アトリエ・きき

ここから何が始まる?

何の音だ

2016-06-30 06:53:09 | Weblog
時折聞こえてくるものがある。

記憶の底から研ぎ出された、石のかけらのような。

風の流れの向こうに、微かに揺れる何か。

知っているようで、たぶんまだ知らず、近いかと思えばそうではなく。

ただ一陣のつむじ風が連れてきた、あっという間のひずんだ音。

つかまえようとすればするほど、遠ざかる逃げ水。

夏の日、溶けかかるアスファルト上に揺らめく陽炎。

アハハアハハと、笑いながら去った夢の中のピエロ。

耳もとを一瞬くすぐり、すぐに消えてしまう昼下がりの蝉の声にも似た。

稲妻に先導される間の抜けた遠雷の後に、吐き捨てるように投げた別れの言葉?

いやいやそんなありていな台詞でもつぶやきでもなく。

コーヒーの湯気の向こうを走る、青い車がひきずるエンジン音か。

時折わたしを悩ませる音は、愛なく、情緒なく、醒めていて無機的で、懐かしくても涙するには至らぬ、夜明けの鳥の声を想わせ、・・・。







  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地上の涙

2016-06-15 06:51:14 | Weblog
いい雨だよね。

悲しみが流れていく気がするよ。

涙には心身の浄化作用があるらしいよ。

だったら雨には地上の浄化作用があるねきっと。

あんまり降られても困るけどね。

うれしいと言っては泣き、悲しいと言っては泣き、

人間は、泣くことが多いね。

神様はさ、なんで人間にだけ、涙っていう生理現象をプログラミングしたんだろう。

あぶないと思ったんじゃないかな。神様だからさ。

こういう浄化作用でも持たないとやってけないような、

いろんなことが起きるのを見越してたんじゃないかな。

一回泣くごとに、たまっているものを外に押し出して、

少しずつ少しずつ押し出して、

洗い流して、

また次の一歩を踏み出せるようにしたんじゃないの?

世の中悲しい事件が多すぎるからね。

でもさ、その分、うれし涙や感激の涙を流す人が多ければ、

地球は、なんとかやっていけると思うよ。

喜びや悲しみは誰にでもやってきて、

悲しみは選べないことが多いけれど、

生きていれば、

またうれし泣きをすることだってあると思うんだ。

もし今がしあわせだったら、その人はそれを拡げて、

地球を、うれしさとかしあわせとかの波動で、

くるんであげたらいいと思うんだよ。

あっちこっちで悲しみが降り注いでいるから、

その悲しみの大地が、少しずつでも浄められて、

喜びの芽が出るように、

うれしさとしあわせの思いも、そのまま伸ばしてほしいんだよ。

みんなで悲しんでいるよりは、地球も喜ぶと思うんだ。

ふーん。地球がね・・。

思いとか願いって、すごいらしいよ。けっこうすごい力を持ってる。

宇宙から見たら、こーんなちっちゃい地球だもん。

みんなの思いで、きっと悲しみだってうち消せると思うんだ。

悲しい時はたくさん泣いて、心と体を浄化させるしかない。

しあわせな人は、しあわせの連鎖を作り上げていけばいい。

そしていつか、どこかのしあわせの波が、どこかの悲しみをさらっていってくれる。

考え方へんかな。

ううん。へんではないと思う。

それでさ、今しあわせな人が悲しみの涙を流さなくちゃならなくなっても、

いやそれはあると思うんだよね、人間なら。

悲しみの涙を流さなきゃならなくなっても、

それまでに放ったうれしさとかしあわせとかの思いが、

どこかで誰かのしあわせのプラスになってれば、

それはもうしょうがないと思うんだ。

だってさ、この世の中、あまりにもいろんな人がいて、

経験することも、感じることも、あまりにも違いすぎるんだもの。

そんな中にいたら、どうしていいんだかわからなくなっちゃうんだ。

あの国のあの人に、この国のこの人に、って、

そばに行って元気出してくださいって言えないじゃない。

うん。たしかに。

自分が苦しんだり悲しんだりしてる時も、

誰かに飛んできてもらって、一緒に泣いてくださいとは思わないじゃない。

だからさ、僕は僕でがんばるよ。

今自分にできること。

うん。そうだねー。わたしもがんばるよ。いろいろあるけどね。

なんにもない人なんていないよー。

でも生きてれば、きっといいことあるよ。

にっこり笑えることがある。

そうだね。そう思いたいよ。





  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山鳩の鳴く朝に

2016-06-02 05:40:16 | Weblog
ひとつの旅が終わり

ひとときの凪がやってくる

冷たく厳しい風が来ても

やがて彼方に去る



幾千万の記憶を刻んだ土地は

幾千万の思いを宿し

やがてまたたくさんの人の時間の

受け皿となっていく



山鳩が無心に鳴いている

大昔から変わらない声で

木から木へと飛びながら

朝を歌っている

辛い思いは風に流しなさいと

言っているように思えるのは

わたしの気弱さ



人の感情は

自分の中にとりこまないこと

わかっていても

心が痛いことはある



鳴くと泣くとは同じ音

鳴くはsingにしてみよう

わたしは歌う

わたしは詠う

わたしは唱う

今日の歌を

わたしの歌を



わたしの歌は

わたしにしか歌えない

あなたの歌は

あなたにしか歌えない



そんな命の歌を

ていねいに重ねて

ていねいに消して

最後の日を迎えたい











  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする