サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

日本の経験をどう伝えるか

2007年11月19日 | 講義・講演
11月19日、JICAの研修講師をやってきた。ラオスとミャンマーの方々が対象、政府開発援助(ODA)の一環とである研修員受入事業というものだ。

過去にも、同様の研修講師として、ブルガリアを3年、インドネシアを1年、担当した。それらは、研修全体が地域資源の活用というテーマであったが、今回は「人間の安全保障を重視した地域開発プロジェクト形成」がテーマである。

本音をいうと、研修全体のテーマにピンときていなかった。とりあえず、「持続可能な生計と地域資源」というのが演題だったので、日本における持続可能な地域づくりの系譜というテーマに読みかえて、3時間の時間を使わせてもらった。

持続可能な発展とは何か、足尾銅山という失敗事例、日本の過去にみる「ふるさと伝承の知恵」、近年の持続可能な地域づくりに係る運動、SWOT分析をとりあげた。参加者の反応はまあまあ、身を乗り出して聞いてくれるような雰囲気もあったと思う。

ところが、質疑応答の時間を設けると、ラオスの方々の質問は「日本の1村1品運動に関心があるが、1品はどうやってきめたらいいのか」ということであった。私は、地域にあるものを見直し、住民参加で進めることが大事という話をしたのであり、1村1品の話しなど何もしていないのに。

私は、「1村1品は日本の過去のやり方で、光と陰の部分がある。一部の人が注目されることの問題もある。」というような回答をしたが、”1村1品的ではない地域づくりの話しをしたのに、伝わっていないのか”と苦笑せざるを得ない思いだった。

講義の終了後、JICAの担当の方と少しだけ話しをした。今回に限らず、日本の地域づくりに対する東南アジアの方々の関心は、「1村1品」に向く傾向があり、必ずその質問がでてくるとのこと。

JICAの担当曰く。「私たちも、1村1品は地域づくりの最初の一歩であり、その後、地域内に波及させていくこと、地域内の格差を是正するような人づくりが大事というメッセージを発するのだか、参加者の関心は最初の1歩の商品開発をどうするかにある。こちらが、住民が1品を自分で見いだすことが大事だといっても、『住民はまだ時間がかかる、政府担当が1品を決めなければならない』というのが参加者の意見だ。」

私が言いたかったのは、日本の地域づくりには失敗もあり、その反省を踏ませて、持続可能な地域づくりという歩みを積み重ねているということ。そうした日本の経験の積み重ねと、彼らの目先の関心のギャップがもどかしい。

2月には、昨年と同様にインドネシアの方々向けの研修講師を受け持つことになった。参加者の関心にこたえるとともに、こちらから伝えたいことを少しでもうけとめてもらえるように、工夫をしてみたい。

(白井信雄:2007年11月19日)
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