楓荘日記

米女優サンドラ・ブロックの情報を中心に、洋画、日米ドラマ、本など、思いつくまま書いていきます。

誰もが批評家

2010-02-05 21:39:50 | 映画関連イベント

 毎年、「ニューズウィーク」誌では年末から1月にかけて、オスカー・ノミネート有力候補者を部門ごとに集め、“Roundtable”をおこないますが、なかなか主演俳優のをやらないと思っていたら、ノミネート発表の直前に公表されました。

 出席者は、モーガン・フリーマン、ジェフ・ブリッジス、ウディ・ハレルソン、ガボレイ・シディビー(「シディベ」のほうが発音は近そうですね)、キャリー・マリガン、そしてサンドラ・ブロック。Roundtableの出席者が全員ノミネートされるとは限らないのですが、今回はこの6名全員がめでたくノミネートされました。(ハレルソンだけは助演部門ノミネート)。

 第82回アカデミー賞ノミネート・リストはこちら:http://www.wowow.co.jp/extra/oscars/awards/academyawards/82/nominees.html

 Roundtableの映像はこちら:http://photo.newsweek.com/oscar-roundtable/2010/electric-company.html

 YouTubeにも出ています。以下は、最後のOuttake。ジェフ・ブリッジス、サンディーの手を握ったまま……。

<!-- Newsweek Oscar 2010 Roundtable Outtake -->

 昨年までは、各映画賞に関してこれほど記事や予想を読んだり、自分で考えたりしたことがなかったのですが、今まで自分が漠然と抱いていた映画賞に対する考え方が少し変わりました。というよりは、はっきりしてきたと言ったほうがいいかもしれません。ちょっと長くなるかもしれませんが、ここに書いてみます。

 ご存じのように、「しあわせの隠れ場所」が公開されたあとから、サンディーはみるみる主演女優賞候補の中に入っていきました。アメリカの観客には熱烈に迎えられたこの映画に対する批評家の評価は、中の上ぐらいで、いわゆる、「作品賞」的な映画ではありませんでした。サンディーの演技に対しては、映画に対してよりはずっと高い評価がされていたとはいえ、公開後しばらくは、ゴールデングロープ賞なら入るかもしれないけれど、オスカーは無理だろう、的な論調が多かったと思います。

 各都市の批評家協会賞や全米批評家協会賞、ナショナル・ボード・オブ・レビューなどでは、受賞者あるいは第2位ぐらいまでしか発表しないことが多いため、各批評家協会の中で、サンディーがどれぐらいの位置につけていたか分からないのが残念ですが、おそらく、上位5人には入っていないことが多かったのではないでしょうか。

 ところが、目立つ賞=TV中継される賞になると、ノミネートされ、しかも、これまですべて受賞しています。そのためか、「人気優先」「大ヒット作だから」という批判がネット上をにぎわし、もしこれでサンディーがオスカーを獲ることにでもなったら、「史上最悪の主演女優賞」とか「オスカー史上最低のジョーク」とか、それはまあ、「あんた、何サマ?」と言いたくなるような批判がIMDbの掲示板などではたくさん書かれています。そして、そういう人たちは、一体誰が観たの?というような作品までこまごまとあげて、「サンドラ・ブロックよりいい演技をした女優はこれだけいる」なんて書いています。

 正直なところ、私も「しあわせの隠れ場所」が作品賞候補10作に入るというのは首をかしげるところがあります。数少ない鑑賞済みの作品と比べても、たとえば、「インビクタス」や「ジュリー&ジュリア」のほうが作品の出来としては上だろうと思うからでもあります。(「しあわせの隠れ場所」は試写で観ることができました。感想はまた別に書きます。)なによりも、作品賞、という重みのある映画ではないと思いました。

 サンディーの演技については、確かに頑張ったと思いますし、ノミネート自体はそれほど不思議ではない(偉そうですが)。でも、やはり受賞となるとまた話は別で、これもまた、鑑賞済み作品が「ジュリー&ジュリア」しかないので、比較が難しいですけれど、少なくとも、メリル・ストリープよりも上だとは思えません。メリル・ストリープに対する先入観を差し引いて考えても、です。

 こう考えると、サンディーの受賞はふさわしくない、という意見には必ずしも反対ではありません。でも、さらにいろいろ読んでいると、米映画界で長く過ごしてきた(らしい)ジャーナリストの中には、「サンドラの演技が「年間ベスト」だとは思わないけれど、受賞は理解できる」という人たちがけっこういることに気づきました。「自分なら投票はしないが、理解はできる」と。そういう人たちは、各賞の性質をよく理解しているのだろうと思います。

 ノミネート発表直後の会場で、ノミネートについて、映画ジャーナリスト/批評家ピート・ハモンドとトム・オニールが分析しているビデオ:http://goldderby.latimes.com/awards_goldderby/2010/02/videos-tom-and-petes-slugfest-over-oscar-nominations.html

 こちらも、別のジャーナリスト2人が分析:http://oscar-watch.ew.com/2010/02/04/oscarwatch-tv-avatar-hurt-locker-sandra-bullock/

 さらにこちらは音声のみですが、別の2人:http://blogs.indiewire.com/thompsononhollywood/2010/02/02/oscar_talk_episode_20_parsing_the_noms_blind_side_and_other_surprises/

 こちらは、投票用紙が届いてからノミネート発表までのドキュメント:http://www.usatoday.com/life/movies/movieawards/oscars/2010-02-03-oscarsovernight03_ST_N.htm?csp=usat.me

 聴いてみて分かるのが、アカデミー賞という賞の性質。投票する人たちは批評家ではないわけで、映画製作の内部にいる人たちです。今年のアカデミー賞で投票資格があるのは、5,777人だそうで、その中で俳優部門に投票できるのは当然、俳優たちであり、1,205人だそうです。映画公開時に、映画を細かく観られる批評家とは違います。批評家やジャーナリストはそれが仕事ですから、一年中、毎日朝から晩まで映画館で観られるわけで、しかも、タダで試写で観られることが多いはず。

 でも、アカデミー会員たちは、一年を通していろいろな映画を観ておく、なんていう余裕はないでしょう。引退している高齢者とか、仕事にあぶれている人たちは別でしょうが。彼らのほとんどは、毎年11月末ごろに各映画会社から送られてくるDVDに入っている映画を、ノミネート投票締め切りの1月後半までに観なければならず、当然、全部観ることは不可能なわけで、しかも、そのDVDにすべての映画が入っているわけではないそうです。だとすれば、取捨選択して観るしかないですよね。となると、聞いたこともないような映画よりは、評判や成績を耳にしている映画から観ていくのではないでしょうか。(余談になりますが、「プレシャス」のギャビーちゃん、ノミネート発表直後からトーク番組でまくりですが、作品賞候補などの作品で観ているのは2本ぐらいだと言ってました。それはそれで、彼女のキャリアから考えると、ちょっと努力不足だと思いますけれども。まあ、彼女には投票権がありませんが。)

 だんだん支離滅裂になってきましたが、要するに、アカデミー賞作品賞にしろ、主演女優賞にしろ、「アカデミー会員にとっての」最優秀であって、別に世の中でもっとも優秀、というわけではない、ということなんですよね。ほかの賞も同じです。そう考えれば、アカデミー会員が、「この映画は作品賞候補に値する」「この人の演技には主演女優賞をあげてよろし」と判断すれば、それはよそ者があれこれいうべきことではないわけです。よその国が内政干渉しているようなものです。

 と、ここまで考えてようやく、私もサンディーが主演女優賞をもし、受賞しても、心から喜ぼうと思えるようになりました。とはいえ、やはり、メリル・ストリープに獲ってもらって、サンディーにはまた次に頑張ってもらいたいというのが本音ですが。本投票はこれからですから、会員たちが、もし、きちんと主演女優賞5作品を観て、その映画での演技だけを純粋に考えるならば、サンディーへの投票が1位になることはないと思うのですが……。ちなみに、メリルのコアなファンのなかには、「ジュリー&ジュリア」は彼女にとってベストな作品でも演技でもないので、受賞しなくていい、という意見の方もけっこういるようですね。

 公開規模の小さい良質な作品が、いわゆる大きな賞に入らないのは、批評家とジャーナリストの責任だと思います。また、観客も、そういう作品に出会ったならば、もっと世の中に広げていかないと。そういう努力をせずに、あとで「なぜノミネートされない?」とか「なぜあんな作品が」というのは、ちょっとおかしいですよね。

 さて、あとはラジー賞。サンディーは、「受賞が決まったら絶対出席する!」と言っていて、かなり報道されてしまっていますから、これは出席しないわけにはいかない感じです。ミーガン・フォックス有利の予測も出てますけれど、面白がって投票する人が多いと思うので、こちらは確実?

 長々とすみません。最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

 最後に、主演女優賞候補の皆さんをご紹介。いずれも、SAG賞の写真です。

 (こんな日が来るなんて…)サンドラ・ブロック 「しあわせの隠れ場所」

 (ちょっとはしゃぎすぎよ)ガボレイ・シディビー 「プレシャス」

 (今年は見物気分?)ヘレン・ミレン 「ラスト・ステーション(原題)」

 (私が今後応援を決めている)キャリー・マリガン 「17歳の肖像」

 (今年ダメならまた来年?)メリル・ストリープ 「ジュリー&ジュリア」

 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしい (トキノ・SHI・パルク)
2010-02-06 08:22:29
おはようございます。

素晴らしい調査力ですね!!
こういう記事をみると、「楓さんが引き継いでくれて良かった」と心から思います。

アカデミー賞の投票の仕方(!?)なんて、今まで気にしたこともありませんでした。

記事にもあるように、アカデミー賞は“アメリカ国内のただの映画賞”。
メディアとかの報道のせいで、世界の映画賞になったから、「あんた何さま?」な批評が出るんだと思います。
ボクは以前から、メディアの誇大ともとれる報道・宣伝の仕方に疑問を感じてはいました。
でもやはり、映画ファンにとっては今や一大イベントですからねぇ。
映画の都ハリウッドで行われるわけですし。

世界三大映画祭はカンヌ、ヴェネチア、ベルリン。
歴史としてはアカデミーの方が古いらしいですけど…
国際と名乗っている、これらの賞にたいして、世界の人が何やかんや言うのは、まだ良いと思いますが~
アメリカのただの映画賞にしか過ぎない、アカデミーに対して、過剰な批評をするのま間違っていると思います。

今回サンディーは、アメリカ人に好かれるタイプの作品で主演をて、作品は大Hitしました(内容で大Hitしたんでしょうけど)。
だから、受賞しても全くおかしくないと言う事ではないですかね。


ラジー賞はサンディーで間違いないでしょう。

長々、乱文お許し下さい。
返信する
トキノさんへ ()
2010-02-06 17:40:14
書くのって難しいですね。
参考になりそうな記事を見つけると、とっておくのですが、なかなかうまくまとめられません。

もともと実力はある人だと思うので、もし、今回受賞したら、いろんな批判を糧にして、また頑張ってくれると期待したいです。

書き忘れましたが、スピーチのよさが評価されるというのも面白ですよね。
確かに、単に関係者の名前の羅列は聴いてても退屈なので、分かりますけども。
返信する

コメントを投稿