繁浩太郎の自動車と世の中ブログ(新)

モータージャーナリストとブランドコンサルタントの両方の眼で、自動車と社会をしっかりと見ていきます。

自動車産業体質 と「新型日産デイズ」

2019-04-22 18:17:29 | 日記

新型日産デイズ

 

■新型デイズの素性

日産自動車からデイズという新型軽自動車が発売されました。

以前の日産の軽自動車は主に三菱自動車で開発・製造されたものに対して外観などを少し日産風味にして発売されていたが、今回の新型ディズの開発はエンジンからボディまで全て日産自動車で行われました。

日産自動車の開発は登録車がメインで、つまり軽自動車より静かなクルマやより走るクルマ、より質感の高いクルマを造っており、感覚的に上級クラスの設計を知っている人達が造った軽自動車ということになります。

このことから「なんとなく良さそう」な感じがするでしょ!!!

・・・なんて、加減な話のようでずが事実はこういうものです。

 

製造は前モデルと同じ三菱自動車工業の水島工場ということです。

軽自動車を普通車と同じ製造ラインで流すと、わかると思いますが、コスト的に厳しくなります。

スズキやダイハツ工業は長く軽自動車を造っているだけあって、軽自動車専用ラインがあり品質はキープしながら、コストを押さえたクルマ造りとなっています。

 

 

■軽自動車のコスト

 コストの話をしておくと、軽自動車の原価は厳しいということは誰でも理解していると思います。

考えてみてください。

高齢者や足の不自由な方が乗られている「ホンダモンパル」は、35万〜します。

これに比べ、四人乗れてドアと天井もついて、匕ーターからエアコン、高速も快適に走れて・・装備も多くついて、150万〜・・・・機械としてみると絶対軽自動車は安いです。(笑)

 

そのコストは簡単に言うと、直材費(外部から部品を購入する費用)、内作費(カーメーカーの中で作る部品と完成車の塗装や組み立ての費用)、さらに販売費用と開発費用、人件費などからなります。

 

この中で、直材費は部品メーカーから購入するために数多く購入したりすると割安になり、少ないと割高になります。だからカーメーカーは機種間での共用部品を多くし数を増やすそうとします。

つまり、カーメーカー間で例えば同じ部品でも購入コストは変わります。

しかし、一台分のコストでいうとカーメーカー間の差は全体からみるとそれほど大きくは変わりません。この後の「内作費」や「販売宣伝、人件費」などの方がカーメーカー間の格差はあるように思えます。

内作費は、工場でボディやエンジンの部品を造る場合のコストと塗装組み立てのような生産コストで、これにはカーメーカーの体質(生産台数の多さとカーメーカーのコスト意識)が現れコスト格差がでます。

当然、軽自動車ならそれ専用の工場の方が割安になり、

さらに、内作費は工場の稼働率が大きく関係してきます。

当然、同じモデルを多く造る方が割安になります。

 

販売宣伝人件費では、カーメーカー間の人件費の差が大きくでる。

つまり収益を考えると、如何に少ない人数で、安い給与水準で造るかということになるのです。

販売宣伝費は、当面の収益ベストで考えるとよく削減対象になる項目ですが、リコール費用などのネガティブな費用も予算化して入っています。

開発費用に関しても、如何に少ない人数で、安い給与水準で開発するかということは同じですが、試作車を少なくし完成車テストを少なくすることが大きなポイントとなるので、トライ&エラーでなく一発必中が求められ、シミュレーション設計が大切になっています。

また、将来技術の仕込みもこの費用で行う。

近頃のクルマは電動化や自動化いわゆるCASE領域がプラスされて、開発製造コストはふくらみ、また全体的な販売台数減でカーメーカーの経常利潤率は数%から多くても10%以内となっているのが現状のようです。

厳しいですね。

 

また、販売店も全体的にクルマが売れなくなり、クルマ自体もダウンサイジングし・・と、新車販売だけでは中々厳しいという事情を抱えています。よって、車検を中心とした整備、さらに保険など、きめ細かい経営が必要となってきています。

あまり、値切らないように・・・苦笑

 

 

■カーメーカーにおける軽自動車の重要性

このように、自動車産業の収益構造は造って売るというだけでは厳しくなってきていて、カーシェアや通信などのように、トヨタ自動車とソフトバンクの関係をみても、サービスを売る方向に少しずつ変化してきているように思えます。

そんな中で、昔ながら?の販売台数を上げて収益を確保することを考えると、台数の出る軽自動車はカーメーカーにとって無くてはならない存在になっています。

勿論、1台当りの収益は低くても、相乗効果が期待できるのです。

 

このような背景から、日産自動車とホンダは自社で軽自動車を開発販売し、トヨタ自動車はグループのダイハツ工業と共に開発販売しています。

ダイハツ工業は歴史のあるカーメーカーで特に軽自動車造りにはその品質/コストで長けており、競争力のある軽自動車を造れるポテンシャルは高く、その総合性能はトップといえるかもしれません。

ただ、新型N-BOXなどはその商品力は素晴らしいですが、特に新型では動的性能が非常に向上しており、大変競争力のあるクルマとなっています。

それに今回日産自動車の新型ディズが加わり、軽自動車市場としては今後スズキの活躍期待と言いたいところです。

しかし、スズキはリコール問題がどれくらい響くか?という問題があり心配が残ります。

ホンダも、フィットの立て続け5回?に及ぶリコール問題でフィットブランドはかつての勢いを失くしました。

 

ところで少し気になることがありまして、なんで日産は、デイズ・ルークスというN-BOXやタント領域のスーパーハイトワゴンからでなく、ハイトワゴンのデイズからリニューアル(FMC)発売したのでしょうか?

多分何ヶ月かあとに、デイズ・ルークスは発売されると思うのですが・・・。

ワゴンR、ムーヴの元気が一時ほどではなくなっているし、ホンダもN-WGNはN-BOXほどではないし、「鬼の居ぬ間の洗濯」?? 笑。

 

 

■新型デイズ

軽自動車の販売が全体の四割近くに迫る中で、多くの車種が発売され、ユーザーにとっては良いことなのですが、カーメーカーにとってはその競争に拍車がかかります。

そんな中で、今回の新型ディズは追い上げる立場で、最新の装備や技術〜デザインをまとって、登場してきました。

今回、新型デイズに試乗する機会があったので、私の印象をいいトコ、良くないトコ含めてレポートしたいと思います。

 

日産自動車の地下駐車場から試乗に乗り出して、まず感じたのは「シート」の良さでした。

よくシートの良さは長距離乗ってどうのこうのという人もいますが、このデイズのシートは座ったときからその違いがわかります。

お尻と背中〜もも、体全体を優しく包んでくれます。

まさに、普通車品質です。

 

次に、外の一般道へ出て加速するとちょっとHEV車のような、ちょっとディーゼル車のような、660ccなのに低回転からのモリモリとまではいきませんが、トルク感があり実にスムーズに加速します。

これは「スマートシンプルハイブリッド」と名付けられた簡略ハイブリッド?によるようです。

最近のエンジンはフリクションを少なくして効率よく回るようになっているので、エンジンブレーキが効きづらいですが、試乗車は回生ブレーキもかかるので、エンジンブレーキとしての減速感はちょうど良い感じでした。

 

また、発進加速だけでなく、その後も一般道から高速まで、旧型デイズよりトルク感のある加速をします。軽自動車を超えた走り感があります。

またNVは、ドアガラスが薄いせいもあり?当然何かしらの社外の騒音は感じますが、一般道から高速まで全体的には静かでストレスは感じませんでした。

これも軽自動車を超えた感はあります。

ただ、高速ではセルフステアといいますか、ハンドルを少しだけ切ってハンドルから手を放すと、どんどん切れ込んで、真っ直ぐな走りに戻りません。

これは、道路には微妙に凹凸や傾斜があるので、それをドライバーがほとんど気づかないままに修正しながら走りますが、その修正がちょっとやりにくいということに繋がりますし、あとはフィーリングの良し悪しの問題になります。

EPS(電気パワーステアリング)の設定の問題ですね。

 

あと、静的には室内広さが大幅に向上しました。

トーボードつまりアクセルポイントが82mm前へ行き、その分室内が広くなりました。

認定上の室内長は、インパネ後端からリヤシートバックの後端までとなりますが、これだと薄いインパネや荷室を狭くすれば室内長は増えます。

つまり、実質的な室内長さは変わらないのに、設計の仕方で変わるということになります。

クルマの室内長をアクセダルポイントから、テールゲートの内板までとすると、そのクルマの室内長の実力が表せます。

簡単にいうと、全長規制のある軽自動車での室内長の実力は如何に、エンジンルーム長を短くするかとテールゲート厚さをいかに薄くするかという工夫に尽きるということです。

こういう意味で、新型デイズのトーボードが82mm前に設定できたということは、その分室内長が増え、前席と後席の間で68mm、荷室で約14mm増えたということになります。

(82mm=68mm+14mm)

エンジンルームを82mmも短くするのは、相当の工夫があったことと思います。つまり、設計的に苦労して勝ち得た数値ということになると思います。

実質的に、後席の膝スペースはシートバック形状の工夫とあわせて+70mmと発表されています。後席に乗ってみるとゆっくりと足を組めます。

軽自動車企画の全長3400mmの範囲の中で、室内で+80mmはすごいことです。

  

 

 

もう一つ、特筆ものはデザインです。

このデザインは、軽自動車としての「数」を考え、少しでも多くのユーザーに長く乗ってもらうことを考えたデザインなっていると思います。

この頃の軽自動車は、キャンプなどの遠出にも使うユーザーが増えているそうですし、都内でも軽自動車をよく見かけますので、ファーストカーとしての位置づけとなってきているようです。

つまり、ひと昔前の地方の奥様用のセカンドカー=軽自動車という時代とは異なってきているのです。

そういう意味で新型デイズは、パッと見のデザイン魅力を追求したのでなく、よく考えコントロールされたデザインになっているように見えました。

つまり、ファーストカーとして使っても耐える普遍的ともいえるデザイン。

悪く言えば「普通」と捉える方もいるかもですが、実際にクルマをみてもらうと所謂「手込み感」があって、高い質感を感じるデザインになっています。

デザイナーは、どうしてもパッと見のデザイン魅力を追求しがちなのですが、日産自動車のデザイナーは「オトナ」ですね。笑

 

■今後の軽自動車

 このように、新型デイズはクルマの基本設計となるパッケージングからリニューアルし、エンジン、トランスミッション〜安全装備、ハイテク装備、小物入れ等の親切装備、さらにカラーリング、デザインまで、オールリニューアルされました。 

今後の、スズキ、ダイハツ工業、ホンダ、日産自動車の四つ巴???がどうなるか???

ホンダは、N-BOX/N-BOX+/N-WGN/N-ONE/N-BOX SLASH/N-VANと多箱展開で、FMCしたのはN-BOXだけ。今後、これらの箱を全てFMCして回すのは開発工数的にも厳しいと考えますから、どういう戦略でくるのか? 楽しみです。

勿論、私なら「こうする」という考えはありますが、リタイアした身なので控えておきます。笑

 

ダイハツ工業はトヨタ自動車の「教育的指導」をどうこなすか? いなすか? いかにプラスにもっていくかが見ものです。

商品でいうと、ダイハツ・キャストのようなピントのボケた商品をいかにまっとうな商品にするか? つまり、ターゲット・ユーザーの履き違えを解決できるか?

 

カーメーカーの当事者の立場でなく、こうやって考えてくると、ホントに面白い。

現役の皆様、私のような外からみるとよくみえるものなんです。

 

 

 

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ラマン分光が魅力的 (CCSCモデルファン)
2019-11-21 11:12:31
境界潤滑 ダイヤモンド トライボロジー 状態図 熱力学 ラマン分光 ボールオンディスク
返信する

コメントを投稿