サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

西日本豪雨に関する報道情報の抽出と整理(2018年8月5日時点)

2018年08月05日 | リスクマネジメント

西日本豪雨により被災をされた方々に、心よりお見舞いを申しあげます。そして、今後のいち早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

私自身は、復旧・復興に直接役立つ専門もなく、岡山に移住してきたばかりで直接的な強い関わりがない中、まずは情報整理だけでも行うことにしました。

また、気候変動適応策(二酸化炭素の排出削減を最大限に行うとともにそれでも避けられない影響への対策)の研究に参加してきた立場として、気候変動と今回の災害を関連づけることも役割と考えました。

ここでは、西日本豪雨に関する報道情報を毎日、検索し、整理を行ってきた結果を示します。今後、さらに情報を追加し、改訂版を作成します。

これらの情報は、私が今後、岡山で行う気候変動に関する講演やセミナー講師、大学講義等に活用していきます。また、必要とされる方にこうした情報整理が役立つこともあると考えます。

各メディアの情報は速報性において貴重なものです。報道時点における限られた取材による情報ですし、信ぴょう性の精査や最新情報への更新が必要となりますが、今後の検討や支援、研究に糸口として活用できると考えています。

生活再建や復旧などを行う段階ですが、平行して、毎日の報道情報のまとめを積み上げていくこととさせてください。

 

(1)抽出情報の留意点と意義

災害後の毎日、「西日本豪雨」をキーワードとして、WEB検索を行い、新たな情報として考えられるものを追加して、蓄積したもの。

災害と影響・対応等の状況の全体像を把握する材料となる。

あくまで新聞やWEBでの情報を基にしたものである。速報性において貴重な情報であるが、情報の信頼性の確認は個別に必要となる。また、メディアの報道で取り上げられない面や取り上げられる内容の偏重もないとはいえず、注意が必要である。

今後、精緻な調査・検証を行ったり、今後の対策の検討を行う際、対象範囲や検討課題(仮説)を設定する際の基礎資料となる。

気候変動適応策との関連でいえば、今後、頻繁化・常態化あるいは強度を増す可能性がある異常気象の影響と適応策を想定するうえでの基礎資料となる。特に、被害を顕在化・増幅させる社会経済的要因(備えの不足・遅れ、感受性の増加)が今回の災害で露わになっている点が重要である。

 

(2)抽出情報のインデックス

1.豪雨と水害・土砂災害の状況  

   1.1 豪雨    1.2 水害(洪水)  1.3 土砂災害    1.4 ため池損壊

2.災害の影響と被害

  2.1 人命・住宅への影響 2.2 ライフライン・社会資本への影響 2.3 交通への影響

  2.4 農林水産業への影響 2.5 歴史・文化への影響   2.6 企業への影響

  2.7 観光への影響    2.8 再生可能エネルギー発電設備への影響

  2.9 猛暑による複合災害

3.災害後の避難所・生活再建・復旧

  3.1 避難所   3.2 生活再建   3.3 復旧・復興   3.4 災害ごみの処理

4.災害後の支援の動き

  4.1 ボランティア   4.2 地方自治体の外部支援   4.3 企業による支援

  4.4 大学による支援

5.要因分析と今後に向けた対応

  5.1 治水計画   5.2 防災計画・避難計画    5.3 情報伝達  5.4 メディア報道

  5.5 企業及び公共施設等のBCP   5.6 災害ごみ処理計画   5.7 気候変動適応

  5.8 その他事後の点検・改善

6.世界の異常気象

 

(3)抽出情報の要約

 1.豪雨と水害・土砂災害の状況 

  1.1 豪雨

  • かつてない強度の豪雨が、広域的かつ継続的に発生(48時間降水強度が史上1位の観測点が多い)。
  • 50年度に1度の異常気象を基準に発表する大雨特別警報が過去最多の11府県で発令。
  • 最大高度約7キロの積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が多発し、さらに積乱雲の風上に次の積乱雲が連鎖的に発生する「バックビルディング現象」がみられた。

  1.2 水害(洪水)

  • 高梁川支流の小田川が本流の高梁川に合流する際に水がせき止められる形となる「バックウオーター現象」が起き、水位が上昇した小田川の堤防が決壊した。
  • 各地で上流のダムの放流が遅れ、大量放流となった可能性は指摘されている。
  • 高梁川上流の「河本ダム」(新見市)は今回の記録的豪雨で平時の75倍も異常放水、その時間帯に下流の倉敷市真備町地区の堤防が決壊した。初動の遅れの問題の可能性。
  • 愛媛県の肱川上流にある野村ダムと鹿野川ダム)が大量放流した問題で、両ダムの放流量などを決めている操作規則が、記録的な大雨に対応していなかった。
  • 広島県が管理する野呂川ダム(呉市)で、流入量以上に放流しないよう定めたダム操作に関する県の規定に反し、担当者が大量放流した可能性がある。

  1.3 土砂災害

  • 水害を伝える石碑が、広島県内に少なくとも50基あり、土砂災害は繰り返されてきた。その記録を現在の住民の危機意識や避難に結び付けられるのかが問われている。
  • 投棄や無許可造成で崩落防止工事中だった土砂は発生(京都府)

  1.4 ため池損壊

  • 福山市のため池決壊では女児が死亡。
  • 広島県内のため池は9754カ所で全国で6番目に多い、損壊したため池のうち35カ所は防災重点ため池に指定されていなかった。貯水容量10万立方以上という指定基準の見直し(国)、農地の宅地化が進んでおり周辺住民への説明会を開くなど踏み込んだ対応が必要、老朽化も懸念

 2.災害の影響と被害

  2.1 人命・住宅への影響

  • 真備町地区の死者の約8割は住宅の1階部分や平屋建てなどの屋内で見つかった。1人暮らしで体が不自由な高齢者は、2階や屋上などに移動する「垂直避難」ができなかった。死者のうち65歳以上の高齢者が45人と9割近くに上り、平均年齢は73.8歳だった。年代別では、90代3人▽80代18人▽70代20人▽60代4人▽50代1人▽40代3人▽20代1人▽未成年1人。
  • 避難指示を伝える防災無線が複数のスピーカーで流れ、音が重なり聞き取れなかった。スマートフォンを持たない高齢者は通知を把握できずに逃げ遅れたのでは。
  • 広島県では200件を超える土石流やがけ崩れが発生し、身元が判明した死者82人のうち、土砂災害関連で亡くなったケースが8割に上る。60歳以上は49人、10歳未満の子どもは2人だった。

  2.2 ライフライン・社会資本への影響

  • 愛媛県大洲市のし尿処理施設、肱川の氾濫(7日)により管理棟と処理棟が最大約150センチ浸水し、モーターやポンプ、動力制御盤、コンピューターなどが使用不能、し尿などをためる「受入槽」も川からの水で二つとも満杯仮復旧は9月上旬を目指す。
  • 西日本豪雨では広島に加え岡山、愛媛、長崎、京都、福岡の6府県で95の医療機関が浸水や停電、断水などの被害を受けた。
  • 真備町地区では、一般病院「まび記念病院」が機能停止、入院患者76人中59人が県内の他の病院に転院。17人は退院した
  • 広島県三原市本郷地区の総合病院「本郷中央病院が近くを流れる沼田川の氾濫で1階天井近くまで浸水し、診療機能を失った。3週間以上が経過しても診察再開のめどはたたず。

  2.3 交通への影響

  • 23日現在、JR東海、西日本、四国、九州4社の計14路線が運休。一部路線は復旧が見通せない。
  • JR山陽線などが寸断。JR貨物の不通区間の輸送量は1日あたり3万トンで、同社の輸送量全体の約3割を占めていた。そこで順次始まったのが、トラックによる代行輸送。

  2.4 農林水産業への影響

  • 農業施設の破損による稲作への影響、果樹の被害
  • 水路、ため池、井堰、コメ乾燥機等の施設損壊2万1000カ所、被災地の稲作に影響が広がっている。
  • ブドウとモモで全国有数の生産量を誇る「果物王国」岡山県は、西日本豪雨で大きな被害を受けた。収穫も復旧のめども立たない畑も。
  • 土砂流や流木、漂流ごみによる漁業への影響
  • 西日本全域で海に土砂が流出している。陸に近いところで行う養殖漁業などに影響があるかもしれない。
  • 海に流れ込んだ大量の流木などの漂流ごみの影響で、旅客船や漁船が出港できないなどの被害が広範囲で続いている。
  • 寄島漁協(浅口市寄島町):9日、港近くに、ドラム缶やガスボンベが流れてきた。
  • 愛媛県で養殖のマダイ、高知県で養殖のカンパチ、マダイ、クロマグロが死ぬ被害が出た。高知県の3魚種に生じた被害は40トンを超える。河川から海への大量の水の流入で、養殖場の塩分濃度が下がった。広島県はカキの養殖に被害があり、浅瀬にある関連設備が埋まった。長崎県では陸上養殖施設のアワビ1万5千個が死滅し、195万円の被害が出た。諫早湾の干潟に移植していた高級二枚貝タイラギの稚貝約2千個がほぼ死滅。
  • 愛媛県大洲市では肱川上流が氾濫した影響で沿岸に大量の流木が流れ込み、底引き網が破れた。
  • 島根県では定置網に大量のごみが引っかかる被害が出ている。岡山県でも漁船のスクリューにごみが絡まり、エンジンの冷却水取り入れ口が詰まる被害が報告された。
  • 高知県南国市の十市漁協では、特産のシラス漁に向かう船が出港しづらい状況が続く。浜や漁港内にも漂流ごみが滞留し、7隻ある所属船のうち2、3隻しか出漁できていない。
  • 広島市漁協によると、クロダイやカレイなどの網漁の漁船が出せない状況が続く。
  • 沿岸部の海底には、冷蔵庫などの大型生活家電やコンテナなどが沈んでいるという。
  • 畜産や酪農にも被害。岡山県では道路が寸断して業者が生乳を集めることができずに廃棄が発生した。岡山県高梁市ではニワトリの施設が浸水し、2800羽が死んだ。
  • 復旧に要する費用を林野関連の被害額として集計、山崩れなどが1081カ所の448億円。林道は寸断などで6981カ所の184億円に上る。

   2.5 歴史・文化への影響

  • 倉敷市真備町箭田の市真備歴史民俗資料館は今回の豪雨で、1階の天井まで浸水、展示していた市指定重要文化財の土器など4件が破損した。
  • 大原美術館の美術品を保管する分館の収蔵庫は2007年に建てられたが、周辺の下水道の雨水排除能力や、敷地内の高低差をもとに設計。倉敷市のハザードマップを参考に、2mの冠水があった場合を想定している。周辺道路が冠水するなどの被害にあった際は、防水壁が上がるようになっており、美術品を保管している心臓部には水が入らないようになっている。
  • 岡山、広島、愛媛3県の少なくとも172寺院で、境内への土砂流入や建物の損壊、浸水などの被災が確認された。

  2.6 企業への影響

  • 工場の浸水、土砂崩れによる施設・設備の破損、道路網の混乱による原材料の搬入停止、工場用水停止等の影響。マツダ2工場操業停止、トヨタ自動車九州の3工場で操業停止、ダイハツ工場5工場で操業停止、パナソニックの岡山工場が創業停止、明治の岡山工場
  • ートやマンションを業者が一括で借り上げ、家賃も業者からオーナーに一括で支払われるサブリース(一括借り上げ・転貸)契約の物件を含む賃貸住宅にも被害。業者がオーナーや入居者を支援する動きもあるが、契約内容や保険の入り方によっては、家賃の支払いが停止したり、オーナーに多額の修繕費負担が生じたりする可能性がある。

   2.7 観光への影響 

  • 風評被害により、美観地区の観光バス駐車場の駐車場は6日以降、前年同期の5割に届かない。後楽園や岡山城天守閣の入館者も落ち込み、新見の県天然記念物の井倉洞は洞内が増水、電気系統が故障、ベッセルホテル倉敷では観光客のキャンセルの一方でボランティアや企業関係者が宿泊で7月中はほぼ満室。
  • 7月21日の倉敷天領夏祭り、高梁市の成羽愛宕大花火など。(山陽新聞、7月19日)、7月下旬から8月下旬まで予定されている千発規模の約20のイベントのうち実施を見合わせたのは4割強。直接被害がなかった地域でも、被災地に多くの警備員が振り向けられ、必要な人員を確保できない

  2.8 再生可能エネルギー発電設備への影響

  • 浸水や土砂崩れで、京都、兵庫、広島、山口、愛媛の1府4県の太陽光発電所計12カ所が機器の故障や破損などの被害に遭い、稼働できなくなった。
  • 兵庫県姫路市の発電所の被害が最も大規模で、同県に大雨特別警報が出ていた7日未明、斜面の中腹部に設置された約3500枚のパネルのうち3割ほどが地面ごとずり落ちた。

   2.9 猛暑による複合災害

  • 真備地区では熱中症で31人が搬送(うち14人がボランティア、15日)。

3.災害後の避難所・生活再建・復旧

 3.1 避難所

  • 豪雨から2週間が過ぎた。県内は今も土砂災害の恐れがあるとして、西予市と今治市の一部地域で避難指示が出たままになっている。
  • 避難所生活が長引くと、アレルギー疾患を持つ人の症状が悪化することが心配される。日本小児アレルギー学会はパンフレットを作って対応を呼び掛けているが、ライフラインが回復しない環境で、現場からは「症状が出た後の対症療法しかできていない」との声が上がる。
  • 岡山県の高齢者施設が苦しい運営を強いられている。浸水した施設から受け入れた高齢者で定員超過となり、職員の業務量は増大。衛生環境が良くない施設もあり、関係者は「高齢者にストレスがかかり、認知症が進行する恐れがある」と懸念している。

 3.2 生活再建

  • 18道府県の小中学校270校で被害が確認され、岡山、広島、愛媛の3県では計150校が休校。再開のめどが立たず休校のまま夏休みに入った学校もあり、子どもたちのケアが急がれる。
  • 発達障害のある人は見通しが立たないことや、いつもと違うことが苦手。災害時は不安がより強まりやすい。
  • 災害が起きた後に体調を崩すなどして亡くなる『災害関連死』を防ぐため、真備町では、福祉施設職員がすべての住宅を一軒ずつ回る取り組みが始められた。
  • 岡山県倉敷市で、地元の医療・福祉関係者が情報を収集・整理し、被災者の治療や公衆衛生の向上に着実につなげる組織「倉敷地域災害保健復興連絡会議」(KuraDRO)(クラドロ)を設置。現場が混乱し、情報伝達ミスや各機関の連携不足が生じがちな被災地で効果を上げた。

 3.3 復旧・復興

  • ダムのすぐ下流に位置する町には「いずれまた豪雨の際に放流されれば氾濫するのではないか」との懸念が今も広がる。「本当にこの場所で再建していいのか」。約30店が建ち並ぶ商店街には既に廃業を決めた店もある。
  • 真備町地区では、住宅購入に伴う保険契約の際、ハザードマップで浸水の危険が高い地域と示されていたにもかかわらず、住宅販売会社などから水害保険は「必要ない」と説明され、加入しなかった住民が少なくない。
  • 四国で土砂の流入や線路下の盛り土の流出などで運転を取りやめ6日で1カ月となるが、2路線4区間で運休続く。JR四国は9月中に全線で再開、復旧作業を急ぐ。施設被害134カ所。

  3 .4 災害ごみの処理

  • 岡山県内の災害廃棄物は、推計で10万トンを超えていることがわかり、各自治体は、民間業者に依頼するなどしてなるべく早く処理を進めたいとしている。
  • 倉敷市では、損壊(半壊以上)した市内の被災建築物及び被災工作物等について、当該被災建造物の所有者の申請に応じ、市が災害廃棄物として除去を実施する。
  • 被災した家屋などの解体や撤去の費用について、国の補助の対象が拡充され、「半壊」と判定された家屋も対象になった。また、豪雨で出たがれきなどの災害廃棄物の処理で、自治体が負担する費用の割合を4.3%から2.5%に引き下げることを決めた。

 4.災害後の支援の動き

 4.1 ボランティア

  • 個人の方が、車に物資を満載にして避難所へやってくる。水もパンも充分にあるが、避難所の住民さんは『いらないとは言えない』と困惑している。いまや、個人からの救援物資は「被災地を襲う第2の災害」とまで言われるほどだ。
  • 倉敷市や 総社市など5つの市と町では、台風の接近に伴ってボランティアの受け付けを休止していましたが、総社市は30日から、それ以外の市と町は31日から再開。
  • 真備町では。横溝正史が先の大戦中に疎開し、名探偵・金田一耕助シリーズを執筆した地。豪雨では毎年秋に開いているファン交流会の会場となる施設が水没。今年の開催が危ぶまれるが、世界の名探偵名義で募金が寄せられている。

 4.2 地方自治体の外部支援

  • 茨城県境町ではふるさと納税の災害支援の代理寄附の受付を開始。被災地の自治体職員は多くが現場で活動しなければならず、境町が代理でふるさと納税の支援を受付け、その業務を請け負い再開。
  • 西日本を襲った豪雨で農家が設置したイノシシの食害防止柵が壊れたとして、佐賀市は応急対策で養殖ノリ網の提供を始めた。
  • 岩手県教育委員会は、11年の震災直後の教育現場の状況をまとめた冊子「学校再開~復興に向けたガイドライン」を今回被災した自治体の教育委員会にデータで提供。▽転校や教科書などをなくした場合の手続き▽子どもの心のケア▽放課後の居場所確保▽教職員の服務や健康管理など180ページに及ぶ。
  • 福島県は、応急仮設住宅の建設や民間アパートなどを借り上げて提供する「みなし仮設住宅」の初動対応を支援するため、県職員を広島県に派遣した。

 4.3 企業による支援

  • JALとANAは、災害支援者に対する無償での搭乗協力、救援物資の輸送協力、マイルによる寄付募集。
  • つばめ不動産(岡山市南区福田)は、管理する岡山市内の3200戸に入居する場合に敷金・礼金・火災保険加入料を免除。
  • 中国銀行、トマト銀行による低利の災害復旧融資9日から取扱い開始、玉島信用金庫、備北信用金庫などの多くの信金や日本政策金融公庫、商工中金が同様の融資や相談窓口を設置。
  • 豪雨の影響で利用客が減っている岡山県の宿泊施設が、乳幼児や高齢者など支援が必要な被災者を無料で受け入れている。
  • 愛知県のリユース企業:エアコンのリユース事業を展開する元気でんき(愛知県名古屋市)は、西日本豪雨で被災した人や公共施設の復興への貢献のため、中古エアコンを無償で提供。
  • 真備町地区では、浸水したスーパー「ディオ真備店」はいち早く営業を再開「復興の象徴になるよう頑張りたい」。
  • おもちゃ王国では、被災されましたお子様とそのご家族の皆様に、少しでも楽しい時間を過ごしていただけますよう、おもちゃ王国へご招待すると発表。
  • 一般社団法人「日本カーシェアリング協会」(宮城県石巻市)は岡山県倉敷市と愛媛県西予市で、乗用車や軽トラックを無料で貸し出し。
  • 地震や豪雨など大規模な災害の被災地で、復旧作業を無償で手伝う人材を大手企業が送り出している。西日本豪雨ではボランティアに参加しやすいように、被災地までの交通費を支給したり、休暇日数を増やしたりして社員を後押しする動きが広がった。
  • 山口県岩国市の旭酒造は、西日本豪雨による停電の影響で人気ブランド「獺祭」の品質基準を満たせなかった日本酒約65万本分を、人気漫画「島耕作」シリーズの主人公のイラストをラベルにして10日から販売。
  • 西日本豪雨による被害に対して損害保険各社が支払う保険金は、7月23日時点で件数が4万7875件、金額では約789億円。支払い調査スピードアップにドローン駆使。

 4.4 大学による支援

  • 岡山県は18日、西日本豪雨で大きな被害を受けた同県倉敷市真備町地区などの子供を一時預かる「子どもの居場所」を県立大(総社市窪木)に開設した。

 5.要因分析と今後に向けた対応

 5.1 治水計画

  • 高知県は、高知県の被害は死者2人にとどまっている。広島の81人、岡山59人、愛媛26人に比べてはるかに少ない。避難者数は広島1662人、岡山3550人、愛媛525人に対して高知は24人。1998年の豪雨災害や1976年の台風17号による災害など、過去に豪雨やそれに伴う土砂災害で被害を受けてきた。大雨時の排水能力の向上や河川の改修など治水対策に長年取り組んできた。また、台風被害の多い県なので、県民の防災意識が高い。高知市の中心部を流れる鏡川がの上流にあるのが鏡ダムで、大雨時に鏡川が氾濫しないよう放水量を調節。

 5.2 防災計画・避難計画

  • 岡山市が浸水地域や危険度をまとめたハザードマップで、実際には浸水するおそれがあった避難所が、誤って安全な場所だと区分され、住民に伝えられていた(平島小学校体育館)。
  • 防災重点ため池でのハザードマップが、福山市では作成されていなかった、今回決壊した21カ所のうちで防災重点になっていたのは4カ所(農水省は下流に人家がある場合は漏れなく指定するように見直し)。
  • 04~17年の河川の増水や洪水による死者・不明者の66%がハザードマップの浸水想定区域の範囲外で被災。範囲内は18%、範囲から近い場所の被災が16%だった。中小河川は数が膨大なため、作業が進みにくい。このため特に中小河川では地形的に洪水の可能性があっても、浸水想定区域として表示されないケースがある。
  • 広島県府中町の榎川では、流木などにより川がせき止められ氾濫。役場によると腰の高さまで浸水したが、町のハザードマップを見ると、被災した地域は0.5メートル未満の浸水が想定されており、予想以上だった。
  • ハザードマップなどのリスク情報は、親切な不動産業者であれば説明するが、法律上は説明する義務はない。こうした売り手と買い手の情報格差に対して、国交省では不動産取引に必要な情報を一元的に管理する「不動産総合データベース」(仮称)の構築に取り組んでいる。
  • 真備まで、市が身元を確認した死者50人のうち約8割の42人が、避難に困難が伴う高齢者や障害者らを市がリスト化した「避難行動要支援者名簿」に掲載されていた。国は名簿に基づき、一人一人の支援役や避難手段を決めておく「個別計画」の策定を促しているが、倉敷市では未策定で、避難に役立てることができなかった。
  • 岡山県倉敷市の老人ホーム「シルバーマンションひまわり」が浸水。高齢者や障害児らを対象にした「要配慮者利用施設」の避難確保計画の策定は昨年6月、義務化された。契機となったのは、2016年8月に、岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽ん楽ん」で高齢者9人が亡くなった豪雨災害。
  • 広島県東広島市黒瀬町の洋国団地では、一戸建て49戸のうち約10戸が大破し、ほかの約10戸にも土砂が流れ込んだ。しかし、犠牲者やけが人はゼロ。「日頃の自主防災活動が実を結んだ」と感じる住民もいる。

 5.3 情報伝達

  • 一般的に、小規模の自治体であれば防災の知識が乏しいことも珍しくない。自治体が広域で連携したり、国や都道府県が避難指示などを出すタイミングを助言したりできたかもしれない。
  • 11府県に出された大雨特別警報の対象は186市町村にも及んだ。気象庁は前代未聞の規模で「最後通告」を発していたが、切迫感が自治体や住民には十分に伝わらなかった。特別警報など新たな情報が創設され、避難勧告が低く見られた結果、住民が逃げない一因になっていた。
  • 広島市北部で死者が77人に上った2014年8月の土砂災害で。市は避難勧告の遅れを批判され、避難所開設を待たずに発令できるよう地域防災計画を改正した。しかし今回の豪雨では市内で23人が犠牲になり、大半が勧告を出した地域にいた。
  • 倉敷市は決壊確認前の7日午前1時半、真備町地区全域に避難指示を出しており、同事務所は「既に住民に危険が周知されていると思った」と釈明する。小田川北側にある自宅が2階まで浸水した佐々木勝也さん(74)は「メールを読んだが、氾濫したのは南側だから大丈夫だろうと思った。右岸とか左岸とかいう表現も分かりづらく、方角で知らせてほしい」と求めた。
  • 愛媛県西予市の矢野君代さん(69)は7日午前6時半ごろ、夫と2人で自宅2階から肱川の様子を眺めていた。車で回ってきた消防団員から「水があふれたから早く逃げろ」と促され、公民館に避難した直後に自宅の浸水が始まった。その1時間以上前に出ていた避難指示を矢野さんは知らなかった。既にテレビやラジオは警戒を呼びかけていたが、災害情報は防災無線に頼っていた。1階と2階にあった受信機が、停電か電池切れで作動しなかった。
  • 情報の出し方を変えるだけでは、受ける住民の意識は変わらない。行政主体の防災が続けられてきた結果、『命を守るのは行政』と思われるようになり、いわば過保護の状態になっている。避難するかどうかは住民の責任だ。自治体も住民が主体的に避難できるよう、地域が一体となった防災に取り組む必要がある。
  • 広島市で大雨特別警報が発表された7月6日夜、防災情報共有システムに不具合が起き、多くの犠牲者が出た同市安芸区をはじめ市内全域で避難指示を市民に伝える緊急速報メールが一時配信できず、特別警報から最大40分遅れた。
  • 岡山県は12日、西日本豪雨で県内に大雨特別警報が発令された6~7日にかけ、気象警報や避難情報などを配信する県の「おかやま防災情報メール」にシステム上の不具合が発生し、延べ約192万件のメール配信が最大約2時間遅れた。登録者約6万4千人の大半に影響した。
  • 倉敷市が7月7日未明、豪雨で川の堤防が決壊し たことを把握したにもかかわらず、対応に追われて県に通報していなかった。

 5.4 メディア報道

  • 被害が集中したとみられる週末に、在京キー局が通常編成の放送を続けたからだ。これにより被災地での報道にも影響が出た。

 5.5 企業及び公共施設等のBCP

  • 日刊工業新聞社は7月中旬、西日本に拠点を持つ42社に直近の災害を踏まえ、BCP策定の有無や、災害時にBCPは機能したかをヒアリング。大手企業20社は全社がBCPを策定済み、中堅・中小企業は22社のうち半分強の12社がBCPを策定していなかった。
  • マツダは27日、自然災害などに備える事業継続計画(BCP)を見直す。これまでは主に工場設備や部品メーカーの被災リスクを重視してきた。河川の氾濫や土砂崩れなどによるインフラの寸断で従業員が出勤できない、といった新たな課題を盛り込む。
  • 内閣府が平成25年に発表したサンプル調査では、被災時に医療を継続するための計画(BCP)を策定している医療施設は、医療施設全体のわずか7・1%。厚生労働省は25年から各病院でBCPを策定するよう通知。
  • 昨年11~12月に全国の国公私立大学に危機管理の実態を尋ねたアンケートでは、災害時に備えたBCPを策定したのは1割強にとどまる。独自の防災計画を「策定済み」は45.5%だが、BCPについては「策定済み」が9.4%だった。
  • 自治体の機能を維持する体制を定めた「業務継続計画(BCP)」の策定が岡山県内で進んでいない。27市町村のうち、計画を作り終えているのは岡山市と新庄村のみ。

 5.6 災害ごみ処理計画

  • 災害ごみの処理計画を作っていないため、仮置き場の選定などごみ処理を巡り初動が遅れたケースがある。処理計画策定済みの市区町村は昨年3月時点で全体の24%にとどまっている。環境省によると、処理計画策定済みが少ないのは、災害対応の経験がある職員が少ないため。

 5.7 気候変動適応

  • 国土交通省は、地球温暖化による豪雨の増加等を想定した治水計画の見直しを開始した。
  • 8月にもまとめる検討会の中間報告書には、河川の治水計画を見直す場合に将来の豪雨の増加分を見込み、堤防の高さやダムのかさ上げなどをするよう盛り込む。河川の最大流量や浸水想定区域も再検討。中間報告書を今後、全国の河川整備計画に反映する方針。

 5.8 事後の点検・改善

  • 中四国地方を中心とする6県は23日、ため池の補強や廃止のための予算確保を求める緊急要望書を農林水産省などに提出した。
  • 気象庁は、大雨の原因となる「線状降水帯」の発生を半日前に予測したり、熱波や寒波の到来を予想したりする「新予報」を、2030年までに開始する方針を固めた。台風については3年後までに総雨量(3日間)の予測を目指す。天候の急変を早期に住民に伝えて適切な避難につなげる。

 6.世界の異常気象

  • WMO=世界気象機関は、日本を含む世界各地でこの夏異常気象が起きているとしたうえで、地球温暖化が熱波や干ばつをより深刻なものにしていると指摘した。日本の埼玉県熊谷市で23日、41度1分と観測史上最も高い気温となるなど、日本の各地で連日猛烈な暑さになっていることや、ノルウェーなどヨーロッパ北部も熱波で気温が30度を超え、干ばつや森林火災が起きていることなどを挙げて、この夏世界各地で異常気象が起きていると指摘した。原因についてWMOは、勢力の強い高気圧に長い間覆われるなど、直接の原因は地域ごとに異なるものの、地球温暖化が熱波や干ばつの頻度を増やし、より深刻なものにしていると指摘した。

 

(4)考察

 ①   進行中かつ今後も進行する可能性がある気候変動に対する計画策定や対策の具体化、実行する仕組み、意識の醸成が後手後手となっている。

 ②   市町村での対応が不十分になりがちななか、県や国の広域支援の仕組みが重要であるとともに、地域での自助や互助の仕組みの整備と率先的な活動が必要となる。

 ③   高齢者、障がい者等の災害弱者に対する支援体制の整備、コミュニティでの取組等の強化が求められる。「避難行動要支援者」の支援役や避難手段を決めておく「個別計画」、「要配慮者利用施設」の「避難確保計画」について、市町村のみならず、地域ぐるみでの取組みが必要となる。

 ④   避難誘導のための情報の生成・伝達システム、情報に対する受動側のリテラシーと対応姿勢の形成において、課題が顕在化しており、その対応が急務となる。

 ⑤   公的機関、大学、社会資本関連の事業者等においては、特にBSP等の作成と関係者への徹底によって、災害の防御と被害の最小化、復旧の円滑化等に努める必要がある。

 ⑥   これまでの大規模災害の被災地からの支援、企業の経営資源を活かした支援等がみられ、地域間あるいは企業と地域との相互支援関係の形成が今後も望まれる。企業等は、事業の継続だけでなく、他の被災の支援についても事前計画を作成しておくことが望まれる。

⑦   岡山においては、災害がない地域ではなく、災害がある地域であると自覚し、今回の経験を活かして、災害への取組が充分にできている地域であるといえるようになるように、今後の災害への備えに取り組む必要がある。特に、地域住民の防災への自助や互助に対する意識を高める必要がある。

 ⑧   気候変動の普及啓発や学習促進においても、顕在化してきている気候災害の甚大化と気候変動が関連すること伝えること、そのうえで気候変動への適応策として今まで以上に防災を進める必要があること、気候変動の緩和策として省エネや再エネを進める必要があることへの意識と行動を高めることが必要となる。

 ⑨   一方、被災地の復興は長期化する面もある。農林水産物への影響等、長期的に影響が生じる場合もある。こうした復興やタイムラグのある影響への対策に注視、注力する必要がある。例えば、河川からの土砂やごみの流出の影響、被害を受けた林地や農地等の放置の影響等のモニタリングが必要となる。

 

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