アトリエ・きき

ここから何が始まる?

白い部屋から

2016-11-25 13:49:19 | Weblog
そこは小さな部屋でした。

遠い国から流れついた木の枝は、海がよくよく撫でたので、手触りはすっかりなめらか。あの子が集める時も、少しも苦労はありませんでした。

彼女は、まるでコスモスの花束を抱くように軽やかに、自分の背丈ほどもある枝を、たくさん持ち帰ってきました。

僕はそれを、ひとつひとつつなぎ止め、天井に飾りました。
彼女はうれしそうにそれを、いつまでも眺めていました。

すると一本の木の枝が、歌を歌い始めました。どこかで聴いたことがあるような、懐かしい歌です。
僕は、長いことしまったままだったアコーディオンを取り出し、それに合わせました。

歌は少しずつ拡がって、やがてすべての枝が歌を歌うこととなり、僕のアコーディオンととけあって、部屋いっぱいに響き渡りました。

彼女はいっそうにこにこ顔です。自分が集めてきた枝たちが、こんなにも歌がうまいとは、思いもしませんでしたから。
そんな彼女を見て僕はうれしくなり、いつまでもいつまでも、アコーディオンを弾き続けました。

ふと気付くと彼女は、部屋のすみで小さくまるくなって眠っています。
その姿がまるで猫のようだったので、ぼくはおかしくなってしまいました。

しあわせな夜だなぁと思いました。
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