潮路のとはずがたり雑記 **shioji's notes

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ヒストリアン

2007-04-19 16:46:25 | 本・小説
 『家なき娘』がやって来るまで、別の本に挑戦中。エリザベス・コストヴァ『ヒストリアン』1,2(実際はローマ数字、日本放送出版協会)です。見返しのアオリを読んで、てっきり現代→異世界のファンタジーだと思って読み始めましたが、違ってました。回想や手紙、手記の形を取った歴史ミステリのようです。「母のいない16歳の少女が父の失踪の謎を追って……」ってこれ、↑んなファンタジーのテンプレートではないかと。
 題材はドラキュラ伝説、といっても『吸血鬼カーミラ』のようなおどろおどろしいものではなくて、歴史学者が資料や伝説から謎を解いていくといったもの。簡単に言うと『ダ・ヴィンチ・コード』のドラキュラ版かな? いやほんと、読みながら路線が似てるなあと思って。
 いつものようにレビューは置いとくとして、ざっと読んだ感想を。これから読む方はバレ部分にご注意。

 『ダ・ヴィンチ……』に似ていると言いましたが、あれよりもずっと筋立てはしっかりしています。ただテンポのせいかひどく長く感じました。あとがきには映画化予定と書いてありましたが、いいとこ取りする巧い脚本家が当たれば、派手さはないけれどいい作品になるかも。ですが、三つの時制(ロッシの過去、ヒロイン両親の出会いの時代、ヒロイン16歳)が混在するので映画にはしにくくないかな? 読んでいる方はそれほど難しくなかったのですが。
 これも同じように比較してしまいますが、こっち世界の者にはドラキュラ、ドラゴン、ヴラド・ツェペシュ、ギリシア正教、等々の予備知識があまりないのでイメージしにくいところがありますね。邦訳のときに、もっとこのあたりを脚注その他でいれてもらうと助かったのですが……。まあ、そのあたりピンと来なくても、面白くはありました。
 いくつか疑問&ツッコミ。ヒロインの母ヘレンの本名はエレナのようなんですが、これは米留学に際して変えたんでしょうか? ヘレンっていかにも英語圏の名前で、東欧の人だと思って読むには違和感アリアリでした。そのままエレナじゃまずかったのかしらん? なんかネイティヴでないと分からないものあり? それから彼女が父親の姓ロッシを名乗っているのもなんか「?」。父親にそれと認められていない上、時代的社会慣習的にまだタブーだったシングルマザーの母が彼女にそう名乗らせるものでしょうか。留学の際、鉄のカーテンの向こうから出るにも障壁になりそう(亡命の恐れありとして)。
 あと訳文の不自然さが気になった箇所がいくつかありました。特に理由のなさそうな同じ言葉の繰り返し、いかにも直訳っぽいところ等々。読点の位置もなんだか。
 とはいえ、全体的には読み応えのある面白い話です。これ、少し手を入れたらすごくよくなるんじゃないでしょうか。あとがきにはすでに日本の読者向きに若干修正してあると書いてありますが……(まさか私が疑問に思った箇所がそれだったりして。まさか、ね)。

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