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私が死んだあとであなたが読む物語

基本的には「過食症患者の闘病記」、と言っていいでしょう。

「空中ブランコ」 奥田英朗

2012年05月14日 21時18分22秒 | 読書感想
名医・伊良部医師が主人公。

彼にかかればどんな精神病だって治ってしまう。

患者がいて、病気が治って。

そういう話なので患者を軸に話は展開されるんですが、やっぱり伊良部って医者がいいんですよね。

カウンセリングで治すんじゃない。

いわば人との縁が病を治す。

今回の5つの話の中だと、「義父のヅラ」の達郎なんかは明らかに伊良部との縁が治療になってる感じですね。

「さまよう刃」 東野圭吾

2012年05月13日 16時20分26秒 | 読書感想
私の行きつけの図書館ではいつもは空になっている東野圭吾の棚に、珍しく本が置いてあったので借りることにした。

それが「さまよう刃」です。

どんな内容なのかさっぱりわからずに読み始めました。

娘がレイプされた上に殺されてしまった父親のお話です。

主人公の長峰が、レイプ犯で未成年のカイジを追って長野へ行くあたりくらいまでは、展開も早くおもしろかったのですが、そこからは少し物語の展開自体が滞ったように感じました。

その代わり、登場人物の心情に標準が当たったのでしょう。

要はこの話は「復讐」と「少年法」が題材になっています。

今の少年法は間違っていて、それ故に被害者の遺族が復讐へと心を向けてしまう。

どちらかというと「復讐」には否定的で、「少年法」には懐疑的、といった内容でしょうか。

それぞれの登場人物がそれぞれの考えを持っていますが、どれが正しいかだなんて答えは出せませんね。

「インシテミル」 米澤穂信

2012年05月12日 13時54分17秒 | 読書感想
クローズド・サークルもののミステリー小説です。

外界から隔離された状況で事件が進行します。

クローズド・サークルの傑作といえばクリスティの「そして誰もいなくなた」です。

あれは読み終わった後にちょっとした感動があります。

少なくとも事件が進行するドキドキ感、謎が明らかになった時の爽快感、がともにあります。

この「インシテミル」は事件が進行する分には楽しめるのですが、いざ謎解きの場面となると、どうも肩すかしというか、物足りない感じがします。

こういうのは主催者側の組織が明らかにされないまま終わるケースがありますが、それは別にいいとしても、事件そのもの自体が最後に爆発しきらずに終わったように感じました。

まあ、久しぶりのクローズド・サークルものだったので、それなりに楽しく読めました。

「チルドレン」 伊坂幸太郎

2012年05月09日 17時01分28秒 | 読書感想
読みやすい文章でスラスラと一日で読んでしまいました。

おもしろかったです。

こんな人間いない。

そんなことを思いました。

「こんな人間」ってのは陣内って登場人物のことを指しています。

この男はちょっと変わった人物です。

そういった「おかしな人物」が登場したり、「おかしなこと」が起こったりするのが小説ってなもんですが、どうもしっくり入ってこないときがあります。

「おかしなこと」ってのはまあいいです。

「おかしなこと」が起こった方が小説としてはおもしろくなるわけですし何の文句もありません。

しかし「おかしな人物」に関してはどうも穿った見方をしてしまいます。

陣内って人物も常人が言わないようなことを言ったり、やらないようなことをやったりします。

そんなやついないよって冷たく考えてしまいます。

そんなの小説だからじゃん的な感じといいましょうか。

変に腹立たしかったり。

私はもっとリアルに満ちた生々しいものを読みたいんだろうか。

平凡な人物が平凡な言葉を口にして平凡な行動をとる。

この小説の中で私が一番ドキッとしたのは、盲目の男性が置引きの被害に遭う場面でした。

なんか生々しい感じがそこにはあったのかもしれません。

「悼む人」 天童荒太

2012年05月08日 14時30分16秒 | 読書感想
他人の死を悼む旅をしている男が主人公のお話です。

最初のうちは主人公がこんなことをしている理由というか、こうなった決定的なきっかけみたいなものがあるんだろうと考え、それが何なのかを楽しみに読み進めている部分がありましたが、別にひとつこれといった決定的な理由があるわけではなさそうだということが、わりと早い段階でわかりました。

そうなってくると、どう落し前をつけるつもりなんだろうと思えてきました。

主人公のそういった行動に興味を示す人物として蒔野抗太郎という人物がいます。

その男が死にかける場面があるのですが、そこで少し悼む人の意味がわかったような気がしました。

また、悼む人の行いが誰にとってどのように必要かということが、エピローグで上手に描けているような気がします。

「神様のカルテ」 夏川草介

2012年05月04日 23時09分39秒 | 読書感想
どちらかというと、とにかく前へ前へみたいな、生き急ぐ感じが好きでない私にとっては、性に合う部分がある小説でした。


『足もとの宝に気付きもせず遠く遠くを眺めやり、前へ前へすすむことだけが正しいことだと吹聴されるような世の中に、いつのまになったのであろう』
(小説内より抜粋)

ただややともすると、どうも小説の中に入っていけない。

これは小説に問題があるのではなく、私の個人的な問題です。

今の私の精神的な問題です。

どうも自分と比較して見てしまう。

嫉妬や羨望が邪魔して入っていけない。

それは別にこの小説に限った事ではありません。

今の私にとってみれば、たいていの人が嫉妬や羨望の対象になるのです。