110505【番外編】文吉の闘傷生活009

今日は５月５日の「こどもの日」。痩せても枯れても文吉は男でございます。何だか心が
うきうきしますね。天気も最高だしどこかツーリングにでもいきますか。



2011年05月05日（木）晴れ


06:20
起床しました。
本当に清清しい朝です。看護士さんが窓を少し開けてくれて新鮮な空気を入れ替えてくれました。

その清清しさを吹き消すのが、この写真です。食事中の人にはゴメンナサイ。
包帯の取替え時にパチリしたものです。
右足と比べてむくんでいるのが分かりますか？



この中にボルトが埋め込まれています。



朝食です。美味しいですね。
今日のリハビリは歩くことが中心になっているので、ちゃんと食べておかないとね。



もちろん完食です。



食後のストレッチをベッドの上でしていたら、リハビリの先生が呼びに来ました。

室内で、少し足を触っていた先生が、「今日は外へ行って見ましょう」と言います。
聞き違えたかなと思って「外ですか？」「はい、病院の周りを一周します」

ずっと室内と廊下だけで過ごしてきた文吉です。不安はあれどもとても嬉しいです。
いつものように廊下を松葉杖で歩いて、その先にある非常口のドア。
ここから先は未知なる世界です。

まずは先生がドアの開け方を、説明します。
たかがドアひとつですが、これが中々難しい。
病院内の車椅子用トイレのドアと違って、重くて硬いドアです。
しかも、出るときは手前に引かなくてはなりません。

左手の松葉杖を脇にはさんで、手を伸ばして、ドアを手前に引きます。
すかさず、左手の松葉杖の先っちょをドアの開閉部に差し込んで固定します。
そして右手の松葉杖をドアより先に出して一歩を踏み出すわけです。
なんとか成功しました。ここまでで、額に汗をかきました。

入院後初めて嗅いだ外の空気です。歩きながらもったいなくて何度も深呼吸しました。
病院の周りに植えられた垣根にはツツジの花が満開です。
小さな花壇にはパンジーも咲いています。
「ああ、世界は俺の一歩を祝福してくれている」って思っても良いですよね。

そこからが大変です。
病院の廻り一周ってどこまであるんでしょう。総合病院といってもここはそれほど大きな造りではないはずです。

先生いわく「約２００ｍです。」なるほど、頑張れば何とかできそうです。
途中で、縁石をまたいだり、建物と建物の幅５０ｃｍくらいで長さ１０ｍくらいのところをギリギリ歩きます。
大型二輪の試験で一本橋という課題がありますが、あれを思い出しました。

なんとか一周を歩きとおしたときは、心臓がバクバクするくらい疲れました。
肩で息をしています
「午前中のリハビリはこれで終了ですが、午後にもう一度同じコースを歩いてみましょう。」
「・・・ハイ」か細く応える文吉でした。

病室に戻るとすぐに昼食です。午後のことを考えるととにかく力をつけなくては。
今日は「子供の日」ということで、「柏餅」がついています。
うまい。甘党で特に餡子の好きな文吉は、「生きてて良かった～」と思うひと時でした。



はい、完食です。



12:50
先生が呼びに来ました。
リハビリ室で軽いストレッチをしてから、本日二回目の外周歩きです。
今回は、ある程度頭の中でイメージトレーニングもできていたので、スムーズに歩くことができました。
「空き時間に一人で廻れますか？」「それは、無理。一人だと怖いです」
まだスイスイ歩くには程遠く、段差などで気躓いたらと考えると怖くてできません。

14:20
部屋で休んでいると、定例の検温と血圧測定のために看護士さんがやって来ました。
体温はそれほどでも無いけど、血圧が一向に下がる気配がありません。
上が１６０台で、下は１１０台です。
「これからは血圧を下げる薬をだしますね」
前から、会社の健康診断などで「少し高めですね」と言われていましたが、１４０台どまりでした。
これはヤバイ。これからは本当にまじめに人生を生きていかないと。

16:10
会社の後輩の温泉吉君ともっちゃんが見舞いに来てくれました。
温泉吉君は奥さんの実家が八百屋なので、流石は見舞いの品が違います。
メ○○を二個ぶら下げてきました。

もっちゃん、来てくれるだけで良いんだよ。気にしなくて良いからね。
もっちゃんは川越を見物してきた帰りに寄ったとのことで、撮ってきた写真をさっそく見てみました。
写真の腕もだいぶん、上達しましたね。

二人が喉渇いたと贅沢なことを言うので、一階の自動販売機の紙コップのコーヒーを案内しました。
このコーヒーは本格的な炭焼珈琲なので、美味しいです。
温泉吉君が３人前出してくれました。太っ腹ですねえ。実際に腹も出てますけど。

18:10
夕食の時間になったのをきっかけにして二人が帰って行きました。



もちろん完食ですよ。



このとき、文吉は大きな過ちを犯してしまったことをその時は気づきませんでした。
詳しくは翌日分かります。

同室のホーネットさんとおしゃべりしていると、はす向かいのＴＮＫさんは起きているようです。
文吉が車椅子でベッドに近づいて声をかけると、奥様と一緒に話の輪の中に入ってきました。

転倒して脊椎を損傷されたようで、この部屋では一番の重症患者ですね。
ホーネットさんはバイクだけでなく、車での自爆事故の経験者であり、体中のあちこちにボルトが入っているそうです。
バイク乗りは良く「ビンボー自慢」や「事故自慢」をします。
いかに安くあげたかとか、どれだけ大変な事故だったかを自慢するんですね。
ホーネットさん、文吉の知り合いの中ではあなたが「事故自慢の部」の優勝者です。

21:00
消灯のために看護士さんが部屋の電気を消しに来ました。
今日は疲れたんでしょうね。
すぐに眠りの世界に入っていった文吉でした。

・・・つづく



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