食べる

食べることは

生きること

生きられること

しあわせなこと



何かを口に入れ

目を伏せて噛む人

お茶で流し込む人

談笑しながら食べる人



大食堂の眺めはすてきだ

食べてる人は

なんだかんだ言っても

しあわせそうだ

見ているわたしが

しあわせになる風景だ



その食堂の一箇所に自分がいて

しあわせな人をぼんやり眺めていられる

そんなしあわせをもらうお昼時



誰かが言った

食事は

何を食べるかではなく

誰と食べるかだと



すてきな言葉だ

誰と食べてもしあわせ

食べられることはしあわせ

生きられることはしあわせ



悩みも　苦労も

噛み砕いて

呑み込んで

明日もきっと

しあわせ

花びらの贈り物

色を

持ち寄って

混ぜ合わせて

組み合わせて

バラの花ができました。

夢バラと呼ばれるその花は

たくさんの夢を形にしてきました。

見る人の心を映し

夢を読み取り

そっと形をくれました。

気がつく人は

あんまりいません。

でもそれは

何十年何百年もの間

ずっと続けられてきたことなのです。

旅人も

少年も

年老いたマダムも

みんなこの花に

思いを寄せました。

バラはうれしかったのです。

今日も

見る人の心を読み取り

夢を形にする仕事が

ひそかに始まっています。

夢バラは

誰よりも一番

夢にあふれています。

カエルの相談

空気がひんやりしてるね

もっと蒸し暑くてもいいのに

新しい夜だね

新しい夜だよね

みんな朝のことばかり考えてる

新しい朝ばかり考えてる

夜にこそ命は育まれるのに

ほんとかい？

ほんとさ

漆黒の闇は

心の目を開かせるし

耳と感性を敏感にさせるんだ

だから君は夜にしか鳴かないの？

だからそこで思い切り鳴くの？

そうさ

人間は鈍感だから

昼には気づけないものがたくさんあるんだ

夜だね

夜だね

うれしいね

いつも新しい時

新しい時

やさしい時間

明るい空気と

ほっとする笑顔と

とびきりのおいしさと

あたたかい音と

静かな声と

豊かな自然と



旅人はほかにいったい何を望むだろう



数百年も前から一人そこに在って

誰のことも待たず

誰のことも追わず

ただ来る日も来る日も

雨や風や木漏れ日に包まれてきた

小さな石仏



旅人は立ち止まり

向き合い

確かめて

立ち去る

「また来ます」

そう心の中でつぶやいて



ここは港

ここは船着場

心が帰るべき小さな故郷

そして再び　

来る日も来る日も

日常という大海原に漂う



希望という帆を上げ

意思という舵を握り

やわらかな風を受けて