唯幻論

岸田秀先生の思想である「唯幻論」を紹介する。混迷する現代、世界を読み解く理論は「唯幻論」以外には考えられない。

靖国問題の精神分析

2005年09月03日 | 
靖国問題の精神分析 岸田秀×三浦雅士 新書館 ☆☆☆☆☆

「唯幻論物語」に続いてこれも傑作です。この2冊は史的唯幻論をより理解するための格好のテキストになるでしょう。
この著書は史的唯幻論が過去の歴史ではなく、現在進行形である中国を精神分析しているということで、日中関係を考えるうえでもっとも重要な本です。

 三浦さんは「ものぐさ精神分析 青土社」の編集者であり史的唯幻論の産婆的な方です。名著「官僚病の起源 新書館」の編集者でもあり、その岸田理論の解釈で、靖国神社は日本の腐敗した官僚病の根源であり、唯幻論の思想から言っても、靖国参拝はすべきではないと主張し続けます。(かなり自虐史観の印象を受ける)

 岸田先生の主張は、日本人のアイデンティティとしての靖国神社の性格と、欧米・日本に蹂躙された結果、中国は攻撃者との同一視で大東亜共栄圏思想を持っており、靖国参拝中止は、その誇大妄想(幻想)を日本が共有する事になると主張します。

 以下、「中国、大東亜共栄圏の野望」から引用
岸田「(親日派に関して)彼らは中国より日本が好きで、中国を裏切って日本に味方したわけじゃなくて、それが自分の国のためだと思って日本に協力したわけですよ。(中略)しかし、戦後、中国や朝鮮は、親日派を、あたかも祖国を裏切って、日本のために祖国に背くことを初めから目的としていたものであるかのように裁いたんですよ。それは隠蔽です。(後略)」

岸田「大日本帝国のアジア解放の理想は、敗戦後はインチキだったということになったけれど、公平に見れば真実の要素もあり、その真実の要素に共鳴した朝鮮人や中国人もいたんですよ。」

唯幻論物語

2005年08月30日 | 
唯幻論物語 岸田秀 文春文庫 ☆☆☆☆☆

快刀乱麻を断つごとく、唯幻論の切れ味鋭く、ばったばったと斬りまくる。
斬ったもの

史的唯物論
ラカン
ユング
精神分析関係者多数
歴史学者多数
小谷野敦(泣いて馬謖を斬る、かな?やはり刀の穢れか。)

精神分析関係者、歴史関係者、これから学ぼうとする方には必読書。史的唯幻論を理解する為の必読書。この書は古典になるであろうことを予言しておく。




アメリカの鏡・日本 ヘレン・ミアーズ

2005年08月03日 | 
新版 アメリカの鏡・日本 ヘレン・ミアーズ ☆☆☆☆☆

岸田秀先生のご推薦。
近現代の世界史の教科書にするべき内容である。必読!!

日本の子供は自虐史観を教育されるケースが多く、その洗脳を解くことに時間がかかるという非生産的な教育を行っている。
この本に出逢う事で、まともな歴史認識のスタートに立つ事が出来るであろう。

内容は欧米の植民地主義を模倣をした日本が大東亜共栄圏構想の下に大東亜戦争に突入したというものです。
この本と『日本がアメリカを赦す日』と併読することにより、日本の歴史観はWGIPの呪縛から脱却することができるであろう。

前書きから引用
日本が第1次世界大戦時には「敵」ではなく「同盟国」だったから重要なのである。一つの国がいきなり「友人」から「敵」に代わった理由がわかれば、私たち自身の考えと政策が他国の人々に向けられるとき、それがどのように見えるか、知ることができる。この本の意図は、少なくともその探求を始めることにある。

http://www.sam.hi-ho.ne.jp/s_suzuki/book_mirror.html 

日本人はどこへゆく 岸田秀対談集 青土社

2005年07月26日 | 
岸田先生の新刊は、気が付くといつのまにか書店に並んでいるというケースが多い。出版社はもっと宣伝するように。

あとがき252ページから引用

「あっちで多神教を非難し、こっちで一神教を罵倒して、矛盾しているようであるが、わたしは、基本的には多神教的である日本に、何とか、一神教の欠陥を避けつつ、その利点を採り入れる道はないものかと、虫のいいことを考えているのである。その場合、多神教はいい加減というか、寛容であって、多くの宗教の中の一つの宗教として一神教を容認するのであるが、他の宗教を認めないのが一神教が一神教である所以であるから、一神教は多神教を容認せず、したがって、一神教と多神教のあいだには、お互いに相手の利点を認め合い譲り合うという多神教的妥協は成立しないらしいので、問題は難しい。」
引用終わり

岸田先生は従来のスタンスから一歩踏み込んで、一神教と多神教を唯幻論で調和を模索する立場に立たれたような印象を受けた。私にとっては喜ばしい事である。
世界を理解するには唯幻論的志向しかないと考えるから。

伊丹十三の本

2005年04月27日 | 
新刊『伊丹十三の本 「考える人」編集部編 新潮社』
1960~70年代最高のエッセイスト伊丹十三の全貌

この本を読んで確信した。伊丹さんは自殺ではなく謀殺である。
以前、伊丹さんは自殺ではなく謀殺であるとの自説を述べると、岸田秀先生は根拠を聞かれた。
ネット上で謀殺説がかなりあるので見ていただきたいが、
次回作のテーマが産廃であり、宗教がらみの利権に踏み込みすぎたと言うものが有る。

岸田秀先生には、「唯幻論者は自殺はしないのです。」と根拠を述べたのであるが、この本を読んで確信した。いくつかあるのだが、一番大きな理由は、伊丹さんは奥さんの宮本信子さんを愛しており、子供さんを愛していた事である。
この本には伊丹さんから宮本信子さんへの手書きのラブレター「愛スルノブコ」、また、伊丹さんが亡くなった5年後12月20日に、宮本信子さんが友人を招いたプライベートな会合で、当日を語った「『感謝の会』における挨拶」が収録されており興味深い。この中に亡くなった伊丹さんが「すごい怖い顔」だったとある。さぞ無念だった事であろう。(その後宮本信子さんの一晩の付き添いにより、安らかな顔になったとの事)

伊丹さんが現役のころ、宮本信子さんのテレビでのインタビューを偶然見て、いまでもその内容を鮮明に覚えているのだが、宮本さんは伊丹さんのことを評して「以前はすごくむずかしい人であったが、ある精神分析の先生に出逢って、性格が変わった。大変穏やかになった。」という主旨の話をされた。このテレビ番組を見ながら「ああ、岸田秀先生のことを言ってる」と思ったものである。

この本には岸田秀先生ファンにはなぞの人、先生の奥さんとご夫婦で写真入のインタビューが掲載されている。
伊丹さんの蔵書の写真もあり、もちろん本棚の中に「ものぐさ精神分析」「モノンクル」が写っている。伊丹さんは1977年に「ものぐさ精神分析」に出逢っており、翌年には共著の「保育器の中の大人」が出版されている。この本も伊丹さんを読み解く必読本である。

「ものぐさ精神分析 中公文庫」に掲載されている伊丹さんの解説は、解説としてのオールタイムベストである。この解説はすべての岸田秀ファンを代弁していると考える。

参考HP
http://love.ap.teacup.com/applet/elemental/200408/archive

電波男は唯萌論である

2005年04月18日 | 
「にじげんでも いいぢゃないか をたくだもの とをる」 電波男、帯のコピーから

「ものぐさでも いいぢぁないか 幻想だもの」
「愛が     いいぢぁないか 幻想だもの」  がんこ

  唯萌論 萌的唯幻論序説

私は自分自身をオタクの走りだと理解しているが、この本にはかなりショックを受けた。こういう世界があることは知識的には知っていたが、こういうふうに説明されると絶句してしまって、しばらく考えてしまった。まだ未消化でうまく説明できないのだが旬のものなのでアップする。
人気のある萌えオタクサイト、「しろはた」を主催されている本田透さんの本。けっこう売れているみたい。紀伊国屋にも平積みしてある。

著者の本田透さんは岸田ゼミにもニセ学生として参加していたそう。
内容は「唯幻論」バリバリの「唯萌論」で「ものぐさ精神分析」がメインの理論として引用され、恋愛・オタク・萌えの構造がこれでもかーと説明されている。

体制の恋愛資本主義によって、3次元の恋愛から排除されたオタクは2次元に愛を求めるという内容
体制側の電通、体制に取り込まれた「負け犬」が批判されている。

111ページから引用
彼女たち(負け犬)は、現実と妄想の区別がついていないのだ。いわば「マトリックス」の住人が、自分は現実世界を生きている、と思い込まされているのと同じに。
それに対して、オタクは、恋愛資本主義システムの構造がコードの体系として見えてしまっている。見えるが故に、システム内部で洗脳されながら生きることができない。見えてしまうが故に、「どうせ恋愛が幻想なら、自分自身でその幻想を作り上げた方が楽しい」と結論しているのだ。
引用終わり

この本を読まれる方は、くれぐれも、「あとがき」から読まないように!!この本は「あとがき」を最後に読むように構成されています。(あとがきを袋とじにしたら良かったのに。)

http://ya.sakura.ne.jp/~otsukimi/index.html

純愛カウンセリング

2005年04月15日 | 
先日、「純愛カウンセリング 岡村靖幸 ぴあ」の担当の方(美人編集者Hさん)と花見でお逢いした事もあり、岸田秀先生との対談を読み返してみる。けっこう売れてるそう。

世代が違う事もあり、岡村靖幸さんは知らないのだが、有名なミュージシャンだそう。
私が初めて「ものぐさ精神分析」にであって疑問に思っていたことを思い出した。それが語られている。
後書きのインタビューから引用

編集者「今回の旅で、対談を通して、考え方が変わった出会いというのは、なかったんでしょうか?(中略)岸田さんの著書である『ものぐさ精神分析』は、10代の岡村さんにとっての救いの書ですらありました。」

岡村 「岸田さんは全てにおいて、『全ては幻想である』というスタンスで生きてらっしゃると思うんです。でも、そうであったとしても、ご自分は惚れっぽいと。その答えが聞けたのはすごく嬉しかったですね。人生は、すべてが理屈では無いって事を感じられて、それがすごく良かったです。(後略)』

あの当時、私も、岸田秀先生の恋愛感はどのようなものなのだろうかと疑問に思っていた。
16ページから引用

岸田「女性にけっこう惚れますからね。自分が、ある女性に惚れているという感覚そのものは、実在しているわけですから、その感覚に素直に従っていれば恋愛はできるわけです。ただ、恋愛というものが結局は幻想だということを知っていると、なんと言いますか、フラれた時にあきらめがつきやすいというメリットがあります(笑)。」

岡村「今回、それが一番知りたかったんです。(後略)」


http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4835609735/qid%3D1113560489/250-2648817-8753032