関根研日記

立教大学理学部生命理学科 関根研究室の日常をご紹介。

ツタにお別れ

2009-06-08 14:33:20 | Weblog
関根です。
立教大学の景観と言えば、赤レンガにツタ、というのが衆目の一致するところでしょう。ツタは植物ですから、その景観は一朝一夕では実現不可能で、まさに長い歳月により醸成されて今の姿になっています。歴史の重みが具象化されているように私には思えます。
その景観の代表は本館で、立教の広報にもよく載りますが、本館だけではありません。8号館裏に建つ診療所は2階建ての木造で、建物全体が見事なツタに覆われています。何かの物語の挿絵に登場しそうな、私のとても好きな風景でした。

今日、大変ショックなことを目にしました。診療所のツタの葉がみな力なく垂れているのです。この時期は、光沢のある葉が初夏の陽の光を照り返し、まぶしいほどなのですが、診療所の壁を這う葉はどれも光沢を無くし、しおれていました。そのわけはすぐに分かりました。幹(と言っていいのでしょうか?)がザックリと切られているのでした。次の瞬間、診療所は、既に別の建物にその業務をうつしたこと、この場所には新しい建物が建設される計画があったことを思い出しました。

建築計画は知っていましたが、この愛すべき景観が消えてしまうことを私は認識していませんでした。それが、このような形で、残酷な切り口で、現実を突きつけられ、心がさざなみだっています。もうどうすることもできないのですが・・。
せめて、長い年月を経てあんなに太くなったツタにのこぎりを入れる前に、素敵な景観を培ってくれたことにお礼を表する機会を学内者に与えてほしかったと思います。私と同じように、この診療所の風景に和んだ人はきっと大勢いるはずです。

好きだったものが、抗い難い力によって壊されるのは、とてもやるせないものです。