「面」について
延命冠者
延命冠者・南北朝時代・ 奈良 長尾神社
下の同じ面と比較して、目の切り方が違い、面自体に品格がある。
舞楽系の作家の作とされている。
「延命冠者」の延命は仏像の名称に良く付けられているものと同じで、延命の得を備えた少年という意味です。普通の男面に近い風貌ですが、全体に笑みをたたえた表情をしており、短い顎鬚を生やしております。翁系の面に共通な冠を被っております。舞楽面にも見られる形式で、古い平安・鎌倉時代の面影を残しております。
延命冠者 ・ 南北北朝時代 ・ 重文 ・ 東京観世家
上の面と比較すると口の切り方、目元の切り方、顔の表情も違っている。桂材の古面で「文蔵」とされている。これも舞楽面的な系統に入るものとされている。
この面の用途は延命冠者役の演者が付ける事はもちろんですが、時には「鷺」にシテが掛けることがあります。唯、少年が舞うときは直面で、その他の人が舞うときは<延命冠者>を使います。
般若
一般的な能の面でよくどなたも知っているのが、「般若」である。 仏教の経典にも出てくる「般若心経」に関わる言葉である。<パンニャ~>というサンスクリット語の中のパーリー語を由来とする言葉。<彼岸に至る>という意味がある。
さて、般若の面はこれである。
般若
女性が嫉妬狂い始める初期段階は、「生成」と称する。角も小さなものが頭上に見える。そして、さらに程度が進むと、<般若>となる。これを別名・中成と呼ぶ。さらに、程度が進むと<蛇>になる。獰猛な獣性を帯びてくる。別名・本成という。
般若は舌がなく、蛇は舌があるとされているが、一応ではない。ただ、三面ともよく見ると、額の毛書きの表現方法が同じである。つまり、女面の書き方をしている。このことから、この三面は女面の変形面である。
逆髪
毛書きは同じ
生成 蛇
最後に決定版!
蛇
「能装束の歴史-03 」
秋草に扇子散らし文様紅入唐織 ・ 井伊家所蔵
上記拡大部
「翁狩衣」は能・翁専用の狩衣である。 狩衣がより略装になった形が「水干」である。
水干
狩衣の歴史
能は「翁」という神事を司る家について舞をもようしていた「座」というものがその発端である。脇能の神体に狩衣が欠かせないところからも、能の中でも古い歴史を持っている装束である。地方の地域でもそこの神社に、狩衣の装束が大切に保存されている現実があります。
翁狩衣
能・翁 での出で立ちである。
狂言面
伝 日光作 ・ 室町時代 山本 東次郎家
面袋に「日光作 延命冠者 九代目喜多七太夫 判」とある。 伝 日光作は沢山存在するようであるが、面裏の極め書に有っても、その確証はなかなか得られないであろう、ブログの前段で紹介した「延命冠者」とは少し趣が違う。面の表情も穏やかな品性のある、自然に笑いがこみ上げてくるような感じがする。