潮待小屋

暫定税率は期限切れとなったけれど・・・

 
(2008年4月1日付 亀山日々新聞社説)

 遊漁課税に係る暫定税率を定めた租税特別措置法の期限切れにより、本日より「堤防釣り税」が全国で一斉に引き下げられ、各地の堤防は大勢の釣り人で大盛況となっている。
 外房某港でアジを狙っていたという千葉県在住の男性(45歳)も、「いやあ、助かりますね。これなら釣行回数も増やせそうです。」とホクホク顔だ。

 いわゆる「堤防釣り税」とは、「国民福祉の向上を目的とする優良遊漁施設の整備財源確保に関する法律」に基づき、遊漁の認められた堤防施設を利用する遊漁者(釣り人)に対し施設利用の都度課せられる税金であり、一般に施設使用料等の内訳として徴収されている。
 当初は、戦後の高度経済成長期から安定成長期に移行した昭和50年代、余暇活用に関する国民意識の高まりを受け、国民的レジャーである「釣り」施設を増やして国民の健康増進を図ることを目的として創設された目的税であったが、おりからの貿易黒字と対外経済摩擦に起因する内需拡大圧力を背景として、次第に景気対策のための公共事業財源としてその存在が注目されるようになっていった。
 そのため、昭和60年代以降は全国各地で大規模な堤防釣り施設の整備が政策主導で積極的に推進されるようになり、政府は財源不足を補うために、本来の税率に上乗せする暫定税率を「期間限定」で導入した。
 しかし、その後現在に至るまで、本来有期限であるはずの暫定税率が見直されることはなく、一種の「聖域」として継続されてきたことは周知の通りである。

 「堤防釣り税」に係る議論のャCントは二つある。
一点目は「暫定税率維持の必要性」について、そして二点目は「特定財源の一般財源化の妥当性」についてだ。

 まず、現在の暫定税率維持の必要性であるが、そもそも暫定税率とは、特定の目的のために本来の税率に暫定的に上乗せされたものであり、必要がなくなれば本来の税率に戻すべきものである。恒久的な既得財源と考えるのは正しくない。
 既に国会の議論でも指摘されている通り、これまでに整備されてきた堤防釣り施設の中には、施設利用者数が計画時の見込みを大きく下回り、本当に釣り人がその建設を望んでいたのかどうか疑わしいものも少なくない。
 四方を海に囲まれわが国は、既に世界有数の堤防施設保有国であり、これ以上の新規施設整備の必要性には、釣り人の間からも疑問の声が上がっている。
 地方選出議員の一部からは、低迷する地方経済の底支え、景気対策の観点からも堤防施設整備事業はこれまで通り積極的に推進していく必要があるとの声も出ているというが、そのような目的のために必要性の乏しい施設を新規に造り続けてよいという理屈はない。
 暫定税率の維持を主張する政府与党は、予算策定の前提となっている施設利用者数見通しなどの計画内容の再検証や、過去に整備された施設の実際の利用状況の総括など、まずは「税金の無駄遣い」の有無を徹底的に洗い出し、国民に対してきちんと説明すべきである。そのうえで、現時点において真に必要な財源を確保するための必要最小限の税率に修正して、国民の負担を求めるべきである。
 首相は先日の記者会見で、「暫定税率を引き下げると堤防施設の利用者が増えて、ゴミのャC捨てや水質汚濁など環境被害の増大が懸念される。昨今の世界的な環境保護の流れの中では、国際的な理解が得られない。」と述べたが、一方でその暫定税を財源として行われる堤防施設等整備事業が環境に及ぼす直接・間接のインパクトがどれほどのものであるかについては一切言及がなく、議論のすり替えだとの批判もある。

 次に、「堤防釣り税」の一般財源化の問題である。
 現在の「堤防釣り税」は、「遊漁施設整備特定財源」としてもっぱら堤防釣り施設の整備目的に限って使用されているが、この特定財源を「一般財源」化して、堤防釣り施設整備以外の目的、たとえば沖釣り、磯釣り、砂浜からの投げ釣り、渓流釣りやへら鮒釣りなどに係る施設整備にも流用できるようにしようとするものだ。
 このような一般財源化の議論は、景気低迷による税収不足を背景としてこれまでにも度々行われてきたが、いわゆる「堤防族」議員の抵抗を受けて実現してこなかった。
 首相は、与党内「堤防族」議員の反発を承知で、野党の主張する「一般財源化」の方針を敢えて打ち出し、暫定税率延長に向けた野党との歩み寄りを模索しているが、租税としての本来在るべき姿を考えたとき、はたしてこの「一般財源化」の方向性はいかがなものであろうか。
 「堤防釣り税」は、「受益者負担の原則」に基づき堤防施設利用者に対して課される目的税だ。堤防施設整備以外の目的で使用できる一般財源とするのであれば、受益者負担の原則は崩れ、堤防施設利用者のみがこれを負担する理由は無くなるというべきである。堤防族議員の言い分は、そうした意味では「正論」だ。
 使途を限定せず、遊漁施設整備一般に利用できる財源を確保したいのであれば、所得課税或いは一般消費課税の方法により、磯釣り師や沖釣り師、渓流釣り師などすべての遊漁者(釣り人)が広く応分に負担する「応能負担」税の導入を図るのが「筋」というものではなかろうか。

 一般財源化と引き換えの暫定税率延長は、現在の遊漁課税制度が抱える矛盾を一層増幅して将来に先送りすることにほかならない。
 与野党は、一刻も早く協議のテーブルに着き、この問題についてきちんとした議論をすべきである。
 遊漁課税のあるべき形についてのグランド・デザインを示さないまま、一時的な政局打開を図ったとしても、納税者たる遊漁者(釣り人)の真の理解は得られないであろう。





・・・本日は4月1日、エイプリル・フールであります。

 

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