アトリエ・きき

ここから何が始まる?

白い部屋から

2016-11-25 13:49:19 | Weblog
そこは小さな部屋でした。

遠い国から流れついた木の枝は、海がよくよく撫でたので、手触りはすっかりなめらか。あの子が集める時も、少しも苦労はありませんでした。

彼女は、まるでコスモスの花束を抱くように軽やかに、自分の背丈ほどもある枝を、たくさん持ち帰ってきました。

僕はそれを、ひとつひとつつなぎ止め、天井に飾りました。
彼女はうれしそうにそれを、いつまでも眺めていました。

すると一本の木の枝が、歌を歌い始めました。どこかで聴いたことがあるような、懐かしい歌です。
僕は、長いことしまったままだったアコーディオンを取り出し、それに合わせました。

歌は少しずつ拡がって、やがてすべての枝が歌を歌うこととなり、僕のアコーディオンととけあって、部屋いっぱいに響き渡りました。

彼女はいっそうにこにこ顔です。自分が集めてきた枝たちが、こんなにも歌がうまいとは、思いもしませんでしたから。
そんな彼女を見て僕はうれしくなり、いつまでもいつまでも、アコーディオンを弾き続けました。

ふと気付くと彼女は、部屋のすみで小さくまるくなって眠っています。
その姿がまるで猫のようだったので、ぼくはおかしくなってしまいました。

しあわせな夜だなぁと思いました。

秋の日の思い

2016-11-07 13:43:58 | Weblog
ぽっかりあいた日常の穴に

ちいさなあかりを灯そう

小刻みにふるえる柿の葉とか

膝をあたためてくれる猫とか

瞳にやさしい花びらの色とか

ひとつひとつをぽっと灯るあかりとして

心を照らしてみよう

疲れているんだよ

疲れているんだね

何をそんなにがんばっているの

何をそんなにおそれているの

あかりは

思ったよりやさしくて

思ってより強くて

ぽっかりあいた日常の穴は

またたくまにうまっていくよ

ピュアに生きて

ピュアに愛して

ピュアに消えたいから

手のひらはにぎらないよ

いつも空に向けているよ

かさかさのてのひらが

見えないしあわせでいっぱいになっても

手のひらはにぎらないよ

いらなくなったものがちゃんとこぼれるように

手のひらはいつも空に向けて開いておくよ

何も知らない子猫が

このままいい夢を見られるように

わたしはもう少し

じっとしているよ