
・・・蛙の長助が [白髪そば] の大黒屋を出たのは、暮六ツをすぎてからだったが
初夏のことで、夕闇も淡い。
長助は、両国橋へ出る手前の店屋で、ぶら提灯を買った。
長助の顔が、ほんのりと赤い。大黒屋の二階座敷で寝そべり、ゆっくりと二合ほど
酒を飲んだ後で、貝柱のかき揚げを浮かせた天ぷら蕎麦を二つも食った(やった)。
なかなかどうして、長助はぜいたくなことをしているのである。
(どうせ、もう長えことはねえのだから、生きているうち、せめて飲み食い
だけは好きにしてえな)
だから、ふところへ入った金を長助は出し惜しまなかった。・・・
『蛙の長助』より
[鬼平犯科帳] シリーズに登場する食べ物の筆頭は、おそらく蕎麦だろうと思う。やはり
江戸の人々の暮らしと蕎麦は切っても切れない間柄であったらしい。
かくいう僕も、江戸っ子ではまったくないが麺類の中では蕎麦が大好きで、夏になると
けっこうな頻度で昼食に蕎麦を食っている
『蛙の長助』に出てくる天ぷら蕎麦は、この写真の型ではなく 温かいかけ蕎麦に
江戸であれば、おそらくアオヤギの貝柱のかき揚げを浮かせた型の天ぷら蕎麦だろう。
僕の住んでる地方ならさしずめアコヤガイ(真珠養殖に使う貝)の貝柱になろうか・・・

18才から22才まで僕は東京に住んでいて、けっこう蕎麦を食べにいろいろ出かけた。
せっかくお江戸にいる以上は田舎では出来ない経験をたくさんしたかったしね・・・
池波正太郎が大好きだったという浅草並木の[薮] にも行きました。
蕎麦味噌をなめて酒を飲んで、もりを二枚食べた記憶があります 池波正太郎はここの
辛めのつゆがいいと書いています。 でも僕にはすこし辛すぎた。
これが経験であると思います。自分の舌でどう感じるかが大切なのだと思います。
もともと高知県西部の醤油は少し甘めの醤油なので「これがお江戸の味か」と思いました
また東京に行く機会があれば江戸の味を求めて是非食べに行きたいですね。
「飲まぬくらいなら、蕎麦屋へは入らぬ」という池波正太郎の言葉がありますが
たしかに蕎麦屋で飲む酒はうまい!気の利いた蕎麦屋なら必ず酒も厳選してますし
また 蕎麦屋には酒に合う肴がたくさんありますよね。
海苔・蒲鉾・合鴨・海老・子柱・山芋など、どれもちょっと一手間でいい肴になる。
蕎麦だけではやはり値段の限界がありますから酒も飲まずに蕎麦だけでは蕎麦屋が可哀想でしょう
むろんこれは僕自身の酒飲みの独断と偏見ですがね。
みなさんも、良い蕎麦屋があれば是非この [蕎麦屋酒] を楽しんでみて下さい。
でもけしてダラダラ飲んではいけませんよ!それも蕎麦屋が可哀想・・・
「鬼平を食す」第五弾 [天ぷら蕎麦]
やっぱり うまいが一番!