■ ananのマーケティング、丁寧さの積み上げでブレーク!!
こじはる(AKB小島陽菜)の表紙で65万部達成、その裏側は?
はじめに:ananの編集方針について
「新週間フジテレビ批評」(フジテレビ/土曜の朝、5:00の番組)
という番組がある。
フジテレビの放送済み番組をレヴューしながら、
社会トレンドに迫るという趣旨の番組である。
この番組にanan編集長・熊井昌広氏が出演し、
若い女性の感性について触れながら、
ananの女性読者を獲得するノウハウ、考え方について語っていた。
その話、
今のマーケティングパラダイムの変化を、
よく示す話だったので、本稿で紹介することとした。
(後段で紹介)
anan編集長の熊井氏は、雑誌のヒットメーカーである。
番組紹介欄では、熊井氏は以下のように紹介されていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『女性の心をつかむ情報発信術:
創刊から43年、雑誌界をリードする「anan」編集長が語る、
女性読者をひきつける企画術とは』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ananの成功は、
ズバリ「丁寧な作りこみ」に尽きるという。
A.丁寧さの秘訣/その1:特集のタイトルづくり、
特集はその号の売れ行きを左右する。
特にタイトルのつけ方はもろに影響する。
ananの特集タイトルでは、「女性を少しだけ手助けする」感覚を
さり気なく入れることに気配りするという。
■ 例えば、昨年の10月号
・タイトルは、
『自分史上最高の脚とお尻になる』
である。
超ハイなピンヒールの「脚のパーツ」だけのビジュアルが、
いやみなく処理されている。
・特集タイトルの上に、ハート型の吹き出しがある。
そのハートマークの中にさりげなく
「下半身デブ卒業します」、
という小さな文字がはいっている。
・表紙の上部には、「10日で脚とお尻を美しく!」と、
ゴール感、目標達成可能感を漂わす。
・表紙の右横には「美脚NO1、石原さとみ」という文字も入っており、
人気タレントの理想の実例の紹介も忘れない。
■ 長澤まさみの号
・タイトルは、
『美脚、美尻、パーフェクトガイド』
彼女のネームバリューで、
素の表情で、腰まで足を出している表紙は、
かなり女性の本気感に火をつけたようだ。
小さな文字で、「O脚やX脚、たれ尻は直せます!
という少しの脅かしビックリコピーがうまく配置されている。
「美脚と美尻を手に入れる、奇跡のメソッドと下着!」
というソリューションへの予兆感も入っている
■ こじはる(AKB小島陽菜)の号
タイトルは
「感じあう、SEX」
である。
女性が本音で知りたいことをさり気なく、
しかしはっきりと言い切る姿勢が受けたようだ。
表紙の上部には、
「高まる気持ち、深まる関係・・・最高のSEXとは?」
と言い切ったコピーも入っている。
こじはるの紹介で
「小嶋陽菜/無意識のエロティシズム」
という小さな文字も入っている。
AKBのこじはるは大人の女性になっている。
化粧品の広告にもでてAKBの中でも異色の存在である。
彼女を起用しての特集であり、話題を呼んだ。
■ 男性問題を取り上げるときは、
女性誌では珍しく男性のタレント、俳優、アーティストをとりあげる。
福山雅治、長谷部誠、三浦春馬、綾野剛・・・・・・
イケメン、美形をそろえる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
anan のバックナンバーの特集タイトルは以下の通り。
下記のURLからアクセスできる。
http://magazineworld.jp/anan/back/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
No.1856 仕事ができるひと♥ 草なぎ剛
No.1855 癒しものカタログ 三浦春馬
No.1854 自分史上最高の脚とお尻になる
No.1853 手相のすべて 桜井翔
No.1852 漫画と映画と小説 ステキな恋だけ集めました 深田恭子
No.1851 未体験ソウル CNBLUE
No.1850 新しい私へ!イメージチェンジ大作戦 山下智久
No.1849 こうすれば、ひとり暮らしはもっと楽しくなる! 二宮和也
No.1848 SEXYボディは即、できる! 奈々緒
No.1847 誌上カウンセリング ローラ
No.1846 緊急!!アンチエイジング 長瀬智也
No.1845 どっちが幸せ??女の選択 ONE DIRECTION
No.1844 女の重大危機 綾野剛
No.1843 “真のモテ期”に気づいてますか? 玉森裕太
No.1842 女の色気 柏木由紀
No.1840 大人の片思い 相葉雅紀
No.1839 集中ダイエット! 優香
No.1838 あなたの運命、恋、転機
No.1837 復活愛のススメ 綾瀬はるか
No.1836 いい映画名鑑 生田斗真
No.1835 おそうじ&片付け
No.1834 私を救ってくれたのはこのコスメ!
No.1833 男のホンネ 斎藤工
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これらのタイトルと中身をみると、
ananは女性のプチ悩みを、
逃げずに正面から、しかしさり気なくとりあげ、そのプチソリューションを丁寧に説明する、
それも自分の出来る「範囲感」で説明する、
『現実的な女性の生活、仕事のガイド・ノウハウ誌』である。
「プチ」という何となくのキーワードがあるような気がする。
B.丁寧さの秘訣/その2:特集に潜む、女性のこころをグリップする仕掛け
番組の中で事例として紹介された、昨年の10月号の表紙・タイトル。
『自分史上最高の脚とお尻になる』
『下半身デブ卒業します』
には2つのメッセージがこもっている。
理想のタレント、モデルをのせ、
これが理想の脚、お尻だ!
という感覚は非現実的で自分向きのものではない。
自分が出来る範囲で最高の脚、お尻を獲得しようという等身大の支援に徹している
のがananである。
「下半身デブ卒業します」という台詞は、
さり気ない小さな文字表現だが、キチンと女性の痛いところをついている。
一種のブラフである。
自分が何かをきっかけとして動くには、きついことばではっと!させて欲しい、
というプチニーズを汲んでいる。
しかし奥歯をぐりぐりさせるまでの重さにはしない。
この当たりの微妙な差配が重要らしい。
ananを雑誌の売場から取りレジへ行っても、この人は下半身デブだからこの雑誌を買うんだという
ことがばれないように配慮している。
実際には、
レジの人はレジ打ちを淡々とこなしているので、
購入者の心の中、この人はこんなことをしたいんだ!
などと考えてはいないのだが?!
買う女性にしてみれば、
そのようなことを考えていることを人に悟られたくない、恥ずかしい?
と思い込んでいる?との配慮で、文字を小さくしているのである。
・そのような配慮をしてくれる雑誌ってわたしの味方!
と女性読者は考えてくれるのでは?
というところがみそである。
・そのような配慮ができる雑誌は中のつくり込みもきっと丁寧だ、
という感じを抱いてくれると考えているらしい。
実際にananの購入者はそんな小難しいことは考えていないようだ。
しかし、そのようなことを考えていなくても、
何か気配りのゆきとどいたやさしい配慮のある雑誌だ!
という匂いをかいでいるらしいのだ。
女性の独特の感性で、
そのような女性の味方である雑誌に何となく惹かれているようだ。
ここで本音の話がある。(ここが重要なポイント!)
実はananを読んで、ダイエットでも、恋愛でも・・・・・
ノウハウをいろいろ試してみてうまくいくことが、
本当はさほど重要ではない、ということである。
実際は読んだだけ、読んで少しチャレンジしてやめた、失敗した・・・・・・
ような女性がたくさんいてもよいのである。
問題は、友人の間で話題になればよい、
ちょっと試して体感できれば何となく十分!?
という余韻が残ればいいのである。
ananを読んで、
いろいろと考えることが出来た、お試し体験が出来た、
結果として雑誌が相談にのってくれたという感覚がもてれば十分らしいのだ。
実行してキチンと結果がでなければだめ!!
というような雰囲気が出てしまっては、とてもこのような販売部数にはならないと思う。
結果が出ないのは、
自分の努力が足りなかったからと、気軽に考える、
責任は誰にある訳ではない、
一瞬でも自分のプチ悩みのことをしっかり考えられた、
ということが重要なのである。
そのような「罪の無い読後感」がいい感じなのである。
そうなるのは、ananが、
表現、コンテンツともに、丁寧なつくりで女性の琴線に触れているからである。
女性としては、「十分にわたしの気持ちに近づいてきてくれたわ!」
と思ってくれる丁寧さがあるからである。
やってみてうまくいかないから怒る、クレームをつけるという感情になっては、
編集者も読者もしんどくなる。
そうならないような何となくの、さり気なオーラがこの雑誌にはある、
ということが重要である
ananは、実はターゲットを選んでいる。
本気で何かを遂げようと考えている切迫感のある、
コアの人だけがターゲットではだめで、
成功するも、失敗するも、軽い気持ちでそれを迎え入れてくれる人がターゲットでなくてはいけない。
自分のプチ悩み、プチ願望に触れてくれた、
それも丁寧に触れてくれたという感覚がきわめて大切なのである。
女性は雑誌にソリューションを求めているわけではなく、
相談にのって、いやもっと軽く触れてもらいたいのである、
これは普段でも何か悩みはあれば、話を聞いて欲しいのであって、
なにか解決策を言って欲しいのではないという女性の特有の心理があるが、
その当たりの機微をananはうまく突いたといえる。
特に男は、女性からの相談を、
勘違いして、論理的に解決しようと策を述べ始めるが、
それは大きな勘違い!と言うことが往々にしてある。
従って、ananの特集に対する
『解決のコンテンツ(記事・文章・イラスト・・)』は、
「ライト、カジュアルだが、しかし何となくさり気に相談にのっている感の微妙なバランスが重要」
ということになる。
C.丁寧さの秘訣/その3:撮影の妙
話は飛ぶ。
ananでは
カット写真に影をいれるという。
その題材が目に入る本来の置かれた状態(光と影がある状態)にもどす。
但し、相当手間のかかる撮影になる。
平たくペシャッ!とおいて影をカットしてとると、
どんどん撮影でき、生産性があがる、時間が節約できる。
しかし、それでは自然に見えないし写真の中身も映えない。
倍も三倍も時間をかけてリアルに丁寧に撮影する。
このようなつくりこみの丁寧さが、女性には何となく分かるらしい。
ananは何かが違う?と分かるらしい。
このような丁寧さがあるからこそ、
プチ悩みを解決する記事の実質的な中身より、
記事の雰囲気としてのいい感じ(相談感のあるイメージ)が大切よ!
という気持ちで収まってくれる。
実行して見て、実際に目標の、
例えばウエスト55CM(例えばダイエット成功術という特集があったとして・・・)に
到達したかどうかということより、
そのようなダイエット気分にさせてくれてありがとう!
という落としどころが重要というわけだ。
記事がわたしに近づいてきてくれて、それで十分よ!
という気分が重要ということである。
いろいろな要因が重なり合って、
女性は何と無くananを手にとってレジへ向かう!
ことになる。
D.anan のターゲッティング:ananは誰に読んで欲しいのか?
ananのターゲットは20代30代の女性・OLという、
何となく漠然としたデモグラフィックターゲットである。
しかし,よく聞いてみると、
20、30代の『女子』だという。
女子感覚をもった女性、
主婦とか、OLとか、キャリアとかいうことではない。
かわいいものがすき、恋をし、占いが大好きで、
洋服が大好き、トレンディドラマに興味があり、
井戸端会議でキャピキャピしながら話を楽しみ、どんどん脈絡無く?話が展開してゆく、
気がつけば何時間もその店にいて、声も笑い声も大きくなって、
店の人から注意されている感じ?
『元気で、かわいい「女子」の感性を持ち続けている女性』
がターゲットということである、
「自主性をもった、それでいて、背伸びをしない等身大の元気印女子」
といったところがターゲット像のようだ。
そのようなターゲットの感性に近いテーマを選び、
そのようなターゲットの感性に近いタイトルをつけ、
そのようなターゲットの感性に近いコンテンツ、ビジュアルの品質感を大切に、
雑誌をつくっているという。
ananは、『女子のプチ願望』の手助けをする雑誌である。
理想を掲げて、皆をその方向へ引っ張ってゆくのではなく、
読者の自分の手の届く状況へ、すこしだけ手を差し伸べる、
読者目線の雑誌である。
ananは、450円である。
450円を払ってまで読んでくれる女性は大切なお客様である。
情報はSNSで十分取れる時代に,
450円を払ってくれる女性に対して丁寧に紙面をつくる義務がある、
と編集長は述べている。
ananって、
最近何だかいいよね!
という評価が、
編集者冥利につきるという。
ananは、「丁寧さ」という磁力を発して、女性のグッドウィルを獲得している。
E.マーケティングのパラダイム変化とanan
1.まず、ターゲットのパラダイム変化について述べる。
「3つのLS」という概念がある。
「3つのLS」とは、
ライフステージ、ライフスタイルそしてライフスキルである。
今までは、
ライフスキルはライススタイルの一部として処理をされてきたが、
このところ、これがクローズアップされている。
スキルが巧みだと、
どんなライススタイルであっても、どんなライフステージ(家族構成、家族環境)であっても、
生活がよりハッピーになれるという考え方である。
自分のちょっとした努力で生活の満足があがる、
その方法論を語る領域である。
ananはこのライフスキル視点を、
見事にさり気なくついている。
もともと、
女性誌、化粧品の分野はこのライフスキルというマーケ概念を重視してきた業界である。
しかし、今までは、
西洋に追いつけ追い越せという背伸びした考え方・ノウハウのスキル発信が多かった。
ananのライフスキル発信は、
自分の等身大のスキルが大切で、ちょっと努力して、ちょっと幸せになりましょう、
という感覚ものである。
日本の女性のプチしあわせを応援す、初めての女性誌が登場した、
という感じである。
女性の生活プチ願望をつく本音感が、
ananの受けている理由である。
2.情報の獲得、処理のパラダイム変化:
anan制作での情報収集は、ブログ、ツイッターからのものが多いという。
女性の本音が、かなり垣間見れるという。
女性たちが自分の自由意志で井戸端会議的に本音で語ったものは、
女性のインタレストドメインを探る上でかなり参考になるという。
また各号への評価も、
ストラクチュアなアンケートをするよりもよくわかるという。
かゆいところに手が届く、さり気ない雑誌をつくる、
という意識でアンテナを張っていると、
正に女性のかゆいところに手が届くようなポイントに自然と目が留まり、
有機的な情報として蓄積してくるという。
つまり、
女性のかゆいところを丁寧にサポートする、
という『雑誌づくりのマーケティングミッション』を立てていることになる。
そのミッションが共有された瞬間に、
雑誌制作は、それを基点としてまわり始めることになる。
3.マーケティングミッションの意味:
上記のミッションという概念は昔からある。
ここに来て、マーケティングミッションを戦略的に打ち立てることで、
マーケティングがスムーズに回りはじめるケースが増えているように感じる。
ミッションが明確に立つことで、
商品・サービス開発、上市後のブランディングがぶれずに進み、
皆の賞賛を得ることができるということになる。
現代の女性のひとつの典型は、
素の自分を持ち、その個性を大切にしたい人、
そして、かわいく女子的に行きたい人である。
この女子感覚は、
日本の成熟した社会・時代の中の女性の生き方の典型である。
そのような現代の女性に、
欧米のファッション、ライフスタイルを、これが理想です!と
啓蒙するようなバーズアイ的な視点の雑誌は、もう古くなっている。
女性の生活目線にあったインセクトアイ的な視点の雑誌が
よく似合う、受ける時代である。
ananはそこに居場所を得た。
この稿おわり
追記:
MOOK本、
「恋愛できない女たち」も、月9ドラマと連動させて視聴率もよく売れたという。
香里奈、吉高由里子、大島優子のドラマである。
今、女性にアンケートをとると半数近くが恋人がいないという。
以下サイトの紹介文。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20代~30代の未婚女性において、約半数に恋人がいないというアンケート結果がでる今の時代。
恋愛するにも、簡単には踏み出せない女性が増えています。
でも、女性にとってココロにもカラダにも恋愛は必要なんです!
月9ドラマ『私たちが恋愛できない理由』に主演で話題の香里奈さん、吉高由里子さん、大島優子さんら旬の女優が恋愛について語るほか、
恋愛が出来ない理由をテストや恋愛傾向テストで導き増し、対処法へと導きます。
Ananで超話題だった恋愛特集をピックアップ。この一冊を読み込めば、恋愛力アップ確実です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こじはる(AKB小島陽菜)の表紙で65万部達成、その裏側は?
はじめに:ananの編集方針について
「新週間フジテレビ批評」(フジテレビ/土曜の朝、5:00の番組)
という番組がある。
フジテレビの放送済み番組をレヴューしながら、
社会トレンドに迫るという趣旨の番組である。
この番組にanan編集長・熊井昌広氏が出演し、
若い女性の感性について触れながら、
ananの女性読者を獲得するノウハウ、考え方について語っていた。
その話、
今のマーケティングパラダイムの変化を、
よく示す話だったので、本稿で紹介することとした。
(後段で紹介)
anan編集長の熊井氏は、雑誌のヒットメーカーである。
番組紹介欄では、熊井氏は以下のように紹介されていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『女性の心をつかむ情報発信術:
創刊から43年、雑誌界をリードする「anan」編集長が語る、
女性読者をひきつける企画術とは』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ananの成功は、
ズバリ「丁寧な作りこみ」に尽きるという。
A.丁寧さの秘訣/その1:特集のタイトルづくり、
特集はその号の売れ行きを左右する。
特にタイトルのつけ方はもろに影響する。
ananの特集タイトルでは、「女性を少しだけ手助けする」感覚を
さり気なく入れることに気配りするという。
■ 例えば、昨年の10月号
・タイトルは、
『自分史上最高の脚とお尻になる』
である。
超ハイなピンヒールの「脚のパーツ」だけのビジュアルが、
いやみなく処理されている。
・特集タイトルの上に、ハート型の吹き出しがある。
そのハートマークの中にさりげなく
「下半身デブ卒業します」、
という小さな文字がはいっている。
・表紙の上部には、「10日で脚とお尻を美しく!」と、
ゴール感、目標達成可能感を漂わす。
・表紙の右横には「美脚NO1、石原さとみ」という文字も入っており、
人気タレントの理想の実例の紹介も忘れない。
■ 長澤まさみの号
・タイトルは、
『美脚、美尻、パーフェクトガイド』
彼女のネームバリューで、
素の表情で、腰まで足を出している表紙は、
かなり女性の本気感に火をつけたようだ。
小さな文字で、「O脚やX脚、たれ尻は直せます!
という少しの脅かしビックリコピーがうまく配置されている。
「美脚と美尻を手に入れる、奇跡のメソッドと下着!」
というソリューションへの予兆感も入っている
■ こじはる(AKB小島陽菜)の号
タイトルは
「感じあう、SEX」
である。
女性が本音で知りたいことをさり気なく、
しかしはっきりと言い切る姿勢が受けたようだ。
表紙の上部には、
「高まる気持ち、深まる関係・・・最高のSEXとは?」
と言い切ったコピーも入っている。
こじはるの紹介で
「小嶋陽菜/無意識のエロティシズム」
という小さな文字も入っている。
AKBのこじはるは大人の女性になっている。
化粧品の広告にもでてAKBの中でも異色の存在である。
彼女を起用しての特集であり、話題を呼んだ。
■ 男性問題を取り上げるときは、
女性誌では珍しく男性のタレント、俳優、アーティストをとりあげる。
福山雅治、長谷部誠、三浦春馬、綾野剛・・・・・・
イケメン、美形をそろえる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
anan のバックナンバーの特集タイトルは以下の通り。
下記のURLからアクセスできる。
http://magazineworld.jp/anan/back/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
No.1856 仕事ができるひと♥ 草なぎ剛
No.1855 癒しものカタログ 三浦春馬
No.1854 自分史上最高の脚とお尻になる
No.1853 手相のすべて 桜井翔
No.1852 漫画と映画と小説 ステキな恋だけ集めました 深田恭子
No.1851 未体験ソウル CNBLUE
No.1850 新しい私へ!イメージチェンジ大作戦 山下智久
No.1849 こうすれば、ひとり暮らしはもっと楽しくなる! 二宮和也
No.1848 SEXYボディは即、できる! 奈々緒
No.1847 誌上カウンセリング ローラ
No.1846 緊急!!アンチエイジング 長瀬智也
No.1845 どっちが幸せ??女の選択 ONE DIRECTION
No.1844 女の重大危機 綾野剛
No.1843 “真のモテ期”に気づいてますか? 玉森裕太
No.1842 女の色気 柏木由紀
No.1840 大人の片思い 相葉雅紀
No.1839 集中ダイエット! 優香
No.1838 あなたの運命、恋、転機
No.1837 復活愛のススメ 綾瀬はるか
No.1836 いい映画名鑑 生田斗真
No.1835 おそうじ&片付け
No.1834 私を救ってくれたのはこのコスメ!
No.1833 男のホンネ 斎藤工
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これらのタイトルと中身をみると、
ananは女性のプチ悩みを、
逃げずに正面から、しかしさり気なくとりあげ、そのプチソリューションを丁寧に説明する、
それも自分の出来る「範囲感」で説明する、
『現実的な女性の生活、仕事のガイド・ノウハウ誌』である。
「プチ」という何となくのキーワードがあるような気がする。
B.丁寧さの秘訣/その2:特集に潜む、女性のこころをグリップする仕掛け
番組の中で事例として紹介された、昨年の10月号の表紙・タイトル。
『自分史上最高の脚とお尻になる』
『下半身デブ卒業します』
には2つのメッセージがこもっている。
理想のタレント、モデルをのせ、
これが理想の脚、お尻だ!
という感覚は非現実的で自分向きのものではない。
自分が出来る範囲で最高の脚、お尻を獲得しようという等身大の支援に徹している
のがananである。
「下半身デブ卒業します」という台詞は、
さり気ない小さな文字表現だが、キチンと女性の痛いところをついている。
一種のブラフである。
自分が何かをきっかけとして動くには、きついことばではっと!させて欲しい、
というプチニーズを汲んでいる。
しかし奥歯をぐりぐりさせるまでの重さにはしない。
この当たりの微妙な差配が重要らしい。
ananを雑誌の売場から取りレジへ行っても、この人は下半身デブだからこの雑誌を買うんだという
ことがばれないように配慮している。
実際には、
レジの人はレジ打ちを淡々とこなしているので、
購入者の心の中、この人はこんなことをしたいんだ!
などと考えてはいないのだが?!
買う女性にしてみれば、
そのようなことを考えていることを人に悟られたくない、恥ずかしい?
と思い込んでいる?との配慮で、文字を小さくしているのである。
・そのような配慮をしてくれる雑誌ってわたしの味方!
と女性読者は考えてくれるのでは?
というところがみそである。
・そのような配慮ができる雑誌は中のつくり込みもきっと丁寧だ、
という感じを抱いてくれると考えているらしい。
実際にananの購入者はそんな小難しいことは考えていないようだ。
しかし、そのようなことを考えていなくても、
何か気配りのゆきとどいたやさしい配慮のある雑誌だ!
という匂いをかいでいるらしいのだ。
女性の独特の感性で、
そのような女性の味方である雑誌に何となく惹かれているようだ。
ここで本音の話がある。(ここが重要なポイント!)
実はananを読んで、ダイエットでも、恋愛でも・・・・・
ノウハウをいろいろ試してみてうまくいくことが、
本当はさほど重要ではない、ということである。
実際は読んだだけ、読んで少しチャレンジしてやめた、失敗した・・・・・・
ような女性がたくさんいてもよいのである。
問題は、友人の間で話題になればよい、
ちょっと試して体感できれば何となく十分!?
という余韻が残ればいいのである。
ananを読んで、
いろいろと考えることが出来た、お試し体験が出来た、
結果として雑誌が相談にのってくれたという感覚がもてれば十分らしいのだ。
実行してキチンと結果がでなければだめ!!
というような雰囲気が出てしまっては、とてもこのような販売部数にはならないと思う。
結果が出ないのは、
自分の努力が足りなかったからと、気軽に考える、
責任は誰にある訳ではない、
一瞬でも自分のプチ悩みのことをしっかり考えられた、
ということが重要なのである。
そのような「罪の無い読後感」がいい感じなのである。
そうなるのは、ananが、
表現、コンテンツともに、丁寧なつくりで女性の琴線に触れているからである。
女性としては、「十分にわたしの気持ちに近づいてきてくれたわ!」
と思ってくれる丁寧さがあるからである。
やってみてうまくいかないから怒る、クレームをつけるという感情になっては、
編集者も読者もしんどくなる。
そうならないような何となくの、さり気なオーラがこの雑誌にはある、
ということが重要である
ananは、実はターゲットを選んでいる。
本気で何かを遂げようと考えている切迫感のある、
コアの人だけがターゲットではだめで、
成功するも、失敗するも、軽い気持ちでそれを迎え入れてくれる人がターゲットでなくてはいけない。
自分のプチ悩み、プチ願望に触れてくれた、
それも丁寧に触れてくれたという感覚がきわめて大切なのである。
女性は雑誌にソリューションを求めているわけではなく、
相談にのって、いやもっと軽く触れてもらいたいのである、
これは普段でも何か悩みはあれば、話を聞いて欲しいのであって、
なにか解決策を言って欲しいのではないという女性の特有の心理があるが、
その当たりの機微をananはうまく突いたといえる。
特に男は、女性からの相談を、
勘違いして、論理的に解決しようと策を述べ始めるが、
それは大きな勘違い!と言うことが往々にしてある。
従って、ananの特集に対する
『解決のコンテンツ(記事・文章・イラスト・・)』は、
「ライト、カジュアルだが、しかし何となくさり気に相談にのっている感の微妙なバランスが重要」
ということになる。
C.丁寧さの秘訣/その3:撮影の妙
話は飛ぶ。
ananでは
カット写真に影をいれるという。
その題材が目に入る本来の置かれた状態(光と影がある状態)にもどす。
但し、相当手間のかかる撮影になる。
平たくペシャッ!とおいて影をカットしてとると、
どんどん撮影でき、生産性があがる、時間が節約できる。
しかし、それでは自然に見えないし写真の中身も映えない。
倍も三倍も時間をかけてリアルに丁寧に撮影する。
このようなつくりこみの丁寧さが、女性には何となく分かるらしい。
ananは何かが違う?と分かるらしい。
このような丁寧さがあるからこそ、
プチ悩みを解決する記事の実質的な中身より、
記事の雰囲気としてのいい感じ(相談感のあるイメージ)が大切よ!
という気持ちで収まってくれる。
実行して見て、実際に目標の、
例えばウエスト55CM(例えばダイエット成功術という特集があったとして・・・)に
到達したかどうかということより、
そのようなダイエット気分にさせてくれてありがとう!
という落としどころが重要というわけだ。
記事がわたしに近づいてきてくれて、それで十分よ!
という気分が重要ということである。
いろいろな要因が重なり合って、
女性は何と無くananを手にとってレジへ向かう!
ことになる。
D.anan のターゲッティング:ananは誰に読んで欲しいのか?
ananのターゲットは20代30代の女性・OLという、
何となく漠然としたデモグラフィックターゲットである。
しかし,よく聞いてみると、
20、30代の『女子』だという。
女子感覚をもった女性、
主婦とか、OLとか、キャリアとかいうことではない。
かわいいものがすき、恋をし、占いが大好きで、
洋服が大好き、トレンディドラマに興味があり、
井戸端会議でキャピキャピしながら話を楽しみ、どんどん脈絡無く?話が展開してゆく、
気がつけば何時間もその店にいて、声も笑い声も大きくなって、
店の人から注意されている感じ?
『元気で、かわいい「女子」の感性を持ち続けている女性』
がターゲットということである、
「自主性をもった、それでいて、背伸びをしない等身大の元気印女子」
といったところがターゲット像のようだ。
そのようなターゲットの感性に近いテーマを選び、
そのようなターゲットの感性に近いタイトルをつけ、
そのようなターゲットの感性に近いコンテンツ、ビジュアルの品質感を大切に、
雑誌をつくっているという。
ananは、『女子のプチ願望』の手助けをする雑誌である。
理想を掲げて、皆をその方向へ引っ張ってゆくのではなく、
読者の自分の手の届く状況へ、すこしだけ手を差し伸べる、
読者目線の雑誌である。
ananは、450円である。
450円を払ってまで読んでくれる女性は大切なお客様である。
情報はSNSで十分取れる時代に,
450円を払ってくれる女性に対して丁寧に紙面をつくる義務がある、
と編集長は述べている。
ananって、
最近何だかいいよね!
という評価が、
編集者冥利につきるという。
ananは、「丁寧さ」という磁力を発して、女性のグッドウィルを獲得している。
E.マーケティングのパラダイム変化とanan
1.まず、ターゲットのパラダイム変化について述べる。
「3つのLS」という概念がある。
「3つのLS」とは、
ライフステージ、ライフスタイルそしてライフスキルである。
今までは、
ライフスキルはライススタイルの一部として処理をされてきたが、
このところ、これがクローズアップされている。
スキルが巧みだと、
どんなライススタイルであっても、どんなライフステージ(家族構成、家族環境)であっても、
生活がよりハッピーになれるという考え方である。
自分のちょっとした努力で生活の満足があがる、
その方法論を語る領域である。
ananはこのライフスキル視点を、
見事にさり気なくついている。
もともと、
女性誌、化粧品の分野はこのライフスキルというマーケ概念を重視してきた業界である。
しかし、今までは、
西洋に追いつけ追い越せという背伸びした考え方・ノウハウのスキル発信が多かった。
ananのライフスキル発信は、
自分の等身大のスキルが大切で、ちょっと努力して、ちょっと幸せになりましょう、
という感覚ものである。
日本の女性のプチしあわせを応援す、初めての女性誌が登場した、
という感じである。
女性の生活プチ願望をつく本音感が、
ananの受けている理由である。
2.情報の獲得、処理のパラダイム変化:
anan制作での情報収集は、ブログ、ツイッターからのものが多いという。
女性の本音が、かなり垣間見れるという。
女性たちが自分の自由意志で井戸端会議的に本音で語ったものは、
女性のインタレストドメインを探る上でかなり参考になるという。
また各号への評価も、
ストラクチュアなアンケートをするよりもよくわかるという。
かゆいところに手が届く、さり気ない雑誌をつくる、
という意識でアンテナを張っていると、
正に女性のかゆいところに手が届くようなポイントに自然と目が留まり、
有機的な情報として蓄積してくるという。
つまり、
女性のかゆいところを丁寧にサポートする、
という『雑誌づくりのマーケティングミッション』を立てていることになる。
そのミッションが共有された瞬間に、
雑誌制作は、それを基点としてまわり始めることになる。
3.マーケティングミッションの意味:
上記のミッションという概念は昔からある。
ここに来て、マーケティングミッションを戦略的に打ち立てることで、
マーケティングがスムーズに回りはじめるケースが増えているように感じる。
ミッションが明確に立つことで、
商品・サービス開発、上市後のブランディングがぶれずに進み、
皆の賞賛を得ることができるということになる。
現代の女性のひとつの典型は、
素の自分を持ち、その個性を大切にしたい人、
そして、かわいく女子的に行きたい人である。
この女子感覚は、
日本の成熟した社会・時代の中の女性の生き方の典型である。
そのような現代の女性に、
欧米のファッション、ライフスタイルを、これが理想です!と
啓蒙するようなバーズアイ的な視点の雑誌は、もう古くなっている。
女性の生活目線にあったインセクトアイ的な視点の雑誌が
よく似合う、受ける時代である。
ananはそこに居場所を得た。
この稿おわり
追記:
MOOK本、
「恋愛できない女たち」も、月9ドラマと連動させて視聴率もよく売れたという。
香里奈、吉高由里子、大島優子のドラマである。
今、女性にアンケートをとると半数近くが恋人がいないという。
以下サイトの紹介文。
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20代~30代の未婚女性において、約半数に恋人がいないというアンケート結果がでる今の時代。
恋愛するにも、簡単には踏み出せない女性が増えています。
でも、女性にとってココロにもカラダにも恋愛は必要なんです!
月9ドラマ『私たちが恋愛できない理由』に主演で話題の香里奈さん、吉高由里子さん、大島優子さんら旬の女優が恋愛について語るほか、
恋愛が出来ない理由をテストや恋愛傾向テストで導き増し、対処法へと導きます。
Ananで超話題だった恋愛特集をピックアップ。この一冊を読み込めば、恋愛力アップ確実です。
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