アトリエ・きき

ここから何が始まる?

雲に乗って

2017-06-25 08:37:10 | Weblog
雲に乗って旅をしよう

ふわりふわりと

風の向くまま 気の向くまま

遠いところに旅をしよう

雷様に撃たれても

嵐にちぎり飛ばされても

雲は 雲は

またわたしのところに 戻ってきてくれる



雲に乗って旅をしよう

いい匂いのする街へ

木の芽が生まれる山の上へ

ひょっこり顔を出して みんなを驚かせるんだ

そしてそれから

にっこりとほほえみ合うんだ

いやなことなんてみんな忘れるように



雲に乗って旅をしよう

あの子に会いに

その子に会いに

あの歌を届けに

この歌を届けに



そして

君の心にも

だれかの心にも

ぽっと少しだけ陽がさして

明日がうっすら見えるようになる

明日の扉を押し開いてみる 気持ちが持てるようになる



そんなふうになれたらいいな



雲には

わたしの願いが 乗っかってるんだ


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雨上がり

2017-05-01 23:56:22 | Weblog
緑が風にそよぐ

空の向こうからヘリコプターがうなる

風は カーテンの向こうとこちらで
ゆらゆら ゆらゆら
時間をあそぶ

ヘリコプターの運転手になりたかったわたしは
今もここにいて
まだあそこに行けないんだ

もみじの枝が うんうんとうなずき
少し葉音を高くした







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さよならさくら

2017-04-17 23:06:43 | Weblog
さくらが仏壇にいます

庭のさくらんぼの木の枝です

東の山に 山桜が見え隠れしています

今年は会えなかった 憧れの花です

東北でいま さくらの開花が伝えられています

春を忘れない 変わらぬ木々です


わたしが見ても見なくても

花は咲き 風に揺れ 雨に打たれ

そして今頃 音なく散っているかもしれません


その中にわたしが

立っても立たなくても

花びらはやさしく 地にふりそそぎます


それをじゃましない存在でいられることを

うれしく感じます

きっと たぶん だいじょうぶ


いつか

さくらの木の下に腰を下ろし

吹雪のような花びらがうずめる空を

眺めてみたいと思います


かつて山裾の大木から

はらはらはらはら

尽きることなく舞い続けるさくらを

言葉わすれてみつめたことがあります


そんな時間を

また過ごしたいと願っています


花は

誰が見ても 見なくても

今年も変わらず咲きました


来年も変わらず咲いてくれることを

今年は少し 祈っています






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白鳩と蝶々の行方

2017-03-29 01:53:12 | Weblog
木蓮とこぶしってどう違うの?と、毎年何人かの人に尋ねられる。わたしは決まって、「白鳩みたいに、花が肉厚で輝いてるのが木蓮で、白い蝶々みたいにひらひらしてるのがこぶしだよ。」と答える。

本当に、白木蓮のつぼみがいっぱいについた木は、白鳩がたくさんとまっているようで見とれてしまう。いい天気なら、青空をバックに、花がぴかぴか輝く。サテンの布のようでもある。
こぶしは、雰囲気がどこかいい加減。でもかわいらしい。つぼみが赤ちゃんの握りこぶしのようだから、この名がついたのだそうだ。

いつも思う。春先の気まぐれな天候を上手にくぐりぬけるのは、木蓮とこぶしにとって至難の業だと。水分の多いこの花たちは、霜に遭うと、一気に茶色くなってしまうのだ。
ここ数年、きれいに花になった木蓮を見たことがない。気の早い陽気に誘われて美しいつぼみをつけても、やっぱりやってくる遅霜の朝に、茶色く首を垂れ、そのまま優美な花になることができない。今年もそうだった。

それでもこぶしはまだ幾分逞しく、木に囲まれたり家に寄り添ったりして直接の冷気を免れたものは、今満開の花を咲かせている。おめでとう。よかったね。
木蓮、お気の毒。花となっても、茶色い縁取りが痛々しい。あなたたちは傷つきやすい。デリケートすぎる。来年は、つぼみになる時期を、もっと注意深く選んでもらいたいものだ。失敗から学習しなさい。(きっといつか学んでくれると思う。植物だって賢いはず。)






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やっと会えたね

2017-02-23 23:24:21 | Weblog
降ったよ雪が
白い 白い 白い雪が

やっと会えたね
待っていたよ
舞っているよ 静かに 楽しそうに

雪は空をうずめ 車と走り ストップモーションで落ちてくる
本当に 本当に 待っていたんだ
わたしはなんで 雪子という名前に生まれなかったんだろう

恋人どうしになれそうな二人は うれしそうだよ
なんだか話がはずんでいるよ

わたしはわたしは
世界のみんなに雪の到来を告げ
仕事中に何度も入り口のドアを開け
まだ降ってるだの やだ小降りになっちゃっただの 地面に積もり始めただのと
わくわく はらはら 大忙し

目も 心も 雪をファインダーに閉じ込めたくて
感覚を 最大限に研ぎ澄ます

雪は 不思議の国の演出家
林を 畑を 街並みを 白く 清浄にして 
人の心に 風を起こす
黙っているのに なんて雄弁にドラマを物語るんだろう

そうだよ 物語はいつも ここから生まれるんだ

温かい豆のキッシュと ミモレットとフェンネルのパウンドと 赤キャベツの酢漬け
ごちそうありがとう

ほらね 雪は言葉になった
そして雪は絵になるよ
やがて雪は 音楽にもなるよ

さぁて 旅に出ようか
冷たい空気をいっぱいに吸い込んで
空に浮いて

でもでも花が寒さを感じないように
今日はそういう魔法をかけて

ありがとありがと
昔 お風呂に入っていたおばあさんたちが言ったよ
うふふ しあわせありがとう

わたしも そうやってつぶやいてみよう

しあわせありがと
奇跡をありがと

しかし寒いねこのお店
すばらしい すばらしい 





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おおさむおさむ、山から小僧が飛んできた。なんと言って飛んできた。寒いと言って飛んできた。

2017-01-17 13:14:12 | Weblog
寒い。寒すぎる。激しく寒い。極寒。・・・

もうすぐ二十四節気の「大寒」、一年で一番寒い時期に突入する。
ともあれ、うちは既に、我慢大会のような寒さだ。こんな家に住んでいる人間は珍しいに決まっている。北海道地方などでは、冬でもTシャツで過ごせるような室内温度にしてあるそうだ。
もっともそれは、そのくらいに保って体温を上げておかないと、外に出た時に耐えられないかららしい。

しかしここまで寒いと、もう逆に可笑しくなってくる。痛快に笑いとばしてやれ、みたいな気分になってくる。
まったく、笑い話である。朝は夫とふたり、リサイクルで買った分厚いコート(夫の場合)を着て、首にマフラーを巻いて、白い息を吐きながら食事をしているのだ。

ちなみに今朝のわたしの服装は、半袖シャツ、長袖シャツ、毛のとっくりセーター、父のおさがりの毛のポロシャツ、その上に、やはり父からまわってきた、中にフリースのついたジャンバー。
反射式石油ストーブを焚いていてこうである。しかし今年コタツは出していない!!! これすごい自慢です。

でもね、こんな生活をしてると、釜の蓋を開けた時のふわりとした湯気の温かさだとか、熱いコーヒーを入れたマグカップを両手で包んだ時の心地よさだとか、そんなものが、ほんとにしみじみとうれしくなるのである。あ~しあわせ、なんて、幸福度感得のハードルがぐんと低くなる。ストーブを焚いて上がった室温の1度(たぶんそんなもん)が、廊下から入った時とってもありがたかったりする。
もしかしたらこれは一種の豊かな生活とも言えるのではないだろうか。

笑えないのは、深夜黙々と書物などをしている時。 足先も指先も、凍りつきそうに冷たくなり、かじかんでどうしようもない。
「さ、さむい。さむすぎる・・。」と、一人震える声で言ってみたりする。

今も手指はかちかちだが、膝に猫のペリがいる~。ペリが乗っていると、アンカを抱いているようで、そこだけとても温かいのだ。いいこいいこ。
ペリもこんなところでまるまらねばならず気の毒だが、コタツもないので仕方ないのであろう。

極寒の生活、せめて目とハートにあたたかく、と、昨夜小さな花束を買った。 300円なり。冷蔵庫と同じなので、うちでは花もおそろしく長持ちする。玄関の正月用の花と千両も、まだぴんぴんしている。
寒さへの抵抗力もつくし、空気が乾燥しするぎることもないし、こんな暮らしも悪くはない。 (そう思わなかったらやっていけない!)

日記のタイトルを考えていて、ふと思いついたのが「おおさむこさむ・・」のわらべ歌。わたしは祖父からきいた。
昔たくさんいた小僧たちは、今どこにいるかなぁ。
・・・ん? うちに大集合か!?




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冬のシンフォニー

2017-01-05 23:50:40 | Weblog
世界に、力強く冷気のBass。

風が欅の枝のタクトを振れば、
霜柱立ち上がり、
凍った椿の葉が歌い、
苔はかすかなビブラートでそれに応える。

街の光の洪水は、胸踊るプロローグ。
夜に流れる回転木馬の残像は、
まるでとりどりの色のカノン。

回れ 回れ まだまだこれから。
夜はこれから。



どんよりした曇り空に奏でられるのは、第2楽章アダージオ。
時間も、風も、
歩をゆるめて内省を促す。


地鳴りのようなシンバル、
太陽がひとたび顔を出せば、
世界は再び色彩にあふれ、
野イバラの芽や水仙のつぼみ、凍った小川のセリの根が、
一斉に命に目覚める。

そして冷気のBassが、ほんの少し軽くなり、
冬のシンフォニーは、
太陽の動機と空気の展開によって、
終章に向かい始めるだろう。



足踏み 足踏み。

心はとどまりたくても、
待ってはくれない季節の流れ。

重厚な冬将軍の轟きが鳴り響いているその間に、
生き方のCDEを復習する。

やがて来る春にとまどわぬように。
明るい陽射しに、向き合っていけるように。

冬を恋うる気持ちを、封印することができるように。





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白い部屋から

2016-11-25 13:49:19 | Weblog
そこは小さな部屋でした。

遠い国から流れついた木の枝は、海がよくよく撫でたので、手触りはすっかりなめらか。あの子が集める時も、少しも苦労はありませんでした。

彼女は、まるでコスモスの花束を抱くように軽やかに、自分の背丈ほどもある枝を、たくさん持ち帰ってきました。

僕はそれを、ひとつひとつつなぎ止め、天井に飾りました。
彼女はうれしそうにそれを、いつまでも眺めていました。

すると一本の木の枝が、歌を歌い始めました。どこかで聴いたことがあるような、懐かしい歌です。
僕は、長いことしまったままだったアコーディオンを取り出し、それに合わせました。

歌は少しずつ拡がって、やがてすべての枝が歌を歌うこととなり、僕のアコーディオンととけあって、部屋いっぱいに響き渡りました。

彼女はいっそうにこにこ顔です。自分が集めてきた枝たちが、こんなにも歌がうまいとは、思いもしませんでしたから。
そんな彼女を見て僕はうれしくなり、いつまでもいつまでも、アコーディオンを弾き続けました。

ふと気付くと彼女は、部屋のすみで小さくまるくなって眠っています。
その姿がまるで猫のようだったので、ぼくはおかしくなってしまいました。

しあわせな夜だなぁと思いました。

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秋の日の思い

2016-11-07 13:43:58 | Weblog
ぽっかりあいた日常の穴に

ちいさなあかりを灯そう

小刻みにふるえる柿の葉とか

膝をあたためてくれる猫とか

瞳にやさしい花びらの色とか

ひとつひとつをぽっと灯るあかりとして

心を照らしてみよう

疲れているんだよ

疲れているんだね

何をそんなにがんばっているの

何をそんなにおそれているの

あかりは

思ったよりやさしくて

思ってより強くて

ぽっかりあいた日常の穴は

またたくまにうまっていくよ

ピュアに生きて

ピュアに愛して

ピュアに消えたいから

手のひらはにぎらないよ

いつも空に向けているよ

かさかさのてのひらが

見えないしあわせでいっぱいになっても

手のひらはにぎらないよ

いらなくなったものがちゃんとこぼれるように

手のひらはいつも空に向けて開いておくよ

何も知らない子猫が

このままいい夢を見られるように

わたしはもう少し

じっとしているよ





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ありがとカレー

2016-10-28 19:35:43 | Weblog
今日は死後と(仕事ですよ~。いきなりこんな変換てあり!?)が早く終わった。
車の助手席に乗せた、まっかなトマト3つととサラダ菜一株。どちらも村内の友人知人からもらったものだ。それを、ちょっと離れた友人宅にお福分けに行くこと決定。

窓は大きく開けておいたが、雨が降り込まなくてよかったものの、逆に外気温が上がり、車内はたいへんなことになっていた。
トマトも菜っ葉も日に照らされ、さわれば温かくなっている!
しかしもともと新鮮だったことと水浴びをさせてきたことが幸いし、ぐったりはしていなかった。

友人に電話。在宅を確認。彼女の住まいは、勝手に入って勝手にものを置いて来ることのできないマンションで、そこに引っ越して以来、野菜を気楽に届けることが、むずかしくなってしまった。

わたしより10歳年上の彼女は4月に夫君を亡くした。1年間の闘病を寄り添って支え、看取ったのだった。
余命を知らされていたご主人は、家族とともに写真館にでかけて遺影を撮り、集合写真を撮り、死後の連絡先一覧を作成し、樹木葬のだんどりを整え、お別れ会で配布するリーフレットのコメントを書き、家族に囲まれて逝った。
病院から車で自宅に帰る際に、桜が満開の元職場をまわったと聞き、胸が詰まった。

緑の風が吹き込むマンションの5階、さっぱりと散髪をし、鶯色のスーツを着たダンディな姿の遺影に、梅の花の香りの線香を手向けさせてもらった。

友人は現在一人住まいで、車を持たないため、家にいることが多い。
今日は朝からカレーを作ったという。3時4時がランチタイムになるわたしは、いつもより早いお昼をご馳走になった。

いや~それがおいしいのなんの!
彼女は昔から料理上手だったが、カレーは初めてだ。見た目からしておいしそう。
写真に撮ってもいい?ときくと、じゃあもっと体裁よくするからと、サラダが出て来た。

薬味のらっきょうは、去年自分で漬けたものとのこと。ふだんわたしは自らすすんでらっきょうを食べることはないが、これは味がなじんで、まさに「ピクルス」、という感じだった。全部平らげた。

彼女のカレーは、オリーブオイルでタマネギを炒め、挽肉を炒め、野菜を炒め、日本酒を注ぎ、ブイヨンキューブとそのへんにあった昆布をぱちぱち切って入れ、煮込んでカレー粉、牛乳、ヨーグルト。以上。
明るい黄色がきれいな、サラサラおしゃれなカレーだった。

「ごはんはないけど、焼きたてを買ったパンがあるから、それにつけて食べてね。」
近所に新しくできたパン屋さんは、若い夫婦の経営。なんとなく人柄の分かるような、やさしい味だった。

デザートにはヨックモックのジュレとオレンジ、そしてコーヒー。
そのスマートなヨックモック、ある時彼女はそれを広告で目にし、おいしそうだなぁ食べたいなぁと思ったらしい。
そうしたら数日後に、同じものがお友だちから届いた!

すご~い。
これまた非常においしかった。ジュレの中に、小さな小さな星形の、あれはなんだろう、果肉なのかな、何かかわいいものがたくさん入っていた。
分厚い輪切りのオレンジもおいしかった~。

彼女もラッキーだが、わたしもラッキーだ。一人暮らしにもかかわらず、朝たくさんカレーを作ったところに上がり込み、ひとりで食べるのもつまらないからと、息子さんに持たせた残りをとっておいたというデザートをご馳走になり。

おいしいおいしいとカレーを食べていたら、最近そんなふうに食べてくれる人がいなくてつまらなかったと彼女が言った。
またご馳走になりに来るからと、勇んで答えた。なんていいお役だ!



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お菓子の国から

2016-10-13 00:05:48 | Weblog
甘い匂いのかごを抱えて
いつもの天使がやってくる。

レ-スのおおいをふわりとめくると
そこには 
とれたてのいちごやカラント ブルベリ- ラズベリ- 
そして グリ-ンもあざやかなミントの葉をあしらった
生クリ-ムたっぷりのケ-キ!

ありがとう!
今日は お隣のコロ その向こうのミケランジェロ(通称ミケ) 
シマフクロウのビ-を呼ぼう。
「天使さん ゆっくりしていってね。
あなたがいると みんなとっても喜ぶから。」

天使はうれしそうに微笑んで わたしの横にすわる。
わたしたちはそれから 今朝咲いたオリエンタルロ-ズのことや
昨日かえったひよこのことや
失敗したアップルパイのことなどを
それぞれに報告しあう。

「今度はいつ来られる?」
「あなたが望んでくれるなら いつでも。
 あなたがひとりの時に いつでも。」

わかった。
だからわたしは もうしばらくひとりでいる。
あなたともっとおしゃべりしたいから
もうしばらくひとりでいるんだ。

天使は、安心したようにお菓子の国へと帰ってゆく。
最後に振り返ったとき ほほにかかる巻き毛が
風できらきら光った。





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海の月道

2016-10-07 16:00:09 | Weblog
海が盛り上がり、わたしを迎えに来る。

月に呼ばれて、波は応える。

うねる。砕ける。返す。
うねる。砕ける。返す。

ほの明るい月の道は、繰り返す営みの向こうで、たおやかに夜に挑む。

吠吼は鎮まらない。怒涛は止まない。

闇を越え、時に運ばれ、何かに呑まれそうになるわたしを、じっと見ている。



海が盛り上がり、月の道を湛えて、

わたしを呼んでいる。

いつあそこに乗ろうかと、わたしはぼんやり考えている。








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思い出

2016-09-30 13:22:08 | Weblog
(写真と文章は関係ありません)


「古い」と形容できる友人の、絵の展示を見た。ハガキには、駅の北口から40秒と書いてあったが、わたしは63秒かかってしまった。
そのお店、なんともいい雰囲気。とても小さな、カフェの類のお店で、おいしそうな焼き菓子やパンや本が、ところ狭しと並べられている。歩く時も、体を横にしなければならない。

絵はイラスト的で(絵の具を使ったイラスト?)、うまい、という絵ではないのだが、あたたかい。あたたかいだけではない。小さな冊子にまとめられたイラストは、いいかげんなようでいて妙にリアルだったりする。詩や音楽のような言葉が添えられているのだが、それがまたとてもいい感じで。

彼はもともと文筆家志望。純文学を目指していた時期もあったとわたしは認識している。
その彼がパソコンを使ったイラストを描き出したのは数年前だ。
そう書くと、何か軽々しく聞こえるかもしれないが、イラストと言葉の結合により、彼独自の世界が確立される。誰もまねをすることはできない。

てらいのない子供の視点と神の視線の融合、はっとするような構図、決して声高でなく想像力を刺激する表現。
わたしは、彼の世界もまた大好きなのである。今回の小冊子2種、購入できるようにしてくれるよう頼んできた。

そのカフェ(というほどかっこいいお店では決してないが、とても好きな雰囲気)の名物というチャイを注文して飲んだが、それがまたおいしい。
赤紫と青のスミレが描かれたアンティークの受け皿に、たっぷりした茶碗。木のスプーン。
熱いチャイに、金属壷から、魔法の薬のように砂糖を一さじ。ぐるぐるぐるぐる、そのざらめが消えるまで攪拌し続ける。
そしてひと口。ああしあわせ。

狭い店内は、どのテーブルも埋まっており、一番奥、金髪欧米人の男性と相席させてもらったが、非常に居心地がいい。たぶんどこに座っても。
男性は英字新聞を読んでいたが、わたしが帰る時、そっとイラスト小冊子を手にとっていた。やっぱり、さっき読んだあとに、「いかがですか?」と言ってやればよかった。
迷ったが、新聞を熱心に見ていたので遠慮したのだ。

友人と、応援するサッカーチーム、アントラーズの話などを少ししてお店を出た。
さっきの、ずっしり重い(暗いわけではない)気分が、いつのまにかふんわりあたたかく中和されている。

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遠い秋の

2016-09-17 05:48:34 | Weblog
一日が終わり 次の一日が始まる前の
静かな時間

窓の向こう側 秋の虫が命を歌い
空の深いところを 月がゆっくりと巡る

今日 何度ありがとうを言っただろう
あした いくつ新しい出会いがあるだろう

未来を描けば不安がよぎり
昨日を思えば居心地が悪い

こんなところを綱渡りしながら
扉を 一枚一枚開けていく

開けたところに笑顔のひとつもあれば
それは 大成功の一日と言いたい





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音の残していくもの

2016-08-19 07:10:32 | Weblog
やすらぎ  切なさ 

かつて居た場所の匂い

あこがれ  まだ見ぬ人

涼やかな風



輝く瞳は 深く澄んで

細い金色の髪 豊かな胸に踊り

少女の時と同じほほえみがこぼれる 音に満ちた時間の中

ただ人は 

いくつもの笑顔が とわにこわれぬようにと願うばかりで



小さな心ひとつ まるい椅子の上に残し

今日も開く にび色の扉



歌声は消えない

音楽は終わらない



見上げてごらん

音の波は宙に漂い 

やがてきこえなくなる耳にも響き

確かな記憶となって また刻まれるはずだ






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