ダイキャスト情報室

鋳造品の品質を決めるのは、方案と排気かな。。。。

2023年末の愚痴

2023-12-30 | DieCast

このブログ「ダイキャスト情報室」では、「オーストラリア式ランナーの考え方」として2022.7.25に公開してあるが、その中身は2002年8月に私のHPで公開したもので、すでに20年以上前の超訳で、現在のようにDeep-Lなどもなかったので苦労しながら入力したものです。

しかし、いまだにオーバーフローの体積を確保すれば巣が消えると信じ込んでいる人、ランナーの断面積の変化について全く確認を行っていない人を見て、オーストラリアのMurryさんの原稿のように、書かれた時と全く変わらないなとため息が出るばかりです。

しばらく前に金型メーカーから聞いた話ですが、「中堅ダイキャスターに仕事のできる技術屋さんが居なくなった」というのは、金型メーカーでは共通の認識らしい。私の認識では、金型メーカーは鋳造したものを見るだけなので、鋳造中の変化や詳しい情報を持っているのはダイキャスターのエンジニアなのですが、いまは確かに悲しい状態です。30年以上前は、金型の基本構造・レイアウト・収縮率などはダイキャスター側が明確に指示するものと認識していました。今は確認することが普通になった。

さらに最近も、「巣が発生する可能性大だからせめてチルベントを設置しましょう」といっても、私の意見は取り入れずその結果、巣の発生・金型溶接といつものパターンが繰り返されています。またゲートの細工だけで溶湯の流れる方向が制御できると信じている人は相変わらず多い。金型は冷却するものだとランナーの下にもしっかり冷却を入れて、せっかく高くした溶湯温度を下げてしまう、これも見飽きるほど見てきた。ものを知らない人の怖いもの知らずには驚くばかりです。

筆者も70代になっているので同じ事ばかり繰り返すようになっているが、これをお読みの方はまたかと受け流してください。ハーゲン・ポアズイユ(hagen & Poiseuille)の式(Q=kdxx4/ηL)から、排気量「Q」はベントの長さLに反比例し、ベントの厚さの3乗(元の式は径の4乗であるが、幅の分を差し引いて3乗となる)に比例する)この式が発表されておよそ200年が経過しているのに、この式を必要とする業界ではいまだに常識になっていない。知ってる人だけが知っている。

最近も「巣が出る」→「湯溜まりを設置すれば解決」→「解決せず」という現場を見た。しばらくして類似品の金型が発注されたときにはさすがにチルベントが設置された。これも説明しておくと、深さ0.2・幅20のガス抜きでどれほどのガスが抜けるか判らないが、このベントを2か所にしてももともと少ししか排気できていない型のガスが90%も抜けることはあり得ない。空の注射器の空気をゆっくり押出すことは難しくないが、短い時間(例えば充填時間の0.1sec)で抜けるかというとこれがほとんど無理。この感覚を体験してから金型の排気について設計してほしいね。色々の小細工をしてもガスの通路が狭ければガスは抜けません。通路の太さ、厚さがすべてを支配しています。

これらの画像はどこから頂いたか不明ですが、数年前にも使わせていただきました。

この画像も重要で、左の二つと左から3番目を比べると、オーバーフローからベントへのつながりRの有無で大きな差(正確には圧力損失係数なので押し出そうとする圧力が減衰される)が発生することがわかる。


流れと圧力損失

2023-10-28 | DieCast

ランナーに関する問い合わせがあったので、説明資料を作っていたら構造計画研究所が判りやすい資料を公開してくれてあった。その中に以下の画像があり、ランナー設計初心者には参考になると思う。

この説明では、左のエルボの圧力損失は157kPaに対し、ベントの圧力損失は81kPaとおよそ半分になるということである。画像を見ても不要な渦が発生していることがわかる。この画像からは、ランナーの幅と同程度のRが採用されている。この圧力損失を意識していない設計者は、わずかなRだけ付けてランナーの方向を変更しようとするためどんどん損失が増えてゆき、湯回りが悪い金型が完成する。

謝々 構造計画研究所殿

 


My new Casting Die design.

2023-10-22 | DieCast

   For several decades from the time induction motor rotors were manufactured by the die-casting method until the early 1990s, large induction motors (200 mm or more in diameter) were cast using vertical casting machines (the slots and bars are perpendicular to the earth,  where the PL plane is horizontal). For smaller diameters, the shaft is cast in a horizontal DC machine (the PL plane is perpendicular to the ground because the casting machine opens horizontally, perhaps for ease of mold making, so the slot (hole in the lotus root) is horizontal, as shown in Image 1) with the shaft horizontal, that is, at right angles to the PL plane (the rotor insert is held horizontal). (holding it horizontally) has been cast.

The author judged that it would be impossible to improve quality by using a casting method in which the core is placed on an existing horizontal casting machine as shown in Image 1, and thought that casting with a mold method that takes Newton's gravitational force into consideration would be a shortcut, or perhaps the royal road to quality improvement. My client understood this basic policy, and we decided to make a prototype mold. 

The mold (in 1993), for which the author drew the basic plan, is patented as JP-A8-317615 and WO97-48171, and also as US005937930A , (Unfortunately, the author's name is not registered as the inventor). (Unfortunately, the author's name is not registered as the inventor.) The author believes that this mold bill is clearly superior to the old casting method in which the axis is horizontal because the flow of molten metal in the slot is oriented in the counter-attractive direction, which prevents unfilled or thin aluminum bars and stabilizes quality.

he amount of unbalance in the first prototype was 1/10 that of the conventional manufacturing method.

Let us compare the advantages and disadvantages of each casting method. In addition, we have added an evaluation of the HVSC method. This project to develop high quality rotors first started with prototypes using ordinary cold machines, but mass production began around 1993 using Ube Machinery's HVSC350 and HVSC630 tons due to the demand for even higher quality.

Fig. 01

 

 


AI技術の進化に関するセミナーを聞いてきた

2023-10-09 | DieCast

「AI技術の進化がもたらす変化と備え」という講演会に参加してきました。筆者、AI技術について、データを山ほど集めてその後をどうするのだろうという疑問を持っていました。EVのようにもう少し様子を見てから判断で良いのかなと考えていました。しかし製造業としては、このような考え方では時代の変化について行けなくなるようだ。製造業では、今からデータの採集方法と分析法を身に付けておく必要があるとの事。こうして現場の技術力を上げておかないと、さらに普及してきたときに受け身になってしまい、競争相手の企業の後塵を拝すことになると。AI技術とはデータの蓄積が前提のもので、データなしには何も始まらないとのこと。さらに最近のAI技術の普及状況は目を見張るものがあり、飲み物の異物混入確認も目に見えない速度で流れるラインを確認している。

ダイキャスト業界でも、射出波形から良否の判定をしている企業はあると思われるが、AI技術を使うとその後のデータ、例えば射出時の音を分析させて良否判定できるだろう。射出から取り出しまでの時間は十分ある。分析して、この判断結果をロボットに渡し、「溶解処分に回してね」とお願いすれば、品質部門は「ずいぶん楽になるはずだ」と夢見ました。

この画像は、展示してくれた企業名が曖昧ですが、数年前のダイカスト展で頂きました。これは誘導電動機の回転子で、レンコンの形にまとめたケイ素鋼板を金型の中にセットし鋳造をして、その後、鉄のみを薬品で溶解してアルミだけを取り出したもの。手間かかっています。この形がリスの回転かごに見えるので、かご型電動機と呼ばれるはず。画像付けないと流行に乗れないみたいなので。


車体のダイキャスト化

2023-09-20 | DieCast

 メディア向けに、「トヨタモノづくりワークショップ」という生産技術等に関する説明会が開かれたそうだ。関連する記事が朝日新聞('23.09.19)にもあって、それによるとマシンは4000ton、高さ6m 重さ400ton射出から製品取り出しまで十数秒とのこと。画像だとおもうが、ロボットによる製品の取り出しまであったようだ。確認のために芝浦機械に3500tonマシンの資料を頂いたが、マシン重量まで記載されていなかった。残念。さらに記事によると、アナリストがダイキャスト化された車体は修理コストがかかると分析しているとのこと。しかしとトヨタの試作品画像を見ると何でもかんでもダイキャストにするわけではなく、ホイールハウス部分とそれをつなぐ骨格部だけで、鋳造品の投影面積を小さく設計して、どこかの会社みたいに大きな鋳造機を使わないで対応しようとする姿勢が見える。それに大きな衝突事故となった場合は、スチール製でも廃車になるだろう。テスラの画像を見るとホイルハウスの後ろ側もダイキャストで作りこんでいる。この部分に軽微な衝突があった場合は修理も困ると思う。下の画像はトヨタ広報が公開している鋳造機のもの。最近はカバーされた機械が多くてイメージわかない。さらに樹脂製品の型と思われる画像もあったのでしっかり借用しました。

追記:UBEのUB6500鋳造機がリョービへの納入が決まったとの事。この方向に行くんだろうな。UB6500は昔風には6600tonぐらいかな。