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ストップ温暖化『一村一品』大作戦 ~事業仕分けについて

2011年10月31日 | 環境と教育・人づくり

大分の一村一品運動の名前を借りた環境省事業が2007年から2010年まで実施された。ストップ温暖化『一村一品』大作戦である。この事業は、地域の創意工夫を活かした地球温暖化防止活動を応援するため、その活動を“一品”と見なし、地域の一品を掘り起こし、一村一品を全国に情報発信することを通じて「知恵の環」を広げるコンテストである。

 

この事業では、全国地球温暖化防止センターが全国大会の事務局を務め、都道府県地球温暖化防止センター(以下、都道府県センター)が都道府県大会の事務局を務める。都道府県センターは、都道府県内での温暖化防止活動を集め、都道府県大会を開催して、代表を全国大会に送り出す。この事業では、成功している温暖化防止活動のノウハウを共有するだけでなく、地域における温暖化防止活動を担う主体間、あるいは都道府県センターと地域の活動主体との関係をつくることを目的としている。

 

筆者は、この取組みの開催をしり、知り合いに応募等を呼び掛けようと思い、東京大会の事務局を探しましたが見つからないため、全国センターに問い合わせた。すると、東京には当時は都道府県センターがなく、事務局を募集しているとのことで、事務局をやりましょうと名乗りをあげ、東京大会事務局を務めることになった。東京代表の「アーバンエコロジー東京」の付き添いとして、全国参加した。東京代表も特別賞をもらうことができた。「東京で、地域の取組って何があるのだろう」という見方もあっただろうが、自転車でシティ観光を楽しむための取組みは、東京という地域個性を十分にアピールできたと思う。

 

当初から3年間の予定で企画されたストップ温暖化『一村一品』大作戦は、好評なために継続予算が申請された。しかし、2010年度予算要求に対する事業仕訳により、行政刷新会議が下した結論は事業廃止であった。同会議が下された結論では、「本事業については、意見が分かれたが、個別提案を品評する方式の役割は終わっている、意義のあった事業であったと思われるが、今後は各団体の自主的活動に委ねるべき、アイデアも集まったのでそろそろアイデアの水平展開を図る時期等の意見があった。よって、当ワーキングとしては、廃止を結論とする。」としている。また、「特定の天下り法人に委託を出していることについても様々な問題点、疑問点が指摘される」と記述されている。全国地球温暖化防止センターの委託先である日本環境協会が天下り法人であるとして、そのことがマイナス評価につながったらしい。

 これに対して、全国センター及び都道府県センターのネットワークである地球温暖化防止活動推進センター連絡会では、内閣総理大臣及び環境大臣に対する意見書を出している(200911月、http://www.jccca.org/about/img/kougiseimei.pdf)。

 

この中では、「「温暖化対策”一村一品・知恵の環づくり”事業」の“廃止”という結論は、私どもにとってまったく思いがけない衝撃的な判断であり、到底納得できるものではない。自分たちが長年地域で、草の根レベルで地道に行ってきた活動が「ムダだ」、「効果がない」と一方的に決めつけられたのかのようであり、センター連絡会には、全国の多くのセンター職員や地球温暖化防止活動推進員から、「がっかりした」「悔しい」「誤解だ」「わかってもらえていない」「一晩中眠れなかった」「4 月から活動ができない」という悲鳴や落胆の声が多数寄せられている。」と、当時の都道府県センターの思いを伝えている。

 

 そして、「環境教育や人づくり、低炭素社会をめざす地域づくり、ネットワークづくりは、決して、短時日の「費用対効果」で測れるものではない。この数年でようやく根付いてきた温暖化防止活動の地域拠点と人的資源の草の根的なネットワークという貴重な財産を、京都議定書の目標達成期間2 年目の今、ここで立ち枯れさせるならば、その再建は決して容易なものではない。地域や学校現場での環境教育の停滞を取り戻すのに、今後いたずらに何年を空費することになるだろうか。」と、事業仕分けに疑問を投げかける。

 

 筆者もこの意見書に同感である。低炭素社会は、アイディアやノウハウの共有だけで実現できるものではない。実践を通じた「地域環境力」の活用と形成のダイナミズムが重要であり、その中間支援組織の存在が重要である。そのことの認識がまったくなく、評価基準を費用対効果や温室効果ガスの削減率だけにおいた判断は、あまり視野狭窄であり、目指すべき社会の発想の貧困さを感じさせる。

 

目指したい社会は、地域において人々が主体的に、人とつながりながら活動を起こし、ボトムアップで困難な時代を乗り越えていく社会である。国はそのボトムアップを支援・補完するという役割を持つべきで、トップダウンで地域の取組みを切り捨てることは論外である。大分県の一村一品運動の真の狙いは「住民に自主自立の精神とやる気をおこさせる」ことにあるが、それを見ずに表面的な商業的成功のみを見られることがある。大分の運動の名前を借りた地球温暖化の一村一品も、まさしく地域環境力を高めることを狙いとしたのにも関わらず、それを理解せずに、表面的な成果だけで事業仕分けがなされたのではないだろうか。

 

 さて、事業仕訳のその後である。全国地球温暖化防止センターの役割は、日本環境協会から一般社団法人地球温暖化防止全国ネットに移行した。同財団は全国各地の都道府県センターが主体となるもので、CSR活動に意欲的な企業の支援も得て、活動をしている。「温暖化対策”一村一品・知恵の環づくり”事業」は、「低炭素杯」と名を変え、地域環境力を高めるイベントも継承されている。結果として地域間の結束が強まり、ボトムアップの動きが強化されたとみることもできる。

 

 

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