■ユニクロ銀座旗艦店、ユニクロ大変貌の証し?その意味とは!
ユニクロ銀座旗艦店がお披露目された。
そこにユニクロの現状の光と影をみた!
A.ユニクロ銀座店の意味?:
3月16日。
ユニクロ銀座店がオープンした。
世界のユニクロになるためのシンボリックな店、
という。
グローバルで、強豪(競合)に伍してゆくには、国内で圧倒的なNO1になる必要がある。
そのための宣戦布告という。
ユニクロは、国内でみると、
一店舗あたりの売場面積は増えているものの、
その売場効率(単位平米当りの売上高)は年々落ちてきている。
そこでユニクロはグローバルに活路を見出している。
一見して派手な動きであり、もてはやされてはいるが、
なかなか苦しい展開ともいえる。
銀座ユニクロは年間100億円をねらう!
新店長も交えての会見で、柳井CEOが思い切った発言をした。
普段の会見では、売り上げ予想はしないという。
今回は、新店長のいる前で100億円と宣言した。
意気込みを感じさせる言葉である。
ユニクロ銀座店。
横にアバクロ、前にH&M、ZARA、少し外れてGAPと
「FF」(ファストファッション)がひしめいている。
グローバルに見ると、カジュアファション分野ではユニクロは第4位である。
後塵を拝している。
現状、ユニクロの海外点は236店で売り上げは1000億円。
一気に一兆円企業を目指す。
銀座店はその意気込みを示すフラッグシップの店だという。
日本のカジュアルファッション企業の「雄」が、
外国勢と伍して戦う姿は、
今どきの冴えない時代・社会において、元気をもらえる感じである。
エールを送りたい気持ちである。
今は、話題先行で勢いがあるが、
ユニクロ銀座店には心配な点も・・・・・?
心配な点1:
ユニクロ銀座店の目標100億円は素人目からしても無理がありそうだ。
周囲との競合が激しすぎる。
心配な点2:
新店舗は12フロアーで、意外と使いにくい感じがありそうだ。
階が変わればフロアコンセプトを変えて、
店舗全体のメリハリをつけることになるが、
複層階の使い勝手性は決してよくない。
ワンフロアーでのびのびしている方が迫力があり、
品揃え感が演出でき回遊しやすく見やすい、
というのが、
不特定客を吸引し、客単価を上げるタイプの業態の定石である。
広いフロアでこそ、
セレクション(選択)におけるCSが高まり、結果最終の買物CSも高くなる。
ホームセンターでは、2F建ての店ははやらないという。
だだっ広いワンフロアーの方が使いやすく繁盛するというのも、
この理屈である。
固定客で成り立ち、
一見さんお断り的な高級ファッションの店なら、
あまり気にする必要のない話である。
心配な点3:
今は話題となっているが、
時間の経過とともに人々の関心は薄れていく。
実際に、銀座の他のFFもそのような感じになっている。
開店時の熱気はどうしてもなくなる。
時間の経過とともに、
実務的な「商品」、「売り」、「商品回転」の技が求められる。
真の実力が試されることになる。
ユニクロも話題だけではもたない。
以前のブログでも触れたように、
銀座は、最近とみに活気のある街区になっている。
超有名ブランド店の開設、銀座三越の増床、有楽町・阪急メンズ館、ルミネの開店、そしてFFの進出、
と話題に事欠かない。
ソフトバンクの旗艦店も、ユニクロのすぐ近くにオープンして話題となっている。
銀座は、小売戦争のメッカになったというより、
旬の話題満載の街になっている。
ダイナミックな銀座でのユニクロ新店舗は、
いろいろな意味で面白いことになりそうだ。
そんな予感がする。
B.ユニクロ銀座店のUSPについて:
USPとは、
ユニークセリングプロポジション/ユニークセールスポイントのこと、
商品、企業の独自の価値を示す言葉だ。
ユニクロ銀座店のUSPとは?
店内構成のコンセプトがそのUSPを物語っている。
・実用―エンタメ、
・子供―大人
・メンズ―ウイメンズ
・遊び―フォーマル
・単独―コラボ
・定番―実験
・フラッグシップ―実需
・流行―コンサバ
・オーソドクス―フロンティア
といろいろな要素が「おもちゃ箱」のように詰まっている店である。
実に多様な価値観を表現している。
ユニクロ銀座店のコンセプト。
それは筆者の考えでは、
「何かありそうな予感」、
となる。
従来のユニクロとは違う、
世界に、未来に打って出ようとする意気込みを籠めた店、
ということになる。
1F:
ウェルカムゲートと呼ばれるコンシェルジェフロアー。
充実した案内サービスがある。
6カ国語対応で外国のお客様へも対応できる。
アジア系の旅行者への売り上げも見込んでいる。
場合によっては、
店内同行案内、銀座の街区案内もしてくれる。
コーデネートされたマネキンが並び、
どの階に何が展示されているかがわかる。
目次代わりのフロアーになっている。
2F、3F:シーズンセレクションズ
4、5、6F:ウィメンズ
7F:キッズフロアー
保育士の社員がいる。
フロアーはやわらかいマットでカラフルな色使いである。
棚の角は、
子供に危険がないようまるくなっている。
子供の目線で服に触れられるように、かなり低くなっている。
8、9F:メンズ
10F:ハイブランド・アンダーカバーとのコラボフロアー
11F:UTフロア
300種類のTシャツが展示されている。国内最大級の品揃えである。
開店キャンペーン中は990円である。
企業、キャラクター、アート日曜雑貨等が奔放にデザインされて、
従来のユニクロとは異なる雰囲気をかもし出している。
12F:情報発信フロアー
集英社の9つの雑誌とコラボして、各雑誌の編集長が、
今年のコーディネートを提案している。
MORE、NON・NO、LEE・・・・・等々とのコラボである。
今の時期なかなか春めいて、初夏らしくいい感じのデザインが並ぶ。
複層階の店舗で、
コンセプトのメリハリをつけやすくなっており、面白い店づくりになっている。
但し、実用的なユニクロの服を買いに来た人が、
欲しい服を探すとになると、
複層階に渡る、多様なコンセプトで構成された店の使い勝手は、
どう評価されるだろうか?
C.ユニクロという企業の価値とは:
なぜユニクロは皆から一目おかれる存在になったのか?
3つぐらいの本質的な価値がありそうだ。
価値1:
「合理的パフォーマンス」という価値
銀座店の開店オープンのチラシを見ると、最高価格が4990円で四桁の数字が踊る。
大体1990円、2990円という価格である。
このようなSPA的な大量生産・大量販売的で低価格帯の店が、
堂々と銀座の目抜き通りに開店することは、
以前では考えられなかった。
百貨店、専門店が、
季節の終盤でセールをさりげなくやる感覚はあったが、
いわば品のいいセールの範囲であった。
(実際は特売そのもの、在庫品の一掃セールなのだが)
ユニクロは前面に画一性と低価格が押し出されている。
もちろん周囲の外資のFFも安い価格帯を得意としている。
しかし、外国イメージ、斬新なデザインテーストで、
単純なスーパー衣料の特売というイメージからは何とか逃れている。
ユニクロの場合はどうだろうか?
ユニクロは、今、流行のFFとはやや一線を画している。
メーカー的な発想のSPAである。
SPAは、Speciality Store Retailer of Private Label Apparel の頭文字からくる。
ユニクロは、自分で100%つくって100%自分の店で売っている。
製造小売業である。
「製造」というニュアンスが、
特に色濃く残っているタイプのSPAと考えられる。
ユニクロモデルは、SPAの特徴を活かした典型的なビジネスモデルである。
SPAの本質である、
「低コスト」、「自社責任品質」、「独自のデザインテースト」の3本柱をキチンと立てている。
機能では、フリース、ヒートテックなど製造業らしい技術開発力を示し、
デザインは媚びへつらうことがない、極めて実用的なもので勝負している。
ユニクロは、
いわゆるファッションブランドではなく、また単純なPOPカジュアルでもない。
シンプルな実務的な機能美を持ったNEO・カジュアルファッションである。
ファッション製品ではなく、工業製品といった方が近い。
工業製品といえば、車、家電である。
車は自分でつくり、自分の看板をだした店舗で打っている。
昔の家電も自社の家電専門店で売っていた。
ユニクロは、
そのような典型的な「専門品ビジネスモデル」に近い、
と発想すれば、
その本質がかなり見えてくる。
即ち大量につくり大量に売る、
そして品質、性能を落とすことなく、
価格も出来るだけ安くするという
ビジネスモデルになっている。
従って、価格の安さもチープということには繋がらない。
「合理的で、高いコストパフォーマンスがある」
というイメージに繋がってくる。
しかし、ブランドファッションの世界では異端である。
一部の高級ファッションから見れば、
価格が安い、画一的な、実用的なデザイン、
という風に見られてしまう。
一種の宿命でもある。
ユニクロの、従来のファッション業界を「創造的に破壊する(シュンペーター提唱)」スタンスが、
今後、銀座という街のなかでどう評価されていくのか?
見ものである。
価値の2:
ロングテール産業という価値。
ファッション会社は、個人がガレージ(自宅の一角)で開業できる。
デザインセンスとミシンがあればOKである。
ITベンチャーがもてはやされる以前から、
ファッション業界はベンチャーのるつぼであった。
NHK、朝の連ドラ「カーネーション」で話題になった、
「コシノジュンコさんの母親」の物語も
いわばガレージビジネスそのものである。
ファッション業界は、
ごくごく小さなファッション企業がひしめき合い、
独自のデザインで世に出ようと頑張っている。
ユニクロは、
実用的なカジュアルファッションアイテムを大量生産し
小売まで含めて対応している。
ユニクロを冷静に見ると、
低コストの大量生産、大量販売の典型的な、旧来の高度成長型モデルともいえる。
ユニクロに対しての評価はいろいろある。
周囲の人の着ている服がユニクロだらけで嫌だ、
というファッション特有のネガティブ意識が根強くある。
ユニクロは、あくまでも家着で、家の周囲の生活圏の、学生なら学校行動圏のファッション、
という評価もある。
それが銀座に出展して、旗艦店と称することには何か違和感を感じる、
という評価になる。
銀座というファッションのメッカ、聖地に旗艦店をもちたい、
という自己満足ではないのか?
というやっかみ的な声もある。
ユニクロは合理的な品質感・機能とコストの両面で勝負している。
ファッション性はその機能からくる機能美と微妙にリンクしている。
普通の安売りFFとは違う、と判断される。
従って、ちゃらちゃらしたFFブランドとは違う、
という側面がある。
ユニクロは、
ガレージビジネス的な色合いを残し、
ベンチャー的なイメージを保持している。
いくら大きくなっても、
「いつまでもベンチャーでいるという意気込みを持ち挑戦してゆく」
それがユニクロの価値である。
一所懸命、何かを作り社会に訴えかけようとしているイメージがあり、
「大量」というマスイメージから距離を置くことに成功している。
そのような特異なイメージだからこそ、
生活者が何らかのシンパシーを持ち、
あれだけの売り上げ・ファンが獲得できたということになる。
ユニクロの評価は、人によりダイナミックに上下する。
評価がまちまちである。
これも成長企業のエネルギッシュな側面である。
価値の3:
ユニクロの最もユニークな価値。
それは、柳井CEOというオーナーの存在である。
昔の本田宗一郎、松下幸之助といった大創業者といった趣が出てきている。
一種のクセ(=カリスマ性)を持っている。
価値の1、2、3で見たように、
ユニクロブランドは、
つかみどころの無い、新鮮で多様な価値を持っている。
と同時に旧来のビジネスモデル価値も合わせもった
複雑な価値群で出来ている。
単に家着を安く売っている店ではない、
ことだけは間違いのない事実である。
D.最後に/ユニクロの寄ってたつ環境とは:
FF(ファストファッション)の本質が、ユニクロを存在せしめている。
ユニクロがここまで繁盛している、その背景・環境について押さえておく。
FFがはやっている、
という時代・社会なくして、ユニクロの繁栄はない。
今、FFが大流行である。
因みにFFがなぜ持てはやされるのだろうか?
以下、その理由である。
・まず、何といっても絶対価格が低い。
・服はいろいろと着まわす、重ね着する、従って安くていろいろなアイテムをたくさん持ちたいというニーズがある。
・服はあきる、一回も着ないことも、また一回きて飽きてしまうことも、棚の奥にしまって、着ないで過ぎてしまうこともある。
要は、もったいないことが多い。
それなら安くていろいろな種類が買えるFFが便利
・自分のお気に入りでマストアイテムが見つかるまでの道のりでは、いろいろと試さないといけない。
それにはFFの低価格・高回転感がうってつけ。
・世の中全体に、いいものをしっかり買って、きちんと着て、
という感覚がなくなってきている。
成熟時代の必然である。使いまわし感、ディスポーザブル感が横溢している。
・自分の好みもどんどん変わる。
流行もかわる、他人の目線も評価もかわる。
従って安くていろいろなアイテムが揃うFFはうってつけ
等々の理由でFFがはやる。
FFという業態は間違いなく時代の子である。
時代という環境がつくりあげた企業である。
余談になるが、
われわれビジネスパースンがユニクロに親しみを抱くのは、
なぜだろうか?
日本の高度成長時代の代表的な業種、生活を豊かにしてきた業種、
車、家電的なビジネスモデルを踏襲しており、
それが匂ってくるからこそ親近感を抱いてしまうのだろうか?
また、日本を戦後牽引し、日本経済を復活世界の経済大国にてきた、
ホンダ、ソニー、パナソニックの創業カリスマ経営者たちへの憧憬を
柳井氏に感じているからだろうか?
このあたりの微妙なユニクロの醸し出す雰囲気が、
皆をひきつけているのかもしれない。
この稿おわり
追記1:
ユニクロ銀座で杞憂に終わってほしいこと
1.ユニクロ銀座店は入店するビルの選択を間違っていたのではないか。
ワンフロアあたりの面積が狭すぎる?
2.銀座という街で、FFをを仕掛けること、本当はしんどかったのではないか?
銀座では結局はカジュアルな店は淘汰されてしまう?
その街のもつPOP(point of parity/らしさ感)から見て、
銀座はユニクロの本領が発揮できる街ではない?
という心配が杞憂に終わるように頑張ってほしい。
そういえば銀座にはソフトバンクもビッグな店舗を出した。
その近くにユニクロのもう一段下の価格帯の店GU(ジーユー)もできた。
何と、最高価格は2990円で、ほとんどが3桁である。
銀座で価格破壊をやろうとしている。
AKBの前田敦子の広告で勝負を掛けている。
このGUがどこまで続くのか?
注目したい。
過去、ユニクロは、従来より上の価格帯でデザイン性を基調にしたファッションを展開して失敗した。
ユニクロから高級ファッションは連想できない。
そのブランドがユニクロとわかった瞬間からブランドの価値は減耗してゆく。
高価格帯は個人のテーストが大事にされる。
ユニクロで服を買うように、
出たとこ勝負で衝動的に、取りあえずこれでいいか?という感覚の買物はできない。
SPAというビジネスモデルはユニクロで花開いたモデルだが、
高級ブランド展開には向かない。
むしろジーユーの方がユニクロのビジネスモデルにあっている。
しかし、銀座店はどうなるか?
実際はなかなか厳しいかもしれない。
追記2:ユニクロと株価
今、日経平均が上昇している。
10、000円を超えた。
ユニクロは年初来上昇している。
計算では、ユニクロの株価上昇が、日経平均上昇の150円分に相当しているという。
現在のユニクロの時価総額は1兆8500億円でパナソニック、ソニーよりも大きい。
勝手の日本経済を牽引してきたアセンブリーの総合電気、車が振るわない。
替わって、今まで典型的なドメスティック企業とされた流通、食品が気を吐いている。
追記3:ユニクロの今後
ユニクロのうまれ故郷、日本マーケットにおいて、
半端ではない差でNO1になることの意味は大きい。
厳しい日本の消費者に、サービス品質を磨いてもらう、
GDP、NO3のマーケットで斬新な商品開発を進めていく、
という。
しかし量の拡大と利益の最大化は海外で実現する、
ときわめてドライだ。
ユニクロ。
柳井CEOのバイタリティは、
日本をどこへ連れて行くのだろか?!
ユニクロ銀座旗艦店がお披露目された。
そこにユニクロの現状の光と影をみた!
A.ユニクロ銀座店の意味?:
3月16日。
ユニクロ銀座店がオープンした。
世界のユニクロになるためのシンボリックな店、
という。
グローバルで、強豪(競合)に伍してゆくには、国内で圧倒的なNO1になる必要がある。
そのための宣戦布告という。
ユニクロは、国内でみると、
一店舗あたりの売場面積は増えているものの、
その売場効率(単位平米当りの売上高)は年々落ちてきている。
そこでユニクロはグローバルに活路を見出している。
一見して派手な動きであり、もてはやされてはいるが、
なかなか苦しい展開ともいえる。
銀座ユニクロは年間100億円をねらう!
新店長も交えての会見で、柳井CEOが思い切った発言をした。
普段の会見では、売り上げ予想はしないという。
今回は、新店長のいる前で100億円と宣言した。
意気込みを感じさせる言葉である。
ユニクロ銀座店。
横にアバクロ、前にH&M、ZARA、少し外れてGAPと
「FF」(ファストファッション)がひしめいている。
グローバルに見ると、カジュアファション分野ではユニクロは第4位である。
後塵を拝している。
現状、ユニクロの海外点は236店で売り上げは1000億円。
一気に一兆円企業を目指す。
銀座店はその意気込みを示すフラッグシップの店だという。
日本のカジュアルファッション企業の「雄」が、
外国勢と伍して戦う姿は、
今どきの冴えない時代・社会において、元気をもらえる感じである。
エールを送りたい気持ちである。
今は、話題先行で勢いがあるが、
ユニクロ銀座店には心配な点も・・・・・?
心配な点1:
ユニクロ銀座店の目標100億円は素人目からしても無理がありそうだ。
周囲との競合が激しすぎる。
心配な点2:
新店舗は12フロアーで、意外と使いにくい感じがありそうだ。
階が変わればフロアコンセプトを変えて、
店舗全体のメリハリをつけることになるが、
複層階の使い勝手性は決してよくない。
ワンフロアーでのびのびしている方が迫力があり、
品揃え感が演出でき回遊しやすく見やすい、
というのが、
不特定客を吸引し、客単価を上げるタイプの業態の定石である。
広いフロアでこそ、
セレクション(選択)におけるCSが高まり、結果最終の買物CSも高くなる。
ホームセンターでは、2F建ての店ははやらないという。
だだっ広いワンフロアーの方が使いやすく繁盛するというのも、
この理屈である。
固定客で成り立ち、
一見さんお断り的な高級ファッションの店なら、
あまり気にする必要のない話である。
心配な点3:
今は話題となっているが、
時間の経過とともに人々の関心は薄れていく。
実際に、銀座の他のFFもそのような感じになっている。
開店時の熱気はどうしてもなくなる。
時間の経過とともに、
実務的な「商品」、「売り」、「商品回転」の技が求められる。
真の実力が試されることになる。
ユニクロも話題だけではもたない。
以前のブログでも触れたように、
銀座は、最近とみに活気のある街区になっている。
超有名ブランド店の開設、銀座三越の増床、有楽町・阪急メンズ館、ルミネの開店、そしてFFの進出、
と話題に事欠かない。
ソフトバンクの旗艦店も、ユニクロのすぐ近くにオープンして話題となっている。
銀座は、小売戦争のメッカになったというより、
旬の話題満載の街になっている。
ダイナミックな銀座でのユニクロ新店舗は、
いろいろな意味で面白いことになりそうだ。
そんな予感がする。
B.ユニクロ銀座店のUSPについて:
USPとは、
ユニークセリングプロポジション/ユニークセールスポイントのこと、
商品、企業の独自の価値を示す言葉だ。
ユニクロ銀座店のUSPとは?
店内構成のコンセプトがそのUSPを物語っている。
・実用―エンタメ、
・子供―大人
・メンズ―ウイメンズ
・遊び―フォーマル
・単独―コラボ
・定番―実験
・フラッグシップ―実需
・流行―コンサバ
・オーソドクス―フロンティア
といろいろな要素が「おもちゃ箱」のように詰まっている店である。
実に多様な価値観を表現している。
ユニクロ銀座店のコンセプト。
それは筆者の考えでは、
「何かありそうな予感」、
となる。
従来のユニクロとは違う、
世界に、未来に打って出ようとする意気込みを籠めた店、
ということになる。
1F:
ウェルカムゲートと呼ばれるコンシェルジェフロアー。
充実した案内サービスがある。
6カ国語対応で外国のお客様へも対応できる。
アジア系の旅行者への売り上げも見込んでいる。
場合によっては、
店内同行案内、銀座の街区案内もしてくれる。
コーデネートされたマネキンが並び、
どの階に何が展示されているかがわかる。
目次代わりのフロアーになっている。
2F、3F:シーズンセレクションズ
4、5、6F:ウィメンズ
7F:キッズフロアー
保育士の社員がいる。
フロアーはやわらかいマットでカラフルな色使いである。
棚の角は、
子供に危険がないようまるくなっている。
子供の目線で服に触れられるように、かなり低くなっている。
8、9F:メンズ
10F:ハイブランド・アンダーカバーとのコラボフロアー
11F:UTフロア
300種類のTシャツが展示されている。国内最大級の品揃えである。
開店キャンペーン中は990円である。
企業、キャラクター、アート日曜雑貨等が奔放にデザインされて、
従来のユニクロとは異なる雰囲気をかもし出している。
12F:情報発信フロアー
集英社の9つの雑誌とコラボして、各雑誌の編集長が、
今年のコーディネートを提案している。
MORE、NON・NO、LEE・・・・・等々とのコラボである。
今の時期なかなか春めいて、初夏らしくいい感じのデザインが並ぶ。
複層階の店舗で、
コンセプトのメリハリをつけやすくなっており、面白い店づくりになっている。
但し、実用的なユニクロの服を買いに来た人が、
欲しい服を探すとになると、
複層階に渡る、多様なコンセプトで構成された店の使い勝手は、
どう評価されるだろうか?
C.ユニクロという企業の価値とは:
なぜユニクロは皆から一目おかれる存在になったのか?
3つぐらいの本質的な価値がありそうだ。
価値1:
「合理的パフォーマンス」という価値
銀座店の開店オープンのチラシを見ると、最高価格が4990円で四桁の数字が踊る。
大体1990円、2990円という価格である。
このようなSPA的な大量生産・大量販売的で低価格帯の店が、
堂々と銀座の目抜き通りに開店することは、
以前では考えられなかった。
百貨店、専門店が、
季節の終盤でセールをさりげなくやる感覚はあったが、
いわば品のいいセールの範囲であった。
(実際は特売そのもの、在庫品の一掃セールなのだが)
ユニクロは前面に画一性と低価格が押し出されている。
もちろん周囲の外資のFFも安い価格帯を得意としている。
しかし、外国イメージ、斬新なデザインテーストで、
単純なスーパー衣料の特売というイメージからは何とか逃れている。
ユニクロの場合はどうだろうか?
ユニクロは、今、流行のFFとはやや一線を画している。
メーカー的な発想のSPAである。
SPAは、Speciality Store Retailer of Private Label Apparel の頭文字からくる。
ユニクロは、自分で100%つくって100%自分の店で売っている。
製造小売業である。
「製造」というニュアンスが、
特に色濃く残っているタイプのSPAと考えられる。
ユニクロモデルは、SPAの特徴を活かした典型的なビジネスモデルである。
SPAの本質である、
「低コスト」、「自社責任品質」、「独自のデザインテースト」の3本柱をキチンと立てている。
機能では、フリース、ヒートテックなど製造業らしい技術開発力を示し、
デザインは媚びへつらうことがない、極めて実用的なもので勝負している。
ユニクロは、
いわゆるファッションブランドではなく、また単純なPOPカジュアルでもない。
シンプルな実務的な機能美を持ったNEO・カジュアルファッションである。
ファッション製品ではなく、工業製品といった方が近い。
工業製品といえば、車、家電である。
車は自分でつくり、自分の看板をだした店舗で打っている。
昔の家電も自社の家電専門店で売っていた。
ユニクロは、
そのような典型的な「専門品ビジネスモデル」に近い、
と発想すれば、
その本質がかなり見えてくる。
即ち大量につくり大量に売る、
そして品質、性能を落とすことなく、
価格も出来るだけ安くするという
ビジネスモデルになっている。
従って、価格の安さもチープということには繋がらない。
「合理的で、高いコストパフォーマンスがある」
というイメージに繋がってくる。
しかし、ブランドファッションの世界では異端である。
一部の高級ファッションから見れば、
価格が安い、画一的な、実用的なデザイン、
という風に見られてしまう。
一種の宿命でもある。
ユニクロの、従来のファッション業界を「創造的に破壊する(シュンペーター提唱)」スタンスが、
今後、銀座という街のなかでどう評価されていくのか?
見ものである。
価値の2:
ロングテール産業という価値。
ファッション会社は、個人がガレージ(自宅の一角)で開業できる。
デザインセンスとミシンがあればOKである。
ITベンチャーがもてはやされる以前から、
ファッション業界はベンチャーのるつぼであった。
NHK、朝の連ドラ「カーネーション」で話題になった、
「コシノジュンコさんの母親」の物語も
いわばガレージビジネスそのものである。
ファッション業界は、
ごくごく小さなファッション企業がひしめき合い、
独自のデザインで世に出ようと頑張っている。
ユニクロは、
実用的なカジュアルファッションアイテムを大量生産し
小売まで含めて対応している。
ユニクロを冷静に見ると、
低コストの大量生産、大量販売の典型的な、旧来の高度成長型モデルともいえる。
ユニクロに対しての評価はいろいろある。
周囲の人の着ている服がユニクロだらけで嫌だ、
というファッション特有のネガティブ意識が根強くある。
ユニクロは、あくまでも家着で、家の周囲の生活圏の、学生なら学校行動圏のファッション、
という評価もある。
それが銀座に出展して、旗艦店と称することには何か違和感を感じる、
という評価になる。
銀座というファッションのメッカ、聖地に旗艦店をもちたい、
という自己満足ではないのか?
というやっかみ的な声もある。
ユニクロは合理的な品質感・機能とコストの両面で勝負している。
ファッション性はその機能からくる機能美と微妙にリンクしている。
普通の安売りFFとは違う、と判断される。
従って、ちゃらちゃらしたFFブランドとは違う、
という側面がある。
ユニクロは、
ガレージビジネス的な色合いを残し、
ベンチャー的なイメージを保持している。
いくら大きくなっても、
「いつまでもベンチャーでいるという意気込みを持ち挑戦してゆく」
それがユニクロの価値である。
一所懸命、何かを作り社会に訴えかけようとしているイメージがあり、
「大量」というマスイメージから距離を置くことに成功している。
そのような特異なイメージだからこそ、
生活者が何らかのシンパシーを持ち、
あれだけの売り上げ・ファンが獲得できたということになる。
ユニクロの評価は、人によりダイナミックに上下する。
評価がまちまちである。
これも成長企業のエネルギッシュな側面である。
価値の3:
ユニクロの最もユニークな価値。
それは、柳井CEOというオーナーの存在である。
昔の本田宗一郎、松下幸之助といった大創業者といった趣が出てきている。
一種のクセ(=カリスマ性)を持っている。
価値の1、2、3で見たように、
ユニクロブランドは、
つかみどころの無い、新鮮で多様な価値を持っている。
と同時に旧来のビジネスモデル価値も合わせもった
複雑な価値群で出来ている。
単に家着を安く売っている店ではない、
ことだけは間違いのない事実である。
D.最後に/ユニクロの寄ってたつ環境とは:
FF(ファストファッション)の本質が、ユニクロを存在せしめている。
ユニクロがここまで繁盛している、その背景・環境について押さえておく。
FFがはやっている、
という時代・社会なくして、ユニクロの繁栄はない。
今、FFが大流行である。
因みにFFがなぜ持てはやされるのだろうか?
以下、その理由である。
・まず、何といっても絶対価格が低い。
・服はいろいろと着まわす、重ね着する、従って安くていろいろなアイテムをたくさん持ちたいというニーズがある。
・服はあきる、一回も着ないことも、また一回きて飽きてしまうことも、棚の奥にしまって、着ないで過ぎてしまうこともある。
要は、もったいないことが多い。
それなら安くていろいろな種類が買えるFFが便利
・自分のお気に入りでマストアイテムが見つかるまでの道のりでは、いろいろと試さないといけない。
それにはFFの低価格・高回転感がうってつけ。
・世の中全体に、いいものをしっかり買って、きちんと着て、
という感覚がなくなってきている。
成熟時代の必然である。使いまわし感、ディスポーザブル感が横溢している。
・自分の好みもどんどん変わる。
流行もかわる、他人の目線も評価もかわる。
従って安くていろいろなアイテムが揃うFFはうってつけ
等々の理由でFFがはやる。
FFという業態は間違いなく時代の子である。
時代という環境がつくりあげた企業である。
余談になるが、
われわれビジネスパースンがユニクロに親しみを抱くのは、
なぜだろうか?
日本の高度成長時代の代表的な業種、生活を豊かにしてきた業種、
車、家電的なビジネスモデルを踏襲しており、
それが匂ってくるからこそ親近感を抱いてしまうのだろうか?
また、日本を戦後牽引し、日本経済を復活世界の経済大国にてきた、
ホンダ、ソニー、パナソニックの創業カリスマ経営者たちへの憧憬を
柳井氏に感じているからだろうか?
このあたりの微妙なユニクロの醸し出す雰囲気が、
皆をひきつけているのかもしれない。
この稿おわり
追記1:
ユニクロ銀座で杞憂に終わってほしいこと
1.ユニクロ銀座店は入店するビルの選択を間違っていたのではないか。
ワンフロアあたりの面積が狭すぎる?
2.銀座という街で、FFをを仕掛けること、本当はしんどかったのではないか?
銀座では結局はカジュアルな店は淘汰されてしまう?
その街のもつPOP(point of parity/らしさ感)から見て、
銀座はユニクロの本領が発揮できる街ではない?
という心配が杞憂に終わるように頑張ってほしい。
そういえば銀座にはソフトバンクもビッグな店舗を出した。
その近くにユニクロのもう一段下の価格帯の店GU(ジーユー)もできた。
何と、最高価格は2990円で、ほとんどが3桁である。
銀座で価格破壊をやろうとしている。
AKBの前田敦子の広告で勝負を掛けている。
このGUがどこまで続くのか?
注目したい。
過去、ユニクロは、従来より上の価格帯でデザイン性を基調にしたファッションを展開して失敗した。
ユニクロから高級ファッションは連想できない。
そのブランドがユニクロとわかった瞬間からブランドの価値は減耗してゆく。
高価格帯は個人のテーストが大事にされる。
ユニクロで服を買うように、
出たとこ勝負で衝動的に、取りあえずこれでいいか?という感覚の買物はできない。
SPAというビジネスモデルはユニクロで花開いたモデルだが、
高級ブランド展開には向かない。
むしろジーユーの方がユニクロのビジネスモデルにあっている。
しかし、銀座店はどうなるか?
実際はなかなか厳しいかもしれない。
追記2:ユニクロと株価
今、日経平均が上昇している。
10、000円を超えた。
ユニクロは年初来上昇している。
計算では、ユニクロの株価上昇が、日経平均上昇の150円分に相当しているという。
現在のユニクロの時価総額は1兆8500億円でパナソニック、ソニーよりも大きい。
勝手の日本経済を牽引してきたアセンブリーの総合電気、車が振るわない。
替わって、今まで典型的なドメスティック企業とされた流通、食品が気を吐いている。
追記3:ユニクロの今後
ユニクロのうまれ故郷、日本マーケットにおいて、
半端ではない差でNO1になることの意味は大きい。
厳しい日本の消費者に、サービス品質を磨いてもらう、
GDP、NO3のマーケットで斬新な商品開発を進めていく、
という。
しかし量の拡大と利益の最大化は海外で実現する、
ときわめてドライだ。
ユニクロ。
柳井CEOのバイタリティは、
日本をどこへ連れて行くのだろか?!