 分からぬか? その鼠が持っている物は、火打石と火打金でな、
「点火してちょうだい、お願い。」 と カワユク 言って、
 導火線に近付けるだけで良いのじゃ。簡単であろう。》 んなぁ~

「 ははは、はい。
 では、かわゆく、て、点火してちょ~だい、おねがい!」

   あ、すると僕より小さいから、
   かなり小さい鼠のぬいぐるみの右手が上に動き、           
   左手に持った火打石目掛けて火打金が振り下ろされ、
   擦れた瞬間火花が散った。

  時代劇で見たのと同じだ。 カチカチッ、チュウ!  わあ、喋った。

 ・・・ 後は導火線に近付けるだけだ ・・・ うぬぬぬぅ ・・・

《 ん~? はようせぬか。
 それとも、またわたくしの手を借りると申すのか?》

   と、スミレ様が急かされた。

「 め、滅相も御座いません。只今、すぐに・・・」

   これ、点火した瞬間におっそろしく回転するんだろうな。 
   左回転で ・・・

     カチカチッ、チュウチュウ!

   おまえの名前はチカチュウとかどうだ? ・・・ チュウチュウ! 
   ハハハ、良かったネェ、はは ・・・ 

                     
《 なんじゃ余裕か? それと~も怖気付いたかあ~あ?
 ( バリッ! ) 扇子を開いた音じゃ。

  侍がっはあ、聞いて呆れるぞっほお♪
   これで~は~、池の中のふ~な~じゃっ、はい鮒侍じゃ♪
    ふなふなっはあ、鮒ははは ~ あ ~~ ヨオーーッ、パチン! 》  

                         おうわっ!


   と、まるで忠臣蔵 「刃傷(にんじょう)、松の廊下」 の場面、
   憎々しい吉良の様な一人芝居でェ・・

   一瞬で黄門様から吉良の衣装に代わっちゃったりしてぇ・・・ はあ

   それで、つまり軽快な節回しの歌舞伎調でおどけて舞って歌われ、
   扇子をパチンと御自分の額に当てられたのでありまするう。

  もう、御見事と言う他御座いません。

  当然、スミレ様は両手を叩いて 満点大笑い です。 くうう ・・・
 私は焦りか血迷ったのか、変に閃きました。

  ・・・ カチカチカチ、チュ~ウ?

「 では、点火の前に辞世の句を一つ・・・
 風さそふ~ 花よりもなほ我はまた~ 春の名残りをいかにとかせん~~!」 
 
   あッ、やな空気が ・・・  エ~~、チュ~ウ。

《 信造殿、全部盗作で御座いますな。
  捻りも無いので三点ですぷっ、点が付いただけ増しであろう。
   では心置きなく存分に。》

    ああ、ささ、三点とは、あったあ。
    行くかチカチュウ! カチカチ、チュウ~~!

「 お心遣い恐縮に存じます。腹が決まりました。
 では、参ります。土門家にいざ出陣!あたたたたぁ!」

    カチカチッ! チュウ! 

       ビシュウゥゥ~~~。 うわあ、一発点火ぁ~~!

    皆様、固唾を飲んで導火線を見つめておられます。

 ユゥ~~~ッ、バッ!!

   ブシュシュシュッ、 ヒュルヒュルビュルルル ・・・・・
     ブシュルルルル、 ビュルルルウウウ~~~  ・ ・ ・


「 あああぶ、まわまわ回って、はぶれれ、
 コメントトトルル~、できん~まぁわせん! あひぃ~~・・・・」

《 うさちゃ~~ん。ぷぷ、もう土門家の住人から目を離しちゃ駄目よ~。
 ヒュウルリ~、ヒュウルリ~~ルラア~~♪ 》

《 回って回って何たらかんたら、う~う、ううう~♪ ・・・
  で御座いましたかな? 
   しかし、良い飛び具合ですなあ~。ガメラみたいだ。

    はらら、本物の竜巻になった。回り過ぎじゃな、むはは ・・・》