「白洲正子能面学」と「面打ち」

白洲正子著「能面」を定本として、現在各能楽宗家、美術館、博物館、神社等に所蔵されている能面を面打ちも含めて研究してみる

「白洲正子能面学」と「面打ち」-006

2014-05-16 18:38:25 | 日記
 
 
白洲正子能面学」と「面打ち
 
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奄美群島の梅雨も本格化して参りました。湿気がムンムンといった状態。除湿機が手放せません。VHFの画面が湿気で吹雪模様になり、慌てて除湿機のスイッチを入れます。水がどんどん容器に溜まっていきます。後一月の我慢。本州の入梅はそれからです。
 
 
今回も先回に続いて、能面師 故・高津 紘一師の手記を中心にしてご紹介します。
 
 
 

能面を打つとは、心を造形すること

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本当の「写し」は、魂を打ち込むことにある 
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* 高津氏関係の写真は「The 能 com」より掲載しております。 
 
先回は「写し」の基本的な概念・・<こころを写す>について、高津師の考え方を失礼ながら、コンピューターCADの概念を比喩的に取り入れて書いてみました。数学的にオリジナルの能面と形状的に同じく製作はできるが、それは単なるコピーである。それにはオリジナル製作者の「こころ」までは写し取れないし、写した面打ち師の芸を注ぎ込むことが出来ない。
 
最も大事なことは与えられた僅かの許された隙間に、自らの芸を注ぎ込むことである」ということであろう。これは日本伝統芸能の共通の真髄ではなかろうか・・・・ということであろう。
 
 
 
 
オリジナルを傍に置かないで、写真と型紙を傍において面を打っても、本人がそう思っているだけで、もう 写しではない>」・・・・耳が痛い指摘かな(^~:)
 
 
 
 
 
現在の日本にはいったいどれ位の面打ちを専門とされる方、素人の趣味とされる方が居られるかは不明ですが、おおよそ数千人に及ぶでしょう。しかし、本面やオリジナルの面を傍において、面を打たれる方はごく僅かです。自ら市場でお手本面を購入できたり、家元から拝借できるのは稀有の存在です。市場に出回っているマトモな面はさらに少ない。
 
オークションなどでは故人の秀作作品から、「岡目ヒョットコ」クラスの自称・能面師の作品もありで、玉石混交の状態です。 また、「秀作作品」を「駄目面」と同じ金額で取引されているのを見ると、噴飯ものの感情になります。目利きがまったく出来ていないということでしょうか。骨董の世界はどこも同じでしょう。能面だけではありません。
 
 
 
-鼻が決まれば全てが決まる- 
 
 
 
 
高津師の指摘の中で<目から鱗>の思いで読み取ったのは・・・-鼻が決まれば全てが決まる-という事であった。人間の脳の生理構造は顔の輪郭と眼に強い関心を持ちます。「眼は口ほどにものを言う」とされているが、鼻の重要性はあまり考えてたことがなかった。
 
鼻の位置のセッティングによって、口、眼の位置が決まる。これが狂うと額が狭くなったり、顎が長くなったりしてくる。結果的にとんでもない面に出来上がる。・・・成るほどその通り。
 

 

 

 喫茶店でちょっと一服  

 

  

 

< 本日のお題は>

 
 
 
孫次郎 
 
                                         高津 紘一 作                   長沢 氏春 作
 
 
                                                         
 
 
今回は「」ということに着目して書いておりますが、上記の高津 紘一師・長沢 氏春師の<孫次郎>を見て、すぐに感じるのは、面の「鼻」です。鼻翼が横に大きく張っている感じに見えます。下は本面・孫次郎の写真。鼻筋が高い感じはしますが、鼻翼の幅はそれ程気になりません。
如何でしょうか。
 
 
 
 孫次郎 ・ 本面
 
 
三井美術館蔵より
 
  
                 
 
                    後藤 祐自 作               天下一 是閑 作
 
                                          
             
 
 本当の理由は定かではないのですが、<孫次郎>の面の造作には、2つの型が有るようです。それは鼻の鼻翼の大きさです。作者・孫次郎の実在年代に2種類有るようですので、このことから来ているのでしょうか。右京久次(1564年没28歳)の作と江戸時代初期の面打ち師の作という説です。是閑や河内の写しなど数々存在するそうです。
 
下記の名人作の「小面」の鼻と比較していただきたい。実際の人間の真顔に近い鼻の造作になっている。実在のモデル(妻)が居たことも影響しているのであろう。
 
 
              大宮大和 作                  赤鶴 作 
 
                                
 
 
 
 
 

現代能面師の不思議-04

 
鈴木 慶運 
 
 
 
小面 
 
 
 
昭和46年3月15日逝去された能面師で、仏師であり東京美術学校(東京芸大)の教授でもあった高村光雲門下で当初仏師であったが、昭和13年に野村蘭作の推挙で、宝生流専属面打師として活躍。多くの弟子の育成に当たった方でもある。
 
 
 
              
 
 
又、この方は嵯峨人形の研究もされて居られる。
 
嵯峨人形 
 
                                     
 
 
嵯峨人形は仏師の手になる人形で、極彩色の彩色が全身にされており、仏像の彩色に相通じる所があり、それが技術的に能面製作とも関連性がある。
 
 
 
 
 
 「わんや書店」から<能の面>上・下を出稿されており、隠れたベストセラーでもある。筆者が能面に強い関心を持っていた時代には、能面関係の本といえばこれしかなかった思い出が有る。現在でも復刻版が出ている。(Kind Lake・神戸 で購入可能)大変人柄の穏やかな方であったらしく、能面にもそれが滲み出ている。本の内容も素晴らしい実践的なものである。
 
 
 北近江の「能楽資料館」で実際に作品を拝見したことがある。余り館内で長く見続けていたため、モニターで館内の方に怪しまれたほど・・・(^-^)
懐かしい思い出で有った。
 
 
 
 

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