晴嵐改の生存確認ブログ

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず

レアメタル・パニック

2007年05月11日 | 読書
レアメタル・パニック  Rare Metal Panic (光文社ペーパーバックス)

先端産業を支える重要資源――レアメタル。本書は、複雑な世界のレアメタル事情を俯瞰しつつ、レアメタル専門商社を経営する著者の経験を踏まえて、今後の日本が取るべき道筋についても提言を行っています。
レアメタルのことに詳しくない人でも――というか、私も詳しくなかったのですが――本書を読めば、その重要性をよく理解できると思いますし、レアメタル確保がどれだけ日本の産業にとってクリティカルな問題かということがヒシヒシと伝わってきます。

私たちは最終製品の華やかさに気を取られ、それが何でできているのか、という根本的なことをすぐに忘れがちです。
日常生活を支える様々な工業製品の殆どにレアメタルが使われていることに、あまりにも無頓着すぎたのではないか。本書を読み終えた今となっては、そんな反省をしています。

結局のところ、優れた技術力を誇る日本のメーカーも、肝心の材料が無ければ、何一つとして製品を市場に送り出すことはできないのです。パソコンも、携帯電話も、薄型テレビも、全てレアメタルが無ければ作ることができません。何もレアメタルは先端的な製品にばかり使われているわけではありません。例えば、白熱電球のフィラメントに使われているタングステンも、歴としたレアメタルです。

つまり、私たちの生活は様々なレアメタルに頼り切っていて、なおかつそれらのレアメタルの供給は海外からの輸入に大きく依存しているわけです。
となれば、安定的なレアメタル供給体制の構築は、技術立国を自認する日本にとって極めて重要な課題であり、国家戦略として取り組むべき問題であるということに、多くの方は気付かれるのではないかと思います。
そういった気付きを与えてくれるきっかけとして、またレアメタル入門として、本書はとてもお薦めです。

内容的には、決してレアメタル一辺倒というわけではなく、レアメタル以外の商社マン時代のエピソードなども語られています。そこには成功したことばかりではなく、失敗したことも率直に書いてあります。それらは、大多数の日本人が踏み込まないであろう最前線の、本当のぎりぎりのところでビジネスをしてきた著者ならではの体験であり、そうした体験が前提にあるからこそ、本書の内容も重みがあるのだと思います。

なお、タイトルから某ライトノベルを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、全く関係ありません。念のため。


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