10月29日、浜松市主催の「やらまいか交流会」に参加した。関東在住の浜松出身者の交流会で、今年で6回め。シティプロモーションを、浜松出身者にも担ってもらおうという趣旨で開催されていると思う。
市長による市政報告では、浜松の新産業ビジョンが報告された。技術開発、産学連携、広域連携、国際展開等を重視した内容は、浜松らしいものだった。
ただ、産業都市であることが浜松のこれまでのアイデンティティであるとしても、今後もそれを展開するだけでいいのだろうか。従来的な手法を越えて、もっとその先にある未来を先取りすることも必要だと思う。
例えば、環境関連では、電気自動車の開発、充填施設等の整備を共同で進めるプロジェクトが報告された。
電気自動車の航続可能距離の制約を逆手にとり、小型の電気自動車を街のりに特化して普及させるというコンセプトは、自動車企業により発展し、また自動車依存型の都市構造となっている浜松らしいものだ。
しかし、浜松の市街地やだらだらと続く郊外は魅力がない。そこに電気自動車がたくさん走るだけでは物足りない。
天竜浜名湖線や遠州鉄道などの鉄道もある。路面電車やバスなどももっと活用できるだろう。そうした総合交通体系を描いていかないと、自動車のエコ化ばかりでは、行き詰るだろう。
鉄道とバス、自動車を組み合わせた未来志向の総合交通サービスを、まず地域内で描き、実現し、それを開発途上国も含めて他地域に移転していくという、トータルビジネスを展開できないだろうか。
また、天竜市及び北部、三ケ日町を含む引佐郡など、合併により豊富な地域資源を抱えた浜松市は、実に多彩な地域産業の可能性を有している。
そうした地域資源を農商工連携で生かすことはもちろん大事だ。しかし、どうも新技術や工業主導が強すぎるような気がする。
浜松の農山村では、小さなサイズのコミュニティ・ビジネスの目がふんだんにある。そうした小さなものを、大きな流れに組み込むのではなく、小さなものの魅力を発揮させる工夫も必要だ。
ハイテクだけでなく、ハイタッチの魅力を両輪としていかなければ、農山村地域と旧浜松市が合併した意味がない。農山村地域がハイテクの流れに組見込まれることで、本来の魅力を損なってしまわないか、心配である。
山から川、海、農業、工業などのフルセットをもつ「浜松は日本の縮図だ」と市長が言っていたことを思い出す。そうであるならば、経済面だけでなく、環境面、社会面とバランスのとれた成長を、もっともっと具現化する思想が必要だと思う。高度経済成長期のサクセスモデルにこだわる旧来的な思想の延長上に、幸せな日本の未来があるとは思えない。
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